ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年7月20日~8月9日)
貝の盾に気を取られていたダイナモは我に帰る。セイバーを構え、先ほどの自分と同じように空中高く舞い上がっているゼロの姿。次の瞬間、彼は、閃光と共に目にも止まらぬ速さで急降下する。灼熱の刃にまともに斬られるダイナモ。
ダイナモ:
(よろめく)うおぉぉ……!
ゼロ:
(着地しながら)空中戦は、おまえの専売特許ってわけじゃないからな!
ゲイト:
(思わず、拳を振り上げて)いいぞ! "
ダグラス:
(感嘆の息をつく)……本当に、すげーな。あんたの生み出したナンバーズたちが、今、ここでまた生きてるみたいだ。
ゲイト:
(少し沈んだ声で)……ああ、そうさ。彼らの頭脳チップは、地下深くに封印されてる――事実上の"埋葬"だ。もう、彼らが自分のボディを持って直接的に活動することは無い。もう、二度とね。
ダグラス:
(慌てる)ゲイト……
ゲイト:
(再び力強く)だけど、彼らはまだこうして、間接的にでも、確かに生きてる。エックスとゼロが、彼らに、そして、ボクにも与えてくれたんだ。あやまちを償い、正しく力を使う機会を、もういちど。
ダグラス:
(何度もうなずく)ああ……そうだな。彼らの力……アイツらが、ソレを間違った方向になんか持っていくわけが無いぜ。
ゲイト:
うん。(ふと不安そうに)……このまま、二人のミュータブルウェポンが正常に働きつづけてくれればいいけど……
モニター画面には、傷を負ったダイナモの姿が映し出されている。
ダイナモ:
(まだ、不敵な笑みを浮かべている)いててて……、油断したね……
エックス:
(バスターを向けて)悪あがきはやめろ! このままだと、もっと痛い目を見ることになるぞ!
ダイナモ:
(体勢を立て直して)ご冗談! こちとら、あんたらとは違って、苦労してるんだっつーの!
エックス:
頭を冷やした方がよさそうだな!
再びブレードを回転させ、エックスに斬りかかるダイナモ。エックスは飛びすさりながらバスターを撃つ。凍てつく冷気とともに、きらめく氷の塊が放たれる。
ダイナモ:
何だと!
幾つかの氷は回るブレードに当たって砕け散るが、岩のような巨大な塊がブレードもろともダイナモの身体を直撃し、突き飛ばす。
ダイナモ:
(倒れる)うわぁぁっ!
エイリア:
(貝の盾の陰から)ブリザード・ヴォルファング……!
ゲイト:
"アイスバースト"だ!
ダイナモ:
く、くそっ……!(冷気の中、なおも立ち上がろうとする)
ゼロ:
頭は冷えたか? 冷えすぎて動けないようだな。
ダイナモ:
(不吉な予感を覚える)え……、おい、まさか……! ちょ、ちょい待ち!
今度は、ゼロのセイバーがまばゆい炎を噴く。いまだ立ち上がれていないダイナモの身体を、炎の刃が下から上へ斬り上げ、灼き焦がす。
ダイナモ:
ぎゃあああ……!(傷口から火花を散らし、再び倒れる)
ダグラス:
アレは、ブレイズ・ヒートニックスの……!
ゲイト:
そう、"
火花と黒煙に包まれ、倒れたまま動かなくなったダイナモ。警戒しつつ、エックスとゼロは彼に近づく。
ダイナモ:
(うめきながら、低く)……ちくしょう……さっきから、妙な小細工ばっかしやがって……!
ゲイト:
ボクがこの手で生み出した、ゲイトナンバーズ……キミたちの思いを、二度も虚しく散った生命を、今度こそ、今度こそ無駄にするものか。
不意に、意外なほどの素早さで身を起こし、立ち上がるダイナモ。エックスとゼロは再び身構える。
ゼロ:
コイツ、まだやる気か?
エックス:
いいかげん、もうよせ! これ以上抵抗すれば、おまえの生命にかかわるぞ!
ダイナモ:
(拳を固め、エネルギーを集中させる)ご心配どうも。こうなりゃ、あんたらも道連れだ!
ゲイト:
(はっとして)アレは……!
ダイナモはエネルギーを込めた拳を振り上げ、足元を目がけて思いきり叩きつける。地面が裂け、噴き上がる溶岩のようにエネルギーがあふれ、幾つもの光の柱となって一同を襲う。
エックス、ゼロ:
(光の柱に切り裂かれる)うわああああ!
