ポケットモンスターSPECIAL 12.n章(仮)   作:オラクス

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59巻読みました。このままのペースだと12章の単行本完結には間に合いませんが、気にせず続けます。

今回はエックスとワイの場面が並行して動いてると思ってください。


2日目②

Side Y @ミアレシティ

 

 

 

 今日は始業式とHRだけ。午前で学校を出て、ミアレに飛んでサナとティエルノのお見舞いをする…はずだった。

 帰り支度をしていると、

 

「ガーベナさん、あの男の子ガーベナさんの彼氏?」

「へ?アタシに彼氏?」

「朝一緒に来てたあの、赤い帽子に青い服の子!」

「あ、エックスのこと?違う違う、あれはお隣さん。それじゃあ―――」

「呼び捨てに"あれ"ときたか!相当深い仲と見た。」

「あの悪いけど、アタシ今日は「リザードン連れてたし、だとしたらスカイトレーナー仲間?」「え、本当?紹介してくれない?」

「悪いけど、今日は「今日じゃなきゃいいのね!」

「今日何か用事?はっ、デート!?」

「他にオトコが!ならやっぱりあの子を紹介―――」

「違う。お見舞「他にって、逆ハー!?許さないわよ!?」

「……………」

 

 時間が惜しい時に限って、やっかいな話題を持ちこまれた。そして―――その手の話にはよくあることだけど―――、一斉に拡散した。

 だけど、アタシは(正確には巻き込まれた15人も同じだけど、)2学期を何ヶ月も休んでいた身だ。今ここで無視して、同級生から距離を置かれると色々きつい。折角ミソラ先輩がスカイトレーナーとして認めてくれたのに、また友達が減るのは勘弁だ。

 

「ああもう、だからエックスは違うの!」

「"は"ってことは他にいるのね!?」

「チリーン、"まきつく"!

 ―――さあ、もう逃げられないわよ!吐きなさい!」

「ちょ、何よこれ!?

 けろけろ何とかして!お願い!」

「あ、こら逃げるな!」

 

 結果的に、ポケモンまで繰り出したちょっとした騒動になった。

 逃げている間に何度も何度も説明して、その内に時間が経ってしまい、今ミアレを守ってくれているズミさんと合流したのは予定よりも大幅に遅れた時間だった。

 その事を説明して謝ると、ズミさんは「青春!それつまり芸術なり!」とか何とかで、気にしてはいないようだった。この人のことはやっぱりわからない。

 

 

 それにしても、エックスが彼氏?無い無い。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 ミアレに着くとエックスがいなかった。残っていたトロバと何故かいたクロケアさんに聞くと、1時間くらい前にセキタイまで飛んで行ったらしい。

 何故アタシを置いていったのか、どこかから戻ってきたグリーンさんに質問すると、

 

「落ち着け。エックスとお前を比べて、襲撃されても生き残る確率が大きいのは手数の多いエックスだ。」

「落ち着いてます!でもエックス1人を―――」

「カルネやコルニ、案内のマチエールがいる。襲われても"テレポート"や"そらをとぶ"で帰ってくる。」

「じゃあ今からアタシも―――」

「何も出来ないもどかしさは俺も理解している。だからこそ落ち着け。今、お前が単独行動でここを離れてメリットは何も………おい待て!飛んで行こうとするな!」

「だからって心配しない理由にはなりません!」

「それに、エックスはお前以上に戦い慣れている。あいつや仲間の強さを信じて、今は他の仲間を護れ。

 ………それとも、特別何か気にかける不安な事でもあるのか?」

「そんなの、」

 

 仲間。そう言われて、ふと言葉に詰まってしまう。アタシがエックスを心配する理由。

 おとなりさんだから。幼馴染だから。同じメガシンカ継承者で、後輩だから。引き籠りだったから。他にもいろいろ。

 でも、それは昔のエックスで、これまでのエックス。5人組しか仲間がいなかったアタシ達の時のエックスだ。

 今は仲間が、守ってくれる大人が、師匠や兄弟子たちがたくさんいる。

 

「………………ん……ここは……サナ!」

「ティエルノ!気が付いた、大丈夫!?」

 

