ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
ゼロとアイリスの、ちょっと遅れたバレンタイン。ひさしぶりに、ようやく、今度こそ、ちゃんと完結する話が書けました……!"ヽ( ̄▽ ̄;)ノ"
(2023年2月28日~3月2日)
アイリス:
ゼロ、いつもお疲れ様。
バレンタイン当日には間に合わなかったけど、やっと会えることになってうれしいです!
実は私、今回はおねだりしたいことがあります。
オシャレなカフェに行きたいの――実は、もう候補も決めちゃいました。"シュガースターカフェ"!
とってもステキなお店で、今までにも何度か行ったことはあるんですが、いつかゼロと一緒に行きたいと思っていました。
バレンタインに、ふたりでホットココアを――っていうのが、憧れだったの!
ひさしぶりで、話したいことがとってもたくさんあります。
ゼロはいつも忙しいと思うけど、この日は一緒にゆっくりしましょうね!
楽しみにしています。
*
二月二十八日、朝。
ゼロは、とある山の中を歩いている。
セラミック製の石畳が敷きつめられた広い道は、深い杉の森に左右を挟まれている。
やがて、道の彼方に黒い鉄柵の門が見えてくる。
ゼロは、カードキーらしきものを手にしながらその門に近づく。
不意に、彼の背後から鋭い声が呼び止める。
カーネル:
待て!
振り返るゼロ。そこには、疑わしげな表情でたたずむカーネルの姿がある。
ゼロ:
(驚く)カーネル……?
カーネル:
(腕組みをして立っている)ゼロ……まさかとは思ったが、おまえだったとはな……
ゼロ:
何のことだ?
カーネル:
この先は、軍関係者以外は立ち入り禁止だ。ここに何の用だ?
ゼロ:
待て、カーネル。落ち着け。オレは、アイリスに呼ばれて来た。
カーネル:
(ゼロを睨みつける)妹に、だと……?
ゼロ:
(カードを示して)本当だ。ここに、当日限りのパスカードもある。彼女から届いたものだ。
カーネル:
(首を振って)ありえん。とにかく、オレはおまえを拘束する。洗いざらい聞かせてもらうぞ。
ゼロ:
拘束……? いったいどういうことだ、カーネル!
カーネル:
とぼけるな! 今日、ここで何があるか知っていて来たのだろう。これから、この第三メンテナンスセンターで、妹の定期メンテナンスが始まる。それに乗じて、"究極のレプリロイド"に関するデータを手に入れようとしている輩が動くという情報が入ったのだ。
ゼロ:
(うろたえる)何だって……ま、まさか、オレがそうだと……?
カーネル:
(剣の柄を握り、身構える)そうとしか思えん。あるいは……おまえは、ゼロを騙る偽者かも知れんな。
ゼロ:
なにを!(カードを放り出し、こちらもセイバーに手をかける)おまえこそ、本当にカーネルなのか?
カーネル:
問答無用。その剣で確かめるがいい!
ゼロ:
望むところだ!
ゼロとカーネル、それぞれの剣の、燃えるような光刃が空中に伸びる。
二人は互いにそれを閃かせ、火花を散らしながら激しく斬り結ぶ。
カーネルがその巨躯から重々しい一撃を繰り出せば、ゼロは宙を舞うように身をひるがえす。
ゼロの身軽さからの素早い攻撃は、カーネルの盾ともなる赤い光刃に振り払われる。
やがて二人は同時に飛びすさり、互いに間合いを取る。
カーネル:
なかなかやるな。本物か偽者か、見分けがつかん。
ゼロ:
このままでは埒があかんぞ。
カーネル:
知れたことだ。(剣を真上に突き上げる)
天に向け、高々と掲げられたカーネルの剣。その赤い光刃に、雷にも似た電気のエネルギーが走る。
ゼロは拳を固め、そこに集中させたエネルギーの巨大な塊を地面に叩きつける。
同時に、カーネルも剣を振り下ろして足元の地面を突く。そこから放たれた電撃と、ゼロの拳からの衝撃波が縦横に地面を走り、互いに襲いかかる。
ゼロ:
(電撃に貫かれる)うわああああ!
カーネル:
(衝撃波に切り裂かれる)うおぉぉ……! こ、このオレとしたことが……!