エイリア:
(貝の盾が破壊される)キャアアア!
ダグラス:
(まばゆく光るモニター画面に向かって)なんてこった! お、おい! みんな……!
ゲイト:
(急いで呼びかける)大丈夫かい! エックス! ゼロ! エイリア!
光の柱が消え、無残に破壊された地面に倒れているエックスとゼロ。少し離れてうずくまっているエイリア。エックスは左腕に傷を負い、ミュータブルバスターが溶けたように変形している。
ゲイト:
(衝撃を受ける)バスターが……! エックス、しっかりしてくれ!
ダイナモ:
(倒れた一同を見渡して)はー、やれやれ……コレ、あんまやりたくなかったけど、しゃーないね。今度こそ消えますわ。……全く、生命が幾つあっても足りないよ、マジで。
足を引きずりながら塀の方へ向かうダイナモ。その背中にレーザーが命中し、火花が散る。
ダイナモ:
痛ッ!(驚いて振り向く)何だ?
エイリア:
どこへ行くの、まだ終わりじゃないわよ!
傷つきながらも必死に立ち上がり、再びレーザーガンを構えているエイリア。解けて乱れた金髪が、激しい呼吸に合わせて上下する肩を覆っている。
ダグラス:
(うろたえる)エ、エイリア! 何やってんだ、おい!
ゲイト:
(叫ぶ)ダメだ、エイリア! やめてくれ、危険すぎる……!
エックス:
(倒れたまま、まだ動けずに)エ、エイリア……!
ゼロ:
(こちらも倒れたまま、手から離れたセイバーを掴もうとする)ちくしょう……、ムチャしやがるぜ……!
ダイナモはしばらくエイリアをじっと見つめ、やがて笑い出す。
ダイナモ:
はははははは……! いやー、参ったね、こりゃ! 全く……ほんっと、見かけによらずいい根性してるよ、レディ! 気に入ったわ! ブラボー!(パチパチと手を叩く)
エイリア:
(震えながら)あ、ありがとう! そう思うなら、さっさと捕まってちょうだい! あんたの身のためよ!(正面から更にダイナモを撃つが、余裕綽々でかわされる)
エックス:
(必死で半身を起こし、這うようにしながら)エイリア……、もういい……! 離れるんだ……!
エイリア:
でも、エックス……!
ダイナモ:
へへ、隙あり!
エイリアの手から銃を弾き飛ばすダイナモ。銃は空を舞い、乾いた音をたてて遠くに落ちる。その一瞬の間に、エイリアは両手の自由を奪われ、赤い光の刃を喉元に突きつけられている。
エックス、ゼロ、ゲイト、ダグラス:
エイリア!
エイリア:
ご、ごめんなさい……!
ゼロ:
(ようやくセイバーを取り戻し、よろめきながら立ち上がる)彼女を放せ! おまえの相手は、オレたちだ!
しかし、セイバーにも異常が起きている。グリップから、光の刃が出ないのだ。
ゲイト:
(絶望感にとらわれる)ま、まさか……セイバーもか……!
ダイナモ:
(鋭く)動くな! 今回は容赦しないよ? 生命のやり取りに飛び入り参加したからには、それなりの覚悟ってもんがあるはずだからね。そうでしょ、レディ?
エックス:
(激しい怒りに駆られる)キサマ……、ふざけるな……!
ダイナモ:
(エイリアを引きずるようにして、ジリジリと塀に近づいていく)このまま、二人でランデブーといかせてもらいますよ。彼女の生命が惜しきゃ、下手に動かないこったね!
ダグラス:
(狼狽)ヤバい……ヤバいぜ、ゲイト! エイリアがさらわれちまう……!
ゲイト:
(頭を抱える)くそっ……このまま、何もできないのか……!
エックス:
うう……(傷ついたバスターをチャージしようとする)
エイリア:
(叫ぶ)エックス、やめて! 腕が……!
ゼロ:
エックス……!
エックス:
うおおおおお!(立ち上がり、バスターを高々と空に突き上げる)
突然、エックスの変形したミュータブルバスターがまばゆい光を放つ。それはそのまま完全に溶けてミュータブルメタルの塊となり、エックスの腕を離れて空中に浮かび上がる。
ダイナモ:
な、何だよ、今度は?