 アタシの考えごとは、その声で中断した。目を向けると、ティエルノが飛び起きてきょろきょろと辺りを見回していた。

 アタシとトロバが駆け寄る。

 

「トロバ、ワイちゃん。あの後僕は―――」

「シトロンさんが見つけてくれて、グリーンさんが2人をここ―――博士の研究所ね―――まで運んでくれたの。トロバ、お水とご飯!」

「あ、うん!待ってて。」

 

 トロバが準備してくれている間に、博士とグリーンさんが近くに来てこう言った。

 

「目が覚めたかい、良かった。」

「博士、グリーンさん。ありがとうございます。サナは―――?」

「まだ目覚めていない。だが、君と同じく大きな外傷は見当たらない。」

「………そうですか。」

「何があったかは夕方、全員が揃った時に聴く。

 丸1日寝たきりだったところ悪いが、それまでに体調を整えておけるか。」

「丸1日!?そんなに………分かりました。」

「ティエルノ。はい、お水。エックスが買ってくれたバゲットも置いておくから、食べられそうなら食べて。」

「ありがとうトロバ。エックスは?」

「ああええと、説明するね。エックスは今―――」

 

 トロバに後を任せ、一旦アタシ達は衝立の反対側に行く。

 

「そろそろ分かっただろう。今ここにいる戦力からお前が抜けると、手負い2人を守りながら戦えない。狙われる確率だって、単純に考えて向こうの倍ある。」

「………分かりました。」

 

 アタシのエックスに対する心配はともかく、感情論を取り除けば現状ではこれが最適だ(………そうだ。グリーンさんが言うには。)。

 釈然としないまま、時間だけが経つ。やることもなくサナの隣に座って頭をなでていると、

 

「お、戻ってきたか。」

「ただいま、クロケア。」

 

 マチエールちゃんが帰ってきた。……が、エックスたちの姿がない。

 

「エックスは!?まさか、誰かに―――」

「ううん。私だけ、送ってもらった。」

 

 聞けば、安全を考えて一足早く"テレポート"してもらったらしい。守りながら戦うより、継承者(見習い含める)3人だけで迎え撃つ方が戦いやすいのは確かだ。

 

「それなら、エックスたちは空路だ。

 戻って来るのを待つとしよう。」

「あ、えっと、これ。半分だけど渡してって言われた。」

「…これは、ファイルか。助かる。」

「何かしら情報があればいいけど………手分けして確認しよう。」

「あ、ボクにも手伝わせてください!」

 

 博士とグリーンが小さいケースを受け取って、元の大きさに戻して机の上に広げる。トロバも混ざって、今回の件と関係が有りそうな情報を探すみたい。

 アタシはマチエールちゃんに、何があったか聞くことにした。

 

「えーっとね、まずマチエールが案内して、それでさっき渡した奴を集めて、その後別の所をいっぱい探したの。でもあんまり無かったみたい。」

「襲われたりしなかった?皆無事?」

「大丈夫だったよ。でもドアとか色々壊してた。こうした方がいいんだ、って。」

「そう、良かった。」

 

 ひとまず安心する。後は無事に帰ってくるかどうかだけ。

 

「エックスのこと、心配?」

「もちろん心配よ。何か失礼なことしてないか、とか。もしかしたら襲われてないか、とか。」

「エックス、いい人?」

「いい人って?」

「んーっと、コワいことしない人なんだって。」

「それなら、とってもいい人。」

「へー。」

 

 そう、いい人だ。

 アタシたちをずっと怖いものから護ってくれたいい人。

 そう考えるとさっきまで感じていた不安も薄れてくる。

 エックスなら大丈夫。そんな気分になる。

 

「ありがとう、マチエールちゃん。」

「?どういたしまして。」

 

 全部スッキリした訳じゃないけど、何ヶ月か忘れていたエックスの頼もしさを思い出した。

 そう、エックスなら大丈夫。

 

「なんだ、お前ら遂にカレカノになったのか。めでてぇこった。」

「その話はもう聞き飽きました。」

 

 クロケアさんの余計な一言で、訓練校での徒労も思い出した。

 折角いい気分だったのを元に戻さないで欲しい。げんなりするから。

 

