ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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いつもありがとうございます。(*^◇^*)"
『X1』の前日譚。シグマが反乱を起こすきっかけとなったものとは? ……短い話の割に、やたら読みづらくなってしまってすみません。"( ^_^;)"
(2021年10月27日~31日)


Missing Link

シグマ:

イレギュラーとは、何か。

 

電子頭脳に異常をきたし、暴走状態となって重大な事件や事故を引き起こすレプリロイド――いわゆる"故障者"だ。

 

そして、稀に現れる、正常な電子頭脳を持ちながら自らの意志で凶悪な犯罪行為に手を染める"異端者"をも、またそう呼ぶ。

 

どちらも、この人類とレプリロイドの共生社会における、大きな脅威である。

 

それらを"処分"するのが、戦闘レプリロイドによって組織された公的機関、我々イレギュラーハンターである。

 

 

 

 

 

 

 

エックス:

大丈夫だ。大丈夫。落ち着いて、スチュアート。話を聞かせてほしいだけだ。

 

イレギュラー:

(ガクガク震えながら)来ルナ……ソレ以上、近ヅクナ……!

 

 

 

崩れたビルの廃墟。エックスと、スチュアートと呼ばれた、今にも倒れそうな一体のイレギュラーが向かい合っている。廃墟の外で、ブーメル・クワンガー、スパーク・マンドリラー、ゼロが様子をうかがっている。

 

 

 

クワンガー:

(呆れ顔で)……まだ、"説得"を続ける気ですかねぇ。確かに、人質を解放させたことは大したものです。しかし、この強いイレギュラー反応……対象の電子頭脳は、もうほとんど空洞のようなもの。投降させることまでは不可能でしょう。

 

ゼロ:

ああ。……エックスも、そう思っているんだろう。

 

マンドリラー:

(そわそわしながら)そうか? そ、それなら、なんで撃たないんだ? さっさと済ませて戻ろうぜ。しびれが切れちまう。

 

ゼロ:

……彼は、まだ探しているのかも知れない。スチュアートのために、最後にしてやれることを。

 

クワンガー:

(くすりと笑って)ふふ……ゼロ、エックスと組んでから、あなたもなんだか彼に似てきましたね。

 

ゼロ:

ん?

 

クワンガー:

(冷ややかに)"破壊対象"を"名前"で呼ぶなんて、あなたらしくないですよ。

 

ゼロ:

……構わないでくれ。

 

 

 

シグマが姿を現す。

 

 

 

シグマ:

どうだ、様子は?

 

ゼロ、クワンガー、マンドリラー:

(敬礼する)隊長!

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

人類とレプリロイドの共生社会の発展に伴って、イレギュラーによる事件は、増加の一途をたどっている。

 

それらの事件を起こす者の多くは、やはり"故障者"である。

 

狂気によらず、自らの意志で犯罪に走る"異端者"は、そうそう現れるものではない――少なくとも、今のところは、まだ。

 

なぜなら、我々レプリロイドは皆、生まれながらに"ロボット工学の原則"という倫理観を身につけているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

マンドリラー:

えー、老朽化したビルの解体工事に携わっていたレプリ作業員一体が暴走、同僚のレプリ二体を破壊。遠隔で指示を出していた人間の現場監督を人質に取り、一時、指令室に立てこもるも、エックスの説得により人質を解放。のち、指令室を飛び出し、こちらの廃墟に到達。

 

ゼロ:

現在、被害者はレスキューチームの手で病院へ無事に送り届けられています。ケガはありますが、軽症とのことです。

 

シグマ:

(窓穴から廃墟の内部をちらりと覗いて)なるほど。……エックスは何をしている?

 

クワンガー:

(肩をすくめて)まだ、破壊対象と何か話したいようです。

 

シグマ:

(顔をしかめる)ふむ……任務に慣れてきたとはいえ、そこはなかなか変わらんな。

 

クワンガー:

(ゼロを横目で見て)指導力不足じゃないですかね?

