ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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いつもありがとうございます。去りゆく夏を惜しんで、海辺のゼロアイです。"o(〃▽〃)o"
ここのところ、書く書く詐欺のような未完成作品の山を築いていて本当にすみません…………ドテ。( ̄▽ ̄;)"
(2023年9月2日)


裸足のマーメイド

ここは、とある人工島に建てられたリゾートホテル。

今夜、ここでレプリフォースの式典が行われていた。

 

主な参列者はジェネラル総司令官、カーネルとアイリス、各部隊長たち、上級士官たち。

そして、特A級イレギュラーハンターであるエックス・ゼロ・アクセルの姿もあった。

 

この式典は、新たに洋上に建設された研究施設の完成を、視察に訪れた要人と共に祝うものだった。

この要人の警護を担当したのが、三人のハンターだったのである。

 

とはいえ、視察は無事に終わり、ハンターたちも今は警護の任を解かれ、式典の参列者となっている。

招待客として、彼らにもそれなりの装いが求められた。三人とも、珍しいスーツ姿だ。

 

「うう、まだかな……? こんな格好で立ちっぱなしなんて、もう耐えられないよ……!」

 

ジェネラルをはじめとする軍関係者たちが入れ替わり立ち替わりスピーチを行う中、アクセルが窮屈そうに呟いた。

 

「静かに。もう少しだよ、たぶん。」

 

エックスが一応たしなめる。しかし、やはり彼も退屈しているようだ。

 

 

 

 

この時、ゼロの目はある一人の人物に釘付けになっていた。

言うまでもなく、それは彼の想い人、アイリス。

 

今夜の彼女はフォーマルなドレスに身を包み、シンプルでありながらも華やかな、大粒のラインストーンの首飾りを着けている。

初めて見る彼女のその姿は、延々と続くスピーチに飽き果てたゼロの目を強く捉え、離さなかった。

 

ふと、その彼女がちらりと視線をこちらに向けた。

カーネルの隣で背筋を伸ばして立ちながら、アイリスはゼロに向かって微笑み、片目をつむってみせた。

 

ゼロは小さくうなずいた。やはり、彼女もこう言ったのに違いない――『スピーチ、長過ぎるわね。早く終わらないかしら?』

だが、スピーチが終わったら終わったで、その後のカクテルパーティーでは、自分も彼女も多くの関係者と話をしなければならないことになるだろう。

 

どうにかして、少しの間だけでも二人きりになれないものか――ゼロは、そのことにばかり思いをめぐらせていた。

そして、それはアイリスも同じだった。

 

 

 

 

やがて、盛大な拍手がスピーチタイムの終わりを告げた。

ようやく自由に動けるようになった参列者たちは、今度は一斉にカクテルグラスを手にし、それぞれ、思い思いの相手と賑やかに話しはじめた。

 

エックスとアクセルも、さっそく、彼らに憧れる若い士官たちに取り囲まれた。

ゼロのもとには、ウェブ・スパイダスとスパイラル・ペガシオンが、それぞれジントニックとモスコーミュールを勧めにやってきた。

 

先程までのような堅苦しさは無く、皆がくつろいで会話を楽しんでいたが、いつしかゼロはひどく落ち着かない、焦るような気分になっていた。

アイリスの姿も、どこかに紛れて見えなくなってしまっている。

 

早く彼女を見つけなければ――そう思った時、ゼロの傍らにカーネルが現れた。

 

「おお、ゼロ。今回もご苦労だったな。イレギュラーハンターの協力に、心から感謝する。」

「いや、なんの。無事に終わって何よりだ。」

 

二人は互いに敬礼した。

スパイダスとペガシオンは、また別の相手を見つけた様子で、ひとまず離れていった。

 

 

 

 

「ところで、ゼロ。妹を見なかったか?」

「いや、アイリスにはまだ会っていないが……」

「そうか。実は、アイリスのヤツめ、これを落としてどこかへ行ってしまったのだ。」

 

そう言ってカーネルは、彼にはおよそ似つかわしくないような、キラキラと光り輝くものをゼロに見せた。

間違いなく、先程の式典の時に、アイリスが着けていたラインストーンの首飾りだ。

 

「確かに、彼女のものだな。」

「すまんが、届けてやってくれるか。」

 

カーネルが差し出す首飾りを、ゼロは戸惑いながら受け取った。

 

「ああ。……構わんが、探し出すのには骨が折れそうだな。」

 

すると、カーネルはくすりと笑い、とぼけたようにこう呟いた。

 

「ふむ。どこからか、風を感じるな。」

 

