ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年2月28日~3月1日)
『ゼロ……キミは、ゼロだね。』
「あ、あなたは……?」
『やぁ、ひさしぶりだね。こんなところで、また会えるとは。』
「あなたは……エックスを守っている、"光の博士"……」
『ははは、そんなふうに呼ばれているのか。
安心しなさい。そのエックスに、信号を送っておいた。すぐに、ここへ来るだろう。』
「なぜです……なぜ、あなたがオレを助けようとしてくれるんですか……?」
『なぜ、というのは、なぜかな?』
「だって、それは……」
『キミは、今もエックスの親友だろう。
長い間、彼の支えとなってくれているね。本当にありがとう。こんな形ですまないが、直接お礼を言えてよかった。』
「でも、オレは……! オレには、そんな資格はありません……ここで、生き埋めになった方がいいんだ……」
『ふむ……あの大きな岩を破壊すれば、地上への道が開けそうだが、キミが敢えてそうせずにいるのは、それが理由かな?』
「だって、そうでしょう! あなたは、本当は、ご存じのはずだ……オレが、誰に、どんな意図をもって造られたのか……!」
*
「今、戻った。メタルバレーで異変が起きてるって?」
「クリスタル採掘場の、封鎖されたエリアだよね?」
「ああ、エックス、アクセル。そうなのよ。ルミネたちが騒ぎを起こした時、兵器に改造されて使われた重機やメカニロイドが、地下に封じ込められているの。」
「ところが、そのエリアで強力なイレギュラー反応が確認されたんです! 何者かが侵入した可能性も……」
「いったい、誰が何のために?」
「……ゼロさんが、独りでそれを確かめに向かいました。私がナビゲートを申し出たんですが、要らないと……でも、それきり連絡が無くて……」
「え……、ソ、ソレってヤバくない……?」
「よし、オレたちも行こう。」
「お願いするわ。ひと仕事終えてきたばかりなのに、悪いわね。」
「……」
「……どうしたの、アクセル? なんか、やらかしちゃった感すごいよ?」
「あー……実はボク、今朝、ゼロとケンカしちゃってさ……けっこう、傷つけること言っちゃって……」
「えっ……そうなのか?」
「その……勢いで、だけど……『ゼロなんか、もう居なくていい』って……」
*
『……今のキミには、そのことがわかるのか。』
「夢の中に、"彼"が現れて言うんです。"アイツ"を倒せ、と。それは、エックスのことでしょう。
……エックスだけじゃない。オレは、多くの破壊を行うために生み出されて、実際に、数えきれないほどのロボットたちを葬ってきました。
そのせいで、この両手は血に染まっています。あまつさえ、その手で、オレはあのひとの生命まで奪ってしまった! 誰かを愛することなんて、許されていなかったんだ……!
そんな、壊すことしかできない、イレギュラーであるオレの方が本当なら……今、ハンターとしてここに居るオレは……いつ消えてしまうかわからない、幻みたいで……」
『泣いているのかね、ゼロ……』
「……エックスとも、出会わなければよかったのに……!」
『……すまないね、ゼロ。本当にすまない。
その苦しみに独りで耐えてきたキミの心中は、いかばかりだったろう。
だが……キミのその壮絶な苦しみを知っても、私には、本当に、どうしてやることもできないのだ。
どうか、無力なこの老いぼれを許してやってほしい……
……ただ、ひとつだけ確かなことがある。
キミは、こんなところで生き埋めになどなるべきではない。
それも、今。』
*
「エックスより本部へ。メタルバレー・クリスタル採掘場に侵入したレプリロイド二体を確保。現在、現場に異常は無し。イレギュラー化したとみられるメカニロイド兵器は、全て破壊されている。侵入者の証言から、ゼロの手によるものと確認。」
「マヌケなヤツらだよ。クリスタルを盗む目的で、メカニロイドをハッキングして動かそうとしたら、暴走して襲ってきたから必死で隠れてたんだって。」
『了解しました。それで、ゼロさんは無事ですか……?』
「……ごめん、レイヤー。ゼロは、ここには居ないんだ。」
『えっ……?』
「……彼らの証言によれば、ゼロは、大型メカニロイドとの戦闘中、岩の崩落とともに地下へ落ちたらしい。だが、オレたちで必ず見つける。追っての連絡を待っていてくれ。」
『……わかりました。エックスさんもアクセルさんも、どうか気をつけて!』
