両面宿儺成り代わり   作:五月雨@ノン

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アンケートで吉野順平との出会いと真人との戦いの票が多かったので前編と後編に分けます。


分岐点 前編

 

「ストォープッ!!!」

 

小僧の大きな声が俺の生得領域内に響きわたる

 

「.....喧しいな。一体何事だ」

 

俺は意識を少し集中させ、小僧の目を通して外の様子を伺うとそこには髪で片目が隠れている大人しそうな男が驚いたようにこちらを見ていた

 

(吉野順平か)

 

“吉野順平”呪術廻戦に登場するキャラで里桜高校に通っており、同級生から様々なないじめを受けている中で特級呪霊である真人と出会い、最終的には真人の手によって殺されるという悲惨な人生を送った人物だ

 

(ということは今は三巻辺りか)

 

「待て!今は俺が話してるだろ!!」

 

丸々と太った醜い男が声を荒げ、小僧の肩をドンと押す

 

「あーいや、かなり大事な用事でして」

 

小僧が困ったように眉を下げ、醜い男の方を見る

 

「大事な用!?子供がなに言ってんだ!!」

 

小僧からカッチーンと効果音が聞こえたような気がした

 

「大体、どこの制ふー」

 

ガッと小僧がその男のズボンを掴んだかと思うと、次の瞬間小僧はズルンとその男のズボンを下げた

 

「くっ」

 

男は間抜けな顔を晒す

 

「く、くくくくく」

 

俺は思わず口から笑いが溢れる

 

「何すんだこのガキ!!やめっ、やめなさーい!!」

 

小僧が男のズボンを完全に脱がせ、それを持ったまま逃走する

 

「持ってかないでー!!」

 

男がハッとしたように小僧を追いかけるが小僧はもう既に一周をし、吉野順平の背後に登場する

 

「そんじゃ、行こうぜー」

「え、はや!!」

 

吉野順平が目を先程の時よりも見開き、こちらを見つめていた

 

「...あんなことわざわざしなくても、僕だけ引っ張っていけば良かったんじゃ...」

「んーまぁそうだけど、お前アイツ嫌いだろ」

 

吉野順平がギクリと肩を震わせる

 

「なんで...」

「なんとなく、違った!?」

「違くないけど....」

 

吉野順平がおどおどとした態度でそう答える

 

「嫌いな奴にいつまでも家の前にいてほしくねーだろ」

 

小僧がそう言うと、吉野順平のほの暗い黒い瞳の奥から光が灯ったように見えた

 

小僧達が近くにある河川敷へと移動していく中、俺はあることを考えていた。それは吉野順平という男を俺は見殺しにするかそれとも生かしておくべきかということである。吉野順平を生かす上でのメリットは呪術師側での戦力が多少だが増えること、そして小僧に縛りを結ぶチャンスができること。デメリットは吉野順平を生かすことによって今後の流れが原作からかけ離れた物になってしまう可能性があること。

 

(奴を確実に倒すのなら戦力はいくらあったって困るものではないが....問題は吉野順平を助けた後の奴の動きがどうなるかだ)

 

俺は小僧と吉野順平の会話をBGMにしながらウンウンと少し唸りながらも考える

 

(どうするべきか....)

 

ピリ

 

バッと俺は小僧の体を通して外を見る

 

(忘れる訳がない!この気配、この呪力は.....!)

 

辺りを見渡すと橋に黒いフードを被った怪しい男がこちらを見つめているのが分かった。ピキリと俺の額から青筋が浮かび、俺の目はこれでもかと開かれる

 

(見つけたぞ、加茂憲倫.....!)

 

体から思わず禍々しい呪力が大量に溢れ出し、第三、第四の目が開かれる。

 

加茂憲倫は暫くこちらを見た後呪霊を呼び出し、その呪霊を使ってどこかへと去っていった

 

(今に見ていろ.....俺が必ずお前を殺す)

 

俺は三回程深呼吸をし、昂る気持ちをどうにか抑えつけた後に俺は再度小僧達の会話に耳を澄ます

 

どうやら映画の会話でかなり仲が深まったようだった

 

「アレ?順平」

 

女の声が聞こえたと思うと吉野順平がバッと声のした方向に振り向き、驚いたように口をポカンと開ける

「珍しいね」

「母さん!!」

 

(母さんということは吉野凪か)

 

“吉野凪”吉野順平の母親であり、後に真人の策略により呪霊によって殺される人物だ

 

「友達?」

「さっき会ったばかりだよ」

「さっき会ったばっかだけど友達になれそーでーす」

 

小僧達が次々と話していき、小僧の腹がまるで地鳴りかのような音で辺りへと響き渡る

 

「嫌いなもんある?」

「ないっス!!」

 

小僧が吉野凪に連れられ、吉野宅へと移動していく

 

小僧と吉野順平が歩きながら話しているのを優しい目で吉野凪は見つめていた

 

その目を見て、俺は何故か婆さんを思い出した。全く面影の欠片もないのにその慈愛に溢れた目だけはどこか婆さんの面影をちらつく

 

(婆さん....)

