ポケットモンスターSPECIAL 12.n章(仮) 作:オラクス
Side X @3番道路
「ここからは、私達が相手をします。」
カルネさんが来てくれた。
一瞬気が抜けてしまうが、保ち直す。今はバトル中で、気を抜いて勝てるような相手じゃないことは身に染みている。
そしてもう1人。
「ダイノーズ、"パワージェェェェェム"!
エックス殿、ドラセナ!無事か!」
「…ガンピさん、ありがとうございます。助かりました。」
2人目の四天王。カルネさんと一緒にミアレから来てくれた。以前はうるさく感じた大声も、今はとても心強い。
2人がドラセナさんとオレの前に立ち、それぞれのポケモンは
すると、
「―――ヵ、ルネ―――」
ポケモンへの指示以外で初めて、イクスパンションスーツが言葉を発したのをオレは聞いた。…AIの機能なのか分からないけど、相手にコミュニケーションをするつもりがないのは変わらずのようだ。
「ドラセナ、状況を簡潔に。
エックスくんはゲッコウガを!」
「分かりました。マリソとルットはサーナイトを援護してくれ!
けろけろは"かげぶんしん"!」
「"でんげきは"、"ほうでん"、"シグナルビーム"」
これでポケモンの数は4vs3。だけどオレは戦力の半分を失い、ルットも大ダメージを負っている。半ば戦力外だ。
指示を出して時間を稼いでいる間に、ドラセナさんが2人に状況を説明してくれた。
「今のところエレザード以外は繰り出していないわ。さっき"ほうでん"を放ったエレザードを3人で集中攻撃していて、それを"シグナルビーム"のやつがかんそうはだの特性を使って妨害してくる。
エックスくんの手持ちは3匹ひんしで、無傷なのはブリガロンとリザードンだけ。メガシンカも使い切ってる。
技は通話で聞こえていた通り。グリーンさんが攻めあぐねていたのもわかるけれど、バトルの腕は聞いていた以上よ。」
「了解よ。
エックスくん。連戦の所を悪いけど、ズミがアサメから到着するまで後3分ちょっとかかるの。
持ちこたえられる?」
「………何とか。」
ちょうど"あまごい"も止んで、相手に有利な状況は解消された。
グリーンさんも苦戦した、というのは痛いほど分かった。
今のオレは3分を凌ぐので精一杯だし、フルメンバーでも勝つ見込みがない。とにかく、動かなければ。
「マリソ、ルット、けろけろ。行くぞ!
"アームハンマー"、"ばかぢから"、"つじぎり"!」
「"サイコキネシス"!」「"ロックブラストォ"!」「"ばくおんぱ"!」
「"なみのり"、"かみなり"、"まもる"」
技と技がぶつかる。マリソたちの直接攻撃は届かず、相手の技も岩や衝撃波、念力に阻まれる。
技の威力は五分五分。
……ここまでエレザードだけで連戦して五分五分だということに、何度目かの危機感を覚えた。どうしてこんなに強いのにあのスーツを着ている?
「"""10まんボルト"""」
「………私に攻撃を集中するのは、メガシンカを警戒してかしら?
サーナイト、"はかいこうせん"!」
「次に備えろドラセナ!"ロックカット"!」
「オンバーン、"おいかぜ"!エックスくん、畳み掛けるから準備を!」
「分かってます!マリソ、"はらだいこ"!
ルットは"つるぎのまい"!
けろけろは"こころのめ"!」
相手はサーナイトを目標にしたようだ。3匹分の"10まんボルト"とフェアリータイプになった"はかいこうせん"が拮抗するが、徐々に押し負けはじめる。
でもオレ達も対策ができないわけじゃない。"はかいこうせん"がエレザード達を引き付けてくれている内に、反撃の準備を整える。そしてメガサーナイトに電撃が届く直前、
「今だダイノーズ、"ストーンエッジ"!」
「続いてオンバーン、"ばくおんぱ"!」
「けろけろ、ダイノーズとオンバーンに合わせろ!"ハイドロポンプ"!
