ポケットモンスターSPECIAL 12.n章(仮)   作:オラクス

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3日目①

 Side Y @ミアレシティ

 

 

 どうして、こんなことになっているのか。

 強くなると決意した翌朝。アタシは目の前の現実を受け入れられなかった。

 

「ズミさん、ガンピさん、ドラセナさん………」

 

 四天王が負けた。意識不明で、ベッドに横たわっている。怪我…特に、火傷がひどい。

 一緒に帰ってきたカルネさんは問題なさそうだけど、服が少し焦げている。

 

「いつの間に、こんなことに?」「皆さん、大丈夫なんですか?」

「全員、命に別状はないが、しばらくは絶対安静だ。

 ここに戻ってきたのは、エックスが戻ってきた2時間ほど後になる。」

 

 ティエルノとトロバの問いにグリーンさんが答えて、さらにカルネさんが引き継ぐ。

 

「サラメで駆けつける直前に、バトルをしていた場所で大きな爆発があったの。辺りに熱波が撒き散らされて、近づけなくなった。

 サラメに上昇気流を作ってもらって熱を取り除いて突入したら、この状態の3人が見つかったのよ。

 その時、ズミだけはまだ意識があったから、何があったか辛うじて聞いたんだけど……」

 

 そこでカルネさんは一度言葉を切って、作業台の上にある何かを指した。

 …グリーンさんもそうだけど、昨日よりも口調が荒っぽい。冷静にしゃべろうとしている分、普段より語気が強くなってる。

 

「『これ(バトルレコーダー)を確認して下さい。』って一言残して…気を失ってしまったの。」

「そして残っていた映像を…そこのディスプレイに映していた。今からもう一度再生する。

 エックスとワイ、図鑑は持っているか?オレの図鑑では認識できなかった。」

 

 言われて、すぐに図鑑を取り出す。グリーンさんに見せると、すぐに再生が開始された。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 そこに映っていたのはバトルの記録。エックスが膝をついていたので、ズミさんが到着した後の記録だってことがわかる。

 

 エックスとサラメが飛び去り、"とうせんぼう"で動けなくなる相手のカエンジシ。

 スーツは更にポケモンを2匹―――ヘルガーと、後で図鑑を確認したところ、コータスというらしい―――繰り出し、3人とバトルになる。

 ズミさんが主体で戦っている。

 少し映像の早回しをして、再生し始めてから20分くらいでブロスターがカエンジシを倒した。

 他の2匹も限界が近い様子。

 投降しろと呼び掛けるガンピさん。

 スーツは無言のまま7個目のモンスターボールを取り出す。

 現れたのは、巨大な赤いポケモン。

 そのポケモンは飛び出した瞬間にブロスターを踏み潰す。

 ガンピさんが2人に身を守れと叫ぶ。

 ダイノーズとチビノーズが4連続の"だいばくはつ"を起こす。

 元々バトルしていたスーツの他のポケモンは倒れたけど、赤いポケモンはダメージを与えられた様子はない。

 オンバーンが"ゴッドバード"で突っ込む。でも逆に、赤いポケモンに踏みつけられて身動きが取れなくなる。

 スーツが指示を出すと、赤いポケモンの腕を中心にして爆発が起こる。

 オンバーンも3人も至近距離でその衝撃に巻き込まれ、吹き飛ばされる。

 スーツがポケモンの背中に乗ってハクダンシティの方に去っていく。

 

 映像、終了。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 見終わったあと、しばらく何も言えなかった。バトルレコーダーが壊れなかったのは奇跡といっていいかもしれない。

 目線を落とすと手元の図鑑には、"ボルケニオン"という名前が表示されている。

 

「グリーンさん、これを。」

「ボルケニオン………体内で水蒸気爆発を起こすポケモンか。最後の爆発とカルネの言っていた熱波はその影響だな。」

 

「手持ちか、ボールジャックか…どっちだと思います?」

「確定はできないが、どちらかと言えば前者の可能性が高い。

 あの強さはゼルネアスやイベルタル、ミュウツーに匹敵するだろう。

 そしてそういった伝説のポケモンは、自らの意思でトレーナーに付き従う事もある。…逆に、トレーナーを見限ることもあるがな。」

「しかも、それだけじゃない。

 手持ちがエレザードだけかと思っていましたけど、それ以上に強いのがいる。」

「ああ。あの3匹の炎ポケモン、よく育てられている。

 四天王の手持ちとほとんど互角に戦っていた。

 ポケモンもトレーナーもレベルが高い。オレと戦ったエレザードも、お前たちとの交戦を聞く限り手加減されていた様だな。」

 

