宿儺は目の前に迫る膨大な呪力を孕んだ茈色の光を呆然と睨みつける。その目には目の前の圧倒的な絶望に対しての諦めの情などは一切なく、現状の打開策を頭の中で考え続ける
(どうする!?俺の呪力は残り一割か、それ以外だ。その程度の呪力じゃ打ち勝つことは出来ない!回避か?いや、それは俺の体のことを考えると現実的ではない......クソッ!五条め、考えなしに放ったな!)
宿儺は空に浮かび、やり切った顔をしているであろう五条悟に対して殺意を抱くが、その殺意は一先ず胸の内に
しまい込む
(何か、何か手は無いのか!?)
しかし、どれ程考えようとも打開策は思い浮かばずにただ明確な死のタイムリミットが縮まっただけだった。
正しく詰み。宿儺の冷静な部分がそう結論付けた
(諦めてたまるか!俺は、俺の
「ウォ゛ォ゛ォ゛オ゛ォォォ!!」
宿儺は拳を振るう。しかし、目の前の茈色の光は少し勢いを弱めるだけで止まる気配など無く、宿儺の体が勢いに押されていき、目の前の死が宿儺の身を焦がす。
手はボロボロと丸焦げになり、その整った顔には無数の切り傷が刻まれる
満身創痍、正に今の宿儺を指すのに相応しい言葉だ
(クソ、クソ!!このままでは俺は自らの
宿儺はもう一方の手を振り上げる
(ならば込めろ!俺の憎悪も
それは無駄な足掻き、振るわれた拳は宿儺諸共茈の光に呑まれるだろう
宿儺が拳を振るおうとしたその瞬間、宿儺の拳は黒い閃光を迸った
黒閃!
黒い稲妻を纏った宿儺の拳が目の前の絶望を呑み込まんと勢い良く振るわれた。
黒い閃光と茈の光が凄まじい衝撃と音と共にぶつかり合った。バチ、バチチチチ!と大きな音を立て黒い閃光も茈の閃光も拮抗しているのかどちらもその場から静止したように動かなくなる。
しかし、それは少しの間だけで宿儺の腕からメキメキ、ボギャ!と鈍い音と共に茈の光が黒い閃光を呑み込んでいく
(これでも、これでも足りないのか!!)
そんな事を思っている内に茈の光が宿儺を呑み込まんと襲いかかる
(死んでたまるか!俺は死ぬ訳にはいかないのだ!!せめて、あの子達が安らかに眠れるように、あの子達に少しでも誇れる自分であるように!俺はこんな所でくたばる訳にはいかないのだ!!!)
「オオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」
宿儺がボロボロのもう片方の手を振り上げた瞬間、再度黒い稲妻が迸った
黒閃!!
だが、それでも足りなかった
宿儺は再度拳を振り上げる
黒閃!
足りない
黒閃!!
まだ足りない
黒閃!!!
茈の光が宿儺の黒い閃光に呑まれていく
「邪魔、ダァァァアア!!!」
宿儺は渾身の力で目の前の茈色の光へと拳を叩き付けた
黒閃!!!!
宿儺の黒い閃光が茈の光を完全に呑む込み、周りは眩い光に包まれた。その瞬間に凄まじい衝撃が森に吹き荒れる。木々は折れ、衝撃よって根から抜けて宙に舞うものまで出てくる
「くっ!なんて衝撃だ!!」
東堂は凄まじい衝撃と光で反射的に目を保護するように腕で目を隠す
吹き荒れる風は止み、光は消えた後に東堂は腕を退けて閉じていた目を開ける
するとそこには全身から血を流しだし、倒れ込んでいる宿儺の姿があった
「
東堂は宿儺が息をしているのに気付くとホッと少し落ち着くが、宿儺の命が危機に晒されているのは明らかだった
「あれ?もしかして宿儺も巻き込んじゃった?」
その時、東堂の背後から声がした
東堂はギロリとその声の持ち主を睨み付け、忌々しげにその人物の名を呟いた
「五条悟....!」
「え、何でそんなに睨んでるの?」
東堂の剣幕に五条悟は驚いたのか困惑したような雰囲気を醸し出していた。その様子に更に東堂は苛立ちを募らせる
「お前の攻撃が
「いやー、ごめん!ごめん!でも宿儺なら大丈夫だと思ったんだよ」
東堂は内心舌打ちをついた
あまりにも幼稚な考え、自らの行動で周りへと与える被害や影響を正しく理解していない
(これが現代最強呪術師か....実力は確かだ、先程の凄まじい攻撃がそれを物語っている。だが、それでもあまりにも考えが幼稚すぎる)
東堂は目の前の反省の色を全く見せない
「もういい、今は一刻でも早く
「じゃ、僕が硝子のとこまで運ぶよ」
東堂は少し考えた後に宿儺を五条悟へ手渡した
「くれぐれも落とすなよ」
「やだなぁ、落とすわけないでしょ」
そう言い、五条悟はフワリと空へと浮かんだ後に物凄いスピードで駆け出した
「死ぬなよ
そう言うと東堂は衝撃で吹き飛ばされた游雲を回収しに森へと再度足を進めた
俺はいつの間にか森の中にいた
「あれ?俺は確か宿儺と代わって、それから宿儺が茈色の攻撃に巻き込まれて、宿儺がなんとかその攻撃を打ち消して.....で、気付いたら森の中」
わけわかんねぇなと悠仁は頭を掻く
「宿儺いるか?」
悠仁は己の中にいる宿儺へと声をかけるが、宿儺は返事どころかいる気配すらない
「いないってことは、夢か何かなのか?ま、いくら考えても始まらないし探索でもするか」
悠仁は自分の勘の赴くままに足を動かす