マリソは"アームハンマー"!ルットは"ばかぢから"!」
今出せる全員分の最大火力を撃つ。岩と音波と水流の複合技は押し負けていた"はかいこうせん"を押し戻し、そのまま真ん中にいたエレザードに直撃した。そしてマリソとルットがかくとうタイプのわざで残る2匹のエレザードを攻撃して―――
「""めざめるパワー""」
「マリソ!ルット!」
わざの直撃とほぼ同時に、エレザードのえりまきからエネルギーが放たれた。
目の前でわざを浴びた2匹が倒れる。すぐにボールに収めたが、これでオレの手持ちはけろけろとサラメだけ。
対するエレザードは、大ダメージこそ与えたはずだがまだ闘える様だ。
「これでも、だめか…っけろけろ、"どろあそび"!」
「"""10まんボルト"""」
"はかいこうせん"の反動で動けないサーナイトに、今度こそ電撃が襲いかかり―――
「今よポリゴン2、"はかいこうせん"!」
「―――ロスター、"はどうだん"!」
「!エックス殿、左へ跳べ!」「へっ?…うわっ!?」
不意をついたもう1発の"はかいこうせん"がエレザードに直撃し、
遥か後方から飛んできた"はどうだん"の連射が別のエレザードに命中する。今の攻撃で2体が倒れ、"どろあそび"も相まって"10まんボルト"の威力が格段に落ちる。
…カルネさん、グリーンさんのポリゴン2の使える技を知ってるんだ。さすがチャンピオン。
遅れて、"はどうだん"が飛んできた方向からズミさんとブロスターの姿が現れた。水路を移動してきたのか、服が少し濡れている。そのことを気にも留めず、カロスを代表するトレーナー4人(と、オレ)は合流した。油断せずに相手を見据えながら言葉を交わす。
「申し訳ない、遅くなりました。」
「それでも攻撃は良いタイミングだったわよ。
ポリゴン2だけだったら拮抗していたでしょうから助かったわ。」
「"パラボ「けろけろ、"でんこうせっか"!」
相手が動く前に先制する。きゅうしょに当たったのか、それとも限界が近かったのか分からないけど、今の攻撃で3体目も倒れた。
相手の手持ちが打ち止めならスーツを捕まえるか撤退させることができたのかもしれないけど、そう甘くはないらしい。エレザードをボールに収めながら、別のボールを取り出している。
次はどんなポケモンを繰り出すのか。相手の手元を見つめていたその時、ふいに視界がぼやけた。……汗が目に入ったかな?全身から力が抜けてきた。バトルに集中していたせいで気づかなかったが、同時メガシンカで体力が限界だったみたいだ。心臓も鼓動が速くなる。
「カルネ!今のうちにエックスくんを!」
「分かってる!ゲッコウガ、エックスくんを連れて一緒に―――ゲッコウガ?」
「オレなら、まだ大じょ…くっ!?」
「無理をしちゃだめ。一旦退くわよ。ついてきて。」
けろけろも限界だったらしい。敵を見ながらも、オレと同様に膝をつく。…オレもここまでかな。
残ったサラメを繰り出す。悔しいが、ここにオレがいても邪魔だろう。けろけろのボールはワイちゃんと一緒に"テレポート"されてしまったので、オレを支えるようにサラメに乗ってくれた。
「サ、ラメ。頼む。」
「"かえん「逃さんぞ!ダイノーズ、"とうせんぼう"!」
「"みずのはどう"!さあ早く!」
相手はどうやら新しく手持ちを繰り出したらしいが、そちらを見る余裕はない。ガンピさんたちが足止めをしたらしく、飛んだサラメとオレたちを追ってくることはなかった。
――――――――――
飛ぶこと15分ほど。
けろけろに支えられてハクダンシティに降り立つ。鳥ポケモンやスーツ本人が追ってくる気配はない。
「ここまでくれば大丈夫みたいね。」
「すみません………ありがとうございます。」
「問題ないわ。それよりもこれを。」
ハイパーボールを2個差し出される。中身を覗くと1つは空。もう1つには、
「………ラルトス?」
「来る直前に、ボックスから引き出しておいたの。その子なら"テレポート"を使える。
ほとんど孵したばかりだから、さっきみたいな戦場では余波にも耐えられない上に行先まで一緒に行く必要があるけど。
とにかく、空のボールにゲッコウガを入れて、この子と研究所まで退いて。」
「はい。………サラメ、頼めるか?」
サラメが頷く。それを見て、オレは自分のメガリングを引き抜く。
「代わりにサラメを連れて行ってください。戦闘には出してませんし、リングがあればメガシンカもしてくれます。」
「………いいのね?なら、遠慮はしないわ。
サラメ、よろしくね。」
「お願い、します………ラルトス、"テレポート"。」
"テレポート"が始まる。が、ワイちゃんの時のように一瞬じゃない。時間もかかってしまうんだろう。
その間に、カルネさんはサラメに乗って飛んでいく。チャンピオンなら、同時メガシンカだって容易い筈だ。
けろけろをボールに入れてそんなことを考えていると、一瞬視界が暗くなる。そして次に目を開けた時には、
「…戻ったか。」
「良かった。大きなケガはしてないみたいだね。」
「「「エックス!」」」
「ティエルノ、トロバ、サナ…」
幼馴染たちの顔が映った。
だけど、ワイちゃんの姿がない。時間はあまり経っていないはずだけど………
「ワイPなら、お母さんに電話中。今日はこっちに泊まるって。」
「そっか………ラルトス、ありがとう。戻ってくれ。
サナ、いつ目が覚めたんだ?」
「さっき。ワイPが戻ってくる10分くらい前。
トロバから何が起きてるのか説明されて、グリーンさんに襲われた時の説明してる最中にワイPがいきなり現れたの。」
「そう…
えっと、グリーンさん。オレはどうすれば?」
「ここに"テレポート"してきた以上、お前を本物だと仮定する。
念のため、帽子をこっちに。………よし、本物だ。疑って済まない。
ワイからある程度の状況は聞いている。その後のことを知りたい。」
「はい。」
オレは話した。
カルネさんとガンピさんが来たこと、
ズミさんの到着まで時間を稼いだこと、
マリソとルットが倒されたこと、
ズミさんが来てエレザードを倒したこと、
隙をついてサラメで戦場を離れたこと、
ラルトスとサラメを交換してメガリングを渡したこと。
そして"テレポート"でここまで来たことを話すと、グリーンさんの質問タイムになった。
「四天王で脱落した者はいない、そうだな?大きなダメージを受けている者はどうだ?」
「本人はもちろん、手持ちもひんしになっていなかったはずです。
ドラセナさんのオンバーンはずっと戦っていましたけど、"はねやすめ"とか回復もしていましたから。
あ、あとカルネさんがグリーンさんのポリゴン2を使っていました。」
「それは構わないし、有効打でもある。
だとしたら、今は何と戦っている?」
「それは………ちょっと分かりません。
"かえんほうしゃ"を放とうとしたのは聞こえましたけど、その前にサラメが飛んだので。」
「"かえんほうしゃ"か…いや、今は一旦置いておこう。
ワイからも聞いたが、敵はお前たちと正面から相対したそうだな?
