ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
(2021年1月9日)
「ためらうな。これからオレたちが相手にするのは、かつての仲間――同じハンターだった者たちだ。その先には、あのシグマも居る。」
「シグマ隊長……」
「もう違う。ヤツは、ヤツらはイレギュラーだ。倒さなければ、倒される。さっきのVAVAの時のように、ためらってはいられないぞ。
オレは、キミの可能性に賭ける。キミの持つ、ハンターランクには反映されない未知の力に。」
「ああ、わかってるさ。もう、誰が相手だろうとためらったりはしない。でも……本当にオレなんかに、キミの言う未知の力があるのかどうか……」
「エックス、オレはキミを信じる。だから、キミも自分を信じろ。」
「わ、わかった。ありがとう、ゼロ。」
「例え二人だけになっても、平和を取り戻すため戦う意志がある限り、オレたちはずっと一緒だ。」
あの日、最初の戦いの日。
寸断されたハイウェイ、折り重なるレプリロイドたちの屍、空を覆う黒煙、襲い来る敵、逃げ惑う人々の叫び声。
あれから、どれくらいの時が流れたのだったろう。
あれからオレは、孤独な戦いを、幾つ重ねたのだったろう。
ライドチェイサーを停め、果てしなく広がる荒野の中の『目的地』に降り立つ。
ひさしぶりに見る青空の下、吹く風は優しく穏やかだ。
前方に目をやれば、そこには、半ば砂に埋もれたスペースシャトルの残骸が見える。
それは、最後の戦いの遺物だ。
シグマによってありとあらゆる機械が狂わされ、世界中が大混乱に陥る中、スペースコロニー『ユーラシア』までが、地球に向かって落下を始めた。
その時、一人のハンターが前時代のスペースシャトルに乗り込み、激突させることでコロニーを破壊した。
――地球は滅亡を免れたが、それにより、『彼』は帰らぬ人となった。オレはそう聞いた。
だが、仲間たちが口にするその名は、全く耳に覚えが無いものだ。
『地球を救った英雄ゼロ。』『誰もが認める特A級ハンター。』『いつもエックスと共に戦い、数多くの事件を解決した。』
……ゼロって、いったい誰なんだろう?
どうやら、シグマとの戦いで大破したこのボディを修復した際に、メモリーの中から『彼』のデータだけがデリートされてしまったらしい。
それは何かの手違いか、それとも意図的なものなのか――『彼』に関する記憶が、これからのオレにとっては重い十字架になるとでもいうのか?
伝え聞くその存在の偉大さは深い哀悼の念をいだかせるが、近しい人を喪ったという悲しみはそこには無い。
……ああ、それなのに。
見も知らぬ『彼』が生命を落としたという、この場所で。
オレは今、どうして、こんなに泣いているんだろう。
涙が止まらない。
もしかすると、オレにとっての『彼』は。
シグマを倒したという報告を、新たに描きはじめた夢を、
真っ先に伝えなければならない相手だったのかも知れない。
共に平和を取り戻してくれたことへの感謝の言葉さえ、もう届くことはないのに。
忘却は、死そのものよりも残酷だ。
オレの心は、あまりに大きすぎる不在の痛みに、きっとこう叫んでいる。
例えどんなにつらい記憶でも、『彼』のことを忘れたくなんかなかったんだと。
ようやく涙を拭い、改めて周囲を見渡す。まずは、この荒野を緑化することから始めよう。
オレの描く新しい夢、それは、人類とレプリロイドが共に平和に暮らす理想郷の実現だ。
――ためらうな。
途方もなく時間がかかるだろう、さまざまな困難も立ちはだかるだろう。それでも、あきらめたりはしない。
――自分を信じろ。
その名は『ヘブン』――地上の楽園だ。『彼』も、遠くから見守っていてくれるだろうか?
――ずっと一緒だ。
(完)