互いの必殺技をまともに受け、二人は相討ちとなった格好で、それきりその場に崩れ落ちてしまう。
焼け焦げ、ヒビに覆われた石畳の上に倒れた二人。その場を沈黙が支配し、しばらく時が流れる。
門の近くに、ゼロが投げ出したパスカードが落ちている。不意に、何者かの手がそれを拾い上げる。
ダイナモ:
はい、いただきっと。(倒れたゼロとカーネルを振り返って)……しかし、この人ら、何やってんのかね? 仲良く寝てる場合じゃないでしょっての。ま、おかげでオレは仕事しやすくなったわけだけど。
はー、それにしても、この第三メンテナンスセンターって入りづらいわ。山奥だし、裏は崖っぷちだし、この正面玄関からしか入れないし。……でもまあ、通っちゃえばなんとかなるっしょ! 鍵を落としてくれて、マジでサンキュー!
さて、それじゃ行きますかね! "先生"からの依頼はっと……"究極のレプリロイド"に関するデータ、もしくは本人の確保。……いや、本人連れてこいとか、"先生"もずいぶん大胆ね。でも、その"究極のレプリロイド"って、かわい子ちゃんらしいじゃない? んー、正直に言ったらオレも興味あるかも。
ダイナモは門に近づき、パスカードを読み取り機に通す。
その途端、ものすごい音をたてて非常警報が鳴り響く。
ダイナモ:
(うろたえる)え? え? ちょ、何? え?
ウェブ・スパイダス:
カシャカシャカシャカシャ! 飛んで火に入る、冬の虫だカシャ!
ダイナモ:
は……?
突然の事態を理解できないダイナモ。彼は一瞬のうちに、周囲の森の中から現れた、レプリフォース・レンジャー部隊に包囲されている。
門の上には、それまで光学迷彩により姿を隠していた、ウェブ・スパイダスが逆さまに貼りついている。スパイダスは、電気を帯びたクモの巣状の網をダイナモの頭上から落とす。
ダイナモ:
(網に捉えられる)ぎゃああああ! 何だ、コレぇ!
ゼロ:
(いつの間にか立ち上がっている)捕えたか。巧くいったな。
カーネル:
(同じく立ち上がっている)うむ。皆の者、ご苦労。
一同:
はっ!(敬礼する)
ダイナモ:
(更に驚く)なっ、なんで……どういうことだよ……! あんたら、一緒に気絶してただろうが……!
ゼロ:
(呆れ顔で)やれやれ、どんなヤツが現れるかと思っていたら……またおまえか、ダイナモ。
ダイナモ:
え……まさか、オレが来るのがわかってた……?
ゼロ:
(うなずく)ああ。スパイの裏をかいてやったのさ。何しろ、こっちには、"黄金の電子頭脳"の持ち主が居るからな。
*
遡ること、ひと月半。一月十四日、ハンターベースにて。
ゲイトの研究室で、"極秘の会議"が開かれている。レプリフォース司令本部のデータベースから、関係者の定期メンテナンスに関するデータを不正に引き出そうとした形跡が見つかり、カーネルがゼロを通じてゲイトに相談していたのだ。
カーネル:
妹が、狙われているだと……?
アイリス:
そんな……!
ゼロ:
確かなのか、ゲイト?
ゲイト:
ああ、間違いないよ。"元同業者"の動向には、常にアンテナを張ってるからね。大手研究所をクビになった研究者、過激な思想を持つ科学者……"究極のレプリロイド"に関するデータとくれば、喉から手が出るほど欲しがってる連中が居る。
エックス:
定期メンテナンスか……確かに、付け入りやすいかもな。
アクセル:
ヤバいね。どうするの?
ゲイト:
ふふ、任せて。まず、敵に偽の情報を掴ませよう。アイリスの、実際の定期メンテはいつ?
アイリス:
は、はい。二月十四日、第六メンテナンスセンターで。
アクセル:
あれ、バレンタインデーじゃん。ゼロとデートは?
ゼロ:
い、今は関係ない!
ゲイト:
それじゃ、表向きは、違う日に違う場所でってことにするんだ。そこに罠を仕掛ける。
カーネル:
罠?
ゲイト:
そうだね……ゼロとカーネルで、ひと芝居打つってのはどう?
アイリス:
(不安そうに)で、でも……危なくないかしら。ゼロと兄さん……
ゼロ:
オレは構わんさ。やるか、カーネル?