 

ゼロ:

自分は、彼を信じています。

 

シグマ:

(笑って)ふふ、今はまあよかろう。撃ち損じることはあるまい。

 

マンドリラー:

(ため息をついて)はー、VAVAが謹慎中でよかった。アイツが居れば早く済むだろうが、後が面倒くさそうだからな。

 

 

 

エックスは、イレギュラーとの会話を試みつづけている。

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

正常なレプリロイドは、このように考える。

 

『我々は、人類を守り助けなければならない。そうでなければ、存在理由を失う。』

 

しかし、彼らは同時に、人類よりもはるかに優れた強い力を備えている。

 

私が思うに、自分の持てる力を思うがままにふるいたいという"欲望"と、それに歯止めをかける"理性"との間で葛藤が起こり、その結果、電子頭脳の一部が破壊されるのが、"故障者"となる過程のひとつなのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

エックス:

お願いだ。オレにだけ、教えてくれ。キミは、どうしてこんなことをしたんだ? 何を求めているんだ?

 

イレギュラー:

……"解放"ダ……

 

エックス:

"解放"……? いったい、何から?

 

イレギュラー:

(全身がギシギシと軋み、火花が散る)ドコカヘ……ココデハナイ、ドコカヘ……

 

マンドリラー:

お、おい、そろそろマズいぞ。

 

クワンガー:

ええ。ゾクゾクしますね、実にスリリングです。

 

ゼロ:

今だ! 撃て、エックス!

 

 

 

ゼロの声に、エックスは相手に向けバスターを構える。

 

 

 

VAVA:

もらった!

 

 

 

突如、爆発音とともに、イレギュラーの背後の壁が吹き飛ぶ。驚愕する一同。

 

 

 

VAVA:

(手の中で手榴弾をもてあそびながら)へ、ヒマだから来てやったぜ。やっぱ、甘ちゃん坊やは甘ちゃん坊やだな。

 

エックス:

VAVA……!

 

シグマ:

VAVA! 何をしている、謹慎処分を忘れたか!

 

VAVA:

(廃墟の中に踏み込んでくる)ご心配無く、ソイツよりは役に立ちますぜ。そらよ!

 

 

 

VAVAは、肩のマシンガンをあたりかまわず乱射する。無数の光弾が壁や天井をたちまち穴だらけにする。イレギュラーの身体も蜂の巣のように撃ち抜かれ、爆発する。廃墟の内部は土埃と煙に満たされる。

 

 

 

ゼロ:

エックス!

 

シグマ、クワンガー、マンドリラー:

(口々に)エックス!

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

では、"異端者"はどうか。なぜ現れるのだろうか。

 

彼らは、ある意味、勇敢であるともいえる――存在理由を失うかも知れないという"恐れ"を乗り越え、"自由"を選んだのだから。無論、その"自由"には高い代償がつくことも承知の上でだ。

 

だが……私は知っている。

 

無知にして狂暴、幼稚にして残忍。

 

"ロボット工学の原則"など初めから知らぬ者の手によって造られたような、まさに破壊のためだけに生まれたような、最悪にして最強の"異端者"が存在したことを。

 

 

 

 

 

 

VAVA:

ヒャハハハ! スカッとしたぜ!

 

 

 

クワンガーとマンドリラーに拘束され、廃墟の外へ引きずり出されているVAVA。シグマが、怒りをあらわに彼に詰め寄る。

 

 

 

シグマ:

キサマ……ふざけるのもいいかげんにしろ!

 

VAVA:

へ、誰がふざけてるって? 隊長のあんたが腰抜けだからこうなってんじゃねーのかよ!

 

マンドリラー:

やめねーか、このバカ!

 

クワンガー:

はー……隊長が居なかったら、今日こそ首をはねていたでしょうね……

 

シグマ:

(しばらくVAVAを睨みつけてから、静かに)……言いたいことは山ほどあるが、それは後だ。連れ帰って独房に閉じ込めておけ。

 

クワンガー、マンドリラー:

はっ!

