ナナー1 ぐらんぷりっ!! 作:neo venetiatti
ー クロスオーバー・カフェ ー
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませ~」
「ねえ悠希、なんか疲れた」
「ジュン、もう疲れたの?」
「うん。ちょっと」
「明日もシフト、入ってんでしょ?」
「そうなんだよね。バイト、久々だからなぁ」
「変わったげようか?」
「いや、そこはいいよ。お子ちゃまじゃないしね」
「そのお子ちゃまで思い出したんだけど。こないだ、ボクのことを中学生だと思って話しかけてきた人がいたんだよ。失礼な人だよねぇ」
「それならまだいいよ。私なんかさぁ、〈お母さんはどうしたの?〉だって。失礼過ぎる!」
「ボクたち、そこまでじゃないよ!ねぇ?」
「そうだよ!でも、それじゃあ、どこまでなの?」
「いやぁ、そこはなんの疑問もないでしょ?わたしたち立派な女子なわけだし」
「そうだよ!女の子は背丈じゃないよ!可愛さでは負けないよ!」
カランコロン♪
「いらっしゃいませ・・・ちょっと、あの女の子の頭はナンダ?」
「髪飾り?でいいんだよね、あれ」
「いや、はえてるとか」
「あ、あんな、恥ずかしげもなく、可愛さ満開って・・・」
「ボクたち、まだまだかもね」
「へぇー、結構いい感じのお店じゃない?」
「そうですね。最近オープンしたらしいですけど、さすがにキレイですね」
「ご注文はお決まりですか?」
「そうねぇ。初春は何にする?」
「私はこの紅茶とショートケーキのセットなんかいいんじゃないかと」
「ああ、セットね。じゃあ私もそれで」
「かしこまりましたー」
「ねえ、初春?」
「なんですか、佐天さん?」
「さっきのウエイトレスさんさあ、ちょっと可愛いかったね。いくつだろう?中学生かなぁ」
「そうですね。小さくて可愛らしかったですね」
「妹に欲しいー!」
「佐天さん?あんまり変なこと言わないで下さいね」
「でも見てたよ、初春のこと。不思議そうな感じだったけどね」
「ああ、そうですか。別にいいんじゃないですか?」
「まあ、そうだけどね」
「いちいち答える義務はありません!」
「初春、御坂さんと付き合うようになって、以前より言うようになった?」
「そうですか?」
「まあ、別にどっちでもいいんだけどね」
「そういえば、先日、白井さんが御坂さんと一緒にカフェに行ったときに、なんか、やたらとお手頃価格の抹茶アイスを薦めて来たって言ってましたけど。もしかしたら、ここじゃないでしょうか?」
「へえー、抹茶アイスか。聞いてしまうと、食べたくなるよねぇ」
「でも変な店だったって・・・」
「スミマセーン!お手頃価格の抹茶アイスがあるって聞いたんですけど」
「抹茶アイスですか?」
「はい。ありますか?」
「うちの店には、抹茶アイスなんてありませんけど」
「えっ、ないんですか?あれ、どういうことなの?」
「確かに白井さんが言ってましたよ」
「あのー、お客様?」
「はい?」
「どう言ったらいいのかなぁ」
「何?どうしたの、ジュン?」
「あのね、こちらのお客様が、お手頃価格の抹茶アイスはないですかって聞いてくるの。悠希、どうする?」
「ああ、それ」
「あ、あの、あるんですか?ないんですか?」
「それがですね、あるにはあったんですが・・・」
「何かあったのですか?」
「佐天さん?そんな都市伝説か何かみたいなこと、期待してもしょうがないですよ?たかが抹茶アイスなんですから」
「実は」
「えっ、なんですか?」
「それがですね?」
「はい!それが!」
「消えてしまったんです」
「ええっー!!!」
「ちょっと、佐天さん!」
「なんで消えちゃったんですか?」
「別のアルバイトの店員が、やたらとお客に薦めようとしたんですね」
「てことは、あったってことなんですか?」
「いや、それが」
「それが?」
「なかったんです!」
「ええー!!!」
「もう、佐天さん!」
「だって、初春?なかったんだよ、抹茶アイス!メニューにないのに薦めたって言うんだよ?それ、どういうことなんですか?」
「実はその店員は、京都出身の人だったんですけど。以前、あるお寺の境内にあるカフェに、そのお手頃価格の抹茶アイスがメニューとしてあったらしいんですね。どうもそれを忘れられなかったようで、東京へ来てからも、度々それを口にしていたと」
