ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年9月7日)
――ゼロ! ゼロ!
呼吸もままならないほど、熱く煮えたぎる空気。焼け焦げる鉄と油の臭い。
耳元で名前を呼ぶ声に、朦朧としていたゼロの意識は、またわずかに引き戻される。
その視界いっぱいに広がるのは、白い光。
奇跡のような、白く輝く鎧をまとった友――これまでとは違う、エックスの姿。
息詰まる灼熱地獄から救い出そうとするように、エックスはゼロの身体を――胸から下が吹き飛ばされた無残な半身を、抱きかかえる。
すぐ傍らで、巨大なかがり火のように、ライドアーマーの残骸が燃えている。
その乗り手だったVAVAの骸が、槍のように鋭く尖った突起物に貫かれ、一緒に焼かれていくのが見える。
傷つき、自由を奪われた身体を爆弾代わりにしても、ゼロが辛うじて破壊することができたのは、マシンだけだった。
だが、その後、エックスは独りでVAVAと戦い、倒したのだ――左腕のバスターが使用不能となるまで。
――エックス、オレのバスターを使うんだ。
白い輝きに抱かれて、息も絶え絶えにゼロは訴える。
――シグマを倒してくれ。
それきり、ゼロは言葉を発しなくなった。
エックスは、急速に冷たくなっていく彼を抱きしめたまま、しばらくの間、そこから動かずにいた。
*
ああ、エックス。見違えたよ。
不思議な人物に助けられてると聞いたが、その白いアーマーも、"彼"から授かったのか。
よく似合う。成長して強くなった、今のキミに相応しい姿だ。
ずっと一緒に居ることはできなかったが、確かにキミは、戦いの中で自分を進化させたんだ。
そのキミに、伝えるべきことがたくさんあったはずだが……もう、言葉にならない。
すまない、エックス。こんな別れで。
これまでの感謝も、ねぎらいも、届けられないままで。
最後に渡せるのは、このバスターだけだ。
独りでVAVAを倒した今のキミなら、装備できるはずだ――もう、"B級ハンター"とは誰にも呼ばせない。
ああ、あたりが暗くなっていく。
でも、キミの放つその白い光は消えない。
それはきっと、どんなに深い闇の中でも、強く輝きつづけるだろう。
それこそは、この世界に最後に残された、希望の光。
オレの思いも、斃れていった仲間たちの思いも、全てキミに託すぞ。
行け、エックス。決して振り返るな。
*
待って。待ってくれ、ゼロ。
こんなところで、オレを置いていかないでくれ。
お願いだ、もっと何か言ってくれよ。
まだ信じられない、信じたくない。
オレのために、キミが自分を犠牲にしたなんて。
ああ、ゼロ。ごめん、本当にごめんよ。
こんな情けない姿、とても見せられない。
オレが、今どうしてるかわかるかい?
震えてるんだ。まだ、こんなに、カタカタ音をたてて身体が震えてる。
悲しくて、怖くて、涙が止まらない。
だけど、否応なしに感じるよ。
シグマが近くに居て、オレを待ってるってこと――こんなふうに、立ち止まってる時間は無いんだってことを。
だから、前へ進むんだ。震えながらでも、泣きながらでも。絶対に振り返らずに。
この腕にキミの心が宿っていると、オレは独りじゃないんだと、信じて。
どうか、オレを導いてくれ。暗闇を照らす、赤い灯火になって。
*
ゼロの武器は、エックスを新たなあるじと認めたように、その左腕に納まった。
友を悼むことも許されないまま、再びエックスは走りはじめる。
憎むべき敵シグマの姿を求めて、数々の罠が待ち受ける空中要塞の中を、彼は疾走する。
闇を照らす赤い灯火をかかげた、希望の白い光となって。
輝きに満ちた真の夜明けを、世界にもたらすために。
(完)