 

 

Side X @セキタイタウン

 

 

 

 サラメにオレとマチエール、サーナイトにカルネさん、ルチャブルにコルニさんがつかまり空をとぶ。

 移動中に、フラダリカフェの地下ラボで何があったかは大体聞いた。ほとんど事前情報通りだったそうだが、新たな情報もあったらしい。

 

「ルカリオが波動で探知したら、エレベーターに更に下の階があったの。」

「"はどうだん"でブチ抜いて降りて行ったら研究室みたいな部屋があって、中にはイクスパンションスーツの資料もあった。」

「グリーンさんと話してたのはそれですか。」

「ええ。…と言っても、使える情報はあまりに少なかったけどね。」

 

 だとしたら、セキタイのアジトにも情報が残っている可能性は薄い。にも関わらず、オレたちがそこへ行く理由は―――。

 

「スーツの奴のアジトを探し当てる。」

「そういうこと。スーツを操ってる誰かに返り討ちに遭う可能性を考えなければ、それがベスト。」

「次点で、"敵が使いそうなアジトを事前に潰す"こと。

 あのスーツは少なくとも、数発の"バレットパンチ"と"あてみなげ"を受けている。エックスくんがメガカイロスで頭部を破損させた時の様に、大ダメージを与えればスーツを壊すことは出来る筈。

 『居場所がわからない以上、整備と充電ができる場所を確実に叩く。』…半分くらいはグリーンさんとカツラさんの発案だけどね。」

「他のジムリーダーも、今はその方針。」

 

 オレの発言に、2人が補足する。なるほど、と感心する内容だ。

 

(エレザードのトレーナーである以上、電力は確保されるかも知れないが、やらないより戦いが短期で済む。

 ホントに戦い慣れしてるな、あのツンツンの人…」

「エックス、声に出してる。」

「…」

 

 すぐ後ろにいるマチエールに指摘され口を閉ざす。キミが言ったんじゃないか、ツンツンの人って。最初に。

 

――――――――――――――――――――

 

「見えた。あそこ。」

 

 マチエールが指さす場所。セキタイタウンの外れ、秘密基地の入り口に、オレは再び訪れた。 

 

「気をつけて。歩き方にいろんな決まりがある。」

「前に来たときは、床にワープパネルがあって。それでフラダリの目の前に飛ばされました。」

 

 ドアを"サイコキネシス"で動かしてもらって中に入る。

 先頭にマチエール、

 次に波動で探知できるコルニさん、

 ポケモンを一番多く持っていて臨機応変に対応をしやすいオレ、

 "テレポート"でいつでも逃げられるサーナイトを持つカルネさん、の順番。

 それぞれもこお、ルカリオ、エレク、サーナイトを出して周囲を警戒するが、通電もしていないせいか辺りに他の気配はない。

 通路の一番奥にあったエレベーターも機能していないので、マチエールの案内通りに進む。

 10分くらい歩くと、マチエールが被験者となっていたという部屋の前にたどり着いた。

 

「…どう、ルカリオ?何かいる?」

「………」フルフル

「じゃあ、入りましょうか。"サイコキネシス"!」

 

 ドアを動かして中に入る。

 中はいかにも実験室という感じで、いろいろな機材やファイルが乱雑に置かれていた。マチエールはその中に入ると、壁際に設置されている機械に近づいてこう言った。

 

「ここにあのスーツがあって、いつもここで着替えてた。」

「このケーブルが充電ケーブルですね。停電してますけど、一応壊しておきましょうか。」

「ええ、お願いするわ。私はここのファイルの情報を探してみる。コルニ、隠し扉とか、ありそう?」

「……なさそう。あ、でも、部屋の外に何かあったみたい。」

「ここが終わったらそっちに行きましょうか。エレク、"でんきショック"だ。

 …よし、よくやった。カルネさん、手伝います。」

 

 ケーブルが使い物にならなくなる程度に電気を流し、カルネさんとファイルを漁る。といってもこの場で読み込むことはせず、圧縮してまとめておく。

 それが終わると、ルカリオの探知した方向に進む。マチエールもここまでの道しか知らなかったが、特に罠やワープパネルが発動することはなかった。日頃から多くの団員が使っていた通路ということだろう。

