キルラキル短編集   作:影山ザウルス

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私を躾して……

猿投山渦は本能字学園の剣道場で汗を流していた。しかし、その姿は何か焦っているようにも見える。

握っていた竹刀が汗で滑って、どこかへ飛んでいってしまった。静まり返った剣道場に猿投山の苛立ちだけが充満した。

 

「…………くそっ!!」

 

彼の苛立ちの原因は数週間前に遡る。本能字学園都市のスピーカーというスピーカーからクラシックだかオーケストラが流れた日。厳密に言えば、流れ始めた直後だ。

猿投山は"あの場"に居合わせてしまった。

それだけなら、ただ三年近く一緒にいる仲間を見守るのが筋だと思う。二人の邪魔をする気なんて無い。

 

「だが、なんだ?この焦燥感……」

 

邪魔をするつもりは微塵も無いはずだが、この数週間の蛇崩乃音の上機嫌ぶりを見ている猿投山は苛立ちを隠せない。ましてや犬牟田宝火は余裕綽々と言わんばかりに涼しい顔をして過ごしている。

 

「蟇郡の奴は纏のツレと仲が良いし、皐月様は纏との溝を埋めている……なのに、あの二人……」

 

二人の煮え切らない関係への苛立ちか、それとも他のものへの苛立ちか、初めての経験に猿投山は己の未熟さを痛感している。しかし、痛感すればするほど、苛立ちが募った。

 

 

 

 

 

 

事件は翌日に起きた。

校内をぶらついていると猿投山の視界に犬牟田の姿が見えた。珍しくパソコンを持っていない代わりにCDを持っていた。誰かと話している。その"誰か"は姿が見えなくてもわかった。犬牟田の視線の高さから容易に判断ができた。

犬牟田が話している相手。それは蛇崩乃音だ。いつも知的な眼鏡キャラを決め込んでいる犬牟田があどけない笑みを見せている。その視線の先にも、おそらく普段からは想像できない蛇崩がいると思うと、今まで抱えていた焦燥感が嫉妬だと気が付いた。気づいてしまった。

今の二人の煮え切らない関係が犬牟田の努力によって成立している。その努力を後押ししたのも自分だ。だから、猿投山は自己嫌悪を抱えつつも、自分の気持ちに正直にあろうとした。

 

 

 

 

 

放課後。

 

「ちょっと、どういうつもりよ!?こんなことして、ただで済むと思わないでよね、ボケ猿!!」

 

いくら強気に悪態を付こうと、蛇崩は人気の無い場所で猿投山に追い詰められていた。三方を壁に囲まれ、窓も無い。当然、人気が無いから助けを叫んでも助けが来る見込みは無い。

 

「なぁに……ちょっと聞きたいことがあるだけだ」

 

蛇崩の背中に校舎の冷たい感触が当たる。猿投山と彼女の物理的な距離はほぼ0に等しい。こんな状況で身の危険を感じない女性はいない。無論、蛇崩も例外ではない。むしろ、この状況は蛇崩にとって最も不利な状況だ。

 

「は、話って何よ?アタシ、この後用事があるのよね」

 

「犬牟田か?」

 

猿投山にとって、人の感情は手に取るようにわかる。いくら動揺しないように毅然とした態度をとっていても猿投山には無駄なことだ。だから、蛇崩はそれほど驚いていないつもりでいた。しかし、無意識の体の反応には対応できない。

 

「お前たちは、付き合っているのか?」

 

「ハァ!?バカ言わないで!!誰があんなオタク眼鏡なんかと……」

 

嘘は言っていない。

 

「アイツのことが好きなのか?」

 

「そ、そんなんじゃないわよ……」

 

嘘だった。だが、その嘘にあえて騙されることにした。

 

「なら、俺と付き合わないか?」

 

「ハァ!?なんで、アンタなんかと付き合わなきゃならないのよ!?発情期なの!?」

 

「ああ、そうかもな……」

 

「ちょっ……!?」

 

猿投山は耳に口付けをすると、そのまま唇を這わせて、首筋へと移動した。

 

「あ……ちょ……やめ………」

 

そのまま首筋から血を吸うように、吸い付き、消えない跡を残した。蛇崩はその小さな体を首筋から全身へと駆け巡る電流に震わせていた。

 

「あ……だ、ダメ……」

 

「どうした、蛇崩のお嬢さん?いつもみたいに罵ってみろよ?」

 

「う、うるさい、わね……これだから北関東のボケ猿は……下手くそ」

 

「へえ、そう来るか?」

 

再び首筋に唇を近づけると、蛇崩の体が震えた。しかし、猿投山の唇はいくら待っても来ない。

 

「どうした?物欲しそうな顔をして?」

 

「うっうるさい!!ボケ猿のくせに!!」

 

蛇崩は力が入らない体を奮い立たせ、猿投山を押し退けた。

 

「何をやっているんだい?」

 

その向こう側には犬牟田の姿があった。眼鏡の奥で眼光を光らせて、蛇崩を睨み付けている。

弁明をする必要は無いはずなのだが、蛇崩は弱冠以上の後ろめたさを感じて、犬牟田から目を背けた。

 

「な、何よ?」

 

ぶっきらぼうに吐き捨てる。

 

「まったく、君は……」

 

呆れた様子で蛇崩に歩み寄る犬牟田。そして、普段は極制服の襟で隠している口元を出し、噛み付くように蛇崩の首筋に口付けをした。

 

「んあ……」

 

不意を突かれてしまって、甘い声が漏れてしまった。

 

「意外と可愛い声も出すんだね」

 

「う、ん……うるさ……い……ああ!?」

 

犬牟田の口付けで全身を走っていた電流とは、違う電流が流れた。猿投山が手首から腕にかけてを口付けで進撃していた。

 

「見せつけてくれるじゃねえか、お二人さん」

 

「や、やめなさい。やめなさいよ、二人、んあ、共……さ、皐月様に、あん……言い付け、あ、ダメ!!」

 

蛇崩は二人の口付けに蹂躙されていく快感で、全身が敏感になってしまっていた。しかし、一番蹂躙してほしい所には二人共触れることさえしなかった。蕩けた思考を働かせて、二人がどちらを選ぶかを待っていることに気が付いた時には、それ以上の思考は出来なかった。

 

「き、キスして……」

 

「おやおや、おねだりですか?」

 

「どっちのキスが欲しいんだ?」

 

「どっちもして……はやく……はやくして……」

 

最初は犬牟田。続いて猿投山。片方がキスをしている間、もう片方が蛇崩の体を口付けで蹂躙し、交代する時は一瞬の休憩を入れることなく蛇崩乃音を蹂躙しつくした。

強烈な快感で蛇崩は全身が蕩けたように力なく崩れ、頭は真っ白になった。

 

「そろそろ答えてくれないか?僕か、猿投山。どっちなんだい?」

 

思考が麻痺した状態の蛇崩にそんな質問に答えを導きだすことは出来なかった。ただ、だからこそ出した答えを口にした。

 

「どっちも…………どっちも好き……アタシを躾て……」

 

蕩けた顔で蹂躙を求めた。

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