スニーキングやボールジャック、他の機能を使おうとはしなかったのか?」
「………いいえ、ポケモンへの指示だけで、動こうともしていなかったです。」
「……分かった。質問攻めにして悪かった。今夜はこの部屋で休んでくれ。
手持ちの回復なら、ワイの後になってしまうが預かっておく。」
そう言って、グリーンさんがオレのポケモンとけろけろが入ったボールを持って上の階に戻っていくのと入れ違いで、部屋にワイちゃんが入ってきた。疲れからか顔が暗い。
「エックス、大丈夫だった?」
「うん…でもごめん。けろけろを勝手に―」
「それはいいわ。置いていっちゃったのはアタシだもの。
アタシこそ、ごめんなさい。みんなに任せて1人だけ逃がしてもらって。」
「それはカルネさんにお礼を言って。
あと、これ。オレのはカルネさんに預けてるから。」
言いつつ、メガリングを返す。それを受け取ったワイちゃんがポツリと溢した。
「………負けたわね。ボロボロに。」
目を背けられない事実。オレもつられて本音を返す。
「………そうだね。フラダリなんか目じゃないほど、強かった。」
「アタシね、さっきお母さんと訓練校に連絡したの。」
「…訓練校も?あの電撃でどこか怪我したの!?」
「違うわ。痺れは博士が調合してくれた薬でもう大丈夫。………もしかしたら、またしばらくお休みします、って。
さっきのバトルで、ドラセナさんみたいにほとんど関係のない人たちでも巻き込まれるのが分かったのよ。なら、何処にいても変わらない。
訓練校にいたら、また先輩や皆が操られるかもしれない。
だから、この件が解決するまでのお休み。」
「そこは四天王やカルネさんに任せよう。あの人たちならあのスーツを倒して捕まえるくらい出来ると思う。
それに休んでどうするつもり?また挑んでも、結果は多分変わらないよ?」
「強くなるに決まってるでしょ。
師匠や、グリーンさんにもお願いして。
カルネさんや、四天王の人たちにも。」
「………」
ワイちゃんの決意は固い。こういう時、オレには覆せない事が多い。
(唯一の例外は引き籠っていたこと。それも結果的に自室から連れ出され、大冒険に発展した。)
だけど今回は、自分でも意外なことに、オレも同じ思いだった。柄じゃないのは分かっていたけれど、アイツを止めなきゃいけないし、何よりバトルで負けっぱなしなのはやっぱり悔しい。
「じゃあ、皆にお願いしようか。
オレも一緒に、強くなるから。」
「…いいわ。やりましょう。」
「サナも、ね?」「ぼ、僕も。」「全員で、強くなろう。」
ティエルノも、トロバも、サナも。その決意は、『5人の誓い 5つの誓い』と同じくらい大事なもの。
結局その晩は体に溜まっていた疲れも無視して、5人でどうすれば強くなれるかを考えて話し合った。
カルネさんや四天王、グリーンさんや師匠にまた指導をお願いするとか、ジムバッジを集めるとか、いろんな案が出た。
とりあえず明日、カルネさんからバトルの顛末を聴いて、時間があったらお願いするのが決まったあたりで、そのまま全員で雑魚寝をしてしまった。
四天王やチャンピオンが集まればあのスーツを負かすことや撤退させるくらい簡単だろう。そう思っていた。
だけどその翌朝、オレたちが目にしたのは。
「「「………………」」」
全身に傷を負い、意識を失った四天王の3人だった。
書く時間が取れないのでここまで。
後から追記します。(0815ちょっと追加しました。)