「そんな悲しい裏話があったなんて。グスン」
「佐天さん、泣くほどのことではないと思いますが」
「どうしてなの?初春は、こんな話を聞いて何も思わないの?」
「だって、抹茶アイスが忘れられないって、なんなんですか?」
「何かきっと思い出があったに違いない!そうですよね?」
「実は、その人も含めてなんですけど、私たちアイドルをやってまして」
「ええー!アイドルなんですか?」
「それ、ちょっと、私も聞きたいです!」
「初春、急に乗り気になって、どうしたの?」
「アイドルをやっている人と、こんな近い距離でお会いしたことないですから」
「確かにそうね。それで?」
「でも最近、長らく一緒に活動していたメンバーのひとりが卒業することになって」
「卒業なんですか?それは悲しいですね」
「はい。そこで思い出に二人で京都へ行ったらしいんです」
「つまり、卒業旅行ってことですね?」
「そういうことです」
「実は、ボクもあとから合流したんですが」
「あなたもですか?」
「でもそのお店、休みだったんです!」
「ええー!」
「いや、初春?なんであんたが、そこまで驚くの?」
「だって佐天さん!そんな悲しい出来事があるなんて!」
「そこで、かわいそうに思った店長が、メニューに加えようかとなったわけなんです」
「それでですか!最初からメニューにはなかったっていうのは、それが理由だった訳なんですね?」
「まあ、それはそういうことだったわけなんですが・・・」
「えっ、まだ何かあるんですか?」
「実は本当の理由が、後から発覚したんです」
「ええー!」
「いや、あの、初春?あんたの方が感情移入がスゴいんだけど」
「一体どういうことだったんですか?」
「本当の理由は」
「本当の理由は・・・ゴクッ」
「自分が食べたかった」
「はぁ?」
「いつでも食べたかったと。それでメニューにしてしまえ!と考えたわけです」
「なんなんですか?その人騒がせなことをするって!」
「その人は今もいるんですか、お店に?」
「はい、います」
「ええー!なんでですか?」
「その人、なぜかお客を引き寄せる力があるみたいで。その人が来てから、売り上げが伸びてるらしいんです!」
「すごっ!」
「それって、いわゆる、ひとたらしってやつじゃないですか?」
「ひとたらしって。初春、いくらなんなんでも言っていいことと悪いことがあるんじゃない?」
「すみません。確かに言い過ぎました」
「ごめんなさいね。この人、正義感が強いもんだから。つい出ちゃったのね」
「そうなんですか」
「いわゆるジャッジメントっていうやつ。あれをやってるの。そんな風に見えないかもしれないけど」
「佐天さん!余計な一言です!」
「そういえば、この前そんな人が来たようなこと、聞いたような」
「ボクも聞いた。なんか、ちょっと上から目線で、なんとかですの!ってやたら言うって」
「ああ、間違いないようですね」
「確かに」
「それでどうなったんですか?」
「そのままです」
「そうじゃなくてですね。結局、食べれるんですか?その抹茶アイスは!」
「いいえ。ですから食べれません」
「はぁ?」
「なんか、訳がわかりませんです」
カランコロン♪
「おはよー!交代来たよー!」
「みかりん、お疲れー」
「お疲れ様やねぇ。そしたら、早よ帰って!」
「言われなくても帰るよー!」
「冗談やで。いつまでもいてええよ」
「帰る帰る」
「遠慮せんでもええよ。わたし帰るし」
「帰りますって!」
「あっ、こちらのお客様、ご注文はまだですか?」
「い、いえ、注文はすでに」
「ほんなら、抹茶アイスはどうですか?今なら、お手頃価格で食べれますよー」
「ちょっと、どうする初春?」
「佐天さん。ここは勇気を振り絞って、注文してみてはどうでしょうか?」
「わかった。じゃあ、その抹茶アイス、ふたつ下さい!」
「はい、おふたつご注文ですね?」
「えっ、いけるの?」
「店長ー!ほんまに注文来ましたー!どうしますー?」
「ええー!」
「ちょっと待ててくれます?今すぐコンビニへ行ってきまーす!」
「なんですか、それ!!」
「だから、そんな都合よく都市伝説なんてないんですっ!」