インフィニット・ライダー(お試し版) 作:ナナシ
此処は日本の首都、東京——今の時間帯は月がよく見える午前一時——今の時間帯は寝る時間であり、起きている人間は限られている。しかし、とある無人のビルの中ではある異形な化け物達が徘徊している。
その姿は禍々しく、芋虫のようにも思える——バイオウイルスを注入されたかのような姿をしているが、三体おり、何かを捜しているようには思えなかった。
「あ——あ——、ゾンビのように徘徊しているな?」
そんな中、声をかけてきた人物が居た。異形の化け物はそれに気づくと、そこには二人居た。
どちらも全身黒い服——特殊部隊のように重装備で有るが武器はない——あるのは、腹部には変なバックルが有る。
中央にはくぼみが有り、左には刀らしき物があり、右には誰かの横顔が描かれていた。そして、彼等の手には、錠前らしき物が有り、片方はオレンジ——もう片方はブラッドオレンジらしき物が描かれていた。そんな中、一人が口を開く。さっき話していた人物でもあった。
「夜中は寝る時間、それともあれか? 食いもん探しか? それとも、交尾の意味で雌でも捜しているのか?」
そんな異形な化け物達を二人のうち、片方の人物は揶揄う。整った顔立ちに茶髪に黒目の青年がだ。
もう片方は瓜二つの容貌であるが、黒髪であり、片方の青年の言葉に呆れる。
「一春、そんなことを言うな、あれの見過ぎだ」
彼、一春に対してそう言う中、一春は少し揶揄う。
「あれは見てないよ? 見たとしても修正版で、無修正は、NO」
「あのな……それに隠れながら倒すのが役目だろう?」
「仕方ないじゃん……かくれんぼは俺の十八番じゃねぇし! かくれんぼはゲーム映像の中だけだし!」
「……ゲームは程々にな!」
二人は手に持っている、果物らしき物が有る錠前らしき物の横を軽く押す。音が鳴り響くる中、腰にあるバックルの中央にはめ込み、左にある刀で切るように押すと、果物らしき物が下へと開き、上は果肉が、もう片方の下には何かの人物が描かれている。
刹那、頭上からはファスナーが現れ、開くと、オレンジと、もう片方はブラッドオレンジが降ってきて、彼等の頭に、それぞれ嵌まる。二人の胴体や四肢——首から下全体が紺碧色のスーツに変わる。同時に果物が四方に開き、紺色の身体の上半身を防御する意味で鎧と化す。
紺碧色の身体にオレンジ色の鎧を纏い、三日月の型が有る兜を冠っている。片方は紺碧色の身体は兎も角、ヨロイは紅い、兜も紅い。正反対のようにも思え、瓜二つの兄弟に相応しいようにも思える。
その姿は、遥か昔に己の生き様を賭けて、主君の為、家族の為、国の為に戦い、散って逝った漢達の生きた証である武士の姿をしている。彼等はその祖先——否、その武士の血を引き継ぐ者達。
また、その姿は近未来の日本、つまり、今の時代の科学をも取り入れている。遥か未来の武士であるかのようにも思える。しかし、その姿を目撃したのは極一部。都市伝説のように語られ、架空の存在としか思われていない。
理由は、梟のように、夜中でしか活動していないからだ。彼等は梟——そう思われても仕方ない。目の前にいる異形の存在はミミズ、ネズミのような小さな獲物。
人に害を為し、恐怖させる存在。駆除するのが、彼等の役目だからだ。人知れずに、だ。
「いっちょ行くか! ってか!」
茶髪の青年が——赤い鎧の方の武士が腰に携えている。刀らしき武器を手に取ると、駆け出す。先手必勝と言わんばかりであるのか、異形の存在の一体を斬り捨てた。火花が散る中、即座に他の二体も斬り捨てる。
「俺の名は戦極一春! だが、今は鎧武Rと変わっているからな!」
赤い鎧の武士は、自らを鎧武Rと名乗り出る。鎧武は兎も角、RとはREDのRから取り、REDは日本語で赤——鎧が紅いからと言う理由でだった。
それを付けたのは一春自身であり、難しく考えたくないが為だった。そんな光景を、もう一人の鎧武らしき人物はRの言葉に呆れながら、加勢しようとする中、耳元にある声が聴こえた。
『一夏、近くにインベス達に襲われている少女がいる』
「なっ!?」
その言葉に鎧武は、一夏は戦慄する。しかし、鎧武Rにも連絡されたのか、彼は慌てる。
「女の子独りに集団で攻めるってか!? 異種姦みたいだなおい! それは嫌いだ!」
