ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2020年12月22日)
『100秒後に、地下チャンバーの出入口を完全に封鎖します。
ロックが解除されるのは、およそ100年後となります。
施設内のレプリは、地下フロアに立ち入らないでください。
まもなく、カウントダウンを開始します。』
ああ、いよいよだ。
このカプセルで、オレは今から、100年という時を越えようとしている。
こうして、暗闇の中に独りで横たわっていると、まるで棺桶にでも入ったようだな。
ちょっと狭いが、今度こそ、ゆっくり眠れるだろうか。
……また夢の中で、あの謎の老人に会わなければいいが。
『99・98・97・96……』
このことがバレたら、みんなはどうするだろう。
シグナスは、職務放棄だと怒るかもな。
ダグラスにエイリア……いろいろと世話になったが、挨拶も無しですまない。
とはいえ、ハンターベースとの通信回線は切れているし、もう文句は一切受けつけられないが。
自分という存在の危険性、生み出された本当の目的……それらを知った今、もうこれ以上、彼らと共に在ることはできないと思う。
……というのは、逃げだろうか、言いわけだろうか。
ともかく、オレは、この『現在』から、遠く離れることを決めた。
いまだ傷の癒えない世界と、疲れ果てながらなお戦いつづける仲間たちを残して。
キミはどう思う、エックス……
卑怯者と呼ばれても、仕方ないよな……
『――カウントダウンを一時停止します。』
……何事だ?
『施設内において、何らかの異常が発生した模様です。』
何だと、まさかイレギュラーか?
『全てのレプリはその場で待機。その後、指示に従って行動してください。』
それとも、残留ナイトメアウイルス……?
くそっ……事によっては、オレが出ていくしか……
『――あー! あーあー!』
……ん?
『ゼロ! ゼロ、聞こえるかい!』
ま、まさか……?
『やっと見つけた! ゼロ、オレだよ! エックスだ!』
エックス……? エックスが、ここに……?
そ、そんな……なんで、ここがわかったんだ? なんで、アイツが放送設備を……?
『今、オレはモニタールームに居る。ここの科学者たちに、ちょっとの間だけ、協力してもらってるんだ。』
協力って、おいおい……それは、脅迫してるってことじゃないだろうな……!
『なぁ、ゼロ、どういうつもりなんだよ! 100年……100年もそこに閉じこもるなんて、本気じゃないだろう?』
チッ、なんてこった……このオレとしたことが……
『キミがまだ眠ってないのは、わかってるんだ! 今なら、そのカプセルの中の非常ボタンを押せば、出てこられる!』
こんなに早く……それも、よりによってエックスにバレるなんて……!
『大丈夫だ、シグナスたちはこのことを知らないよ! ここに居る科学者たちも、余計なことはしないでくれるし!』
って、やっぱり脅迫してるんじゃないのか!
『……まだ、戦いが続くんだ! この世界も、ハンターベースも、キミを必要としてるんだよ! さぁ、一緒に戻ろう!』
ああ、やめてくれ……
『ゼロ……聞こえてるだろう……?』
聞こえてる、聞こえてるさ……だが、キミのその要求には、もう応えられそうにない……
この世界には、キミさえ居れば心配は無いはずだ……以前よりもずっと強く、成長し進化した、今のキミさえ居れば……
『それに……オレにだって、キミが必要なんだ! これまでだって、ずっと二人で戦ってきたじゃないか! なぁ、返事してくれよ……!』
やめろ! そんなこと、今、言うな!
早く、早く眠らせてくれ……!
『……ごめん、ごめんよ、ゼロ。
こんなふうに、すぐキミを頼ろうとしちゃって……
キミだってつらいはずなのに、オレ、いつもこんな調子でさ……
キミの気持ちを考えたら、もっとしっかりしてなきゃいけなかった……
……アイリスのことや、もうひとりの自分の存在に、キミが苦しんでるのを、オレは知ってたんだ……
それなのに……何もできなくて……力になれなくて……
本当に……本当にごめん……! ずっと一緒だったのに、オレって、無力だよな……
だけど……こんなのは、イヤだ……! こんなふうに別れるなんて、耐えられない……!
置いていかないでくれ! 頼む……!
なぁ……何とか言ってくれよ、ゼロ……!』
あー、エックス……やっぱり、変わらないんだな……
第17部隊で出会った時から、本当に、キミはずっとそんなふうだ……
なぜ、そんなに、危険なまでに、優しくなれるんだ……
イレギュラーに――このオレに対してさえも……
そう、もしかしたら……
あの老人が『最高傑作』と呼ぶ、オレの中のもうひとりのオレは……
キミのおかげで、長い間、目を覚まさずにいられたのかも知れない……
キミだけが持つ、戦場では命取りになりかねないような、その優しさのおかげで……
全く……オレも、自分で思う以上に、キミを必要としてたんだな……
でも……もう、それも終わりだ……
『……応えてくれないのか、ゼロ……
ここでオレが、10の、100の言葉を尽くしても、キミの心が変わる可能性は、0なんだね……』
エックス……すまなかったな、オレの方こそ……
これで、本当にお別れだ……
『――確認作業が完了しました。
施設内に、異常は発見されませんでした。
カウントダウンを再開します。
49・48・47・46……』
カウントが戻った……
やっと、あきらめてくれたか……
『ゼロ、聞こえるかい? 聞こえてなくても、聞いてくれ!』
な、何だ、今度は直接……?
チッ、プライベート通信回線を切り忘れてたか……?
何やってんだ、オレは……未練は無いつもりだったのに……
『オレは、キミに約束する。キミが居なくても、独りきりになっても、あきらめずに戦う。
そして、100年経ってキミが目覚めた時には、この世界を理想郷にしてるんだ。
人類もレプリロイドも共に生き、共に繁栄する、真に平和な世界。
そこではもう、キミの剣もオレのバスターも必要ない。
そんな世界を、必ず造るから! そこで、また会おう! 必ず……!
それまで、オレのこと……忘れないでくれ……!』
全く、なんてヤツだ……こんな時に、夢物語みたいなこと言いやがって……
でも、不思議だ……なぜか、キミの言葉なら……
ほんの少しだけ信じてみてもいいかも知れない、そんな気がする……
例え、不確かな未来でも、そこに希望があるなら……
夢物語に賭けてみるのも、悪くはないかもな……
『だから、さよなら、じゃなくて……
その時まで、おやすみ、ゼロ。』
ああ、おやすみ、エックス……
どんな未来が待っていても、そこで、もう一度会えるまで……
『――5・4・3・2・1・0!』
(完)