ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に 作:neo venetiatti
デュカーレ宮殿から海岸近くまでが、多くの人で埋め尽くされていた。
だが、その中央には、周辺に人を排除して、丸く大きな空間ができていた。
そこには、純白のウェディングドレス姿の三人の花嫁たちが、少し距離をおいて立っていた。それぞれ胸に小さなブーケを持って。
その三人の前には、それぞれタキシード姿の花婿たちが膝まづいて、目の前にいる花嫁たちに手をさしのべていた。
花嫁たちがそれぞれの花婿の手に手を重ねると、花婿たちはその手に口づけをした。
その瞬間、周りからは盛大な拍手と歓声が沸き起こった。
その人だかりの輪の最前列にいた灯里、藍華、アリスたちは、拍手をしながら感激に浸っていた。
その少し離れたところには、目に涙を浮かべているアサカの姿もあった。
三組のカップルが腕を組んで歩き出すと、その人だかりが左右に別れ始めた。
その先を進んでいた灯里たちは、それぞれのゴンドラの前に立ち、その三組のカップルたちを待ち構えた。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ島を貸しきれないかと相談していたあのカップルは、藍華の前で立ち止まった。
何かとアリスと縁のあったアンドレと忙しいお相手は、アリスの前に。
そして、アンナとその相手の男性は、灯里の前で立ち止まった。
「アンナさん、とってもキレイです!」
「ありがとう、灯里さん」
三組のカップルは、それぞれに用意されたゴンドラに乗り込んだ。
そして、灯里、藍華、アリスは、それぞれ手にオールを持つと、確認し合うように視線を交わした。
「それでは、出発します」
灯里は、そう声をかけると前を向き、ゆっくりとオールをひとかきした。
海の上を滑るように、ゴンドラが動き出した。
灯里のゴンドラに続いて、藍華、アリスのゴンドラも動き始めた。
灯里のゴンドラを追うように、その両側に藍華とアリスのゴンドラが続いた。
それぞれのゴンドラに乗る三人の花嫁たちのベールが、風に吹かれ、長く尾を引いている。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会へ進むゴンドラたちの姿は、そこにいる見るものすべてを魅了していた。
そして、岸から離れてゆくゴンドラたちを、みんな名残惜しそうに見送っていた。
「よかったですわね、アサカさん」
目に涙を浮かべ見送っているアサカのそばで、アラトリアもその光景を見送っていた。
「アラトリアは行かなくていいの?」
「わたくしは、ここで結構ですの。いくらわたくしでも、そこまでヤボではございませんの」
「そうなんだ」
「ええ。わたくしの役目はここまで。ここからはアリス様の舞台ですわ」
「花嫁たちではないのね」
「まあそうですわね。そんなことより、アサカさんこそ、なぜここにいらっしゃるのですか?あなたこそ、あちらにいなければいけない人では?」
「うん、わかってる」
「じゃあ、早く」
「もう少しだけ見ていたいの」
「どうしてですの?アンナさんのことをですの?」
「それもあるけど」
アサカは離れてゆくゴンドラたちの姿を、眩しそうに、そして嬉しそうに眺めていた。
「この風景だったんだ、って思ったから」
「この風景?」
「そう。灯里さんの描いた風景」
「灯里様の?」
「ぜひ、それを見せてほしいって言ったの」
すると、少し離れたところから、アサカを呼ぶ声が聞こえた。
「アサカさん、呼んでますわ。あれ、教会のチャーターしたボートではありませんの?」
「うん。それじゃあ、アラトリア。行ってくる」
「お気をつけ下さいましっ!」
ボート乗り場へ急ぐアサカを見送りながら、アラトリアは、改めてサン・ジョルジョ・マッジョーレ島へ向かうゴンドラたちに目を向けた。
「灯里様が描いた風景」
不思議そうにポツリと呟いたアラトリアは、そのままニッコリと微笑んだ。
「素晴らしい風景ですの」
すると、アラトリアの背後から声がかけられた。
「あの~、お嬢様?」
「こんないい気分に浸っているときに、誰ですの?」
そこには、アラトリアに抵抗できない、例のアムネジアが立っていた。
「あら、アムネジア。あなたも来ていたのですか?」
「だって、お嬢様?あれから、全く連絡が取れなくて困ってたんですよ」
「ああ、それは申し訳なかったですわ。かなりバタバタしてましたから」
「それでですね、どうなりましたでしょうか?」
「どうなったって、あなた、見れば一目瞭然ですわ」
「ああ、それはご結婚おめでとうございます。そうじゃなくてですね?」
「他に何かありまして?」
「お嬢様~~」
「なんなのですか?その変な声は」
「あのお二人に、こちらの話に乗っていただく代わりに、ナイトパーティーの代替案をご用意していただけると、おっしゃいましたよね?」
「ああ、その件」
「はい、その件です!」
「なくなりました」
「はぁ?」
「アリス様が、わたくしの用意したドレスは絶対着ないとおっしゃったので、却下となりました」
「じゃあ、代替案は?」
「ですから、いま却下と」
「お嬢様~~~」
「だからなんなんですの、その声!」
「社内でも、今日のこの話題で持ちきりなんです。それに私が関わっていたなんてことが知れたら、もうオレンジぷらねっとには、いられなくなります!」
「そこは大丈夫じゃないかしら?」
「どうしてですか?」
「アムネジア?あなた、アリス様をなんだと思ってるのですか?あのアリス様ですよ!」
「それはどういう・・・」
「後でわかることですわ!」
「お嬢様~~~~」