「闇より出でて闇より深く、その穢れを禊ぎ祓え」
その言葉が言い終わると帳が下りる気配を俺は生得領域の中で感じた
(この呪力と気配は特級か....まだ生まれたばかり。ということはこれは呪胎戴天編か)
“呪胎戴天編”
少年院で呪胎が発生が確認され、それを虎杖達の一年生組がその少年院へと派遣されるという話だ
ここで虎杖悠仁は両面宿儺に体の主導権を奪われ、伏黒恵を庇い一度死ぬことになる
(あまり、小僧達が傷付くのは見たくはないが....まぁ、そこは目を瞑ろう)
俺は俺の目的の為ならば手段を選ばないとあの時から決めたのだから、俺はだが虎杖悠仁という男を案外気に入っている。
だから.....
「俺を失望させてくれるなよ小僧」
俺は骨の山に腰掛けながら一人そう呟いた
「伏黒!!釘崎連れて
俺は手を失った痛みに冷や汗を流しながら呆然としている伏黒に向かって叫ぶ
「二人が
「できるわけねぇだろ!!特級相手に片腕で!!」
伏黒が顔に焦りを浮かべながらそう言う
全くの正論だった
(分かってるよ、そんなこと)
俺は特級の気配すらまともに感じることも出来ず、接近を許してしまい、呪具の屠坐魔での渾身の一撃でも傷付けるどころか俺は手を吹き飛ばされた。そんな相手に俺は呪具がなく、片手もない状態では話にならないなんてことはとっくに理解していた
(けど、このままじゃ二人諸とも無駄死にだ....!)
例え、伏黒と俺が二人掛かりで
伏黒だってそのことはとっくに分かっている筈だ
「よく見ろって、遊んでる。完全に舐めてんだよ俺たちのこと、時間稼ぎぐらいなんとかなる」
嘘だ、
「駄目だ....!!」
伏黒が顔を顰め、そう言う
(やっぱり伏黒は良い奴だ)
俺はただ漠然とそう思った
本当なら今すぐにでもここから逃げ出したい筈なのに、その証拠に伏黒の体はカタカタと少し震えていた。かくいう俺も足がガタガタと震えている
だからこそ、俺は伏黒という善人を生かしたい
「伏黒、頼む」
俺はズルい奴だ
こう言えば伏黒がここから退けてくれると分かっていた。何故なら伏黒は良い奴だから
ギリと伏黒は歯を噛みしめた後、伏黒はこの場から走り去っていった
(ありがとな、伏黒)
俺は敵の方へと向きを変える
相変わらずアイツはニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを見ている
(余裕ってことかよ)
俺は拳を構える
するとアイツは自分の下半身に身につけていた布をビリビリと破り捨てる
「動きやすくなりましたってか」
(いくら殴っても効きやしねぇ、呪力の使い方なんて全く分かんねぇ、けど今はそれで良い、時間を稼ーー
そこで俺の思考は止まった
体がアイツの体から発せられたナニかによって壁へと叩きつけられる
「あ゛.....が.....」
(今何が起こった....?何かに弾かれた、呪力のバリア?)
俺は何が起こったのか全く理解出来なかった、理解出来たことと言えば俺はナニかに弾かれたことだけだった
すると目の前にアイツが現れた
「!!」
アイツは手にナニかを纏わせ、俺を殴りつけた
ドォンと大きな音を立て、壁は壊され、俺の体は更に吹き飛ばされ、俺の体は重力に従って地面へと叩きつけられる
俺は暗転しかける意識をなんとか保たせる
アイツがまた体からナニかを発する
バッと俺は立ち上がり、ナニかを受け止める体制へと入る
ズンと重い衝撃が全身へと駆け巡る
じゅぅぅと焼ける様な音を立てかと思うと手から激しい痛みを感じた
「ぐ....ゔ.....」
手がボロボロと焼け落ちる痛みに耐える
「ゔゔゔゔ.....」
(痛い痛い痛い、辛い辛い辛い、何で俺が!!あの時、俺が指なんて拾わなければ、喰わなければ!!あの時!!あの時!!あの時!!!!)
じゅぅぅぅと更に手が焼け落ちる
(やめろ、考えるな!!)
更に手が焼け落ちる
(嫌だ!もう嫌だ!!逃げたい!逃げたい!!死にたくない!!ここで死にたくない!!ここで死んだとしてそれは本当に“正しい死”なのか!?)