 エックスとグリーンさんが相手を考察していく。こんな圧倒的な強さでも、怯んでいない。

 

「ワイP、大丈夫?」

「…大丈夫。ちょっと圧倒されてただけ。

 グリーンさん、私たちはこれから、どうすればいいですか?」

 

 大事なのはこれからどうするか、だ。立ち向かうにしても、方法を考えなきゃ。

 そんなアタシに、グリーンさんが問いかける。

 

「お前たちは、どうしたい?」

「決まってます。アイツを倒す。アタシたちを狙う理由を聞き出して、こんな事を2度とさせないために。」

「勝てるのか?奴は1人で四天王3人を倒す実力者だ。ポケモンはもちろん、スーツが一機しかない確証も無い。オレ達や国際警察に任せたっていい。」

「勝てる様になります。アタシ1人だけじゃない。エックスも、サナもトロバもティエルノも一緒に強くなる。

 その為に、指導できる人が必要なんです。

 グリーンさん、カルネさん。お願いできませんか。」

「お前たちもそれでいいのか?」

「「「「はい!」」」」

 

「…どうする、カルネ。

 ………………カルネ?」

「………………」

「カルネさん?…あの、カルネさん?」

 

 映像を再生してからずっと黙っているカルネさん。口に手を当てて何かを考えている素振りをしている。

 ……やっぱり足手纏い、なのかな。

 そんな考えを知ってか知らずか、カルネさんの回答はどっちつかずだった。

 

「………グリーンさん、ちょっと良いかしら。」

「…ああ。構わない。

 エックス、ワイ。手持ちは全員回復しているから、ここに置いておく。リザードンとラルトスは交換しておいた。」

「ごめんなさい、ちょっと失礼するわ。

 皆の件は、私に伝手があるから連絡してみるわね。あと、師匠にも。

 皆はここで、どう強くなりたいか考えておいて。」

 

 そう言って、グリーンさんとカルネさんが下のフロアに移動する。とりあえず提案を却下されるということは避けられたらしい。が。

 どう強くなりたいか、って…どういうこと?

 

 

Side Green @ミアレシティ

 

 

「随分と抽象的な問いかけだったな。」

「半分は時間稼ぎよ、こうして話す為のね。

 もう半分は…何か1つでも、集中するきっかけが必要だと思ったの。

 夢を叶え始めたあの子達が、それとは別のことに打ち込むんだもの。師匠や貴方の修行なんてついていけるか心配だわ。」

 

 自分の修行、と言われて思い出す。キャタピーを一晩かけて捕まえ、進化に狼狽えていた少女。

 しかし今回は、それとは真逆だ。実戦を重ねるのが最短だと分かっている。

 

「師匠以外のツテ、という奴も時間稼ぎか?

 生憎、俺はこの地方に人脈なんて無いに等しいぞ。」

「そこは大丈夫。ちゃんとしたアテがあるわ。

 フレア団の息もかかっていない、個人的な知り合いが経営する場所よ。」

「…ならいいが。

 それで、話というのは?」

「1つ目は、戦った相手の手持ち。

 ♀のカエンジシ、コータス、ヘルガー…全て、パキラが使っていたポケモンよ。」

「なんだと?……だが本人は、国際警察の回復施設で意識不明の筈。

 クロケアにボックスを調べてもらうことは出来るが、それも誰が引き出したか分からなければそれまでだ。

 相手も馬鹿じゃない。そこから辿っていくのは望み薄と言っていいと思うが。」

「でもそう仮定すると、敵がフレア団の人間である可能性は高くなる。

 フラダリ以外でパキラに近かった人間、ということになるわ。」

「………一理ある。念のためクロケアに頼んでおく。

 それで、2つ目は?」

「2つ目は増援。」

 

 それはオレも考えていたこと。言い方を変えれば、オレ自身も増援の1人だ。

 誰が敵か味方か分からないカロス内部だけで解決よりも、カロス外部に連絡を取り、解決に足る能力を持つ人材を派遣してもらう。

 信用と戦力として十分足りていた四天王が再起不能である今、必要なのはそれだ。

 

