ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

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番外編

「お腹すいたぁー」

アイは手を洗ってテーブルについた。

そして、テーブルの上の様子に思わず声をあげていた。

「灯里さん特製のオムレツだぁー!」

早速食べようとオムレツにナイフを入れようとしたが、ふと手が止まった。

「アイちゃん?どうしたの?」

「実は、オムレツを見て思い出したことがありまして・・・」

「なに?どんなこと?」

じっと動かないアイを見て、灯里は心配そうにたずねた。

「今朝なんですが、夢を見たんです」

「夢?どんな?」

「私がアリシアさんにオムレツをご馳走する夢、なんですが・・・」

「アイちゃんがアリシアさんに?」

「はい、そうなんです。それですごく張り切って作ったんです」

「へぇー。そうなんだぁ」

「アリシアさんもオムレツが大好きだということで、とても期待してもらってたんですけど・・・」

「けど?」

「アリシアさん、ケチャップがダメだって言い出して」

「アリシアさんが?ケチャップ?」

灯里はお腹と口を押さえて笑いだした。

「灯里さん!笑い事じゃないんです!」

「だって、アリシアさんがケチャップダメって、なにそれ?」

「ホントなんです。それも真剣に言うんですよ」

「それでアイちゃんはどうしたの?」

「しょうがないから、スプーンで一生懸命こそいで取ったんです!」

灯里は笑いが止まらなくなってしまった。

真剣にケチャップに文句を言っているアリシアと、必死になってケチャップをこそいでいるアイ。

おかしいやらほほえましいやら。

「なんでそんなことになったのぉー?」

「そんなの、私にもわかりません!」

アイは納得いかないといった表情だったが、オムレツを食べ始めた。

「あっ、おいしい」

「そう?機嫌治った?」

「はい、治りました」

「よかった」

灯里はアイのにこやかな表情に思わずほほえんでいた。

だが、次の瞬間、また笑いが込み上げてきた。

「灯里さん!」

「アイちゃん、ごめんごめん」

だが、アイも灯里につられて、こらえきれずに笑いだしていた。

しばらく、オムレツどころではなくなってしまった。

「でも、アイちゃん?せっかくだから、冷めないうちに食べてね」

「はい」

そう返事をして、アイは笑いをこらえながら、切り分けたオムレツを口に入れた。

「あらあら、楽しそうね」

「アリシアさん!」

「んぐっ」

突然のアリシアの登場に、アイがのどをつまらせた。

「それにおいしそうな匂いね」

「アイちゃん、大丈夫?」

「あら、どうしたの?」

アイはコップの水をごくりと飲み干した。

「はぁ~」

「驚かせちゃったのかしら?ごめんなさいね」

「い、いえ、大丈夫です」

「アリシアさんもいかがですか?」

「オムレツ?そうねぇ。いただこうかしら!」

「じゃあ早速作りますね!」

灯里はキッチンへ入って行った。

アリシアは、アイの横に座っていつものやさしい笑顔で話しかけた。

「アイちゃん、どう?多少は慣れたかしら?」

「はい!だいぶ慣れてきたと思います・・・」

「ん?」

アリシアは、アイが返事をしながらキッチンの方を気にしていることに気がついた。

「何かあるのかしら?」

少しして、灯里がオムレツを持って戻ってきた。

「まあ、おいしそうねぇ」

オムレツの上には、しっかりとケチャップがかかっていた。

「灯里さん!」

アイが大きな声を出した。

その手には、スプーンがしっかりと握られていた。

驚いているアリシアのそばで、灯里はそのアイの様子に笑いが止まらなくなってしまった。

「どうしたの?灯里ちゃん?アイちゃん?」

「だから言ったじゃないですか、灯里さん!」

「アイちゃん?だって、それ、夢なんでしょ?」

「それはそうですけど・・・」

「ねえ、ちょっと、どうかしたの?」

握りしめたスプーンを離そうとしないアイは、アリシアの前に置かれたオムレツのケチャップをじっと見つめたままだった。

その横でアリシアは、目を大きく見開いてその様子に目を奪われていた。

そして灯里は、その二人の様子に、お腹を押さえて笑いころげていた。

 

 

「そういうことだったのね」

アリシアはようやく目の前で起こっていることを理解できて、安堵の表情になっていた。

アイはばつが悪そうに、顔を赤くして照れていた。

「灯里ちゃんは笑ってるのに、アイちゃんはすごく真剣でしょ?何が起こったのか心配しちゃったわ」

「すみません、アリシアさん」

「いいのいいの。事情さえわかれば、納得できるしね」

「でもアリシアさん・・・」

灯里は、また笑いが込み上げそうになっていた。

「灯里ちゃん?なんか、それってどうなの?」

「だって・・・」

「そうですよ、灯里さん!」

「ごめんごめん」

そう言いながら、灯里はお腹を押さえていた。

「すみません、アリシアさん。よかったら作り直してきましょうか?」

「そこまでしなくて大丈夫よ。せっかくだから、このまま頂くわ」

アリシアは、改めてそのケチャップのかかったオムレツにナイフを入れた。

すでにスプーンをテーブルの上に戻していたアイだったが、じっとアリシアの様子に目が離せないでいた。

灯里には、その様子がおかしくてどうしようもなかった。

「ん、おいしいわ。灯里ちゃん、また腕をあげたんじゃない?」

「そうですか?ありがとうございます!」

じっと見つめるアイに気づいたアリシアは、にっこりとほほえんだ。

「ね?わかった?わたし、ケチャップは大丈夫だから」

「はい、そうですね」

「だから、アイちゃん?今度アイちゃんのオムレツを食べさせてくれる?」

「私ですか?」

「ええ。アイちゃん特製のオムレツ、食べてみたいの♡」

「無理です」

「ええー!なんでぇー?」

「だって灯里さん、私、自分でオムレツ、作ったことありません!」

「そうだったのぉー!」

「でもアリシアさんのためなら頑張ります!」

「あらあら、そんなに無理しなくてもいいのよ」

「いえ、そこはARIAカンパニーの一員として頑張らないと」

「そうなの?じゃあ、その時はお願いしようかしら」

「私も食べたーい!」

「そうね。その時は灯里ちゃん、お先にどうぞ」

「ええー!なんですか、それぇ~!」




✳この回の話のアイデアは、過去、出演者による座談会でのトークを元にしています。大原さんと水橋さんとの会話が面白くて、引用させていただきました。予めご了承下さい。

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