ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

33 / 41
第33話

「後輩ちゃん、決まった?」

「いえ、なんにも決まってません」

「じゃあ、どうすんの?」

「そんなの、私に聞かれても困ります」

「はぁ~」

藍華とアリスは、ふたりそれぞれのゴンドラの上に立っていた。

ゴンドラを止め、距離を縮めると、改めて話し始めた。

「だって藍華先輩?私、言いましたよね?」

「なんか言った?」

「ちゃんと言いました!」

「わかってるわよ!そんなに言わなくても!」

「じゃあ、なんでこんなことになったんですか?」

「それはなんというか・・・」

藍華は腰に手を当て、アリスはだらりと手を下げて、ふたりして途方に暮れていた。

ふたりはARIAカンパニーまでゴンドラで行き、そこで合流するつもりだった。

だが、前日までに、息抜きのための小旅行の行き先を考えるつもりでいたが、忙しさもあって、結局当日の朝を迎えてしまったというわけだった。

「それに、これは灯里先輩を元気付けるためでもあるから、サプライズにしようって、藍華先輩が急にハードルを上げたんですからね。私はあくまでも、行けるところで考えましょうって言ったんですから」

「わかってるわよ!そう何度も言わなくてもいいでしょ!」

「ちょっと、藍華先輩!朝から声が大きいですよ!」

藍華は思わず手で口をふさいでいた。

岸では屋台の準備を始めているおじさんが、不思議そうな顔で藍華たちの様子を見ていた。

 

「それで、どうするの?」

灯里は、カウンターの中からデッキに立っている藍華とアリスを、キョトンと眺めていた。

ふたりは気まずそうに、灯里には目を合わせないようにしていた。

「うん、そうねぇ」

「そうですねぇ」

「なに?ふたりしてヘンな感じなんだけど」

「あのね、とりえず、その辺をブラッとしながらさぁ・・・」

「考えようかなんてですね・・・」

「はぁ」

「あははは」

「はははは。今日はいい天気だよね」

「つまり、なに?」

観念したように、藍華が大きなため息をついた。

「ごめん、灯里。実は話してた小旅行の件なんだけど、まだなんにも決まってないの」

「なんだ。そんなこと気にしてたの?そんなの別にどこでもいいのに」

「どこでもは良くないよ。だって、灯里を誘ったのは私の方だし」

「そんなに気をつかわないで。ほんとにどこでもいいんだから」

「でも灯里先輩は、三人の思い出の場所がいいって言ってたとか」

「そうだねぇ。でも三人でこれから行くんでしょ?そしたら、それが思い出の場所になるんじゃない?」

「先輩、なんかいい感じです」

「恥ずかしいセリフ・・・」

「藍華先輩?途中で止まってますけど」

「もういいの!」

 

三人は、ARIAカンパニーにある予備の黒いゴンドラに乗り込んだ。

「このゴンドラに乗るのも久し振りですね」

「そうだねぇー」

「ぷいにゅい!」

アリア社長が灯里の膝の上で笑顔いっぱいになっていた。

「いつものプリマ用のゴンドラだと目立つからね」

「藍華先輩、いいアイデアです」

「そう?」

藍華はオールを手にすると、グイっと一掻きした。

隣あって座っていた灯里とアリスは、その勢いで背もたれに軽く押し付けられていた。

床に降りていたアリア社長は、そのままスライドしていた。

「ぷ~い~にゅ~い~」

そして、順調に進み出したゴンドラは、岸を横目にゆっくりと進んでゆく。

「こんなにもゆったりした気分でいられるのって、どれくらいぶりかしらね」

「そうだねぇ~」

「やはり、みんながプリマになる前くらいでしょうか?」

「確かにそれくらいかもね」

「そうだねぇ~」

「鼻の長い動物は?」

「そうだねぇ~」

「象でしょ!」

「そうだねぇ~」

「牛の鳴き声は?」

「もうだねぇ~」

「ちゃんと答えてます」

「じゃあ、オールをさばくことは?」

「そうだ、ねぇ~」

「もうやめよう」

「そうですね」

「そうだねぇ~」

ゴンドラは、少し狭くなった運河へと入っていった。

「あんまり賑やかなところじゃなくて、のんびりできるところの方がいいと思うんだけど」

「私もそれでいいと思う」

「私も灯里先輩に同感です」

「じゃあ少しこのまま行ってみるわね」

するとゴンドラは、より一層狭いところへと入っていった。

「あれ?珍しい取り合わせだねぇ」

三人がよく通っていたパン屋のマスターが岸を歩いていた。

「お久し振りです!」

「今日はなんなの?休み?」

「はい!気ままな小旅行なんです」

「それはいいねぇ。うらやましいよ。そういえば灯里ちゃん?こないだの試作品の味、どうだった?」

「はい!とってもおいしかったです!」

「それは良かった!」

「えっ、ちょっと待って!なんで灯里だけ?そんなのズルい~!」

「先輩だけ抜け駆けなんて、許せません!」

「だってぇ~たまたまだったんだも~ん」

「ハハハハ。それなら、みんなでまた来ればいいんじゃないの?」

「それができれば苦労しないんですけどねぇ」

「ほんとです」

「そんなに忙しいの?」

「そうですねぇ。お陰様で」

「さすが、ネオ三大妖精の異名は伊達じゃないんだ」

「な、なんですか、それは?」

「本人さんたちが知らないの?あの水の三大妖精の教え子たちだって噂になってるよ」

「灯里、知ってた?」

「知らないよ」

「後輩ちゃんは?」

「私も知りませんでした」

三人はお互いの顔を見ながら、唖然としていた。

「ところで、その小旅行の目的地はどこなの?」

「特に決めてはいないですけど」

「そうなんだ。なんか三人の姿を見てると、宝探しでもやってるのかと思った」

「宝探し・・・」

三人同時にその言葉に反応していた。そしてお互い顔を見合わせた。

「それだ!」

「それです!」

「それだね!」

「ぷいぷい!」

パン屋のマスターは、キョトンと目を丸くしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。