「当事者として聞かせて頂戴。

 カロスに来た直後、フレア団の監視は常にあったかしら?」

「ああ。空港に降り立った直後からだ。」

「でも、カロスに入った全員を監視できるとは思えない。

 フレア団が貴方を察知した方法に心当たりは?」

「…恐らく、2回目の来訪だからだ。

 前回、メガシンカの修行に来た際はそんなものは無かった。

 その頃はフレア団の支配が終わっていなかったのか、ただの観光客としてスルーされたか………

 だが、師匠に接触した。そのことがフレア団の敵だと認識され、今回は監視の目がついた。そんなところか。」

「だとしたら、間違いなく入管局はフレア団の手に墜ちている。

 師匠や私、貴方の知り合いという時点でカロスに入れない可能性は高いわ。

 かといって、信用出来ない人間を連れてきても余計な心配をあの子達にかける。」

「…確かにそうだ。大人数の増援も同様に止められるだろう。だが、パイプが全て使えない訳ではない。

 そこは俺と博士に任せてくれないか。」

「………分かった。決まったら知らせて。

 私は師匠と伝手に連絡を取るわ。都合がつけば隠れ蓑になってくれるかもしれない。」

 

 連絡を取ろうとしてポケギアを取り出すカルネを呼び止めて話を続ける。

 

「もう一つ。最初の襲撃から昨晩までラグがあったのはどう見る。」

「私が考える可能性は大きく3つ。

 被験者の都合か、ダメージの整備と充電、もしくはシトロンくんの用意した網にかかって、焦って行動を起こした可能性。」

「そこは同意見か。礼を言う。」

 

 その後、博士にいくつか許可を取って、オレも連絡を取る。

 まずクロケア。パキラのボックスの確認依頼と、別件が1つ。

 

『おう、丁度良かった。エレザードの件だがな、1週間前まで遡ってみたが空振りだったぜ。』

「…そうか。同じような条件で、複数のポケモンを調べられるか?

 それともう1件、追加で依頼がある。」

『調べるほうは特徴があれば問題ないが、追加の依頼は内容によるな。』

「依頼の内容は―――――――――――――――――――――――。」

 

『…は?

 いや…それはいいけどよ、お前ら知り合いだったのか。そりゃ知らなかったぜ。いやマジで。

 それで、エレザードじゃなけりゃ何を調べんだ?』

「♀のカエンジシ、コータス、ヘルガーの3匹だ。

 元四天王のパキラが絡んでいる可能性が高まってきているから、特にレベルが高い個体を中心に調べてほしい。

 よろしく頼む。」

 

 電話を切る。

 

 次に、増援の件。

 カロス外の、自分やカロスの人間に繋がりが薄く、信頼がおけて、相応の実力を持つ。

 人脈は狭くないつもりだが、これだけの要件が揃っている人物を探すにはオレ1人では力不足だ。

 

「―――――という状況です。ご協力いただけないでしょうか?」

『…分かった。私の助手を1人送ろう。

 今、君が言った条件はすべて満たしている筈だ。』

「ありがとうございます。代替の人員は用意しますので。」

 

 運がいい。この電話を起点に心当たりを紹介してもらうつもりで連絡をしたが、思いがけず簡単に用件が済んでしまった。

 

 最後に、後輩たちが望んでいる修行のアテ。

 こればかりは旧知を頼る。今オレがカロスを離れたら、再度ここに戻ってくるのはほとんど不可能だ。

 経験が浅い彼らを実戦級に引き上げる上で最も有効な方法は、ポケモンとトレーナー両方のレベルアップ。これはカルネも分かっている筈だから、それとは別の方法を用意する必要がある。

 

『アタシたちに頼み事なんて、珍しいじゃない。』

「後輩のためだ。手段は選んでいられない。」

『はいはい。なら仕方ないわね。じゃ、手筈はこっちで何とかするわ。クリス達にも伝えておく。

 それだけハードなことさせるんですもの、帰ってきたら埋め合わせはしてもらうわよ?』

「いつもいつも、うるさい女だ。」

 

 だが、信頼できる仲間として。

 修羅場を共にくぐってきた彼女らと同等に信頼できる存在は、グリーンには祖父と姉くらいだ。

 

『うるさいついでにもう一つ言付け。協会からね。

 トキワジムだけど、立体映像の癖にメガシンカ使うなーって苦情が来てたそうよ。

 メガピジョットもメガフーディンも、ジム戦には強すぎるって。

 楽しんでるのレッドくらいじゃない?』

 

「………帰ったら検討する。」

 




ボルケニオンの描写については映画を参考に、技→人体への影響をポケスペレベルに落として(上げて?)います。

次回以降、過去の章のキャラや要素が多く盛り込まれます。
タグも増やしておきましたが、苦手な人は注意。
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