ポケットモンスターSPECIAL 12.n章(仮) 作:オラクス
Side X @ ミアレシティ
結局、オレたちはアサメに帰ることになり、トロバは研究所でティエルノとサナの介抱を続けると言った。相手がフレア団かもしれないなら、病院などに預けて目を離すわけにもいかないだろうという判断は正しい……と、思う。フラダリの息が強くかかっていたミアレなら特に。
解散する際に、トロバはいったん家で支度すると言って護衛の師匠と一緒に帰っていった。
となると当然、オレたちにも道中の護衛が付く訳で…
「ん?どうした?」
「…いえ別に。護衛、ありがとうございます。」
「さぁ、早いとこ帰りましょ!サラメ、お願いね!」
グリーンさんがリザードンを出して、サラメと共に飛び上がる。
アサメまで、大体1時間くらい。
その間、ずっと会話がないなんてことはなく、
「ほらほらエックス、サラメ!もっとスピード出しなさい!グリーンさんが気を使ってるわよ!」
「…サラメ、重いだろ。無理しないでいいぞ。」
「ワイ、リザードンはそこまで速く翔べる訳じゃない。」
主にワイちゃんが騒ぎまくっていた。素なのか、気丈に振る舞っているのか分からないけど…とりあえず、うるさい。
「いいんですよー!エックスに気を使わなくて!ほらエックス、リザードンの先輩に色々聞いておきなさい!」
「いや、だから聞くことな…んて…。…」
一応、ある。今さら気にすることではないが1つだけあった。
…まぁ、他に話題もないし、いいか。
「ワイ、エックスもこんな時に気を回すことが「図鑑所有者」…何?」
「グリーンさん、ポケモンの村でミュウツーと会ったとき、言ってましたよね。『カントーの図鑑所有者グリーンだ』って。名乗るのに使うにはあまり聞かない言葉ですけど、特別な意味でもあるんですか?」
「…」
沈黙。だが応えはすぐに返ってきた。
「ああ、カントーやいくつかの地方では、良くも悪くも通じやすい。」
「図鑑って、ポケモン図鑑ですよね。確かに便利ではありますけど、そんなに?」
ワイちゃんも会話に入ってくる。グリーンさんはああ、と一拍おいて、言葉を選ぶ様に続けた。
「前提として、持っている人数が少ない。カントーには4人いるが、これでも最多だ。俺の知る限りだがほぼ全員が何かしら一芸を持っていて、その道では有名な奴もいる。」
「へぇ~、じゃあグリーンさんも?」
「ポケモンの育て方が専門だ。今はそんな余裕がないが、機会があれば教えよう。」
「だってさ!良かったじゃない、エックス。」
「…ワイちゃんが聞いたんだからワイちゃんが教わってよ、めんどくさい。」
そんなこんなで襲われることもなくアサメに到着したオレたちは、Uターンするグリーンさんに挨拶して地面に降り立った。
そしてお互いの家に帰「ちょっと、どこ行くの?」…はい?
「どこって、家だけど。」
「…あのね、私たちが狙われてるのよ?
キミを1人にする訳にいかないでしょ。
護衛の四天王の人だって来るのよ?」
「…じゃあどうするのさ。さいさいのテントは今朝壊したばっかりだけど?」
「家に泊まりなさい。少なくとも、明日の朝まで。」
半ば予想していた回答が返ってきた。なので、用意していた返事をする。
「サキさんはどうするのさ。また巻き込まれるよ?」
「毎食お母さんのご飯のくせによく言うわね。事情を話してオッケーをもらう。それ以外にある?」
「………………………………分かった。
それは分かるから、せめて着替えは取りに帰りたいんだけど。」
決して反論出来ない訳じゃない。今のワイちゃんに何を言ったところで無駄だろう、という譲歩だ。有無を言わせない口調に負けたとかでは決してない。
「服ぅ?パジャマなんてアタシの「それは無理!…サイズ的にも、他にも。」…分かった。じゃあ今から行きましょ。」
何を言い出すんだこのお隣さんは。
新しくなった鍵を差し込んで家にはいる。まさかリフォーム初日からトラブルとは思わなかった。
オレの部屋は代わり映えしていない。このまま引き籠れるか、とも思ったが、やっぱりというかワイちゃんは一緒に入ってきた。
「ふーん、中から見るとこんなんだったっけ。
ほらエックス、早く。」
「そう言いながら家捜しするの止めてくれないかな、ワイちゃん。」
「だって最後にこの部屋に入ったの5年以上も前よ?懐かしくもなるわよ。」
「それは誰よりも分かってるから。ほら、もう終わったから。早く出よう。
…いやいや、窓から出ないで。」
服が入った袋を見せて、足早に部屋を出る。
家を出てワイちゃんの家に行くと、サキさんが出迎えてくれた。事情はミアレを出る前にワイちゃんが話していたらしい。泊まることも快諾してくれた。
夕ごはんをご馳走になったあとで、ドラセナさんが来た。
「一先ず、本物の証明ね。」
と言って髪のアクセサリーを外してオレたちに手渡してくれた。確かに見た目だけ変化するイクスパンションスーツには、実体のあるものを渡すのは出来ない芸当だ。
「私たち四天王は、アサメタウン全体を護衛することにしたわ。洗脳されていた人もいるし、他の人が絶対に狙われないとは言えないもの。」
「それがいいと思います。」
まだ襲撃者の目的もわからない中で、オレたちだけを狙う可能性は100%じゃない。サキさんや町の人たちが人質に取られたりする可能性を考えれば妥当だろう。
当面は四天王がローテーションで護衛を交代するそうだ。大体の内容を聞いたオレたちは、連絡用の通信端末(だいぶ古そうで、ホロキャスターの前身だと言っていた。)を貰った。使い方を教わったところで、ドラセナさんは家を出ていった。町の中央に陣取るらしい。
Side Y @アサメタウン
夜。シャワーも浴びて、寝る時間。…なんだけど。
「…エックス、あなた今日は寝ないつもりでしょ。心配なのは分かるけど、早く寝なさいよ。」
「ワイちゃんこそ。明日は始業式なんだから、早く寝たら?」
「寝れないわよ。サナとティエルノが襲われて、トロバや私たちも襲われるかもしれない。
そう考えると、眠れない。」
「それは弱気?それとも武者震いって奴? どっちにしてもらしくないね。」
アタシとエックスは、アタシの部屋で喋っていた。
アタシ自身はもちろん、エックスも不安や焦りを感じているのが口の端から伝わってくる。
「もしあの時みたいに、一瞬でアサメが消し飛んだらって思うと、罪悪感で押し潰されそうよ。」
「その辺はドラセナさんや、ワイちゃんが目覚ましで起きられるのを信じるしかないよ。」
アタシの不安を、エックスが軽口で返す。そんなやりとり。
それがしばらく続いて、やっぱりもう寝ちゃいそうになった頃。エックスが呟いた。
「そういえばワイちゃん。」
「…ん~?」
「ありがとう。」
「???…ああ、朝のやつね。どういたしまして。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
久しぶりにちゃんと聞いたその言葉は、そこそこあったかく思えた。