「エックスも、ごめん……どうしよう……もし、ゼロが無事じゃなかったら、ボク――」
「よせ、アクセル。ゼロは絶対に無事だ。彼がどんなヤツか、キミもよく知ってるだろう? つまらないことを言わずに、早く探そう。」
「う、うん、そうだね……でも、どうやって探すの? 崩れた岩だらけだよ。ゼロ本人は、幾ら呼んだって返事しないし。」
「……大丈夫。オレには、わかる。こっちだ。」
「えっ? ちょ、ちょっと! 待ってよ! なんで、そんな確信ありげに進めるわけ?」
「間違いないよ、信号が呼んでるんだ。もしかしたら……ここには、まだ、"あの人"が居るのかも知れない。いつもオレを助けてくれる人が。」
「し、信号? こんなところから、誰が? ボクにはわからないよ……ねぇ、コレってもしかして、罠とかじゃない……? って、エックス! ちょっと! 待ってってば~!」
*
『おお、早かったな。エックスとアクセルが、近くまで来たようだよ。』
「ア、アイツらが……?」
『わかるかね? 苦心してここにたどり着いた時、待っていたのが、すでに屍となったキミだったとしたら。彼らは、どれほど落胆すると思う?』
「そ、それは……」
『私にはわかる。キミの想像以上にだ。』
「……!」
『今のキミが思う以上に、彼らにとって、キミの存在は大きなものなのだよ。』
「でも……いずれ、オレは消えなければ……
あの二人は、もう立派に相棒としてやっていけます。
これからの世界を彼らに託して、オレは――」
『それは、キミの背負う宿命――抱える闇ゆえの、決断なのかね?
……さっき、キミはこう言った。ハンターとしての自分は、いつ消えてしまうかわからない幻のような存在だと。
幻などではない。ソレは、紛れもないキミ自身、キミという生命なのだ。
闇を抱えながら、なお輝く生命――多くの生命を奪ってきたことをそれほどまでに深く悔いているキミが、自らの、そのただひとつの生命を軽んじてはならない。』
「オレという、生命……」
『そう。傷つき、苦しみながらも、更に輝こうとする生命だ。
私は、こう思う。その闇を抱えたままで、光に生きることは、つらくとも、不可能ではあるまい。
キミにはまだ、友が、多くの仲間があるのだから。
何よりも、自ら戦いを放棄して負けを認めることなど、キミは好まないはずだろう。』
「……内なる闇との戦い、ですか……
……ええ、確かに、負けを認めるわけにはいきませんね。」
『そろそろ、お別れの時のようだ。
ゼロ……キミにはどうか、これからも、この世界で生きてほしい。仲間たちと共に、光の中で、内なる闇に抗って。
……キミに何ひとつしてやれない、役立たずな老いぼれの、勝手な言い草だが。』
「いいえ、感謝します。お言葉、しかと胸に刻みました。」
『うむ。それでは、帰りなさい。くれぐれも、気をつけてな。
キミの居場所――キミを待つたくさんの心と、確かな安らぎのある場所へ。
……夢に現れるというその人物は、かつて抱いていた純粋な希望も、キミに託しているはずだ。キミが、光に生きることでそれを叶えてくれることを、私は願っているよ。』
「よう、エックス、アクセル。」
「ゼロ……!」「ゼロ! ほ、本当に居た……!」
「二人で迎えに来てくれたのか? 探させちまって、悪かったな。」
「うわぁぁ……! ゼロー! ゼローッ! ゼロッ! ゼロッ! よかった……よかった、無事だったんだね! ごめん……あの時は、変なこと言っちゃって、本当にごめん……! 本気じゃなかったんだよ、許して!」
「く、くるしい……せ、せっかく助かったのに、締め殺さないでくれ……!」
「はははは……ほら、アクセル、いつまで抱きついてるんだい? 気持ちはわかるけど、そろそろ放してあげなよ。」
「ねぇ、ゼロ……もう、独りで急にどっか行っちゃったりしないよね? 居なくならないよね? ね?」
「……ああ、もちろんだ。」
「……本当によかったよ、キミが無事で。心配してたんだ、オレも、みんなも。でも、これで、三人で一緒に帰れる。」
「エックス……すまなかったな。この生命、キミたちに――大勢の"みんな"に拾われた。……ありがとう。」
「うーん、あのマヌケな二人も連れて帰らなきゃいけないのは余計だなぁ。ま、とにかく急ごう! 今度は、レイヤーが泣いちゃうといけないし!」
「――彼らという仲間が、そばに居てくれるなら。
内なる闇に抗って、もう少し先へ進める気がするんだ。
居場所があるから、まだ行ける、と。」
(完)