ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年1月1日)
「ただいま、兄さん! ごめんなさい、すっかり遅くなっちゃったわ。」
「やっと戻ってきたか。心配したぞ、アイリス。資料の引き出しに、ずいぶんと手間取ったんだな。レガシーライブラリーがあまりに広いので、道に迷っているのかと思った。」
「そんなんじゃないわ、あのデータ図書館は私の庭みたいなものだもの。兄さんも一緒ならよかったのに。とっても珍しい人に会ったのよ。」
「珍しい人? 誰だ?」
「うふふ、誰だと思う?」
「ん?」
「兄さんのお友達のゼロよ。イレイズ事件以来だわ。」
「なに? あのゼロが、図書館にか?」
「そうなの。私もびっくりしちゃった。今日は非番なんですって。」
「アイツに、そんな趣味があったとはな……」
「東洋の古武術について調べに来たんですって。身体にデータをインプットするだけじゃ、本当の意味で技術を自分のものにすることはできないし、強くもなれないからって。熱心なのね。」
「はは、なるほど。それなら、ゼロらしいかもな。」
「そうね。でも私は、せっかくの休日なんだから、もうちょっとリラックスすればいいのにって思ったの。」
「そうか?」
「だから……案内してあげる代わりに、ゼロの調べものが済んだら、ちょっと私につきあってって言ってみたの。」
「……何だと?」
「……別に大したことじゃないわよ、カフェテリアに一緒に行ってもらっただけ。」
「はー……なるほど、帰りが遅かったのはそのせいか。」
「ほ、本当にごめんなさい。つい……」
「まあ、上に言いつけたりはしないがな。で、どうしたんだ?」
「ストロベリーラテタイプのリフレッシュ・リキッドをご馳走してもらっちゃった。」
「ほう。」
「ゼロは、黒蜜抹茶ラテタイプだったわ。」
「ぷ……」
「……どうしたの? 兄さん、笑ってるの?」
「いや……なんというか、それも意外だな。」
「うふふ、そうかもね。それを飲んでいたら、ちょうどお店のテレビで、今度建設される新しい植物保存・研究施設のニュースが流れたの。だから、そのことを話したわ。」
「ああ、あの施設の建設は、我々の将軍の発案によるものだからな。」
「そう。私たちは軍隊だけれど、戦う以外にも、地球のためにできることがあるはず――すばらしいお考えだわ。」
「ゼロも、それに興味があるのか?」
「ええ。彼もやっぱり、イレギュラーハンターとして、地球のことを考えているみたい。環境がどんどん変化していくから、生命を守ることにも、もっと力を傾けなければならないって。……ステキな人ね。」
「ん?」
「あ……えっと……ハンターもレプリフォースも、同じ理念のもとに平和的活動をするのって、ステキね!」
「……そうだな。いずれは、ハンター組織にも協力してもらうことになるだろう。」
「えっと、それからね、今度はビジュアルルームへ、保護対象になる植物の映像データを見に行くことになったの。」
「やれやれ、また寄り道か。」
「ほんのちょっとの間よ。でも、ごめんなさい。もうしません。」
「だが、まあ……植物について調べたなら、仕事に全く無関係というわけでもないか。」
「ええ。二人で、いろんな花の映像を見たわ。どれも美しくて、夢中になっちゃった。その中に、アイリスの映像もあったの。」
「アイリス……おまえと同じ名前の花か。」
「そこには、遠い昔の東洋の庭園のような場所が写っていて、たくさんのアイリスの花が、しとしとと降る雨の中で咲いていたわ。……それを見た時、ゼロがちょっと変な感じになったのよね。」
『アイリス……可憐で美しく、そして強い花だ。オレには戦うことしかできないが、せめて、自分の近くにある美しいものはこの手で守りたい。……そんな気持ちが、戦闘技術以上に、オレを強くするのかも知れないな。』
「……ゼロのヤツが、そんなことをか……」
「そうよ。それから、急用を思い出したとか言って、すぐ帰っちゃったの。どうしたのかしらね?」
「さあな。……というか、そろそろレポートを書きはじめなくていいのか? そのための資料を引き出してきたんだろう?」
「あっ、いっけない! もうこんな時間……!」
「一応言っておくが、間違っても、今日ゼロに会ったことばかり書くんじゃないぞ!」
「そ、そ……そんなこと、するわけないでしょ! 『新開発の人工鉱物を使用した装備品がレプリ兵士の身体能力に与える影響について』がテーマなんだから!」
「次は、お互い非番の日に会えるといいがな!」
「だから、もう、やめてったら! よ、余計なお世話よ……!」
(完)