Re:SAO ~return recollection~   作:寄す処の空

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第十一話 決別

「一番乗りー!」

 

 階段を昇りきるとぴょんっと跳び、こちらにVサインをしてくる。

 前線に立って攻略組に参加して、子供らしからぬ場面ばかりだったがこういう所を見るとやはり年相応だなと感じた。

 

「シリカは可愛いな、ほんと」

 

「わーっ、今絶対バカにしました!」

 

「してないよ、してない。容姿相応というか」

 

「隠す気ありませんよね?!」

 

「まあまあ」

 

 近づいてくるシリカの頭を押さえ、手の届かないところまで離す。

 何をしようとしたのかは分からないがここは一応圏外。

 傷なんかつけられたら即シリカはオレンジプレイヤーだ。

 恐らく彼女も分かっているだろうが、念には念を。

 今ここでオレンジになっては先が面倒だ。

 

「はいちゃんと前見て、モンスターが寄ってきたよ。逃げるのもいいけど後から来る人たちに迷惑はかけられないよ?」

 

「罰としてシオンさんが全部倒してください」

 

「そんな無茶な。俺だって疲れてるんだぞ?」

 

「今更無茶とかないですよ、いつも無茶してるんですから」

 

「もうちょっと大人を労わってくれよ」

 

 ため息をつくとストレージから武器を取り出す。

 

 ”彗星の太刀”

 

 ボス戦の終盤で急遽使った武器だ。

 最初は筋力要求値に満たしていなかったため装備する事が出来なかったが、無理やり筋力を増強したことでなんとか装備する事ができたもの。

 元々鍛えまくったものを後まで使っていたため茅場がよこした初期ステータスのこの武器は極振りすればギリギリ装備の出来るものだった。

 とは言っても他の防具に頼って筋力を増強したところまであるので正直この武器を手放してもっと別のステータス振りにした方が良いのも事実だ。

 まあそこは愛刀を前に抗えなかった本能ということで。

 

 刀本来の使い方をするにはまだステータスがアンバランスだが、ソードスキルを使ってしまえば勝手に動くし、重心を少し工夫するだけでそれに近い動きは出来る。

 今シオンの持っている武器の中ではこの武器が圧倒的に強かった。

 

「その武器はなんですか?ボス戦のときも見ましたけど、スキルも含めて知らないものでした」

 

「ああ、これは刀だよ。この武器の説明は出来ないけど、さっき使ったのは刀スキル。曲刀(きょうくとう)スキルの熟練度をマックスまで上げたら出てくるものだよ。恐らく俺が初めて見つけたスキルだと思う」

 

「それってすごいじゃないですか!しかも、曲刀スキル限界まで上げたんですか?!私なんて、短剣でもまだ400くらいなのに」

 

「まあ迷宮区でずっとちまちま振ってたからね」

 

 シリカの驚いた顔に苦笑いする。

 それもそのはず、シオンはレベリングの際ほとんど曲刀を使っていた。

 シリカとのレベルに大した差が無いのも、レベル上げというよりかは武器の熟練度をあげることを優先していたため。 

 理由は自分に馴染んだ近接スキルを手に入れるためだ。

 彗星の太刀が持てる云々の前に、このスキルだけは習得したかった。

 それに、熟練度を上げる事でウェポンスペシャリストへの道にもつながる。

 一石二鳥とはこのことだ。

 

「じゃあそこで見学してて。危ないと思ったら助けに来てよ?俺もこんなところじゃ死にたくないから」

 

「こんなところじゃ?」

 

「そこはさらーっと流してよ、嫌な大人になっちゃうぞ」

 

 シリカにアイコンタクトをし、モンスターの群れへと走る。

 本当に冗談のつもりで言ったのだが、シリカは最後の一言を取ったのだろう。

 心配しなくても、SAOにいる間はどんなところでも死にたくはない。

 

 

 ……彼女を守るためなら、あるいは。

 