驚く一同の目の前で、ミュータブルメタルは急速に変容を遂げ、銀色の、大きな二枚の翼をもったワシ型レプリロイドの姿となる。
エックス、ゼロ:
(目を見張る)ストーム・イーグリード……!
一同の頭上で力強く羽ばたきながら更に高く上昇していくその姿は、全身が銀色をしている他は、在りし日のイーグリードのそれを寸分たがわず写している。
ダグラス:
(叫ぶ)何だ、ありゃ!
ゲイト:
(震える声で)ま、まさか……コレは……い、いったい、何事なんだ……奇跡が起きているのか……!
ダイナモ:
(愕然と)……何だ、コレ……マジでヤバくね……?
そう呟いたダイナモを目がけ、鋭い刃のように空気を切り裂きながら急降下してくるメタル・イーグリード。
ダイナモ:
ひ、ひえぇぇ……!(うろたえ、思わずエイリアを突き飛ばして逃げようとする)
エイリア:
ああっ!(よろめき、地面に膝をつく)
エックス:
エイリア!(我に帰り、駆け寄る)
エイリアの身体を抱いて地面に伏せるエックス。メタル・イーグリードの強烈な体当たりがダイナモを襲う。
ダイナモ:
(弾き飛ばされ、地面を転がる)だぁーーッ! もう、イヤ!
体当たりが命中するのと同時に、メタル・イーグリードの姿は幻だったかのように崩れ去り、無数のミュータブルメタルの破片となって散らばり落ちる。それらに混じって、錨の形のアンカリング・チップも地面に落ちる。
ゼロ:
(エックスとエイリアの傍らに膝をつきながら)大丈夫か、エイリア!
エイリア:
(顔を上げる)え、ええ。ありがとう。それにしても……すごいわね、エックス! 驚いたわ!
エックス:
(誰よりも驚き戸惑っている)い、いや……オ、オレにもわからないよ。ま、まさか、バスターがイーグリードになるなんて……
ゼロ:
ゲイト、見えてたか? アレもあんたが?
ゲイト:
(興奮さめやらぬ様子で)ああ、確かに見たよ。でも、ボクが何かしたわけじゃない。なぜかはわからないけど、武器データを記憶させておいたアンカリング・チップが、偶然にエックスの"思い出"の中からイーグリードの姿を読み取り、ミュータブルメタルを素体としてコピーした……そんなところじゃないかな。
ダグラス:
ぐ、偶然なのかよ!
エックス:
(身を起こす)そういえば……何もできなくなったあの時、オレはこう思ったんだ。『助けが、助けてくれる誰かがほしい』って……
ゼロ:
なるほど……それは偶然というより、キミが彼を呼んだのかも知れないな。
エックス:
オレが? そうなのかな……
エイリア:
(エックスに続き、身を起こす)そうね。本当にそうなのかも――(はっとして)ダイナモが!
ミュータブルメタルの破片に覆われて倒れていたダイナモは、必死に這うようにして塀に近づいていく。
エックス:
しまった!
ゼロ:
(立ち上がる)……オレも、誰かを呼べるだろうか。"思い出"の中から……
エイリア:
ゼロ……
ゼロは、機能しなくなったグリップを握り直して空を突く。応えるように、グリップは彼の手の中で強い輝きを放つ。次いで、通常のゼットセイバーのものとは明らかに異なる、直線的な赤い光の刃が長く宙に伸びる。それは、かつて彼の旧友が手にしていた剣を彷彿とさせる。
エイリア:
(目を見張る)ああ……!
ダグラス:
(驚く)おい、また何か起きてるぞ! どうなってんだ!
ゲイト:
(歓喜する)ははは、すばらしい……実にすばらしい……!
エックス:
(立ち上がる)ゼロ、ソレって……
ゼロ:
(うなずいて)……キミの力を借りるぞ、カーネル。
ダイナモ:
(文字通り、這う這うの体で塀に向かいながら)さーせんっした! いやもう、マジさーせんっした! 調子こき過ぎました! アイツら、やっぱただ者じゃないっすわ! と、とにかく、情報だけは届けないと……(ちらりと振り向き、赤い光の刃を振りかざしたゼロの姿を遠くに確認する)やばッ!
慌てて立ち上がるダイナモ。そのすぐ目の前に、瞬間移動したかのような速さで突然迫ってくるゼロ。
ダイナモ:
え、えーー?
