インフィニット・ライダー(お試し版) 作:ナナシ
「ふざけんなよ〜〜スポーツ新聞にエロ記事ないじゃないかょぉ〜〜」
「ないよ、流石に時代が進むと、そう言った関連記事は法律で禁止になっているから」
「んだよ、また時代か? PTえぃ?」
「そうなるかもね? まあ、僕には関係ないし」
「っ〜〜〜〜あ〜〜〜〜つまんねぇ〜〜」
翌朝、ここは食堂。今の時間帯は朝方であり、人は、厨房で食事の準備をしている。何を用意しているのかは、厨房にいる彼等、彼女等にしか判らない。
そんな中、食堂の隅にあるテーブルには黒鷲と黒鮫の兄弟が居た。黒鮫はテーブルの上で新聞紙を広げ、新聞を読んでる——アダルト記事を目的としていた。が、そこにアダルト記事はなく、有るのは情報やスプーツ関連、番組表と言った今日に関係する物ばかり。
黒鮫は記事がない事に落ち込んでいる。そんな彼、弟に黒鷲は苦笑いする中、新聞紙に目を通す。そこには、色んな記事が有り、注目選手や試合結果などと言った、平凡な記事ばかりだった。
しかし、ある記事に目を通すと、表情を曇らせる。
「他国による審判買収、八百長、ねぇ……」
「あん? 黒鷲の兄貴どうしたん? ——ん?」
「全く、最近は変な事ばかり多いな……」
黒鷲は腕を組む。そんな彼に、黒鮫は両手を頭の後ろに当てながらキョトンとする。
「そんなのは昨日のリアルタイムで凄い流れていたよ? SNSやTwitterで有名だし、世界トレンド一位にもなったからね〜〜」
「最近はネットでも有名案件だね……全く、最近どうなってるの? 世界の其々の世界事情って」
「俺達がそう考えても、子供の俺達には関係ない、何て言いきれないけど、将来不安だょねぇ〜〜」
「就職難、高齢社会、児童虐待——ますます不安になるな……」
「そうそう、って、あれ?」
黒鮫は何かに気づく。
「待って黒鷲の兄貴、今、俺達は将来の不安を考えていたっけ?」
「うん? ……あれ、違うの?」
「全く違うよ!? 何時から話が逸れてるよ!? 俺がアダルト記事からの、将来の事で悩んでいるみたいだよ!?」
「……そう言えば、そうだね?」
「嫌だよ俺!? 朝から勉強なんて嫌だよ! せめて飯食ってからにしようよ!? 脳が働かないよ!?」
「黒鮫……矛盾だよ、それ」
黒鮫の言葉に黒鷲は訝しげになる。朝から勉強は兎も角、食事を摂ってから脳を働かせたい——所謂、何かをすると言う例えになる。仕事、運動、勉強などと言った行動を助長させる。
片や否定、片や準備——矛盾しているようにも感じるのだ。黒鷲はその事を指摘したい中、声をかけてきた者がいた。
「黒鮫、黒鷲」
その声は青年の声。彼等には良く知り、仲間でもあり、親友。その声に兄弟は声がした方を見やる。そこには、彼が居た。一夏だ。昨晩から帰っておらず、今帰ってきたばかりだった
一夏の存在に気づいた黒鮫はニヤニヤする。揶揄う理由があるからだ。朝帰りは兎も角、理由としては別に有る。それは、一夏自身が良く知っている。
彼は、ある理由で一春と別れ、今帰ってきたばかり。どうして遅れたのか? どうして朝帰りになったのかは彼の口から語られる事以外、何もない。
彼が自ら体験し、彼自らがその体験談を自分達に語ってくれる事を期待していた。黒鮫はその事を、一夏に指摘した。
「昨晩はお楽しみでしたね?」
「はっ?」彼の言葉に一夏は意味が分からず、恍けてしまう。そうだろう、一夏が居なかったのは、別行動をとったのは少女を送っていったからだ。
一夏らしいといえば一夏らしいが彼、一夏はそんないやらしい事は考えていない。思春期を迎えている年頃の彼は自覚しており、する気は毛頭ない。
