両面宿儺成り代わり   作:五月雨@ノン

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策略/魔の手

 

 

 

「イタイ!アツい!みず、ミズゥ!!」

 

「どうして、どうして、ドウシテェェェ!!」 

 

「アツい、アツい、アツイヨォォォ!!」

 

「助けて、たすけて、タスケテェェェ!!!」

 

「苦しい、クルシイ、」

 

「ナンデ、コロシタノ、ウソツキ、ウソツキィィ!!」

 

虎杖悠仁が振り返ったその先には地獄絵図がそこにはあった

 

 

周りの木造の家を紅黒い炎を包み込み、ジリジリとした平常の炎とはどこか違う熱さを放ち、村中はそこに住んでいた村人達のものであろう血でベッタリと紅く染められており、そして目の前には当時の燃え盛る火に包まれて悶え苦しんでいたであろう村人達が一つの塊となり、一人一人が悲痛な悲鳴を上げていた

「なん、だよ、これ....」

 

虎杖の口から漏れたその言葉は虎杖自身でも驚く程に震えていた。目の前にいるのは嘗て人だったものであるがそれはあまりにもおぞましく、痛々しい姿だった。今まで呪術師として様々な現場を見てきた虎杖だが、目の前の光景を目にして平常でいられる程彼はまだ呪術師(イカれて)はなかった。

それは隣の釘崎も同じで、彼女も動揺を隠せないのか目を大きく見開いたまま動かず、手はプルプルと震えていた

 

「イァァアァァ!」

 

「釘崎」

 

「!」

 

ブォン!という腕が空気を切り裂く音と共に二人は正気に戻り、それぞれ目の前の呪霊の攻撃から回避する。ドゴォン!と大きい音と共に地面が大きく抉られ、その衝撃は周りにも伝播し、近くにあった家が崩壊する。

二人は呪霊の攻撃の威力に内心驚くが、目はハッキリと呪霊を捉え、いつでも対応できるような各々の体勢に入っている。

 

「どーする?」

 

「どーするも何も、やることは決まってる。さっきみたいにまた核を壊せばいい」

 

「けど、また復活してこないか?」

 

「馬鹿、アイツのことよく見なさい」

 

そう言われ、虎杖は呪霊のことをジッと見つめ、あることに気が付いた

 

(核が二つある!)

 

そう、目の前の呪霊にはパンダと同じように複数の核があったのだ。交流戦の時にパンダが使った手のように一度は核を貫かれ、ダウンをし、敵を油断させるという一種の罠のようなもの。それを呪霊は無意識の内にしていたのだ

 

「なるほどな。じゃあ、もう一つの核を壊せば」

 

「私たちの勝ちってことよ!」

 

二人は向き合い、頷く。二人は今の一瞬の間でアイコンタクトとを行い、それぞれの役割を決めた。それは死地を共に生き抜いてきた仲間だからこそ行える一種のコミュニケーションだった。

虎杖はバッと呪霊の周りを高速で旋回するように走り始め、敵のヘイトを集める。

釘崎は先程よりも少し遠くへと構え、釘をいつでも打てるように構えながらも敵の隙を伺っていた。二人の作戦を知らず、呪霊は虎杖へと一心不乱に腕を振り上げては何度も攻撃し続けていた

 

『シねぇぇ!』

 

「そんなんじゃ、いつまでも経っても俺には当たんねえよ!」

 

先程までの道路とは違い、広けた空間は虎杖にとっては有利でその類稀なる身体能力を生かし、余裕をもって攻撃を回避する。それに腹を立てた呪霊が憤怒に身を任せ再度攻撃するが、 大雑把な攻撃になる為それも虎杖には難なく躱されてしまう

 

(これなら、楽にいけ――ッ!)

 

虎杖の背筋にゾクリとした悪寒が走ると同時に、勘でこのままでは不味いと漠然とそう感じる。全筋肉を総動員して全力でブレーキをかけ、前のめりの体勢から無理やり後方転回をすることによって退避する。それとほぼ同時に地面に一本の亀裂が入ったと思えば、その後ろにあった家を真っ二つに両断した。虎杖は自分のとった行動が当たっていたことに安堵しつつ、呪霊が放った一撃に既視感を覚えた

 

(あれ、もしかして宿儺の術式か....?)

