ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年2月14日)
オペレーションルームで、ハンターたちの帰りを待つ三人娘。
エイリア、レイヤー、パレット:
(ため息をつく)はー……
パレット:
(そわそわと)んもーう、遅い! アクセルってば、遅い! 任務はとっくに終わってるのに、メンテとかシャワーとか、まだ済まないのかしら……!
エイリア:
落ち着きなさいよ、パレット。ちゃんと、約束はしてあるんでしょう?
パレット:
そうなんですけど……プレゼントには、ベストなタイミングってものがあるんですよぅ!
レイヤー:
(おろおろと)ゼロさんも遅いわ……忍び道具の点検、ずいぶん長くないかしら……
エイリア:
大丈夫よ、レイヤー。きっと、もうすぐ済むわ。いっそ、保管室の近くまで行ってみたら?
レイヤー:
(真っ赤になって)そ、そうですね……
パレット:
(心配そうに)それにしても、エックスさんもなかなか来ないですねぇ。
レイヤー:
レポートをまとめてるんですよね? 確かに、今日は事件が多かったですけど……
エイリア:
戦闘と違って、あまり得意じゃないみたいなのよね。まあ、終わったらここへ来るはずだから、気長に待つわ。(ゆったりと、ホットココアのカップを口に運ぶ)
レイヤー:
(立ち上がって)……よし! 決めました。ゼロさんはここへは戻らないかも知れないし、保管室の近くで待つことにします。恥ずかしいけど……思いきって、行ってみます!
パレット:
(立ち上がって)ア、アタシも、アイツを迎えに行く! ここで待ってたら、取り返しのつかないことになっちゃいそう!
エイリア:
うふふ、行ってらっしゃい。二人とも、どうだったか明日教えてね。
レイヤー、パレット:
はーい! 先輩も頑張ってくださいね!
レイヤーとパレットは、慌ただしくオペレーションルームを出ていく。
エイリア:
(二人を見送って)……気長にって言っても、このココア、3杯めなのよね。エックス、まだかしら……
やがて、オペレーションルームにエックスが入ってくる。
エックス:
(驚いて)……あれ、エイリア? どうしたんだい、まだ仕事?
エイリア:
(4杯めのココアをデスクに置いて)ああ、エックス。レポート終わったの? 待ちくたびれちゃったわ。
エックス:
え、オレを待ってたの?
エイリア:
ね、エックス……今日って、何の日か知ってる?
エックス:
今日? 2月14日……?(はっとして)あ、バレンタインデーか……!
エイリア:
うふふ、正解!(プレゼントの包みを差し出す)
エックス:
エ、エイリア……キミが、オレに……?
エイリア:
……大したものじゃないけど、『プリムローズ』のチョコよ。受け取ってくれるかしら……?
エックス:
も、もちろん! もちろんだよ、ありがとう……!(喜んで受け取る)ごめん。このために、待っててくれたんだね。
エイリア:
ううん、いいのよ。……いつも、任務お疲れ様。これからも、よろしくね。
エックス:
あ、あのさ、エイリア。この後、何か予定とか、あるのかい……?
エイリア:
ううん、何も無いけど……
エックス:
本当? それなら、これから一緒に『ホテル・グランドルミネ』に行ってみない?
エイリア:
えっ?
エックス:
(照れながら)その……スカイラウンジでカクテルなんて、どうかなって。たまには、ゆっくり話したいと思ってたんだよ。キミと、仕事以外のことを、いろいろ。
エイリア:
(ドキドキして)エックス……ほ、本当に……? うれしいわ! ぜひ連れてって!
エックス:
よ、よかった! それじゃ、すぐ出られるかな?
エイリア:
あ……ちょっと待って!(急いで支度を始める)なんだか、緊張しちゃうわ。ホテルなんて、めったに行かないし!
エックス:
オレもだよ。任務の時以上に、気合を入れなくちゃ。でも、エイリアと一緒なら平気だ!
エイリア:
ええ。私もよ、エックス!
ゼロへのプレゼントを手に、忍び道具保管室にやってきたレイヤー。
レイヤー:
失礼します。あの、ゼロさんは居ますか?
忍び職員:
いや、ゼロさんなら、さっきメディカルルームに行きましたよ。
レイヤー:
(驚いて)えっ、メディカルルーム?
レイヤーは慌ててメディカルルームへ向かう。ちょうど、右手にバンデージを巻いたゼロが出てくる。
レイヤー:
ゼ、ゼロさん……!
ゼロ:
ん? レイヤーか。どうした?
レイヤー:
(あたふたと)あ、あの、大丈夫ですか?
ゼロ:
な、何が……?
レイヤー:
そ、その手……! 大変、ケガしてるんですか? 保管室で事故でも……はっ、まさか、イレギュラーが潜んでいて、襲われたとか……!
ゼロ:
(慌てて)お、おいおい、何を言ってる? 落ち着いてくれ、なんでそう思ったんだ?
レイヤー:
ち、違うんですか……?