ズンと更に重い衝撃を受ける
(今は考えるな!!!)
「あ゛ぁぁぁ!!!!」
俺は声を上げ、なんとか防ごうとするが俺の体勢は呆気なく崩される
(俺はこんなに弱かったのか!!)
バゴンと大きな音を立て、俺はまたも壁へと叩きつけられる
「ぁ゛」
口から血の塊を吐き出す
身体中から鈍い痛みと血が流れるのを感じる
ヒタリヒタリと足音を立て、アイツが俺の目の前まで歩いて来たと思うと俺の目の前で停止した
あれ程の攻撃を繰り出したにも関わらず、アイツは今だにニヤニヤと笑みを浮かべていた
(あぁ、やっぱり勝てないな...)
アイツの余裕とした態度を見ると嫌でもそうだと実感させられる
「自惚れてた」
アイツが困惑したかの様な顔でこちらを見る
「俺は強いと思ってた、死に時を選べる位には強いと思ってたんだ」
痛みと死への恐怖で目に涙が溜まる
「でも違った、俺は弱い」
震える足で無理矢理立ち上がる
「あ゛ー!!死にたくねぇ!!嫌だ!!嫌だぁ!!」
「でも....死ぬんだ....」
(“正しい死”か?じゃねぇんだよ、甘えんな)
『呪術師に悔いのない死などない』
夜蛾先生の言葉が頭によぎった
全くその通りだった
今、この瞬間でも死にそうな俺は明確な死を初めて感じた時、未練タラタラで死ぬことが本当に恐ろしかった
(それでもこの死が正しいと言える様に)
『呪いは人間の負の感情から生まれる』
ならば憎悪も、恐怖も、後悔も、願いも
拳にナニかが集まるのを感じた
(全てを出し切れ、拳に!!)
俺は拳を振り抜く
が、パシンと音を立て、呆気なく俺の拳は止められる
「クソッ!!」
もう、俺に出来ることがなくなった瞬間
「アォーーォォン」
伏黒の合図が聞こえた
(頼んだ、宿儺.....!)
俺の意識が闇へと沈むその瞬間
「あぁ、後は俺に任せろ」
そんな声が聞こえた様な気がした
生得領域が閉じたことに驚いた伏黒恵の背後へと俺は姿を現す
そんな俺に気付かず、伏黒恵はジッと少年院を見つめて小僧の帰りを待っている
「小僧なら戻ってこないぞ」
バッと伏黒恵はこちらを向く
「そう脅えるな、今は機嫌かいい。少し話そう」
俺は宥める様にそう言う
「なんの縛りもなく俺を利用したツケが回ったな、俺と代わるのに少々手こずっている様だな」
「だが、それも時間の問題だ。なら....」
俺は自分の心臓を抉り出す
「な!?」
「小僧を人質にする」
ベシャリと心臓を地面へと叩きつける
「更に駄目押しだ」
俺はゴクリと自分の指を飲み込む
「さて、さぁやろうか。もし、俺を失望させてくれるなよ?その時は殺す」
「.....あの時と立場が逆転したな」
伏黒恵は目を伏せた
別に伏黒恵を本当に殺そうとは思ってなどいない
ただ、俺は伏黒恵という男を見極めるだけの話だ
(だから、そう心配するな小僧)
俺は中にいる小僧へと語りかけた
「虎杖は戻ってくる、その結果自分が死ぬことになったとしても」
「買い被りすぎだ。小僧は多少人よりも頑丈で鈍いだけの只の人間だ。その証拠に、今際の際に脅えに脅えてはごちゃごちゃと御託並べていたぞ」
「断言しよう。小僧に自死する度胸などない」
伏黒恵が臨戦態勢に入り、手で印を組むと式神が影から飛び出す
俺に心臓を治させようとしているのだろう
「ここでは少し窮屈だ、広く使おう」
伏黒恵が俺へと向かってくる
(やはり、来るか)
伏黒恵の攻撃を全ていなす
(弱いな)
俺は伏黒恵の顔を殴打する
手加減した為、少し後ろへと下がった程度だった、伏黒恵の影が大蛇へと形を変え、俺を拘束する。俺の後頭部に式神がすれ違い様に攻撃をする
「畳み掛けろ!!」
大蛇の拘束する力が更に強まり、ギチギチと音を立てる
(が、甘いな....)