 

虎杖は宿儺の器ということもあり、宿儺と今一番近しい存在である。だからこそ、宿儺の術式の恐ろしさをよく理解していた。それと同時に違和感を覚える

 

(けど、宿儺のやつと違って呪力がダダ漏れだし、飛んでくる速度も比べ物にならないほど、何よりタメがある)

 

虎杖は呪霊の攻撃を避けつつ、考察を続ける

 

(けどそれ以外は宿儺の術式そのまんま.....なんか、宿儺の術式を見た一般人がそれを()()()みたいだ)

 

「なら、やりようは幾らでもあるよ、な!」

 

脚に呪力を纏わせ、それを地面へと勢いよく叩き付ける。ゴゥ!という音と共に砂埃が舞い、呪霊の視界を遮り、丁度いい程の大きさの石を掴み、呪力を纏わせてそれを呪霊へと投擲する

 

「オッオオオぁ!!」

 

呪霊が虎杖の呪力に反応するが、それが複数あることに一瞬困惑し、動きが止まる。その瞬間に虎杖はギチギチと脚に力を込め、弾丸のような速さで呪霊へと突進する。自分の近くに一際大きな呪力が近付き、それによって自分が相手の策に嵌っていたことを悟った呪霊は先程よりも大きく呪力を荒ぶらせながら虎杖へと斬撃を放つ。その斬撃は込められた呪力により、大きく膨れ上がりその斬撃は線というより最早それは壁だった

 

「マジか!?」

 

虎杖は迫り来る斬撃の壁から逃れようとするが、既に足は地上から離れており、体を捻って回避をしようともここからの捻りだけではそれを回避するには余りにも勢いが足りない。

虎杖は目の前の迫り来る死にただ歯噛みすることしか出来ないのかと自分のことを情けなく思うが、虎杖は正しい死はこんなものではないと自分を奮い立たせる

 

(どうすれば....どうすれば、ここから回避出来る?...!)

 

虎杖はあることを思いつく、それは....

 

「フンッ!!」

 

虎杖の頬に自らの呪力を纏った拳が突き刺さった

 

 

 

それは自らに敢えて打撃を与えることによって、強制的に勢いをつけるというなんとも馬鹿げた案だった。だが、しかしその馬鹿げた案は虎杖の常人離れした力と呪力も相まって成功し、そこから虎杖は体を捻ることで斬撃の壁を回避する。

だが、勢いが強すぎたせいかそのまま家の壁にぶつかってしまうが虎杖の恐るべき身体能力により瞬時に着地を成功させ、追撃の斬撃もサイドステップをすることで最低限の動きで回避して相手の動きを伺う

 

呪霊も今の攻撃を躱されると思っていなかったのか呪霊は更に虎杖に対する警戒度を上昇させ、呪霊側も虎杖の動きを伺っている。どちらも相手の出方を伺っており、二人の戦場に静寂が訪れる。だが、二人の間にはピリピリとした空気が立ち込め、常人であれば気絶もしくは失禁してしまう程のプレッシャーが両者から発せられる。

その静寂を破ったのは、虎杖でも呪霊でもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を、忘れてんじゃねぇよ」

 

後方で隙を伺っていた釘崎野薔薇だった

 

 

「いごィォ!?」

 

虎杖ばかりに注意を払って釘崎の存在を忘れていた呪霊は、釘崎のいきなりの登場に驚きの声を上げた。その呪霊の隙を見逃すほど釘崎は優しくもなく、弱くもなかった。一瞬の間に複数の釘を放ち、その釘達が呪霊のもとへと殺到する。呪霊は先程放たれた釘崎の共鳴りを警戒してのことか、呪力を多く込めて斬撃の壁を作り出し、その全てを粉々にし、勢いは止まらず釘崎のもとへと斬撃は迫るが難なくそれを釘崎は回避する。

釘崎は更に釘を呪霊へと放ち、それを呪霊は防御すべく再度斬撃の壁を作り出し、それを釘崎も斬撃の範囲内に

入れつつそれを放つ。だが、それは釘崎の罠だった

 

「アンタは斬撃を複数箇所同時に放つことは出来ないんのは分かってんのよ!虎杖!」

 

呪霊は自らの失敗を悟った。目の前の釘崎という敵の攻撃ばかりに気を取られすぎ、虎杖の警戒を一瞬だけ緩めてしまったのだ。術式を放つにも虎杖の接近許した時点でもう間に合わない。

ならばと呪霊は虎杖へと複数の手を伸ばして迎撃しようとするが、術式の斬撃を気にする必要もなくなり、充分な溜めの時間もあったことにプラスして釘崎が呪霊の手へと攻撃をし、虎杖を守っていることから、呪霊は虎杖の指一本にさえ触れることすら出来ない。虎杖は視界が晴れた先の、呪霊の核へと意識を集中させる

 

 

核がよく見えるという状況、そして何があっても自分の背中は釘崎をが守ってくれるという安心感から虎杖の意識は深く沈み込み、音が消え去り、あるのは呪霊の核を示す呪力だけだった。

虎杖の恐るべき集中力に、黒い閃光は答えた

 

 

黒閃

 

虎杖の拳から放たれる黒い閃光は呪霊の体を容易く貫き、そして呪霊の核はパキンという音と共に砕け散った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夏油〜それ何ぃ?」

 

真人は夏油に握られている呪具を見つめながら、それを見てニヤニヤと笑う夏油へとそう問い掛けた。夏油は少し迷う素振りを見せながら、まぁいいかと呟いた後に口を開いた

 