ゼロ:
(ため息をついて)はー……いいか? こんなかっこ悪いこと、正直に言いたくはないがな。この手は、忍び道具保管室のシャッターに挟んじまったんだよ! 古くて歪んでるせいか、なかなか閉まらなくてな……
レイヤー:
(安堵すると同時に、また慌てる)そ、そうでしたか……って、大変! だ、大丈夫ですか? 手が、剣を握る手が……!
ゼロ:
だから、落ち着けって! 今夜ひと晩、こうしとけば充分だ!
レイヤー:
(ようやく落ち着く)ほ、本当ですか……
ゼロ:
(くすりと笑って)全く……キミは任務の時以外でも、オレのことを心配してくれるんだな。
レイヤー:
(赤くなる)そ、それは……
ゼロ:
……で、何か用か?
レイヤー:
(我に帰って)はっ……そうでした……! あの、ゼロさん、今日が何の日か、わかりますか……?
ゼロ:
ん?(真剣に悩む)2月14日……? 何だ? イレギュラーハンターの創立記念日とかじゃないことだけは確かだな……
レイヤー:
や、やっぱり……あの、今日は、バレンタインデーです!
ゼロ:
バレンタイン……? ふむ、チョコレートがどうとかいう日か。
レイヤー:
あ、あ、あの、ゼロさん、チョコはお好きですか……?(包みを差し出す)よ、よかったら、召し上がってください! 『パティスリー・ノア』の抹茶チョコです!
ゼロ:
(驚く)オ、オレに……? こ、このために、探しに来てくれたのか……?
レイヤー:
は、はい……!
ゼロ:
(困って)そうか、残念だ……
レイヤー:
(ひどく失望する)えっ……?
ゼロ:
キミの気持ちはありがたく受け取りたいが、この手では……
レイヤー:
(はっとして)あっ……そ、そうですね……
ゼロ:
すまんが、食わせてくれるか。
レイヤー:
(一瞬、電子頭脳がフリーズしたようになる)……つまり、それは……私が、この手で、ピックに刺して……『はい、あーん』と……そういうことですか……
ゼロ:
そういうことだ。頼む。
レイヤー:
……(顔を真っ赤にして頭から煙を出しながら、本当にフリーズして立ちつくす)
ゼロ:
お、おい……しっかりしろ、レイヤー! 何だ、この体温の異常な高さは? オーバーヒートでもしてるのか? と、とにかく、メディカルルームへ……!
メンテナンスルームを目指すパレット。途中で、前からアクセルが現れる。
パレット:
あー! アクセル!
アクセル:
あれ、パレット?
パレット:
(駆け寄る)もうー、遅い! 約束、忘れたの?
アクセル:
(頭を掻いて)ご、ごめんごめん……忘れてないけどさ。その……メンテして、シャワー浴びたら、つい気持ちよくなって、ちょっと寝ちゃったんだよね……
パレット:
(呆れる)はあぁぁ? 何ソレ、信じられない!
アクセル:
(必死に手を合わせて)ごめん! 本当にごめん! 最近、出撃しっぱなしで、疲れてたしさ……
パレット:
(アクセルの手を掴む)と、とにかく、行くわよ! 時間が無いんだから!
アクセル:
ひえっ! ど、どこへ?
パレット:
屋上!
パレットとアクセルを乗せたエレベーターは、屋上に向け上昇していく。
きらめく街明かりに囲まれる、ハンターベース屋上。
パレット:
(紙袋を差し出す)はい、バレンタインのプレゼント! キミが遅刻したから、ベストタイミングは逃したかも知れないけど!
アクセル:
(慌てて受け取る)あ、ありがとう……ベストタイミングって、何?
パレット:
ソレね、『アバランチ・イエティ』のチョコアイスなんだよ! 食べたいって言ってたでしょ?
アクセル:
(驚く)えっ、マジで?
パレット:
だから、一緒に食べようと思って、自分のも買っといたの!
アクセル:
(慌てて)そ、それじゃ……早くしないと、溶けちゃうじゃん?
パレット:
そうよ、早く早く!
二人は慌ただしくカップを取り出し、蓋を開ける。中身のアイスクリームは、かなり柔らかくなっている。
パレット:
あー、やっぱ過ぎてる……
アクセル:
(スプーンでアイスを口に運びながら)でも、おいしいよ。むしろ、このくらいがちょうどいいんじゃない?
パレット:
(同じく、アイスを口に運びながら)うん、おいしいけど……やっぱ、残念……
アクセル:
え?
パレット:
(切なく)だってさ……バレンタインの日に、屋上で、キラキラする街を眺めて、話題のお店のアイスを、キミと一緒に食べる、って……本当は、もっとロマンチックになるはずだったんだよ。なのに、なんかドタバタしちゃって、大慌てでさ……
アクセル:
(しばらく沈黙して)……ごめん、パレット。ありがとう。ボクのために、ステキな計画を立ててくれたんだね。
パレット:
ア、アクセル……?
アクセル:
あのさ、パレット……ちょっと先だけど、非番一緒の日あるよね。
パレット:
う、うん。
アクセル:
その日、二人でどっか行かない? 今度は、絶対遅刻しないからさ。今日のお詫びってことで。
パレット:
(思わず、泣きそうになりながら)……い、いいわよ。その代わり、アクセルは荷物持ちよ!
アクセル:
へへ、任しといて!
(完)