鎧武Rは異形の化け物を斬り捨てるとそう言って、今度はこう言った。
「殿は任せろってな! 俺独りでもこんな化け物、一体や二体——まあ、無双はしないけどな!」
鎧武Rは階段の方へと駆け出す。その後ろ姿を鎧武は眺めている——訳も無く、後の事を弟に任せ、連絡され、指定された場所へと向かうのだった。
「あ——あ——っ! これじゃあ、バイオハザードってか!」
鎧武Rは異形な化け物を相手にする中、ある場所へと向かう。
「や——い、や——い! のろまめ〜〜!」
鎧武Rは逃げなら煽る。挑発しており、その挑発に異形の化け物は奇声を上げながら追いかける。鬼ごっこのようにも思える中、鬼は異形の化け物で、ターゲットは鎧武R。鎧武Rは駆け上がると、
「バイオハザードだよ! 否、インベスハザードってか!?」
鎧武弐号は階段の踊り場から三体のインベスの一体を足蹴りする。インベス達はドミノ倒し、更には階段から転げ落ちる。
鎧武弐号はインベス達を見下ろすと、両手の人差し指を化け物達へと向ける。
「一片やってみたかったんだよね? 階段から突き落とすこういって……まあ、警察もんだけど?」
鎧武弐号は腰に携えている刀を、否、鍔のような部分には銃口が有り、それを化け物に向ける。
「まっ、これも正当防衛、ってか?」
刹那、鎧武弐号は刀の柄にある、銃の引き金のような物を引くと、鍔の部分にある銃口から銃弾が放たれ、化け物達を倒し、化け物達は爆発、四散するのだった。
「快、か——おぇっ」
鎧武弐号はこの行動を快楽として楽しんでいるようにも思えたが、突然、吐き気を感じ、口元を抑える。化け物から異臭がするのではなく、肉が見えたからではない。理由は、彼自身が良く知っていた。
「あ——あ——っ、男が言うと気持ち悪いな……まっ、俺が言ったから自業自得かね?」
鎧武弐号はそう言うと、先に向かった、鎧武と、鎧武に抱えられている女性の元へと向かうのだった。
同時刻。変身を解除した一夏は外に居た。異形の化け物を即座に倒していたのだ。同時にある女性を介抱している。長い水色の髪に可愛らしい顔立ちの少女が気を失っていた。服は白い制服であるが、どこの学校かまでは判断出来ない。
しかし、一夏は少女を介抱している中、後ろから、返信を解除した一春が両手を頭の後ろに当てながら笑っていた。
「月の見える場所から気を失っている女性に愛の告白? それともプロポーズ? 一兄も憎い事をするね?」
「…………」
「それとも寝ている人にあんな事や、こんな事でもするってか?」
一春は一夏に対し、軽く揶揄する。兄の行動に感心するのでは無く、単に揶揄している。その証拠に彼の表情は楽しんでいる。周りから見ればそう思われるだろう。しかし、内心、兄を心配している——理由は簡単、兄には幸せになってもらいたいからだ。
自分達は長い間、苦汁を嘗める日々を過ごしていたからだ。兄は自分を良く守り、自分も兄に助けてもらってばかりだった。今では思い出したくもなく、忘れたい過去。
彼の兄への揶揄も過去を思い出させないようにする為の行動。前を向いて欲しいが為の行動。弟が、自分ができる唯一の行動だった。一春の言葉に一夏は呆れる。
「一春、そんなロマンチックな出来事はないぞ? 後、最後は犯罪だ」
「そう? 最後は兎も角、ロマンチックじゃん? やっとの思いで最愛の人を救えた王子みたいでかっこいいよ?」
「……一春、恋愛映画は程々に」
「えっ? 俺が見てるのはアクション映画だよ? 恋愛映画なんて恋人同士が観る」
「それは偏見だ。そうしたら全ての人を敵に回すぞ」
一夏の言葉に一春はキョトンとする。
「えっ? 敵って、誰?」
「…………」
「一兄、誰なの敵って?」
「……非リア充」
「……ワォ」
一春は納得すると、そのまま何かを思うように踵を返す。
「どこ行くんだ?」
一夏がそう訊ねると、一春は肩越しで見ると、ニカッと笑う。
「そこら辺に自動販売機が無いかを見てくるわ。まあ、あればコーヒーかな?」
一春は笑う。しかし、その笑みは揶揄いの意味でもあった。一夏と少女を二人きりにさせる。いわば、吊り橋効果のようにする為だった。一夏は彼の言葉の意味を理解していない中、一春は何も言わず、自動販売機を探す意味でその場を離れるのだった。