「よいしょっと」

 

 襲い掛かってくるモンスターの群れ目掛けて太刀を薙ぎ払った。

 

 

 

 ■ □ ■

「お疲れ様です!」

 

「ああ、お疲れ様」

 

「……おつかれ」

 

 第二層『ウルバス』の一角、酒場にて第一層ボス討伐祝勝会が開かれた。

 と言っても、一層から来たボス攻略に関係のない人や、酒樽担いでわーわーやってる人やらで名前を建て前にただ騒いでいるだけである。

 最初はこのテンションに乗ろうかと思い踏み出したが、結局端っこで小さく四人で固まっていた。

 

「どうしたシオン、お前も言えよ」

 

「いやもう、ほんとに疲れてるとそんな言葉も出ないんだよ。……はぁ、結局俺はこっち側かぁ」

 

「あっちはなんだか騒がしいですね」

 

 シリカの見る先、ディアベルとキバオウが酒樽を担いで何かを言っていた。

 どうせどっちが多く飲めるかとかそんなところだろう。

 何考えてるんだかというのが正直なところだ。

 あんなんでよくディアベルは仲間が出来たと思う。

 あんなんだからこそ、というのもあるかもしれないが。

 

「まあ今日くらいはいいんじゃないか?明日になれば各々また動き出すよ」

 

「だといいんだがな」

 

 手に持つグラスをくっと持ち上げ、残りを全て飲み干す。

 まだ二層のため飲み物の味も高級といったものでは無いが、これも一応酒だ。

 

「あんた、酒飲める歳なのか?あんましそうは見えないけど」

 

「おいおいキリト君、ここでリアルのことを聞くのはだめだぞ?それに君みたいなベビーフェイスには言われたくない」

 

「誰がベビーフェイスだよ。それに、別に個人情報ばんばん聞き出そうとかそういうのじゃねえから」

 

「まあ、この世界なら誰でも酒は飲めるよ。ゲームの中なら肝臓は悪くなんないし、酔いを味わえていいんじゃね?キリトも飲むか?」

 

「いや、俺はいい」

 

 差しだしたグラスをキリトが手で制す。

 キリトの歳ではまだ酒の匂いは臭く、おいしくないと感じる歳なのだろう。

 発言や態度は十分だがやはりそういったところはまだまだ子供だ。

 

「アスナさんは飲む?」

 

「私もいらない」

 

「そう?そう言われると俺も飲んでるのがおかしく見えるな」

 

 周りがお酒を飲んでいない状況に場違い感を覚え、手にしたグラスをそのまま地面へと投げた。

 地に落ちたグラスは耐久値を失い、中身ごと消滅する。

 

「シオンさん、片づけ方が雑ですよ。もっとちゃんと店員さんに」

 

「だってめんどいじゃん?それに、店員さんも休めるしね」

 

「良い風に言ってますけどほとんど前者ですよね」

 

「分かってるねーシリカはー。ほーれうりうりー」

 

「や、やめてください!」

 

 髪をわしゃわしゃと触り、ちょっかいを出す。

 何杯か飲んでいたため完全にアルコールが回ってしまっていた。

 その手から逃れようと頭を振るが、シオンはそれを逃がさない。

 

「こいつ絶対酔ってるな……ロリコンか」

 

「んだとキリトォ」

 

「げっ、聞こえてんのかよ」

 

「お前もされたいってかー?」

 

「うわちょっ、来んな!」

 

 シオンとキリトはそのまま走り去って行き、人混みへと姿を消した。

 そんな二人を見てアスナはフードの向こうでため息をついている。

 

「あの、アスナさん」

 

「ん?」

 

「アスナさんってその、女性の方ですよね」

 

「……そうだよ」

 

「やっぱりそうですか!あ、あのですね、良かったらフレンドになってもらえませんか!その、このゲーム女性の方が少ないので。む、むりにとは言いませんけど」

 

「いいよ」

 

