ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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(※残酷な描写があります)
すみません…………一応、覚醒ゼロの話ですが…………なんか、いろいろと…………本当にすみません…………
(2021年3月3日~)


The Court Of The Crimson King・1

「ここは、どこだ……何者だ、おまえたちは!」

 

この男が、"ゼロ"……ゲイトやアイゾックを虜にした、謎多き"オールドロボット"……

 

「何をする、放せ! ただでは済まんぞ!」

 

アイゾックが残した研究データによると、ヤツは"トリガー"を作ろうとしていたようだ。

 

このゼロを、"本来の姿"に"覚醒"させるプログラムを!

 

「やめろ……、まさか、オレの頭に侵入――ううっ! うわああああっ……!」

 

時間はかかったが、ついに完成させた! このオレが! このオレがだ!

 

さぁ、何が起こるのか見届けてやる!

 

 

 

その研究者くずれの男は、見かけによらず大それた野望を抱いていた。

 

彼はかつてゲイトと共に働いており、その天性の才能を妬み憎む者のひとりだった。

 

ゲイトによって生み出された狼型レプリロイドを、極寒の海に沈めさせたのは彼である。

 

その後ゲイトは追放され、やがて、スペースコロニー落下後の混乱の中、ナイトメア事件を起こした。

 

生き延びた研究者は、事件の終息後、ゲイトとアイゾックの秘密研究所の跡地を発見した。

 

そこに残されていた"ゼロ"――復讐鬼となったゲイトを倒したイレギュラーハンターのひとり――に関するデータが、彼の興味をそそった。

 

ゼロのDNAの利用、彼を"覚醒"させる方法……殊に、アイゾックのゼロへの執着心の強さは異常とも思えた。

 

――面白い。ゼロという男、どうやら、ただの一介のハンターではないらしい。ヤツらの研究を、このオレが引き継いでやろう。そして、完成させてやる!

 

 

 

そして、時を経た現在。ついに彼は望みを叶えようとしていた。

 

今、彼の前のモニターには、拘束カプセルに閉じ込められ、身体の自由を奪われたゼロの姿が映し出されている。

 

頭の中を侵される苦痛に歪むその顔――手元のキーボードの上で指を躍らせながら、研究者は残忍な笑みを浮かべる。

 

――とうとう手に入れた、コイツはオレのものだ。小癪なゲイトのものでも、得体の知れぬアイゾックのものでもなく、このオレの。

 

モニター越しのゼロは、激しい喘ぎの下から必死に訴える。

 

「やめろ……おまえたちが、何者かは知らんが……取り返しのつかない事態を招くぞ……おまえたちの想像以上に、危険なんだ……」

 

「ははは、取り返しがつかないとよ!」

 

研究者の周囲から、柄の悪い笑い声が、どっと上がった。

 

 

 

「取り返しがつかなくなってるのは、このオレたちの人生なんだよ。ゼロさんよ!」

 

重そうな鎖をジャラジャラともてあそびながら、ひとりがモニターに向かって吐き捨てるように言う。

 

その鎖の先端には、トゲに覆われた鉄球が付いている。

 

「あー、そうだそうだ! 全く、イレギュラーハンターってのは、世の害悪だよな? "組"を潰されたおかげで、こっちは路頭に迷うことになったんだぜ!」

 

もうひとりが、巨大なノコギリの腕を鈍く光らせて言う。

 

「まあまあ、落ち着けよ。考えようによっちゃ、オレたちはゼロさんのおかげで救われたのかも知れねーぜ?」

 

三人めが、ニヤニヤしながら言う。その腕は火炎放射器らしく、先端で小さな炎をちらつかせている。

 

いずれも、屈強な戦闘用のボディを持ったレプリロイド――ならず者の男たちだ。

 

 

 

「だってよ、今のオレたちを見てみな。立派な"先生"の"研究助手"だぜ? 今までの、壊し屋やら武器の密売やらなんかより、よっぽどまともな"仕事"だろ?」

 

火炎放射器男がそう言うと、後の二人もまた、けたたましい笑い声を上げた。

 

「あー、違ぇねー! ゼロさんに感謝しねーとな!」

 

「オレたちみてーなのが、こんなふうに"更正"できたのは、あんたのおかげだぜ!」

 

"先生"と呼ばれた研究者は、キーボードを叩きつづけながら、満足そうにうなずく。

 

その傍らには、黒い影のように、もうひとりの男が立っていた。

 

彼は仲間たちの騒ぎには加わらず、静かに、いささか疑わしげに言った。

 

