ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年2月18日)
「ゼロ、大丈夫……?」
見ての通りだ。両脚が切断された。
腕はまだ一本残っているが、 もう一本はやはり使いものにならない。
どちらも、パーツの交換が必要だ。
「そうじゃなくて、痛みはどうなの? 苦しくない……?」
予想外のダメージを受けたため、痛覚はシャットアウトしている。
苦戦ではあったが、ともかく、敵は全滅させた。
少なくとも、このボディの修復が終わるまでは、新たな襲撃も無いだろう。
「……ええ、そうね。しばらく安全だわ。」
他に、何かあるか?
「えっ?」
無ければ、ボディが修復されるまでの間、電子頭脳を一時停止させる。
「……わ、わかったわ。ありがとう……」
……"感謝"の言葉か。
「……あなたのおかげで、ひさしぶりに、静かな夜を過ごせそうだわ。あなたも、ゆっくり休んでね……」
……"涙"を流しているのか。
「修理の準備をするわ。おやすみなさい、ゼロ……」
……わからない。彼女は、何のために……?
『ダメだよゼロ、そっけなくしちゃ。』
……また、おまえか。
時々現れては話しかけてくる、青い光。
ボディも無いくせに、まるで、オレのことを以前から知っているかのような態度を取る。
何者だろう……オレの失われた記憶の中に、コイツも居たのだろうか。
『シエルは、キミのことを心配してるんだからさ。』
なぜだ? 人間である彼女が、なぜオレを心配する?
『なぜって、それは……』
人間から見れば、オレもただの機械だろう。
彼女たちを襲う敵と同じ、機械……戦って、破損すれば修理して、また戦う。その繰り返しだ。
『ゼロ……それは違うよ。キミだって、シエルたちにとっては、大切な仲間なんだ。』
"仲間"だって……?
『そう。キミは、ただの機械なんかじゃなくて、生きてるんだ。だから、傷ついていたら心配する。』
"生きている"……"傷つく"……イヤな感じの言葉だ。
『……キミがそんなふうだと、悲しいよ。本当に何も覚えていないんだね。』
……ボディ修復のため、電子頭脳を一時停止させる必要があると言っている。
オレの何を知っているか知らんが、そろそろ黙って消えたらどうだ?
『どうして、自分を、生きていないただの機械にしたがるの?』
……ああ、メモリーの奥で、微かに何かが揺れ動くのがわかる。
もう手の届かない、遠い、遠い昔……
そこでオレは、"仲間"に囲まれて、確かに"生きていた"のだろうか……
……だが、はっきり思い出すことはできない。
もしも、ソイツを思い出してしまったら、きっと……
オレは、弱く、臆病になってしまう。そんな気がするからだ。
『どうして? 何に対して、臆病になるの?』
……戦うことに、傷つくことに、失うことに。
この手で、大切な何かを、破壊してしまうことに……
『ゼロ……』
だから、オレは……ただの機械でいたいんだ。
誰もオレを気にかけず、完全に破壊されても、誰の記憶にも残らないただの機械で……
『ふふ……そうだね。キミのその気持ちは、よくわかるよ。』
……いつまで喋っている。おまえは、いったい何者なんだ?
『でも、だからって、人の気持ちを傷つけていいことにはならないよ。』
……人を傷つける? オレが?
『独りになりたがって、自分に差し出される優しい手を払いのければ、その手の持ち主は傷つくよ。それは、キミが望むこととは違うでしょ?』
……さっきの彼女も、そうだったというのか。
『そうだよ。ゼロってば、こんな大ケガしてるくせに、冷たいんだから。』
……何だ、この"痛み"は。感じないようにしたはずなのに。
『シエルが戻ってきたら、謝った方がいいよ。でないと、本当に"鉄屑"として捨てられちゃうよ。』
おまえは――キミは、知っているのか。かつてのオレがどんなヤツだったかを。
『うん、よーく知ってる。キミは、今みたいに強くて勇敢で、いつも何も恐れずに戦って……そしてね、痛みや悲しみも知っていたし、とっても優しかったよ。
……できれば、キミに自分で思い出してほしいけどね。あの頃の、ボクのことも……』
「ゼロ……どうしたの、眠れないの?」
シエルか。……青い光のヤツは、消えちまったか。"礼"も言っていないのに。
「大丈夫? すぐに修理を始めるわ。」
ああ、シエル……さっきは、すまなかった。
「えっ……?」
……キミの気持ちを、オレは傷つけてしまったな。許してくれるか。
「……ううん、そんなこといいのよ。」
……"傷"が"痛む"んだ。"手当て"を頼む。
「ええ、任せてちょうだい!」
ああ、感じる。この身体の"痛み"と、それを外側から包み込む、温かさを――どちらも、オレを弱く臆病にさせるが、きっと、それ以上に強くさせてくれる。"独り"じゃないから。
「今度こそ、ゆっくり休んでね。おやすみなさい、ゼロ。」
"ありがとう"、シエル。"おやすみ"。
(完)