ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

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第39話

灯里は、ARIAカンパニーの一階のテーブルでPCに向かっていた。

「アリア社長?」

「ぷい?」

「新入社員募集って、どこに出せばいいんでしょうか?」

「ぷいにゅ~」

アリア社長は、灯里の問い掛けに、腕を組んで首をかしげた。

「やっぱりこういうときって、ゴンドラ協会とかなんでしょうか?」

灯里は、ポカーンと天井を見上げていた。

「ちゃんとアリシアさんに聞いとけばよかったですね」

「ぷいにゅい」

「ふぅ~」

ため息をつくと、頬杖をついて正面の壁をぼんやりと見つめた。

 

灯里は、ふと藍華が言った言葉を思い出していた。

 

「灯里のまわりで起きたいろんなことが、灯里を中心に回り始めてる」

 

藍華に言われた時はピンときていなかったその言葉が、様々な人との出会いを通じて、その意味をわかりかけていた。

 

灯里の周りでは、出会いの数だけ、いろんな出来事が生まれていた。

それは、このネオ・ヴェネツィアで過ごす日々そのものだった。

そしてそれは、みんなも同じはずだった。

アリシア、晃、アテナ、藍華、アリス。

そして灯里自身も。

その事をわかり始めたとき、進むことをためらっている自分に気づかされた。

みんなも同じように進んで来たはず。

6人で再会した、あのサン・マルコ広場でのみんなの笑顔を見たとき、灯里は自然と勇気が湧いてくるのを感じていた。

 

ひとりじゃない。いつも一緒にいるから。

 

その日、朝目覚めて外を見たとき、朝日に照らされた海がとてもきれいで、それはいつもと変わらないはずなのに、とてもすがすがしい気分だった。

それはまるで、アクアの海に背中を押されたかのように、心の中にわき上がっていた。

 

「よし。決めた」

 

灯里は、いつものように手早く掃除をすませると、アリア社長と食事をし、その日のスケジュールを確認した。

そして、朝起きたときの気持ちをそのままに、PCをテーブルに用意した。

「えっと・・・」

だが灯里は、ポカンとPCを見つめていた。

「そう言えば、私って、何を見て応募したんだっけ?」

その時、メールの到着を知らせる音が鳴った。

「誰だろう・・・」

 

 

灯里さん

 

 

お元気ですか。

 

 

「アイちゃんからだ」

 

 

灯里さんのことだから、私になんにも言わずに、ARIAカンパニーの新人募集を出そうとしてるんじゃないですか?

 

 

「はひっ!なんでわかったのぉ~?」

 

 

多分そうじゃないかと思ってメールしました。

 

 

私の方は、お父さんやお母さんにちゃんと話をしています。

まだ、承諾をもらってはいませんが・・・

 

 

でも私の決心は揺らぐことありません。

 

 

すでに決定事項です!

 

 

ですので、その募集は却下ということにしておいてください。

 

お願いします。

 

 

それから、ちょっとした贈り物を送りました。

 

とりあえず受け取っておいて下さい。

 

 

「贈り物って、なんだろう」

 

 

その時、ノックと一緒にドアの外で呼び掛ける声がした。

「はーい。少々お待ちくださーい!」

ドアを開けると、段ボールを抱えた配達員が立っていた。

「お届け物です。ARIAカンパニーの水無灯里さんでよろしいですか?」

「はい、そうです!」

灯里はとりあえず、部屋の中に置くように伝えた。

「えっと、サインですよね」

「まだあります」

「あっ、そうなんですか」

配達員は段ボールをもうひとつ、中へ運んだ。

「ご苦労様です。それじゃあサイン・・・」

「まだあります」

「はひっ!」

もうひとつ、段ボールが持ち込まれた。

「あの~、まだあるとか・・・」

「これで最後です」

「はあ」

灯里は積み上げられた段ボールを、ぼおーっと眺めていた。

「あの、サインを」

「は、はい!」

配達員が去ったあと、段ボールの差出人を確認した。

「愛野アイ・・・アイちゃんだ!」

 

その時、またメールの音が鳴った。

 

 

追伸

 

とりあえず、そちらへ行った時のことを考えて、当面必要そうなものを先に送りました。

 

よろしくお願いします。

 

 

アイより

 

 

「アイちゃん?これって、贈り物って言うの?」

 

しばらくの間、1階の片隅に、その段ボールは積み上げられていた。

ARIAカンパニーにやって来た者たちは、それぞれに疑問を口にした。

 

「あのさぁ、灯里?引っ越しでもするの?」

藍華は眉間にシワを寄せて聞いた。

 

「余った服をオークションにでも出すつもりなんですか?」

アリスは、なんか良からぬ物でも見るように、その段ボールを見てたずねてきた。

 

「灯里ちゃん?燃えないごみは、第一と第三の水曜日よ」

アリシアは、やさしい笑顔だったが、触れてはいけないことを、触れないようにしているような素振りだった。

 

「アリシアさーん、わたし恥ずかしいこと、なんにもありませんからぁ~~!」

 

そんなことが続いたことから、灯里は段ボールを2階へ置いておくことにした。

「はへぇー。疲れましたぁ、アリア社長~」

「ぷいぷいー」

「アリア社長も少し手伝ってくれましたもんねぇー」

「ばいにゅーい!」

段ボールを持ち上げたアリア社長は、階段の三段目で、汗をダラダラかいてへたりこんでいた。

しかし、そこはアリア社長。

灯里の言葉に、自慢げに汗をかく仕草で応えていたのだった。

 

 

灯里は、アイのメールを受けて、新入社員の募集を出すことを一旦保留ということにしていた。

 

「灯里ちゃんがそれでいいなら構わないわよ」

 

アリシアからも理解を得られたことで、そうすることで落ち着いていた。

灯里自信、これまであった迷いが吹っ切れて、気持ちを切り替えることができ、これまで以上に仕事に打ち込めるようになっていた。

 

あとはその日を迎えるまでの時間を過ごすだけだった。

 

「それって、なんかあるの?」

「うーん。特にはないような・・・」

「そうでしょうね。灯里?あんたもだけど、このARIAカンパニーに、なんかいるかって言われたら、いまさらだけど・・・」

「あっ、でも、あるよ!」

「なにがあるの?」

「アリア社長の食べ物の好みとか、オムレツの固さはどれくらいがいいとか」

「あんたが普段から気にしてることって、そういうことだったんだねぇ~」

灯里は、カウンターの外から頬杖をついて眺めている藍華を見て、照れくさそうに笑っていた。

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