ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
今夜も、大都市の平和を守るため戦うゼロ。同時に、彼は自分の内なる何者かの"声"とも戦っています。そんな彼の支えとなれるのは、ただひとり、愛するアイリスだけなのです。
(2024年12月12日)
十二月二十四日。
聖なる夜であるはずの今夜、都市は、暗闇に沈んでいた。
静まりかえる夜の海にも似た広大な闇。
その中に、再びひとつまたひとつと、小さな光が灯りはじめる。
それらは次第に数を増し、大きく広がり、やがて、都市は輝きに満ちた元の姿を取り戻していった。
パワープラントを占拠していたイレギュラーの一団が、一人のハンターによって殲滅されたのだ。
恐れから解放された人々は手を叩き、歓声を上げ、彼らの"救世主"を口々に称えた。
その時、彼は基地へと帰還し、無事を祈り待ちわびていた多くの仲間たちと、ひとりの特別な女性に迎えられていた。
乱れた長い金髪と、多くの傷に覆われた赤い鎧。
彼の手をそっと取り、彼女はすぐにメディカルルームへ向かおうとした。
先ほどまで彼のオペレーターを務め、戦いを共にしていた彼女は、誰よりも彼の身を案じている。
だが、一緒に通路を歩き出してほどなく、彼の足は、なぜか別の方向へと向かった。
彼女はいぶかり、彼の顔を見上げた。
彼は、切ないまなざしを彼女に向けた――身体の手当てよりも先に、必要なものがあると訴えているようだった。
彼女は小さくうなずいて、再び視線を前に向けた。
彼の求めるものを的確に理解し、差し出すことができるのは自分だけなのだからと。
彼の腕に添えた手に少し力を込め、心なしか歩調を速めながら、そのまま彼女は彼に従い、明かりの無い小さな部屋へと入っていった。
『キサマは、"悪魔"か?』
先ほど倒してきた敵の言葉が、彼の脳裏によみがえる。
イレギュラーに対する激しい怒りがその腕に、剣に宿る時、ソイツらは文字通りの"地獄"を見ることとなるのだ。
そして、夢の中で語りかけてくる謎の声も。
『行け、そして破壊しろ。わしの"最高傑作"!』
違う。
確かにオレは、破壊のために造られたのかも知れない。
だが、それならば、この"心"は何だ。
例え"創造主"に背いてでも、人の世を守りたいと願い、矛盾に引き裂かれ震える、この"心"は。
怒り、悲しみ、喜び、そして、愛することができるこの"心"、オレは、それに従う。
ただひとり、キミを愛することができる、それを今、確かめたい。
暗い部屋、その窓辺にたたずむ二人。
外は、再び無数の光がきらめく、聖夜の大都市。
ゼロは物も言わず、ただ、その両腕にアイリスを強く抱きしめた。
"悪魔"のように多くの敵を葬り去ってきたその腕が、戦いを知る彼女に拒まれることなどなかった。
アイリスの細い腕も、ゼロの背に固く回される。彼の負う傷、目に見えない深い傷をも、全てその手で包み込み、癒やそうとするように。
夜は、まだ続く。
暗闇の中、誰に見咎められることもなく、二人は抱擁を続け、互いの唇を求め、奪い合うのだろう。
互いにしか満たせない乾きを満たすように、狂おしく、そして静かに。
(完)