まあ、合意ならば致し方ない。逆にまた、それが大問題に発展する事もある為、それ相応の準備をしなければならないのだ。できちゃった——若気の至り、もしくはショットガンを片手に——なんてめんどくさい。
「恍けるなよぉ〜〜昨晩、一春から女の子を家にまで送ってったんだろ?」
「ああ、そのことか……」
一夏は察する。しかし、一春は更に煽る。
「どこぞの堅物スナイパーのように一目逢った瞬間に」
「黒鮫!」
弟が一夏を揶揄う事に黒鷲は怒る。これ以上は止せ、そう言いたかった。弟は一夏を侮辱している。弟としては悪い事だと言う事を認識させたいのだ。兄としての役目でもあり、兄としての自覚も有るからだ。そんな兄・黒鷲の怒号に黒鮫はキョトンとする。
「どうしたん? 黒鷲の兄貴?」
「どうしたもこうしたもないよ? 一夏を揶揄うのは止めなさい!」
「えっ? どうして? 一夏、彼女出来たかもしれないんだよ?」
「介抱だけで、送っていっただけで彼女なんて、そういった吊り橋効果じゃないよ!」
「そうかな? 俺的にはそう言った事は良いと思うぜ?」
「どうして?」
黒鷲は訝しげに訊ねると、椅子に凭れ掛かるように座り直す。
「だって俺達ってさ、選ばれた存在じゃん? と言っても、俺達って何時死ぬかも判らないじゃん?」
「……そう言う話は止めなさい」
「あり得なくないでしょ? 俺達はアーマードだし、俺達を含めて十人はいるじゃん? その中で全員が生き残るなんて無理な話だよ」
「「…………」」
彼の言葉に黒鷲と一夏は互いを見合う——直ぐに彼を見やる。彼はキョトンとしているが、少し悲しそうに笑う。
「俺達ってさ、拾われ子じゃん? この会社、ユグドラシル直属の部下になるまで多くの訓練や知識を叩き込まれたし、休日もあれば楽しい事も遭ったじゃん?」
「……確かにな」
彼の言葉に一夏は悲しそうに微笑む。あの時の事を思い出していた。自分や一春、三枝の三兄弟を含めた自分達は十代ながらも青春を謳歌していた。
楽しくも苦しい思い出が有るが、訓練の際は互いをライバル視していた為にお互い次は勝つ、次も勝つ、なんて話は良く有った。今思えば、今もしているが互いをライバル視している事は今でも消えない。
一夏は黒鮫の言葉に少し懐かしむ中、黒鮫は少し笑う。
「それに選ばれても何時死ぬかも判らない、殉職するって事もあり得なくないし」
「……それはそうだけど」
黒鷲は不安になる。
「俺達って何時死ぬかもしれない中で恋人が出来るのは嬉しい限りだし、最悪——と言うよりも最高の時に結婚、出産まで行けばめでたいじゃん? 死と隣り合わせの中で一筋の光があるのってなんか力が湧くし? この子、もしくは娘の為にも生き残れるって考えられるよ」
「……彼女じゃないけどな」
「えっ? そうなの一夏? 違うの?」
黒鮫の言葉に一夏は深く頷く。
「な——んだ、早とちりか」
「黒鮫が早とちりでしょ?」
黒鮫は呆れる中、黒鷲も呆れる。理由は違うが一夏の事に関係する事は共通しているだろう。が、一夏は二人の様子に困惑しつつも、ある事に気づく。
「そう言えば一春は?」
彼の言葉に黒鷲と黒鮫は気づく。しかし、黒鮫は軽く笑う。
「どうした?」
一夏は黒鮫の様子に気づくと、訊ねる。そしたら、黒鮫は軽く笑いながら言った。
「まだ寝てるよ? それも、最高の寝言をね?」
「う〜〜ん、ごめん一兄〜〜携帯から知らない変な請求来ちゃったよ〜〜どうするんだよ〜〜」
一春は一夏との同室で苦しい寝言を言っていたのだった。