カーネル:
もちろんだ。不埒な輩を許してはおけん。
エックス:
オレたちにも、何かできることは?
カーネル:
ありがとう。だが、この一件はレプリフォースの問題だ。ここまでで、すでにハンターからは充分な力添えを得た。心より感謝する。
アイリス:
重ねてお礼を言います。私のためにご協力をいただき、本当にありがとうございます!
ゼロ:
(力強く)任せろ、アイリス。何も心配は無いぞ。
アクセル:
(ニヤニヤしながらゼロを見る)ふふ、愛だねぇ。
ゼロ:
……何を言ってる!
アイリス:
(赤くなってうつむく)……
カーネル:
(優しくアイリスを見やる)ふふ。
*
ゼロ:
あいにくだが、おまえのターゲットはここには現れない。彼女のメンテナンスは、別の日に別の場所で、もうとっくに終わってる。わざわざご苦労だったな。
カーネル:
(激しい怒りをあらわに)誰がおまえをよこしたのか、じっくり聞かせてもらうぞ。
ダイナモ:
ち、ちくしょう~!(レンジャー部隊に一斉に押さえつけられる)
スパイダス:
確保カシャ!
スパイダスとレンジャー部隊はダイナモを引っ立てていき、ゼロとカーネルだけがその場に残る。二人はどちらからともなく笑い、握った拳を打ち合わせる。
ゼロ:
ひとまず、一件落着だな。
カーネル:
ああ。おまえにも、ゲイトにも本当に世話になった。……しかし、さすがはおまえだな。芝居でなかったら、本当にやられていた。
ゼロ:
キミの方こそ。あらかじめ、ボディを強化しておいたから助かったんだ。(尊敬を込めて)……衰えていないな。無事に終わったから言えるが、戦えて楽しかった。
カーネル:
(うなずく)そうだな。オレも、まだまだおまえには負けていられんな。
この時、レプリフォースの車両が一台入ってきて、二人の近くで停まる。助手席の扉が開き、アイリスが降りてくる。
アイリス:
(心配そうに)ゼロ! 兄さん! 大丈夫?
ゼロ:
やぁ、アイリス。
カーネル:
首尾よく終わったぞ。
アイリス:
(頭を下げて)ありがとう、本当にお疲れ様でした。さぁ、本部に戻りましょう。二人ともメンテしなくちゃならないわ。
ゼロ:
メンテ? おいおい、それほど大げさじゃないぞ。
カーネル:
その通りだ。なんなら、本部まで歩いてもいい。
アイリス:
(慌てて)ダメよ! 特に、ゼロはダメ。だって、この後……
ゼロ:
……あ、ああ。
カーネル:
……そうか。出かけるんだったな。
アイリス:
(頬を染めながら)そうよ。だから、万全のコンディションじゃないと!
ゼロ:
(笑って)わかった。よろしく頼む。
三人を乗せた車は、本部へと向かい走り出していく。
午後。約束通り、ゼロとアイリスは"シュガースターカフェ"を訪れている。明るくカジュアルで、同時に落ち着いた雰囲気も漂う店内。
二人は窓際の席で、ホットココアのカップを前に向かい合う。
アイリス:
(はしゃいだ様子で)うふふ。どうかしら、ゼロ。ステキなお店でしょ?
ゼロ:
(どこか上の空で)……ああ、そうだな。
アイリス:
……どうかしたの?
ゼロ:
(我に帰る)ん?
アイリス:
(くすくす笑って)おかしいわ、ゼロったら。さっきから、私の顔ばっかり見てるみたい。
ゼロ:
……い、いや……そ、そうか?(慌ててカップを持ち上げる)
アイリス:
うふふふ!(ゼロに倣い、両手でカップを持つ)このココア、大好き。とっても甘くておいしいの。
ゼロはカップを口に運びながら、その縁越しに、もう一度アイリスの顔をそっと盗み見る。
彼女は、長い睫毛を伏せながらゆっくりとココアを含む。
そのカップが再び皿に置かれると、ゼロの前には、彼女の満足そうな笑顔が現れている。
いとおしさに、ゼロの目も思わず知らず細くなる。
ゼロ:
キミの、その輝く笑顔が、
アイリス:
あなたとの、この優しいひとときが、
ゼロ、アイリス:
何よりも、いちばん、甘い。
(完)