――ゼロは気づいた。パーティー会場となっているこの大広間には、海とその手前の庭園に面した大きなガラスの扉が三つあり、その一つがほんの少しだけ開いているのだ。

 

「……ああ、わかった。カーネル、恩に着る。」

 

また誰かに話しかけられないうちにと、ゼロは急ぎ足でそちらへ向かった。

後ろから、カーネルの声が追ってきた。

 

「貸しにしておくぞ。今度、どこかでニトロエールをおごってもらうからな。」

 

 

 

 

外に出てガラス扉を閉めると、宴のざわめきが一気に遠くなった。

代わりに、風と潮の香りと、天高く昇った満月の光がゼロを包んだ。

 

木々の間を縫って、細い道が続いている。

そこを抜けると、目の前一面に砂浜が広がった。

 

波打ち際に、ドレスの女性の姿があった。

寄せては返す波と、追いかけっこをしているようだ。

 

「アイリス!」

 

ゼロは、ようやく会えた彼女の名を呼んだ。

アイリスはこちらを振り向き、にっこりと笑った。

 

「ゼロ! 来てくれたのね。」

「ああ、キミの兄貴の頼みでな。これを届けてくれと。」

「ありがとう。」

 

アイリスはゼロの手から首飾りを受け取り、再び身に着けた。

月の光を受けて、ラインストーンは神秘の宝石のように美しくきらめいた。

 

「こうでもしないと、二人きりになれないと思って、兄さんにお願いしたの。」

「全く、してやられたな。でも、ありがたかったよ。」

 

 

 

 

「見て、ほら。」

 

いたずらっぽく笑って、アイリスはドレスの裾をつまみ上げてみせた。

その下からは、白い砂を踏む素足が現れた。

 

「せっかく、こんなステキなホテルに来たんですもの。ビーチに行くなら、今しかないって思って。とってもいい気持ちだわ。」

 

確かに、砂浜には、ハイヒールパーツは相応しくないだろう。

 

「ああ、そうだな。昼間は、そんな時間も無かったからな。……よく似合う。」

 

――そうやって、裸足で波と戯れるキミは、まるで、満月の魔法で一夜だけ人の姿を借りた人魚みたいだな。

その言葉は静かにしまいこんだものの、ゼロは、自分の胸に打ち寄せる波が次第に高くなるのを感じていた。

 

「アイリス、その……」

 

いつもの彼らしくもなく、言葉の途中で、ゼロは気まずそうに彼女から視線を逸らした――なにぶんにも、こんな申し出をするのは、初めてのことなのだ。

 

 

 

 

「なあに? ……うふふ、どうしたの?」

 

アイリスは無邪気に、そんなゼロの顔をのぞきこもうとする。

観念したゼロは胸に手を当て、彼女の前に膝をついた。

 

「……その、踊ってもらえないか……ここで、オレと。」

「えっ?」

 

アイリスは一瞬、弾かれた弦のように震え、そのまま動きを止めた。

その表情は、驚きと戸惑いから歓喜、そしてわずかな不安へと、みるみるうちに変わっていった――一つの蕾から、幾重にも重なる、色とりどりの花びらが開くように。

 

「ゼロ……ほ、本当なの? で、でも、大丈夫かしら。私、あまり上手じゃないと思うの。」

「いや、オレだってそうさ。……というか、正直、まともに踊れる気がしない。でも、この最高の舞台を逃すわけにはいかないと思ったんだ。キミと、オレだけの。」

 

果てしなく澄み渡る夜空高く、シャンデリアのように掲げられた満月。

そこから投げかけられる光を映して、きらめき揺れる海。

 

 

 

 

アイリスは優しくうなずいて、ゼロにそっと手を差し出した。

ゼロはその手を取って立ち上がり、不器用ながらも精一杯の繊細さで、彼女の腰に自分の手を回した。

 

 

やがて、エックスとアクセルが庭園に出てきた。

二人は、忽然と姿を消したゼロを探していた。

 

「ゼロってば、パーティー始まった途端に消えちゃったもんね。悪酔いでもしたのかな?」

「ふふ、まさか。でも、アイリスも居ないみたいだったし……」

「ってことは、もしかして……?」

 

その答えは、砂浜に着いた時、明らかとなった。

それはまさしく、潮風と波がワルツを奏でる、恋人たちの舞踏会。

 

「……ビンゴだね。呼ぶ?」

「いや……もう少し、このままにさせておいてあげよう。」

 

エックスとアクセルは、笑ってうなずき合った。

満月の下、輝く波打ち際で身を寄せ合い、長い髪をなびかせて、愛する二人は踊りつづけていた。

 

足早に過ぎ去っていく、この魔法のひとときを惜しむように。

 

 

(完)

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