「しかし、この森何処なんだろ、俺はこんな場所来たことないしなぁ......もしかして宿儺が前に来たとことかなんかな」
ズンズンと悠仁は足場が覚束無い場所を気にもかけずに進んでいく。悠仁は一度もこの場所に来たことすらないのに、何故か足取りはハッキリとしていた。まるで何かに手招かれかのように
悠仁が坂を下ってきた時に、微かに声が聞こえた
「―_―_―_」
まるでノイズがかったように悠仁はその言葉を聞き取ることは出来なかった。ただ、その声が己を呼んでいるということだけは本能的に理解した
悠仁は声のする方向へと先程よりも速く向かっていく、声の主に近付く度に声はより鮮明に聞こえてくる。どうやら声の主は女の子のようだが、未だにその内容はノイズがかったように聞き取ることが出来ない
(あれ?ここら辺なんか木が少なくねぇか?しかも、残ってる木に焼けた跡がついてる....いや、それよりも今は女の子の方が最優先だ)
その時、フッと声が聞こえなくなった。まるで元から声など無かったように森は静かになる
悠仁はそれに驚き、キョロキョロと辺りを見回すとあるものを見つけた
「焼け焦げた、柵....?」
その柵の先を見るとそこには村があった。いや、正確には村の焼け跡だった。
悠仁は導かれるように村の中へと足を進める
「こんな森の中に、村があるなんてな....」
悠仁が村を散策しているとある像が目に止まった
(この像、呪力が籠ってる....)
悠仁は像のすすを手で拭うと目を大きく見開いた
「これって宿儺、だよな...?」
そこには前に夢で見た、生前の宿儺の姿をした像が傷一つない状態であった。何故、村は焼け跡となっているのに木製の宿儺の像は傷一つついていないのか疑問に思ったが、呪力のおかげかと納得する
「それにしても宿儺そっくりだな」
「宿儺様のこと、知ってるの?」
気配もなく、後ろから声がした
虎杖はその場から飛び退き、臨戦態勢に入る
「誰だ...?お前」
「私は
そこには肌が焼け爛れた小さい女の子が立っていた
悠仁は呪力がないことを確認し、臨戦態勢を解く
「知ってるよ」
「そうなんだ」
美穂がそう言うと会話は途切れる。それを少し気まずく思ったのか悠仁が美穂に尋ねる
「此処ってどこなんだ?」
「此処は
(犬鳴村....?犬鳴トンネルと何か関係があるのか....?)
悠仁がウンウンと考え込んでいると、美穂に袖を引かれる
「一つ、宿儺様に伝えてほしいことがあるの」
「?分かった」
次の瞬間、美穂の後ろから禍々しい呪力を放つ無数の黒い手が現れた
「!後ろ!!」
悠仁は美穂をその手から遠ざけようとするが一足遅く、美穂の体に黒い手達は絡み付き、ズルズルと美穂を引きずり込んでいく
「
「美穂ちゃん!!」
美穂は黒い手達に完全に呑み込まれ、悠仁へと黒い手呑み込まんと眼前まで手が迫った瞬間
『目を覚ませ小僧』
悠仁はパチリと目を覚ます
キョロキョロと辺りを見回すがそこには見慣れた宿儺の生得領域で村などはなかった
「おい、様子がおかしいがどうかしたのか」
宿儺が少し心配そうに悠仁へと問い掛ける
「あ、うん。夢を見てさ」
「ほう、どんな?」
宿儺が興味を滲ませて更に問い掛ける
「えーと、俺が森をさまよってて女の子がしたから声がする方に走ってたんだよ」
「ほう」
「そしたらそこには村があって、村には宿儺の像があったんだ...それを見てたら女の子が俺の後ろに立ってて、名前は美穂ちゃんだった」
「小僧!その村は犬鳴村という名前だったか!?」
「あ、うん。犬鳴村って女の子が教えてくれたんだ」
そう言うと、宿儺はブツブツとなにか呟いた
「それで、美穂は何か言っていたか?」
「あ、美穂ちゃんが“私たちを助けて”って宿儺に伝えてくれって言ってたよ」
そう言うと宿儺ははぁと溜め息をついた
「もういい、大丈夫だ....」
「あ、うん。大丈夫か?」
悠仁がそう問い掛けると宿儺は大丈夫だと答える
「お前の仲間たちがお前のことを呼んでいる。そろそろ戻ってやれ」
「あ、分かった。それじゃ、行ってくるわ」
そう言い、悠仁は生得領域から姿を消した。
宿儺はそれを確認すると顔を手で覆い、泣き言を垂れたくなる気持ちをグッと堪えた
(犬鳴村、俺が嘗て救い、そして俺のせいで焼かれてしまった村....)
今でも鮮明に思い出すことのできる。あの村での日々、そして加茂憲倫の手によって火を放たれ、村人全員が焼け死んだあの日の光景も、全て今でも鮮明に覚えている
「あの村で一体、何が起きてると言うんだ.....」
『早く、助けて』
そんな幼い女の声が耳元で聞こえたような気がした
閲覧して頂きありがとうございました!
いやぁ、すみません!こんなに更新が遅くなってしまい。最近、モチベ/zeroなんですよね
次の更新はなるべく速くするので気長に待ってくれると嬉しいです!
BADENDルートは
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あり
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なし