バチィン!と音を立て、大蛇の式神を破壊する
「言っただろう、ここでは窮屈だと」
俺は伏黒恵を宙へと放り投げ後、真上へと移動し近くにあった廃校の屋上へと叩きつける
ドォォォン!と地震の様な大きな音を立て、伏黒恵は地面へと追突する
(やはり、防がれたか...良い術式だ)
伏黒恵が落ちた所であろう場所の近くへと俺は着地する
「お前の式神は影を媒体としているな」
「それが何だ」
伏黒恵がこちらを睨みつける
(やはり、その術式の強みに気付いてはいないか)
「宝の持ち腐れだな、まぁその程度では
足元をふらつかせながら伏黒恵は立ち上がる
「つまらんことに命を懸けたな、お前にとってこの小僧にはそれ程の価値が本当にあるのか?」
伏黒恵が一瞬目を伏せた後、俺を見る
(良い目だ)
ズズズと膨大な呪力が伏黒恵から発せられる
ビリビリとしたプレッシャーを感じた
「ここからが本番だったか」
もうそろそろか
「さぁ、お前という存在を魅せてみろ!伏黒恵!!」
グラッと俺の意識が揺れた
(時間か)
小僧が俺と交代出来る様になったらしい
(一時の別れだ、挨拶は済ませておけ小僧)
俺は小僧にそう語り掛けた後、意識が暗転した
初めて奴の存在を知ったときは驚いた
“加茂憲倫”本来、平安に存在する筈のない男がそこにいた
しかし、俺は愚かなことに特に気にしてなどいなかった
“俺というイレギュラーがいるのだから”と納得していた。気にしてさえいれば、奴がどんな目で俺のことを見ていたのか分かっていたのに
悲劇はそこから始まった
最初は、ただの偶然だと思っていた。だが、それは俺の大切な者達が次々へと死んでいくことによって確信へと変わった
“これは何者かによる意図的なものだと”
怒りを感じた
俺に恨みがあるのなら俺を直接殺しにくればいい、だがなんの力を持たない者を巻き込み、殺すのか
俺は怒り狂い、俺の大切な者達を手に掛けた愚かな者達を一人ずつ嬲り殺していった。これ以上手を出すならばお前も嬲り殺すと見せしめる様に殺した
だが、それでも俺の大切な者達は殺されていった
ある日、俺の大切な者達を手に掛けた本人である男が俺の目の前でガダガタと震え地面へと這いつくばっている
「頼む!助けてくれぇ!!!」
心も顔も醜い男だった
俺の大切な者を殺した癖に、自分だけは殺さないでくれと惨めに尿を漏らしながらそう懇願している
殺そうと思い、俺は槍を取り出した時に男とは別な呪力の残穢を感じた
(この呪力の残穢は.....!)
「おい」
「ひぃっ!?な、何ですか」
俺は槍を男の頸へと添える
「お前は誰かに依頼されて、殺したのか?」
「は、はいぃ!その通りですぅ!!」
俺の思った通りだった
「ソイツの名前は」
「そ、それは....」
男が黙り込む
俺は呪力を少し放出し、睨みつける
「ソイツの名前は」
ビクッと体を震わせた後、男はこう答えた
「な、名前は加茂憲倫」
全ての辻褄が合った
何故、俺を襲うのではなく俺の大切な者達を襲うのか。
何故、実力の高い呪術師ではなく、身なりの低い呪術師なのか
何故、全員が加茂家に関わりある人物なのか
全て理解した
“奴は俺の体を欲している”のだと
「そうか」
「た、助けてくれるんですよね!?」
男が俺に縋りつく
「そんな訳ないだろう、死ね」
「はー」
ザシュッと音を立て、俺は男の首を刎ねる。首の無い男の体から血が吹き出し、俺の体を赤色に染めていく
だが、今はそんなことどうでも良かった
「お前が」
ドス黒い感情が心から溢れる
「お前が」
大切な者達の顔が浮かび上がる
「お前が」
死んだ時の苦痛に歪められた顔に変わる
「お前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前お前がぁ!!!!」
赦さない、赦す訳がない
「殺す、お前は必ず俺の手で殺す!!」
ミシリと槍が悲鳴を上げる
「加茂憲倫ィィ!!!!!!」
俺はあらゆる負の感情を込め、奴の名を叫んだ
その後からの記憶は曖昧だった
俺は加茂家に乗り込み、加茂憲倫を殺そうとしたが加茂憲倫は忌まわしいことに俺が来ることを予想し、大量の呪術師達を雇っていた為、逃げられた
そこから俺と呪術師達の本格的な戦いが始まった
血で血を洗うかの様な激しい戦いだった
呪術師の大半は有象無象の群れだったが、御三家は他の有象無象とは格が違った
六眼と無下限呪術を持ち合わせた五条家の当主と膨大な呪力に十種影法術を限りなく限界まで極めた禪院家の当主は殺すことが出来たが、加茂憲倫は殺すことができなかった
いや、
奴はあろうことか人質を用意していた
「す、宿儺様....」
「.....裏梅」
裏梅、俺の大切な者達の中の一人が奴の手によって囚われていた
「さぁ、どうするんだ?私はここで殺しても良いんだが?」
加茂憲倫がニヤリとした笑みを浮かべる
(腹立たしい.....だが)
ちらりと裏梅の方を見る
裏梅はプルプルと震えていた
当然だろう。裏梅の歳はまだ八歳、まだまだ子供だ。そんな子供が明確な死が目の前まで迫っているのだ、平気な筈がない
(クソッ.....)