 探知したのは広い部屋で、机の上に何かの設計図といくつかの部品が置いてあるだけだった。

 

「多分だけど、シトロンが監禁されてたっていう部屋ね。何だかの機械を作らされてたって話だし、広さも大体聞いてた通り。」

「作ってた機械っていうのは、多分ですけどフラダリが背負ってた機械ですね。1度だけ見たことがあります。」

 

 設計図をみてオレが言う。これ以上の情報はここには無かったので部屋を後にする。

 

 その後、シトロンさんが捨てられていたゴミ焼却場やぜるぜるが捕らえられていた吸収盤(アブソーバ)や、その管理設備があった場所を確認したが、いずれも最初の部屋ほどの情報は得られなかった。

 

「…ハズレね。これ以上は何もなさそう。」

 

 アジトの外、セキタイの南。古代の吸収盤跡の近くまで来てみたが、成果はなし。波動を使っても敵襲の気配はないらしい。

 

「これで全部ですか?」

「そうみたい。波動で探知出来ないとしたら、空気が"エアスラッシュ"とかで切り刻まれてる場所だけど、もしそうだとしたらもっと空気が動いてるはず。」

「収穫が全く無かった訳ではないわ。襲撃も無かったことだし、ミアレに戻りましょうか。」

「あ、じゃあアタシはここで。おじいちゃんがいるとは言っても、いつまでもシャラをそのままには出来ないもの。」

「ありがとうコルニ、助かったわ。………さて、マチエールちゃん、こっちに来て。」

「はあい。」

「サーナイト、お願いね。"テレポート"!」

 

 言った瞬間、マチエールの体が消える。

 

「エックスくんも。

 …と言いたいところだけどごめんなさい。連続では使えないの。」

「空路で構いませんよ。行きがそうだったのも人数の関係でしょうし。

 コルニさん、ありがとうございました。」

「じゃあね~。あ、継承式は予定通り!忘れないこと!」

「分かってますよ。それじゃあ。」

 

 そういってオレはサラメで飛び上がる。カルネさんも続いて飛び上がり、コルニさんはシャラシティの方向に飛んで行った。

 飛んでいる間、カルネさんは何も喋らず、圧縮したファイルを元に戻して読み込んでいた。オレは元々そこまで自発的に話しかけるのが得意ではないし、必要があればカルネさんから話しかけてくるだろう。情報共有も研究所に戻ってからの方が手間が少ない。

 

 そう思って、陽が落ち始める前にミアレシティに辿り着いたオレ達がミアレについて目にしたのは、

 

「………エックス、ご苦労様。」

「………何か、あったの?ワイちゃん。」

「別に。」

 

 何故か複雑な表情で不貞腐れているワイちゃんと、

 

「やあ、エックス。久しぶり。」

「気が付いたのか、よかった。」

 

 目を覚ましたティエルノと、

 

「怖かったぞ、お前の彼女。

 『エックスがフレア団の基地に乗り込んだ!?アタシも行きます!』って。

 引き留めても勝手に飛んでいこうとしたから、ツンツンの人が苦労してたぜ。」

「カ・ノ・ジョ・じゃ・な・い。」

「何だ、やっぱりまだ進展してねぇの「サラメ、"しっぽをふる"。部屋は燃やすなよ。」おい!"部屋は"って何だ俺はいいのか!おいよせ、止めろ!俺が悪かったから!屋内だぞ!」

 

 肩に手を置いて絡んでくるクロケアさんだった。

 ひとまず、きつめにあしらっておいた。まだ正当な継承者じゃないんだから、これくらいは言行に恥があってもいいだろう。

 




構成は一応、大分固まってます。文字に起こすのが遅いだけで。
次はまたトロバレポート形式で情報整理の回だと思います。+α出来たらいい、くらいで。

あと、前回の最後にいきなりラクツを出しましたがこれ以降の出番は予定にありません。
モブを出すには文章力が足りず、ハンサムよりも文字数が少なくなると思っただけなので。
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