ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年4月15日~16日)
降りつづいていた雨が夜になってようやく上がり、澄んだ星空が広がった。シグナスは、執務室の窓辺にたたずみ、それを見上げる。
シグナス:
この空に輝く、無数の星。
それらは、氷であり、鉱物であり、ガスの塊であるという。
だが、また、それらは、地上を離れたあまたの魂であるともいう。
もしも、それが真実であるならば。
我々は、星空を仰ぐたびに、深く悔いねばならない。
レプリフォース大戦というあやまちにより、いたずらに散らされた多くの生命を思わねばならない。
あれから、長い年月が過ぎた。
傷は、少しずつでも、いつか癒えていくものだ。
だが、私はいまだに、こう感じる時がある。
このイレギュラーハンター総監という役目は、自分の肩にはいささか重すぎると。
幸いにも、私はすばらしい仲間たちに恵まれた。
彼らと共にあることは、心からの誇りだ。
傷つきながらも、とどまることを知らぬ、いくさびとたちよ。
その戦いの日々が、平和な未来へと続くことを願いながら。
キミたちは、この星空に何を思うのか。
レイヤー、パレット:
失礼します、シグナス総監!
シグナスは振り返る。新人オペレーターのレイヤーとパレットが、執務室に入ってくる。
シグナス:
おお、キミたちか。
レイヤー:
本日のレポートを提出します。
シグナス:
どうだ、ハンターベースには慣れたかな?
パレット:
は、はい……広すぎて、まだ迷子になりそうですけど……
シグナス:
はは、大いに期待しているぞ。明日から、いよいよ本格的に任務に参加してもらうからな。
*
司令棟通路の窓から、星空を見上げるエイリア。
エイリア:
なんて、キレイな星空かしら。
ずっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうだわ。
……ゲイト、あなたもそこに居るの?
……うふふ、私がこんなことを言うなんて、おかしいわね。
少し前まで、データの無いものは信じられなかったものね。
シグナスには、夢が無いってよく言われたわ。
でも、今は違う。今の私は、根拠の無いものも信じることができるようになったの。
そう……例えば、星は亡き人の魂である、とかね。夢も希望も、信じるところから生まれるんだわ。
ゲイト……あの時、私はあなたに何ができたかしら。
あなたも、あなたが生み出したレプリロイドたちも、もしかしたら、救えたのかも知れない。
『気にすることはないさ』……そんなふうに言うかしら。
確かに、あれからもう何年も経ったものね。
でも、私は忘れない。あなたたちが確かに生きていたことも、私自身のあやまちのことも。
今の私にできるのは、あの時のような悲劇が繰り返されないようにする努力。
ゲイト、どうか今は安らかに、ゆっくり休んでいてね。本当にお疲れ様。
シグナスが通路を歩いてくる。
シグナス:
やぁ、エイリア。キミも星を見ているのか。
エイリア:
ああ、シグナス。
シグナス:
実に美しい夜空だな。ハンターたちは、まだ戻っていないのか?
エイリア:
ええ。きっと、彼らも今、それぞれの場所でこの星空を見上げているでしょうね。
*
ライドチェイサーでハンターベースに戻ってきたアクセル。足元の水たまりに映る星に気づき、エンジンを切ったマシンにまたがったままで、夜空を見上げる。
アクセル:
ああ、今夜は星がキレイだなぁ。
こんなに澄んだ夜空を見上げるのって、なんか、すごいひさしぶりだよ。
ねぇ、レッド。そこに居るんでしょ?
みんなも一緒に、ボクのこと、見守ってくれてるんだよね?
……ごめんね、心配したでしょ。
あの戦いの後、ボクが泣いてばっかりいたから。
でも、もう平気だよ。
今のボクには、新しい仲間が、新しい居場所ができたんだ。
晴れて、正式なイレギュラーハンターの一員になったんだよ。
へへ、すごいでしょ。これからも、ハンティング、バリバリ頑張っちゃうからね!
あ、あれ……? どうしたんだろう……
また、涙が……あー、ボクのバカバカ! もう泣かないって決めたのに……!
……ごめん、大丈夫だよ。これから、もっと強くなるって、約束する。
だから、そこからいつも見守っててよね。
大好きだよ、レッド。ずっと忘れないよ。
エイリアからの通信が入る。
エイリア:
お疲れ様、アクセル。今、どこ?
アクセル:
あ、ああ、エイリア。ただいま。ちょうど、今着いたところだよ。星があんまりキレイだから、つい見とれちゃってさ。
エイリア:
あら、そう? やっぱりね。
*
レプリフォース大戦を偲ぶメモリアルホールの前にたたずみ、星空を見上げているゼロ。
ゼロ:
夜空を見上げるのが、怖かった。
漆黒の宇宙の闇に輝く星たちを見上げることが、長い間、できなかった。
それは、キミを思い出すからだ。
罪深いこの腕の中で永遠の眠りにつき、果てしない星の海の彼方へと消えていった、キミのことを。
それでも、幾つもの戦いを重ねながら時が経つうちに、
いつからかまた、気づけば、星空を仰ぐようになっていた。
そこに、確かにキミが居ると感じるからだ。
宇宙を漂う星屑にも満たないちっぽけなオレを、遠くからキミは見守ってくれているのだと。
あの時の、引き裂かれるような胸の痛みは、決して消えることはないだろう。
この手が重ねてきた罪は――例え、記憶に残っていなくとも――つぐないきれるものではないだろう。
それでも、オレはまだ生きている。この先も生きていく、仲間たちと共に。
そして、いつか斃れたならば。
その時は、もういちどキミに会えるだろうか。
今夜も、オレは、美しい星空に想う。
アイリス、忘れ得ぬキミの笑顔を。
アクセルからの通信が入る。
アクセル:
ハーイ、ゼロ。パトロールは順調?
ゼロ:
アクセルか。ああ、こっちは異常無しだ。
アクセル:
そう、よかった。ゼロも、星、見てる? すごくキレイだよね!
*
海辺の丘の上に立ち、空を仰ぐエックス。
エックス:
美しい星空ですね。
"光の博士"、あなたを近くに感じます。
いつも、大きな戦いが始まれば姿を現し、助けとなってくださるあなた。
そうでない時にも、きっと、あなたの魂は、空から私を見守っているのでしょう。きらめくあの星のひとつとして。
……博士、私の正直な心をご存じでしょうか。
どれほどの戦いを、年月を重ねても、私はまだ、常に迷いつづけています。
自分は、本当に正しい道を歩んでいるのだろうか。
あなたに託された、平和への願いを、いつか叶えることはできるのだろうか。
……すみません、失望させてしまったかも知れませんね。
……自分という存在は、まだまだ弱く、小さなもののように思えて……
それでも、私は、大切な仲間たちに囲まれています。
ひとりではできないことも、彼らとならば、可能です。
これからも、彼らと共に、精一杯、自分にできることを積み重ねていこうと思います。
わずかずつでも、人類とレプリロイドが共に繁栄する世界に近づくことを信じて、進みます。
どうか、そんな私を見守りつづけてください。
ゼロが丘を登り、彼の傍らにやってくる。
ゼロ:
よう、エックス。寄り道か?
エックス:
ああ、ゼロ。お疲れ様。そうなんだよ、戻る前に、ちょっと休憩していこうと思って。
ゼロ:
いい考えだ。今夜の星空は、格別だからな。
エックス:
うん。
満天の星たちは、静かに優しく輝きつづける。夜空を仰ぐ者たちの、それぞれの心に寄り添い、包み込むように。
(完)