ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

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第7話

「本日は数ある水先案内店の中から姫屋をお選び頂き、誠にありがとうございます。

お客様のご旅行が素晴らしいものになることを心よりお祈りしています。本日はありがとうございました」

藍華の明るく弾んだ声がカンナレージョ支店の船着き場にこだましていた。

「さあこれで一丁上がり!」

客を見送ったところで、パンパンと両手を打ち払った。

「お客様は豆腐か?」

藍華は、ハッとして後ろを振り返った。

そこには、やれやれといった表情で晃・E・フェラーリが立っていた。

「晃さん!どうしたんですか?」

「あのなあ、一応これでもチーフ・ウンディーネという肩書きなんだ。その私が、支店に顔を出して、何かおかしいか?」

「別にそういうつもりで言ったわけじゃないんですけども」

晃は、軽く咳払いをすると、改まった感じで話を切り出した。

「実は今朝なんだが、団体客の予約があったんだ」

「そうなんですか。忙しくなりそうなんですね」

藍華は何気なくいつものことだといった調子で言葉を返した。

が、次の瞬間、顔をこわばらせた。

「ちょっと待ってください、晃さん?わざわざ支店にまでやって来て話すということは、何かあるということですか?」

「確かに。あるといえばあるな」

「ギクッ」

藍華は、何かの攻撃から身を防ぐかのように、体をひねって両腕を顔の前でクロスさせた。

「なにやってんだ?」

「いえ。何か不吉な予感がしたもので。つい反射的に」

「いいか?」

「どうぞ」

「その団体客のツアーを企画した会社が、姫屋の新しく出来た支店に仕事を依頼したいといってきたんだ」

「はぁ?この支店にですか?なんで?」

藍華は眉を互い違いにして、困惑した表情になっていた。

「わからない。ただ、ハッキリとしているのは、藍華、お前を指名してるんだ」

「わ、わたしを指名?なんなんですか、それ?」

「う~ん、何か理由があるんだろうと思うが・・・」

晃も眉間にシワお寄せて考え混んでいた。

「ご祝儀ということも考えられなくもないが・・・心当たりはないのか?」

「そんなのありません」

「ほんとか?よく考えてみろ」

「う~ん」

「マンホームの賓客一行の件もあったわけだし」

「そうですねぇ。ちなみに、その団体客はマンホームからのお客様なんですか?」

「いや、そこははっきりしていないんだ」

「そうなんですか」

「とにかくだなぁ。状況によっては、本店からも応援は出すつもりでいる」

「ありがとうございます。助かります」

「しかし、なんか心配なんだよな」

「大丈夫です。任せといて下さい!カンナレージョ支店は、今、乗りに乗ってますから!」

「だからなんだが・・・」

 

 

「アリスさん、アメリア部長がお呼びです」

「はい、わかりました。すぐ行きます」

アリスは、夕陽に照らされたオレンジぷらねっとの船着き場で、先程まで使っていた自分のオールを丁寧に拭いていた。

それを所定の位置に立て掛けると、その足でアメリア部長の部屋へと向かった。

ドアをノックすると、中に入るよう声が聞こえた。

「お疲れ様。そこにかけて」

アメリア部長は、机の上の書類から顔を上げながら、アリスに声をかけた。

アリスは言われるがままに、そこにあるソファーに座った。

そしてアメリアは、テーブルを挟んだ向かい側に座り、こう切り出した。

「時間がないもんだから、早速本題に入りたいんだけど、いいかしら?」

「あ、はい。私は構わないですけど」

アリスは、いつものことだと思いつつも、少し戸惑いを表情ににじませていた。

「実は次回のナイト・パーティーの件なんだけど、何か聞いてる?」

「いえ、私はまだ何も聞いてません」

オレンジぷらねっとでは、ゴンドラを使った観光案内以外でもサービスを展開する目的として、主に若い世代を対象とした、ナイト・パーティーと題した催し物を開催していた。

水辺を利用した、ちょっとしたイベントだが、普段改めて話す機会のないウンディーネによるトーク・イベントやお酒を飲みながらのミニライブなど、まだ始まって数回しか開催されていないが、評判は上々だった。

特に、第一回のイベントには、シークレット・ゲストとしてアテナ・グローリィーが出演したこともあって、大きな話題となっていた。

「実は、次回のナイト・パーティーはサプライズ企画を考えているの」

「サプライズですか?」

「ええ。このナイト・パーティーを中心になって進めている運営企画室からの案なんだけど。最初は、結婚式という案があったのね。実際、そういう要望もあったらしくて、案件として実際に進めようとしていたらしいの。そうしたら、今度はプロポーズする機会に使わせて欲しいという問い合わせがあったっていうの」

「そうなんですか」

「そうなってくると、企画室も乗り気になってきて、いっそのこと、プロポーズのサプライズパーティーにしてみたらとなったわけ」

「はあ・・・えっ?やるんですか?そのサプライズ・パーティー」

アリスは、始まった頃に聞いていた話とは、なんだか違う方向に進んでいるような印象を受けていた。

夜のネオ・ヴェネツィアの魅力を紹介したり、リピーターを増やす計画など、最初の話では、水先案内店らしいことをやる筈だった。

「そうね。ほぼ決定ってとこかしら」

「そうなんですか」

「アリスさんは、あまり賛成じゃないようね」

「い、いえ、そんなことはありません」

アリスは、そう返事をしながらも、水先案内店とどう関連があるんだろうと、思わず言いそうになっていた。

「社内でもいろいろ意見はあるわ。それは十分承知しているつもり。今は、何が出来るか試してみようというところかしら」

「なるほど」

「そこでね、アリスさんにも協力してもらえないかということになったんだけど」

「私ですか?」

そもそも疑問に思っているアリスにとって、あまり気の進まない話になりそうだった。

「協力って、どういうことをするんですか?」

「そのサプライズパーティーの仕掛人になってほしいの」

「仕掛人?」

なんかイヤな予感がしていたが、まさに的中してしまった。

「何をしろというんですか?」

「しいて言うなら、愛のキューピッドってところかしら」

「はぁ?」

アリスは眉間にシワを寄せて、露骨に嫌そうな顔をした。

「そんな顔しないで、アリスさん。会社に協力すると思って引き受けて。このナイトパーティーをうまく軌道に乗せられるかどうかは、今が重要な時期だと思ってるのよ」

アリスは頭の中で、ティンカーベルのような、真っ白な衣装を身にまとった自分の姿を想像していた。そして、魔法の棒で、カップルのふたりにキラキラ光る魔法の粉を振りかけていた。

身震いしたアリスは、目を閉じて、頭の中で想像した残像を振り払うように、頭を左右に振った。

「とにかく現在の第一候補には、あなたの名前があがっているの」

「じゃあ二番目もあるということですか?」

いい情報を得たといった風に、アリスは勢い込んで聞き返した。

「いえ、まだアリスさんだけなんだけど・・・」

順位には、意味などなかった。

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