「.....何が目的だ」
「気付いているんだろう?」
(あぁ、やはりか)
「俺の体が欲しいのだろう?」
「そうさ、私は君の体が欲しい」
加茂憲倫は笑みを深くする
「だからここで自害してほしいんだ」
あぁ、でもあんまり傷つかない様にしてほしいと加茂憲倫は付け加える
(結局、俺はコイツの掌の平で遊ばれていただけなのか...)
「.....分かった。だが、裏梅に手は出すな」
俺は自分の槍の矛を自分の胸へと向ける
「!やめて!宿儺様!!殺すなら私を殺して!!!」
裏梅が涙を流しながらそう叫ぶ
(あぁ裏梅、お前は本当に優しい子だ)
本当なら自分が一番怖い筈なのに、こんな俺の為に自らの命を手放そうとする
(そんなお前だからこそ、俺はお前が大切なのだ)
俺は優しい笑みを浮かべる
「裏梅」
「!!」
裏梅が今にも泣きそうな目でこちらを見る
「達者でな」
ズブリと俺は心臓に槍を突き刺す
「宿儺様ぁ!!」
裏梅が奴の手から離れ、俺へと駆け寄る
「宿儺様!宿儺様!宿儺様!!」
裏梅が俺血を意にも介せずの体を揺らす
(あぁ、汚れてしまった)
「ごめんなさい、ごめんなさい!宿儺様!!私があんな奴なんかに捕まらなければ....」
遂に裏梅はポロポロとその綺麗な目から涙を溢す
「そん、なに泣、くな」
俺は裏梅の顔になるべく血がつかない様にしながら撫でる
「す、くな様」
「そんな、に泣いて、は目が溶けて、しまう、ぞ?」
俺は朦朧とする意識をなんとか保つ
「ごめんなさい私が!!」
裏梅が顔を歪め、更に涙を溢す
「あや、まるな、気に、しなくてい、い」
俺は裏梅の頭を優しく撫でる
「ぅぅぅぅ」
「泣、くな...お前、には、笑顔の方、が似合う」
俺は裏梅の涙を拭う
「裏梅、今ま、でありが、とうな」
「わ、私の、方こそ」
涙をごしごしと拭い、裏梅は笑う
その笑みは頬も少しひきつっており、歪なものだったが、俺にはそれがとても尊いものに見えた
「裏、梅、」
「は、い」
「愛し、ている」
「わ、たしも宿儺様を、愛してーー」
ドスッと鈍い音が響いた
俺は目を見開く
そこには胸から刀が生えた裏梅の姿があった
「は」
刀が裏梅の胸から抜ける
裏梅が重力に従い、地面へと倒れる
「あぁぁぁ」
こんなことを出来るのはこの場に一人しかいなかった
「加茂、憲倫ぃぃぃィィィィ!!!!」
俺は奴を睨みつける
「ハハハ、そんな怖い顔で見ないでほしい」
奴にはこの場にはそぐわない、朗らかな笑みを浮かべていた
「どういうつもりだぁぁぁ!!!」
俺は裏梅の体を抱き締め、奴を更に睨めつける
「なんのことかな?」
奴は惚けた様に笑う
「何故、何故裏梅に手を出したァァ!!」
俺は震える足でなんとか立ち上がり、血に濡れた槍を拾い、奴に矛を向けた
「何故かって?その方が君の呪力は増えるだろう」
「な」
呪いとは人間の負の感情から生まれる
(奴は俺の呪力量を上げる為に裏梅を殺したのか!?)
