ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

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第30話

ネオ・ヴェネツィアには、少しの間だが、結婚ブームが到来していた。

サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会でおこなわれた合同結婚式のニュースは、かなりの話題となり、結婚式をネオ・ヴェネツィアで、そしてサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会で行いたいという問い合わせが、ツアー会社や水先案内店に相次いだ。

そのためか、各水先案内店は、例年以上の忙しさに追われていた。

そして、アサカの意向もあって、ARIAカンパニーにはこれまでにないほどの仕事が舞い込んでいた。

「アサカさ~ん!もう、ご祝儀は結構ですぅ~~」

急激に仕事が増えたことで、灯里は連日、朝から日が沈むまで忙しさに追われていた。

そんなある日、お客様を送り出した灯里は、店内に戻ると、テーブルの椅子に腰掛け、大きなため息をついた。

「今更だけど、アリシアさんて、こんなことをよく続けてたよねぇ」

思わずひとり呟いたところに、アリア社長がそばまでやって来た。

「ぷいにゅい」

「ホントにそうだよねぇ。どうしたら、あんなふうに毎日をすごせるのか。わたし、ちょっと自信なくしそうです」

アリア社長の優しさに癒されて、灯里は思わず笑顔になっていた。

「あの~、いらっしゃいますか?」

「はひっ!」

アリア社長と顔を見合わせていた灯里は、驚いて顔を上げた。

カウンターの外には、中を覗き込むようにして、藍華が言うところの、あのストーカー男が立っていた。

「ウンディーネさん、先日はどうも!」

「どうしたんですか?」

「一度、ちゃんとお礼方々、挨拶しておかなくちゃって思ってたんですよ!」

「そんなご丁寧に、挨拶だなんて」

「それに、ウンディーネさんの顔も見たかったしネ!」

そう言って灯里にウィンクしてみせた。

「はぁ~それは~どうもですぅ~~」

「ハハハハ」

灯里がどうリアクションしていいか戸惑っている姿をみて、男はうれしそうに笑った。

「それと、一応これをを渡しておこうと思って」

男は一枚の名刺を灯里に手渡した。

「アマント、さん?」

「はい。よかったら、覚えておいてください。また来ますから」

「はい、わかりました。でも、ということは・・・」

「今日、ネオ・ヴェネツィアを離れます」

「そうだったんですか」

「ひとつの街にここまで長くいたのは、このネオ・ヴェネツィアが初めてです。だから少し離れがたい気持ちではありますが」

「これからどこへ行かれるのですか?」

「まだ、何も決めてません。ただ、アクアのどこかだけは確かです」

そのアマントと名乗る男は、海の方を振り返って、眩しさに目を細めながらそう言った。

「ありがとう、ウンディーネさん。あなたに会えて本当に良かった」

アマントは、灯里に優しい眼差しを向けた。

その瞳には、離れがたい気持ちと旅立ちの決意のようなものが溢れていた。

「それじゃあ、また」

「はい。アマントさん、いつでもお待ちしています!」

アマントは、その灯里の言葉に何か答えようとしたが、ニッコリと笑顔だけを残して立ち去った。

 

その後、水先案内業界にひとつのトピックスが流れた。

新進気鋭の写真家が、ネオ・ヴェネツィアで働くウンディーネたちに焦点をあてた作品を発表した。

この作品が発表されるやいなや、アクアのみならず、マンホームでも大きな話題となっていた。

「つまり、あのストーカー男がそうだっていうの?」

「藍華ちゃん、アマントさんだよ」

藍華は、記事となった新聞を見ながら、少々納得がいかないといった表情になっていた。

「人ってわからないものねぇ」

「そうだねぇ」

「それでナニ?灯里には、そういうのを送ってきたってわけ?」

灯里の手元には、一通の封筒が届いていた。

中には、笑顔いっぱいの灯里の写真が一枚入っていた。

そして、その裏にはこう綴られていた。

「ネオ・ヴェネツィアで見つけた宝物 それはあなたの笑顔」

灯里はそのことばを声に出して読んでみた。

「あんたさぁ、よくもまあ、声に出して読めるわよね」

藍華は呆れた顔で灯里を見た。

「だって、そう書いてあるもん」

「そう書いてるからって」

灯里は、その写真を見ながら、うれしそうにほほえんだ。

「でもさぁ、そんな人だったのなら、誰か知らなかったの?」

「なんかねぇ、アリスちゃんが言ってたんだけど、アラトリアさんは知ってたんじゃないかって」

「あの小生意気なお嬢様が?」

「うん。もしかしたら、作品として発表するのも、アラトリアさんが勧めたかもって言ってた」

「だから、あの合同結婚式のとき、専属カメラマンとかに任命されたって言ってたわけなの?」

藍華は腕を組んで、眉間にシワを寄せていた

「あのお嬢様は、いったいなんなの?」

 

 

「それで、結局のところ、どうするおつもりなんですか?」

アリスは、とにかく困り果てた顔のアムネジアにたずねた。

「それが、あの~、私もあまり詳しいことまでは知らされておりませんので」

「そうなんですか。そういうことなんですね」

「ア、アリス様~」

「ヘンな声、出さないでください!」

「申し訳ございません」

アムネジアは消え入りそうな声になっていた。

「とにかく、もうウンディーネは諦めた、ということでいいんですね?」

「諦めたと言っていいのかわかりませんが、先ほどもお答えしました通りですね、ブライダルの方にご興味を抱かれたというわけで」

「ブライダル」

アリスは、周りの人が思わず振り返るほどのため息をついた。

「はぁ~~」

オレンジぷらねっとの廊下の隅で、二人は話していた。

その様子は、誰が見ても、明らかに怪しく思える組合せと言えた。

特にアムネジアは、辺りをキョロキョロ見回していて、どう見ても不審者にしか見えない状況だった。

「あの~、それで、アリス様?」

「なんですか?」

「私は今後どのようにすればよろしいのでしょうか?」

「どうもこうも、アラトリアさんが面倒を見るんじゃないんですか?」

「アリス様~~~」

「ちょっと、その声!変に思われるので、やめてください!」

「私は、これまでも、そして、これからも、オレンジぷらねっとの社員として」

「好きにすればいいじゃないですか?私にどうこうできる権限なんて、そもそもありませんから」

「アリス様~~!一生ついて行きますぅ~~!」

「その声!」

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