「……本当に、大丈夫なのか。このゼロを、おぬしは本当に手なずけられると?」

 

 

 

影男のその言葉に、他の三人も、一瞬鳴りをひそめる。

 

研究者は手を止め、ちらりと彼らの方を見やって応えた。

 

「これから起こりうることについて、三つの可能性が考えられる。ひとつ、"覚醒"に失敗する可能性――この場合は、電子頭脳にかかる負荷により、ヤツはスクラップになって終わりだ。」

 

「へ、そりゃ情けねーな!」

 

鉄球男がまた笑い出し、研究者は言葉を続ける。

 

「二つ、"覚醒"に成功、なおかつ"コントロール"にも成功する可能性。そして、三つめは……"覚醒"させたものの、"コントロール"には失敗する可能性だ。」

 

「そん時ゃ、オレたちの出番だろ?」「遠慮無くぶっ壊していいんだよな?」

 

ノコギリ男と火炎放射器男が、ドスの効いた声で言った。

 

 

 

研究者の代わりに、影男が答えた。

 

「うむ、やむを得まい。いささか惜しくはあるがな。」

 

三人は顔を見合わせ、一瞬流れた、張りつめた空気を追い散らすようにまた騒ぎ出した。

 

「確かに残念だな。オレたちが本気出せば、まともなパーツひとつ残らんからな!」

 

「ま、どんな結果になるにしても、それまではこの余興をたっぷり楽しめるってわけだ!」

 

「いい格好だぜ、ゼロさんよ! せいぜいあがいて見せな!」

 

研究者は、再び微笑んだ。――いよいよだ。コイツの中に隠された、"破壊プログラム"を起動させる。

 

残酷なショーの始まりを告げるように、彼の指が、鋭くエンターキーを打った。

 

 

 

その瞬間、モニター越しのゼロが、すさまじい苦悶の絶叫を上げた。

 

研究者の指先が、ついに、彼の電子頭脳の秘密の領域に深く突き刺さったかのように。

 

こちら側では、その姿を眺め楽しむ、悪趣味なギャラリーの歓声が上がっていた。

 

静かにたたずむ影男――黒い布で全身を覆ったような姿をしている――も、心なしか、目を細めてモニターに見入っているようだ。

 

だが、"助手"たちの大騒ぎをよそに、当の研究者は呆然と、表情をこわばらせていた。

 

――妙だ。"トリガー"は完ペキなはずだ。なのに、なぜ受けつけない? これは、まさか……コイツのボディ自体が自分の意思を持って、次々に、新しく強力なプロテクトを構築しているとでもいうのか……!

 

拘束カプセルの中、倒れることさえも許されないまま、意識を失いかけながら、ゼロは息も絶え絶えに呟きつづけている。

 

「やめろ……、コレが、最後だ……、コレ以上……、オレに……オレに、触れるな……!」

 

 

 

「ばかな! そんなはずがあるか!」

 

苛立ちをあらわにしながら、研究者は更に二度、三度とキーを打ち、ゼロの電子頭脳に"トリガー"を送りつづけた。

 

消え入りそうだった彼の声は、再び、重く鋭い呻きにとって変わられた。断末魔を思わせる痙攣が、その身体を激しく、不気味に揺さぶる。

 

そして、唐突に静寂が訪れた――見開かれたガラスの瞳から青い光が消え失せ、そのまま、ゼロは完全に動かなくなった。

 

「……おい、逝っちまったんじゃねーか?」「なんだよ、もうちょい楽しませてくれてもよかったのによ。」「やれやれ、結局出番は無しか。」

 

三人の"助手"たちの呟きに、研究者は思わず、失望のため息を漏らした。――失敗か。

 

だが、その時。突然、彼ら以外の何者かの声が――怒りに満ちた老人の声が、その場に響いた。

 

『それ以上、ゼロに触れるな!』

 

 

 

同時に部屋の照明が落ち、虚ろな表情の屍のようなゼロの姿を映していたモニター画面が、ノイズとともに明滅を始めた。

 

荒くれた"助手"たちがうろたえる中、研究者の脳裏には、もはやこの世に存在しないはずの、その声の主の姿がはっきりと現れた。

 

「……アイゾックか……!」

 

『気安く呼ぶな。ソレは、わしの仮面のひとつに過ぎん。おまえたちのそのけがれた手で、わしの最高傑作に触れるな!』

 

不意に、研究者の両手に電流のような衝撃が走った。

 

悲鳴を上げて椅子ごと床に倒れ込む研究者の傍らで、影男が素早く動いた。

 