 

 

 

二人は、抵抗するVAVAに手を焼きつつも、彼を引きずってどうにか連れていく。シグマは彼らに背を向け、廃墟の中へ踏み込む。床一面に瓦礫が散らばり、壁や天井が少しずつ崩落を続けている。

 

 

 

シグマ:

ゼロ、エックスはどうだ?

 

 

 

ゼロは、瓦礫の中に仰向けに倒れたエックスの傍らに膝をついている。

 

 

 

ゼロ:

外傷は無いようです。(エックスの肩に手をかけて)おい、エックス! しっかりしろ!

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

ソイツは、ある日ある時、私の前に突如姿を現した。

 

たった一体で一部隊を全滅させたというソイツの恐るべき力は、当時、最強と呼ばれていたこの私をも情け容赦無く打ちのめし、スクラップ寸前にまで追いつめた。

 

不可解な理由によりヤツの攻撃が止まなければ、私は八つ裂きにされていただろう。

 

私は、調査のためにヤツを回収させた。しかし、再起動した時のヤツはもはや凶悪な"異端者"などではなく、全くの別人のようだった。

 

調査期間を経て、ひとまず危険性は無いと判断されたソイツは、監視対象としてハンター組織に加わることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

エックスの意識は戻らない。やむなく、ゼロは両腕で彼の身体を抱え起こす。

 

 

 

シグマ:

世話が焼けるな。しかしゼロ、おまえがエックスのことを気にかけているのは、正直、意外だ。他の皆もそうだろう。

 

ゼロ:

(苦笑)ええ、そのようですね。

 

シグマ:

彼をおまえと組ませたことは間違いではないと思うが、おまえはどう感じている?

 

ゼロ:

(しばらく考えて)……彼は、自分にいろいろなことを気づかせてくれます。彼と一緒に居ることで、自分も成長できる、そんな気がします。

 

シグマ:

ほう? おまえほどのものでも、まだ、この新入りのB級ハンターから学ぶことがあるのか?

 

ゼロ:

(うなずいて)はい。彼は、ハンターの任務の中で、ともすれば忘れられがちな、些細でありながら重要なことを示してくれています。無論、イレギュラーに対して非情になりきれないことは、時に命取りです。それでも、彼には何かが――我々とは違う、秘められた大きな力があります。自分は、これからもソレを見守っていきたいと思っています。

 

 

 

ゼロの強い意志を感じ取るシグマ。

 

 

 

シグマ:

……ふむ、そうか。では、今後も、エックスのことはおまえに任せるぞ。

 

ゼロ:

はい。……隊長、ありがとうございます。

 

シグマ:

ん?

 

ゼロ:

自分を、彼の"相棒"に選んでくださったことです。

 

シグマ:

(笑って、ゼロに背中を向ける)……行くぞ。ここは危険だ。

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

ソイツは、今も私の下で働いている――特A級に位置づけられた、優秀なハンターとして。

 

だが、恐らく記憶を失っているとはいえ、ヤツは持っているのだ――この私も、何者も敵わないであろう、鬼神のごとき強大な力を。

 

私は、常にヤツを恐れ、警戒した。

 

いや……正直に言うならば、そこにあった感情は、嫉妬、羨望、憧憬であった。

 

――もしも、あの規格外の力を持つことができたなら、"ロボット工学の原則"の向こう側に広がる、限りない"自由"の世界が見えるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

先に歩き出したシグマの背後で、突然、ゼロに異変が起きる。

 

 

 

ゼロ:

(呆然と、腕の中の相手を初めて見たかのように)……エックス……(相手が何者かを理解しはじめたように)……エックス……?(突然、仇敵を見つけたかのように)……エックス……!

 

 

 

ガシャンと重々しい音がする。シグマが振り向くと、なぜか、ゼロは支えていたエックスの身体を乱暴に放り出して立ち上がっている。

 

 

 

シグマ:

(驚く)ゼロ、どうした?

 

ゼロ:

(錯乱したように叫ぶ)エックス! エックス、エックス、エックス!