「ほ、ほんとですか!で、では」

 

 慌てた様子でアスナへとフレンド申請を送る。

 よほど嬉しいのか、アスナが承認を押すまでずっと彼女のことを見ていた。

 そんなシリカにもアスナはため息を吐く。

 

「敬語とかいいよ。私もシリカちゃんとは仲良くしたいし。よろしくね」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「ふふっ」

 

 手を取りぶんぶんと上下する姿を微笑ましそうに見ていた。

 現時点ではシリカの方がアスナよりもレベルが高い。

 だが、可愛い妹が出来たようでアスナもそれが嬉しかった。

 気付けばアスナのフードは消えていて、彼女の姿を見てまた驚いたとか。

 今日の夜はみんな騒がしかった。

 

 ■ □ ■

 祝勝会の翌日、二階の宿から降りてみると案の定ほとんどのプレイヤーが酔い潰れていた。

 その中にディアベルがいることが少し残念である。

 

「おっ、おはようキリトとアスナさん。偶然?それとも一緒に寝てた?」

 

「一緒に寝るわけないだろ。シリカはどうしたんだ?」

 

「あの子はまだ子供だからね。ぐっすりだよ」

 

「お前もしかして一緒に寝てるのか?」

 

「まあね。俺はあの子の保護者ってことで」

 

「あの子は何歳なんだよ」

 

「またマナー違反か?」

 

「ちげーよ、一応だよ一応」

 

「……12だよ、あの子」

 

「はっ……?」

 

 答えが返ってきたことに驚いたのか、その答えに驚いたのか。

 キリトの気持ちは良く分かる、シオンだって昔はそうだったのだから。

 始まりの街にいるならまだそんな驚きはしないところだが今彼女は立派なトッププレイヤーなわけで。

 

「あんまり気にしては無かったけど、やっぱりいるんだなそういうのって」

 

「始まりの街にならどっさりいるんじゃない?詳しい人数とかは知らないけど珍しい話でもないよ。大体がお金持ちのボンボンの子供とかだろうけどね。そもそもゲームのR12なんて守らないのがほとんど。キリトだってきっと小さいころにR12のゲーム、下手したらそれ以上のを買ってるはず。ハードが超高級品なうえ数量限定だから一般のご家庭の子はそんな簡単に買える代物じゃないだろうけど、金持ちなら話が変わってくる。親がどうしてるのかは知らないけど、いないなんてことは間違いなくないよ。サービス開始初日からゲームを始めてしまったというのが悔やまれるところかな」

 

「お前、それを知ってて」

 

「知ってたさ、ずっと前から。でも、もう彼女はそれを言っても止まらないよ。俺としてはいますぐにでも始まりの街に戻ってほしいけどね」

 

 もちろん、この世界のシリカから年齢を聞いたことは無い。

 前の世界で本人から聞いたものだ。

 その時はもう一年以上が経過していたはずだから、一応13くらいの歳ではあったはずだが、性質上アバターの姿は変わらない。

 こんな子供が大の大人に騙された挙句殺されかけたなんてどこの次元なら許される話だろうか。

 ゲームだからごめんなさいなんてそんな話で済まされるものでは無い。

 

「これからずっとシリカを前線に置くのか?」

 

「俺がいる限りはそうかもね。仲良く手繋いで始まりの街に行こうなんて提案したらもしかしたら受け入れてもらえるかもだけど。あーでも、見損ないましたなんて言われたら結構傷つくなー」

 

「いや俺は冗談を言ってるわけじゃ」

 

「分かってるよ。なあキリト、お前はアスナさんといつまでコンビ組む予定だ?」

 

「え?とりあえず十層までは。それ以降は彼女次第だな」

 

「そっか。……じゃあさ、一つ頼みがあるんだけど」

 

「なんだ」

 

「今日からシリカを、キリトとアスナのコンビに混ぜてもらえないか?」

 

 

 

 

 

 

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