その右腕を覆っていた"黒布"がひとりでに解けたかと思うと、それはたちまち変容し、鋭い刀の形となった。

 

「おのれ、何ヤツ!」

 

 

 

鉄球男たちも、うろたえながら身構えるが、声の主は影も形も無い。

 

代わりに、あるじを失ったキーボードが、ひとりでにカタカタとせわしく動きはじめた。

 

『わしの遺した"トリガー"を、ここまでの形にしたことは認めてやろう。もっとも、"完成"にはほど遠いがな。』

 

姿を見せぬ老人の声が続く。

 

『その褒美として、見せてやろう――"覚醒"したこのゼロの姿を。この不完全な"トリガー"ではほんの短い時間しか保たんが、おまえたちには充分じゃろう。』

 

影男が、右腕の"刀"を振り下ろし、見えない手に打たれるキーボードを両断した。

 

闇の中で激しい火花と煙が上がり、身を起こしかけていた研究者はまたもひっくり返る。

 

勝ち誇ったような老人の高笑いが響き渡った。

 

 

 

「ちくしょう、おどかしやがって!」「出てきやがれ、ジジイ! 相手になってやるぜ!」「隠れてたって無駄だからな!」

 

鉄球男たちがわめき散らすが、もはや応えは無い。

 

モニター画面からはノイズが消え、鮮明な映像が戻っていた。

 

ただ、そこに映っているものの姿は、先ほどとは大きく異なっていた。

 

囚われのゼロ――屍のように虚ろだった彼の目が、鋭く、赤い光を宿して異様な輝きを放っている。

 

その額の、三角形をした青いカプセルも光っている――謎めいた"W"という文字を浮かべて。

 

長い髪までもが、漂う"闘気"に煽られるかのように、乱れ、激しく揺れ動いている。

 

床に座り込んだまま、研究者は愕然とその姿を見つめた。――コレが、"覚醒"……ヤツの"本来の姿"……!

 

 

 

突如、激しい衝撃音とともに、再びモニターの映像が消えた。

 

完全な暗闇に包まれ、鉄球男とノコギリ男が思わず悲鳴を漏らした。

 

火炎放射器男が、慌てて照明代わりの小さな火をともす。

 

研究者は影男に助けられながら、彼が破壊したキーボードにすがりつくようにして、ようやく立ち上がった。

 

やがてモニターには、今度は、ゼロを拘束した部屋の全体を見渡す映像が映し出された。

 

その映像の中のゼロは、もはや囚われてはいなかった。

 

漂う煙と、自らの"闘気"に髪を振り乱しながら、いつの間にか自らの両足で床を踏みしめて立っている。

 

彼が自らの力で拘束カプセルを破壊し、自らを解き放ったのであろうことは、想像に難くはなかった。

 

 

 

鉄球男たちが、口々に叫んだ。

 

「お、おい、"先生"よ! コ、コイツ……コイツ、"覚醒"したってことだよな……?」

 

「マ、マジかよ……いっぺん、お陀仏みたいだったじゃねーか……!」

 

「さ、さっきの妙なジジイ……いったい、何しやがったんだ……?」

 

影男も、驚きを隠せない様子で言う。

 

「……おぬしの"トリガー"のみによるものではないようだが、ともかく、ヤツは"覚醒"した。どうする?」

 

研究者は、呆然とモニターを見つめるばかりだった。計算外の出来事があまりにも多すぎて、彼の電子頭脳は混乱していた。

 

ひとまず、実験は自動的に次の段階へ進む――"覚醒"したゼロの戦闘能力の検証へと。

 

 

 

画面の中のゼロは、三体の人型メカニロイドに取り囲まれていた。

 

いずれも巨体で、青白く光るスタンロッドを握っている。

 

そのうちの一体だけは、口に相当する部分に、研究者の声を伝えるためのスピーカーがあった。

 

研究者は頭を抱えていた。もし、彼の"トリガー"による"覚醒"が成功したのであれば、ゼロを彼の命ずる通りに動かすことも可能なはずだった――だが、今起こっているのは不測の事態なのだ。

 

ともかく意思疎通を試みようと、研究者は手元のマイクに向かって言葉を発した。少し震え声になった。

 

「やぁ……おはよう、ゼロ。"目覚め"の気分はどうかな?」

 

スピーカーの"口"を持つメカニロイドを、ゼロは、赤い瞳で射るように見つめた。

 

研究者の"助手"たちも、もはや声も無く、固唾を飲んで事のなりゆきを見つめている。

 

 

(続く)

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