ゼロ:
おりゃあ!(斬りかかる)
光の刃が空中に大きな赤い弧を描く。斬られたダイナモは後ろに吹き飛び、塀に背中を激突させる。彼は激痛の中でニヤリと笑うと、よろめきながら力を振り絞り、再び"ツバメ返し"の構えで高く飛び上がる。
ゼロはとっさに身構えるが、ダイナモは剣の代わりにワイヤーガンを握っており、真上に向けてフックを撃ち出す。フックは塀の縁を掴み、ダイナモは縮むワイヤーにぶら下がって急速に上昇していく。
ゼロ:
(驚く)何だと!
エックス:
(駆け寄ってくる)待て、ダイナモ!
ダイナモ:
(塀の縁にぴょんと飛び乗って)これ以上待てるかっての! ズダボロだよ、もう! くやしいけど、マジで懲りたわ! 認めますよ、あんたらには敵わないってね!
エイリア:
(駆け寄ってくる)どこへ行くの? 逃げきれると思う?
ダイナモ:
ま、お構い無く! 楽しかったよ、レディ。今度こそ、本当にさよならだ。
……最後に、コレだけ教えといてあげるよ。何度も言うけど、あんたらみたいな公務員様と違って、苦労してる連中は大勢居る。その中でも、あんたらに頼らず、自分たちで治安を維持していこうっていう組織が、力をつけてきてるんだ――"バウンティ・ハンター"がね。
一同:
"バウンティ・ハンター"……?
ダイナモ:
そ、自警団ってとこさ。これから、気をつけた方がいいよ。彼らが、あんたらにナワバリ争いをしかけてくるかも知れないからね。
エイリア:
何ですって?
エックス:
今回おまえを雇ったのは、その自警団なのか。
ゼロ:
ソイツらは、何者だ? どこに居る?
ダイナモ:
(笑って)守秘義務よ! ま、今オレが教えなくても、そのうち向こうから出てくるって! そいじゃ、今度こそ本当に、アデュー!(塀の向こう側へ飛び降りる)
エックス:
待て!
塀を蹴って登ろうとするエックス。しかし、左腕に負った深い傷が火花を散らす。
エックス:
ああっ!(左腕を押さえ、その場に膝をつく)
エイリア:
エックス!(慌ててエックスの肩を抱く)大丈夫?
ダグラス:
おい、ヤバいぞ、ゲイト!
ゲイト:
(手元のキーボードを叩きながら)……ヤンマたちに、ダイナモを追わせた。緊急配備を。エックス、ゼロ、エイリアはメディカルルームへ!
この時、ゼロも先程のカーネルの技の反動に襲われている。
ゼロ:
う、うう……(身体を震わせ、やはり膝をつく)
エイリア:
(エックスを介抱しながら)ゼロ! しっかりして!
セイバーのグリップもやはり形を失い、ミュータブルメタルの破片となって、力なく開いたゼロの手の中からこぼれ落ちる。最後に残ったアンカリング・チップを強く握りしめるゼロ。
ゼロ:
(うなだれて呟く)すまん、カーネル……こんな、ふがいない有様で……
シグナス:
この一件により、復興に邁進していた我々は思いがけず、手痛く出鼻を挫かれることとなった。
ハンターベースへのスパイの侵入を許し、応戦するも取り逃がしたこと。
その際ハンターたちが、それ以外の手段が無かったわけではないにもかかわらず、開発途中の、強力ではあるが不完全な武器を使用したこと。
これらは大きな問題だが、一方で、これまで噂に聞く程度でしかなかった"バウンティ・ハンター"の組織が、実在することが明らかとなった。
"ヤンマーオプション"による追跡は失敗し、ダイナモは包囲網をかいくぐってまんまと姿を消した。
ヤツがどの程度の情報を持ち帰ったかは不明だが、今後、実際に、彼らの存在は我々にとって脅威となるのかも知れない。
ゲイトは、責任の一端が自分にあるとして、何らかの処分を受ける覚悟を見せた。
一度取り消されたイレギュラー認定を再び受けることさえ――今度こそ、本当に生命にかかわる罰となるが――辞さないつもりであると。
だが、今回の"失敗"が、意図的に行われた"反逆行為"でなかったことは明白だ。
私は、ゲイトに"厳重注意"としてこう言い渡した。
今ある生命も、この組織での役割も、そして仲間たちの思いも、軽々しく投げ捨てるようなまねは許されない。まだまだ先の長い世界の再生と新たな事件に備えて、ギークはギークらしく研究室に戻っておとなしくしていろ、と。
(続く)