「これは呪力の残穢を吸った相手の呪力が一定の範囲内にいる時にその場所を自分からどれぐらいの距離にいるのか示してくれる探知系の呪具さ」

 

夏油がそう言うと真人は関心したようにへぇ〜と声を漏らしながらもじーっと夏油の手元にある呪具を眺め続ける。そんな真人を珍しく思いながら、夏油も手元にある呪具を見ることに戻る

 

「この紫色の点て誰?」

 

「これは呪術高専の一年生の呪力。これは真人は会ったことないと思うよ」

 

「ふぅ〜ん。ならこの、黒と赤色が混ざってんのは?」

「これは君もよく知ってる人物さ」

 

そう言うと、真人は察したのか人間(呪霊)らしい笑みでにったりと厭らしく笑い、夏油と肩を組み、夏油の脇腹を啄く

 

「性格悪いねぇ〜、俺にもっと早く教えてくれれば良かったのにぃ」

 

この、このぉ〜とドスドスと割と洒落にならない力で夏油の脇腹をど突き続ける。それに夏油は痛い痛いと笑い、真人に弁解する

 

「いや、ずっと見てた訳じゃなくてね、さっき見始めたんだよ」

 

ほら、これずっと見続けても面白くないだろう?と夏油がそう言うと納得したように頷いた後に、じゃあなんでさっき見始めたの?と首を傾げる

 

「ちょっと、両面宿儺にサプライズプレゼントを用意してたのさ」

 

「!本当に!?両面宿儺喜んでくれるかな!?」

 

「あぁ、きっと大喜びさ」

 

夏油がそう言うと真人はキャッ!キャッ!と嬉しそうに砂浜を駆ける。それを夏油は何の感情も浮かばない黒い目で観察しながら内心、大きく口を裂けさせ、ドロドロとした笑みを浮かべた

 

(私が仕組んだ、感動の再開はどうかな?両面宿儺、楽しんでくれてると幸いだよ)

 

チラリと呪具を眺め、両面宿儺の呪力が段々と膨れ上がっているという呪具の反応に夏油の口は更に大きく裂け、夏油は自分の計画が上手く進んでいることを嬉しく思う

 

 

 

そう、犬鳴村の村人達が呪霊と化したのも、特級呪霊になるほどに力を付けさせたのも、そして、焼け死んだのも全て計画の内だった

 

(おかしいとは思わなかったかい?何故、逃げ込んだ先に()()にも村があったのか、何故、その村の全員が人型とは言っても異形である君を受け入れたのか?何故、村に放たれた炎から君の呪力の残穢を感じたのか?)

 

 

夏油は自らの右手を開いた

 

(全て、全て、私の掌の上だ....)

 

夏油は自らの右手の上で踊り狂う人形(両面宿儺)の姿を想像し、歓喜に震えた

 

「君の器と、その仲間じゃ、アレを相手にするのは無理がある」

 

「君が、君のその手で殺めるんだ」

 

クックックッと夏油は思わず笑みを漏らした

 

 

 

「精々、苦しみ足掻くといいよ。呪いの王」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったわね、虎杖!」

 

釘崎が呪霊の核を貫いた虎杖のもとへとツカツカと歩いて近付き、それに答えるように虎杖も立ち上がり、釘崎へと近付き、ハイタッチする。二人がチラリと呪霊を少し警戒するように見ると、呪霊は紫色の炎で身を焦がし、灰になっている途中だった。それを見た二人はホッと一息付くとほぼそれと同時にポロポロと呪霊の領域が崩壊していく

 

二人は駄弁りながら外へと向かい始める。その時、脳内に宿儺の声が響いた

 

 

『小僧!まだ、戦いは終わっていない!!』

 

「え?」

 

虎杖は即座に振り返り、釘崎と一緒に祓った呪霊を見る。そこには―――――――

 

 

 

 

 

 

釘崎に向け、手を伸ばしている呪霊の姿があった

 

「釘崎!」

 

ドンッ!と虎杖は釘崎を強く横に押した

 

 

「ちょっ!?何して―――」

 

 

最後まで言葉は続くことはなかった。何故ならそこには

 

 

 

 

 

心臓を貫かれ、大量の血液を吐き出す虎杖の姿があった

 

 

「いた、どり....?」

 

 

まだ、戦いは終わらない

 

 








閲覧ありがとうございました!少しでも面白いと思って頂けたのならお気に入り、感想、評価等して頂けると幸いです!
この間に呪術廻戦0を観に行ったんですけど途中で見るの辞めました笑。私の後ろの席が小さい子供と隣の席がオタク?の女の子で少し騒がしかったので見るのを辞めて途中で帰りました笑。少し勿体ない気がしますけどまぁ、しょうがないと自分ではそう思っています。また、後日に落ち着いたら呪術廻戦0観にいきたいと思います

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