だが、そこで疑問が浮かぶ
(何故、縛りが効かない?)
「何故、縛りが効かないんだって顔だね」
「!!」
「なぁに、簡単なことさ。私と君は
「は、」
“奴は俺の言葉に一度でも了承を示したか?”
縛りは呪力を持つ者同士で互いの条件に了承を得てからでしか結ばれない
なら、縛りなんて最初から結ばれていなかった
(何故、何故気付かなかった!!)
俺は自分のあまりの無防備さに腹が立つ
「呪いの王宿儺とは案外頭が回らないらしいな」
奴が俺を嘲笑う
(クソッ、もう意識が.....)
俺の視界が段々と黒に染まっていく
(俺は何も成せず死ぬのか....なんと無様なことか)
俺は全てを諦めかけたその瞬間
「宿儺様“生きて”」
裏梅の声が聞こえたかと思うと、俺の意識がクリアになっていく
「な!?」
奴の驚いた声が聞こえる
(これは、呪言...?)
俺は裏梅の顔を覗き込む
裏梅の口には特徴的な紋章らしきものが浮かび上がっていた
(あぁ、本当にお前という奴は.....!)
俺は裏梅を抱き締める
「ありがとうな....!」
「お役に、立て、て本当に、良かっ、たぁ」
裏梅は安心した様な声を上げ、笑う
「宿儺様、私、ちょっと眠いです」
裏梅の瞼が段々と下がっていく
「あぁ、もう疲れただろう。存分に眠れ」
俺はトントンと裏梅の背中を優しく叩く
「えへへ、宿儺様と、一緒ならあん、しんだぁ」
その言葉を最後に裏梅は動かなくなった
「まさか、呪言を使えるとは...だが、今のお前なら私でも倒せる」
奴は不敵な笑みを浮かべ、構える
あぁ全くその通りだ、忌々しいことに今の俺はなんとか生き延びている状態で、今の俺では奴に勝つことなど出来ない
あぁ、そんなこと分かっている
だから俺はある短刀を懐から持ち出す
すると奴の目は大きく開かれる
「まさか、自らを封印するつもりか!?」
そう、この短刀は刺した対象者を一定期間封印するという効果を持つ特級呪物だ
「馬鹿な真似はやめろ!」
奴が短刀を取り上げようとするが、もう遅い
俺はその短刀を心臓に突き刺す
刺した瞬間、急速に俺の力が失っていくのを感じ、重力に従い俺の体は地面へと倒れる
視界は段々と黒に染まる中、俺は力を振り絞る
「待っていろ。どれ程、時が経とうと俺はお前を赦さない。必ず貴様を殺してみせる。必ず、必ずだ」
俺は俺自身へ
そして、俺の意識は闇に呑まれた
パチリと目を覚ます
「.....随分と昔の夢を見たものだ」
俺は俺の生得領域で眠っている小僧を見下ろしながらそう小さく呟いた
今から千年以上の出来事
だが、今でもハッキリと覚えている
いや、忘れることなど出来る訳がない
あの時の無念も、後悔も、恨みも忘れることなど出来る訳がないのだ
「必ず、仇は取ってやる」
そう言い、俺は近くにある頭蓋骨を優しく撫でた
『宿儺様』
裏梅の声が聞こえた
バッと振り返るがそこには誰もいない
「幻聴か.....」
俺は少し落胆しながらそう言う
「俺はお前等と同じ場所へ逝けるだろうか」
俺は空へと手を伸ばす
「いや、逝ける訳ないか....」
俺はそう言い、生得領域の奥へと進んでいく
『待ってます』
また、声が聞こえた
「.....お前は優しすぎる」
俺はそれだけ言うと、更に奥へと進む
(必ず、必ずだ。仇は取ってやる。例え、どんな手段を使ってでも、この身が朽ち果てようとも)
俺は心の中で自らへとそう誓った
御覧頂きありがとうございました。前話でちょくちょくランキング入りしてたことに驚いた作者です。投稿ペースは未定ですが、寛大な心で待って頂ければ幸いです。では次でお会いしましょう
次はどの話を見たい?
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吉原順平との出会い、真人との戦い
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京都姉妹交流会
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壊相、血塗との戦い
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渋谷事変
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宿儺の過去(ほのぼの)