ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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『ロックマンX5』のラスト。大破したゼロは、今際の夢に現れた謎の老人と言葉を交わします。彼を抱きかかえ、必死に呼びかけるエックス。二人に、シグマの最後の一撃が迫っています。
(2020年12月25日)


ラストショットは誰が為に

「ゼロ……ゼロ……!」

 

真っ暗だ……誰かが、呼んでいる……

 

「しっかりしてくれ! まだ、まだ死んじゃダメだ!」

 

エックス……この声は、エックスか……

 

「聞こえるかい、ゼロ! ゼロ……!」

 

『ゼロ……』

 

誰だ……? エックスの他に、もう一人……

 

『ゼロ……聞こえるか、ゼロ……』

 

まさか……! コレは……アイツの声だ……!

 

夢の中に現れる、あの謎の老人……!

 

 

『わしの声が聞こえるか、ゼロ……』

 

聞きたくもないが、何の用だ?

 

『今が、最後のチャンスじゃ。エックスを倒せ!』

 

……誰を倒すって?

 

『今のおまえはボロボロじゃが、まだそれだけの力は残っておる。』

 

悪い冗談だ。

 

『今のうちに、倒せ! 破壊しろ、エックスを!』

 

断る。

 

『何を言うか! なぜ、生みの親であるわしに従わん!』

 

黙れ! あんたに生んでくれと頼んだ覚えは無い!

 

 

 

『もう、おまえにも充分にわかっておるはずじゃ……』

 

何のことだ?

 

『破壊こそが、おまえの生きる理由……ウイルスによって真のおまえが解放されるのを、先ほど、感じたのではないか?』

 

そ、それは……

 

『おまえに敵うものなど、この世界に存在せぬのじゃ。あのシグマですら、どんな情けない有様だったか!』

 

やめろ、掘り起こすな!

 

『だが……そのおまえに、いまだ倒せぬ者がおる!』

 

まさか、ソレは……

 

『……このわしにとって、最悪の存在……憎んでも憎み足りぬライバルが遺した忘れ形見、エックス……』

 

知るか! オレには関係ない!

 

 

『なぜじゃ? なぜ、おまえはわしに背き、その最高の力を正しく使おうとせぬのじゃ?』

 

は、笑わせるな。破壊のための力だと?

 

『破壊こそ、おまえにとって最高の喜びではないのか?』

 

う……

 

『違うとは言わせんぞ!』

 

……その通りだったかも知れない……だが、もう、ソレに溺れて自分を見失ったりはしない。

 

確かにオレはロボットだが、力の使い方は自分で決められる。

 

あんたの復讐劇に加担する義理は無い。エックスは、長い間一緒に戦ってきた唯一無二の親友……そして、この世界の希望だ。

 

オレは、彼を守る。

 

『おのれ……ふざけるのも、いいかげんにせんか!』

 

 

 

……聞きたいことがある、"博士"。

 

『……何じゃと?』

 

破壊のために生み出されたはずのオレにも、人と同じ"心"がある……人を愛した幸せも、それを壊してしまった悲しみも知っている。

 

だからこそ、オレは、イレギュラーによってもたらされる悲しみをわずかでも少なくするために、この力を使うと決めた。あなたに与えられた最高の力を、人の幸せを守るために使うと。

 

この"心"もまた、あなたが同じその手で生み出したものだろう?

 

……あなたには、復讐などではなく、ロボットを造ることで叶えたかった夢があるのではないか?

 

『な、何を言う!』

 

"博士"……あなたもまた、ひとりの人間だ。あなたの幸せとは何だ?

 

『ええい、よさんか……!』

 

憎しみばかりを口にするあなたの、人としての幸せは、何だ?

 

 

『……余計なおしゃべりは、ここまでじゃ。もう時間が無い。

 

今度こそ、本当に最後のチャンスじゃ! エックスを撃て!

 

今のおまえに残された最後の力で、ヤツを破壊しろ!』

 

……話が通じない上に、物覚えの悪い老いぼれだな。断ると言ったはずだ。

 

力の使い方は、自分で決めるともな。

 

オレのラストショットは、あんたのためなんかじゃない。

 

あんたのくだらない自己満足のために、このバスターをエックスに向けたりはしない!

 

『……おのれ、ゼロ! どこまでもわしに背くというか!

 

じゃが、わしはあきらめんぞ!

 

おまえがヤツを破壊するのを、見届けるまでは……!』

 

 

 

シグマとの死闘を終え、エックスは見いだした。

無残に破壊され、上半身のみとなって横たわる友の痛々しい姿を。

 

わずかに生命反応が残るその身体を両腕で抱き起こし、エックスは必死に彼の名を呼びつづけた。

――後ろから、もはや人型レプリロイドの姿すらとどめぬ怪物となったシグマが、最後の一撃を放とうとしていることにも気づかずに。

 

無情な閃光が、二人の胸をもろともに貫いた。

その瞬間、ゼロに意識がよみがえった。

 

空中にはね飛ばされながら、彼もまた残り全ての力を振り絞り、渾身のチャージショットを放った。

目の前の友ではなく、その背後の真の敵に向けて。

 

それがシグマに命中したのかどうか、エックスはどうなったのか、もはや確かめるすべも無い。

再び要塞の床に叩きつけられ、押し寄せる暗闇にもういちど――そして、恐らく永遠に――包み込まれていくのを感じながら、祈るように、息も絶え絶えにゼロは呟いた。

 

彼の創造主に背き、最後まで友を守ろうとした"心"からの言葉を。

 

――エックス、生きろ。キミは生きろ。

 

 

(完)

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