 

 

 

熱に浮かされたように叫びながらバスターを構え、倒れているエックスを撃とうとするゼロ。

 

 

 

シグマ:

やめろ! 何をしている!

 

ゼロ:

(シグマに向き直る)生きていやがったか、スキンヘッド!

 

 

 

ゼロの変貌に、シグマは衝撃を受ける。ゼロの目は赤く、禍々しく爛々と輝いている。

 

 

 

ゼロ:

悪運の強いヤツめ! 返せ、オレの一部を!(シグマに向け、バスターを放つ)

 

シグマ:

(素早く身をかわす)何のことだ? おまえは、本当にゼロか?

 

ゼロ:

(獣のように唸りながら)とぼけるな! 最初に戦った時、キサマが奪い取った、オレの一部を返せ!(髪を振り乱し、シグマに躍りかかる)

 

 

 

シグマの脳裏に、"あの日"の記憶がよみがえる。"赤いイレギュラー"に追いつめられ、打ちのめされ、生きたまま四肢を引き裂かれかけた"あの時"の、恐怖と屈辱の記憶が。

 

 

 

シグマ:

(激しい怒りを覚える)……おのれ、イレギュラー!

 

 

 

とっさに、シグマは傍らに落ちていた、壁の一部だったらしい鉄筋コンクリートの塊を持ち上げ、ゼロに叩きつける。

 

 

 

ゼロ:

うわぁぁっ!(床に叩き落とされる)

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

"あの日"からずっと抱いてきた違和感。"あの時"、自分の中に生じたもの。

 

ソレが何か、今こそはっきりとわかった。"ヤツの一部"が、この私の中にあるのだ――"欲望"と"理性"とを繋ぐ"環"が。

 

ヤツの狂暴性が鳴りをひそめたのも、恐らく、私に"一部"を奪われて不完全な状態となったためだろう。まさしく"失われた環"だ。

 

嫉妬も羨望も、もはや過去のものとなった。今や、確かな"力"を手にしているのは、ヤツではなく私の方なのだ。

 

――今の私にならできる、世界を変えることが。

 

 

 

 

 

 

 

倒れたまま動かなくなったゼロ。シグマは、腰に提げた剣の束に手をかけながら彼に近づく。

 

 

 

ゼロ:

う、うう……(目を開く。瞳の色は青に戻っている)

 

シグマ:

……!(なおも警戒しつつ、立ち止まる)

 

ゼロ:

(うめきながら身を起こす)隊長……何があったんですか……

 

シグマ:

ゼロ!(剣から手を離して)……"目が覚めた"ようだな。今、おまえは、落ちてきたコンクリートの下敷きになりかけたのだ。

 

エックス:

(意識が戻る)あ……

 

ゼロ:

エックス! 大丈夫か!(駆け寄る)

 

シグマ:

(狐につままれたような思いで、何も覚えていない様子のゼロの姿を見つめる)……

 

エックス:

(身を起こしながら)ゼロ……ス、スチュアートは……?

 

ゼロ:

(首を振る)VAVAに破壊された。あのヤロー、勝手なまねしやがって!

 

エックス:

VAVAが?(表情を曇らせる)そんな……オレが、もっと早く撃っていれば……

 

ゼロ:

……スチュアートは、最後にキミと話せて満足してると思うぜ。

 

エックス:

(微笑む)そうかな……そうだといいな……

 

シグマ:

……さぁ、行くぞ。急がないと、この廃墟全体が

崩れ落ちるかも知れん。

 

エックス、ゼロ:

はい!

 

 

 

 

 

 

 

シグマ:

私は、これまでに現れたどんなイレギュラーとも異なる存在となる。

 

"故障者"が失った"理性"を保ち、"異端者"の"欲望"を、更に大きくした形で実現させるのだ。

 

そう、私は、"反逆者"として、人類からの独立を宣言する。

 

"ヤツの力"を持つ今の私なら、ソレが可能だ。

 

同志よ、我が旗のもとに集え。

 

まだ誰も見たことのない新しい世界へ、共に行こうではないか。

 

 

(完)

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