 

俺は思わず感傷に浸る

 

そうする内に小僧達は吉野宅へと到着し、吉野凪が夕飯の準備をし始めた

 

「今更だけど、ごめんな!夕飯ご馳走になっちゃって」

 

パチンと小僧が謝る

 

「ううん、別に良いよ」

 

吉野順平がニコリと笑みを浮かべる

 

「ありがとな!お前ん家のお母さんって良い人だな」

「うん。僕には勿体無いぐらい良い人だよ....」

 

吉野順平がそう言うと小僧が首を傾げる

 

「お前も充分良い奴だろ」

「そんなことないよ」

 

吉野順平が困ったように眉を下げる

 

「いやいや、そんなことあるってば!俺こう見えても人を見る目はあるって自称してるから!」

「フフッ、なんだよ自称って」

「今、俺もそう思った」

 

ハハハと小僧達から笑い声が溢れる

 

「はーい。夕飯出来たわよー」

「お!ありがとうございます!」

 

コトリとテーブルに皿が置かれる

 

「お母さん?これ何....?」

「見れば分かるでしょ、納豆オムライスのキムチ和え」

「納豆オムライスのキムチ和え!?何てもん作ってんの!?」

「お、意外といける味だ」

「そうでしょ?ほら速く順平も食べちゃいなさい」

「なんで悠仁は食べれるの....?僕がおかしいの??」

 

ワイワイと食卓が先程よりも賑わう

 

(爺さん、婆さん)

 

俺の脳内に嘗ての記憶が流れる

 

『ほれ、宿儺ももっと食べなさい。そして、今よりももっと大きくなるのよ』

『そうじゃ、お前はもっと食べて儂のように強い男になるんじゃぞ』

『ふん、そう言う貴様はこの間畑で腰を抜かして動けなくなっていたのだが?』

『う、うるさい!ほら食べなさい!!』

『貴様が食べろ』

『いや、お前が食べなさい!』

『貴様が』

『お前が』

『うふふ、本当に仲が良いわね』

 

脳内にちらつく嘗ての暖かい日常を重ね、俺は無意識にそこへと手を伸ばすが途中で手を引っ込める

 

(今更、こんなに血にまみれた手で掴んでいい筈がない)

 

フッと自嘲めいた笑みを浮かべ、腕を組み直す

 

(だが、)

 

チラリと小僧達の様子を見る

 

(この光景を失うのは惜しいな)

 

俺は思わず目を細め小僧達の様子を見続ける。そこには俺が失った家族の暖かさに包まれていた

 

(俺はどうすれば良いのだろうか)

 

そして、また俺は頭を抱えウンウンと唸り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「順平もソイツ等と同じぐらい馬鹿だよ」

 

真人がニヤリとした笑みを浮かべる

 

「だから死ぬんだよ」

 

背後へと現れた真人が吉野順平の肩に手を置くと、グニャリと吉野順平の形が変わる

 

「なっ!?」

 

小僧が目を見開き、驚きの声を上げる

 

(これが真人の無為転変....)

 

俺はそれを自分でも驚く程冷静に順平が形を変わっていくのを見ていた

 

「さぁ、ラウンド2だ」

 

吉野順平だったものがこちらへと突っ込んで来る

 

「ッ!」

 

小僧がそれを持ち前のフィジカルで受け止める

 

「さぁ、どうするんだい虎杖悠仁?順平はまだ生きてるよ?両面宿儺に頼れば治してくれるかもしれないよ?」

 

真人が小僧を煽るようにそう言う

 

「なぁ、宿儺」

 

小僧が声を震わせながら俺に問う

 

「順平を治せるのか....?」

「......あぁ」

 

俺は反転術式で他人を治療することが可能だ。それが例え今の吉野順平のように形を変えられても俺はそれを治すことができる

 

そう言うと小僧がバッと顔を上げる

 

「なら順平を治してくれ!!」

 

小僧が目に少し涙を浮かべながら、悲痛に満ちた声で俺に頼み込む。その姿を小僧を指を指しながら真人がケラケラと笑っている

 

「......」

 

俺は答えられずにいた

 

「ぁぁぁぁぁあ」

 

痛みに悶えるような声が聞こえた

 

「順平!?大丈夫か!?」

「ぃぃィいたぃぃィィ゛」

 

吉野順平だったものが涙をポロポロと流していた

 

「お、言い忘れてたけど順平の改造は完璧じゃないからもうすぐ死んじゃうから治すなら速めにしといた方がいいよぉー」

 

真人がニヤニヤとした笑みを浮かべ、そう言う

 

「ッ!宿儺!頼むよ!順平は俺の友達なんだよ!!」

 

小僧の悲鳴にも似た叫び声が俺の生得領域内へとこだまする

 

(どうする!俺はどうすればいい!?)

 

選択の時はもうすぐ目の前まで迫っていた

 





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