ロックマンX二次創作 作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ
バレンタインデーの今日、ハンターベースではレプリフォースとの合同研修が。ゼロにとっては、アイリスとひさしぶりに会えるチャンスのはずだったのですが……? バレンタインには大遅刻な上、ギャグです。
(2025年2月1日~28日)
二月十四日、ハンターベースにて。
アクセル:
(なぜかニヤニヤしている)えへへ……
パレット:
(アクセルをにらみつける)ちょっと、アクセル。なにニヤニヤしてんのよ。
アクセル:
え? だってさ、今日は、ハンターとレプリフォースの合同新人研修がある日でしょ。
パレット:
そうだけど。それで、なんでアクセルがニヤニヤするわけ?
アクセル:
カーネルと、アイリスも来るんだよね? おまけに、今日はバレンタインデーだし……やっぱり、仕事が終わったら、ゼロとデートするのかなーって。
パレット:
あ、そうね。……って、ソレ楽しみにしてんの? 野次馬?
アクセル:
だって、気にならない? ボクたちと違って、ゼロとアイリスは職場も離れてるし、いつも一緒ってわけじゃないんだもの。
パレット:
……そ、そりゃまあ。
アクセル:
でしょ~?
エックスとエイリアがオペレーションルームに入ってくる。
エイリア:
(笑いながらたしなめる)ちょっと、二人とも。盛り上がってるみたいだけど、まさか、ゼロとアイリスの後を尾けようなんて思ってないでしょうね?
パレット:
(慌てて)あ、おはようございます。し、しませんそんなこと! だいたい、興味を持ってるのはアクセルの方で……
アクセル:
(慌てて)え? そ、そうだけど、ついてったりなんてしないよ! 第一、今夜はボクたちだって一緒に出かけるんだから……エイリアとエックスだって、そうでしょ?
エックス:
(照れる)あはは、そうだね。……でも、オレはちょっと心配だな。
アクセル:
え、何が?
エックス:
ゼロって、この一ヶ月くらい、ずーっと忙しかったからさ。ほら、何日もベースに戻ってこない時だってあったし……それで、アイリスと約束したのに会えなかったりもしたみたいで。
エイリア:
ええ、そうだったわね。
パレット:
本当に大変そうでしたよね、ゼロさん。
エックス:
それで、アイリスも忙しくなったりしたから、お互い連絡も全然取れてなかったみたいで……今日彼女が来るのはいいけど、自分のことを怒ってるような気がして、なんとなく会うのが気まずいって言ってたんだ。
アクセル:
あ、そうか……
今度は、ゲイトが入ってくる。
ゲイト:
やぁ。それなら、ボクが役に立てるかも知れないよ。
エックス:
ゲイト?
ゲイト:
みんなも知ってるだろう? 特別に近しい関係にあるもの同士の間には、一種のテレパシーのような不思議な力が働くことがあるって。
アクセル:
え、テレパシー?
エイリア:
ああ……例えば、直接ナビゲートしてない時でも、エックスが戻ってくるタイミングがわかったりすることかしら。
パレット:
あ、確かに。アタシもある。『今日はアクセル、やらかしちゃって落ち込んで帰ってくるかも……』って思うと、だいたい当たるのよね。
アクセル:
(驚く)え、そうなの?
パレット:
そうよ! だから、そういう時は大急ぎでおやつとか用意して待ってるのよ。
アクセル:
え……そ、それなら、ボクが大活躍して帰ってくるのもわかる?
パレット:
うーん、なぜかそれはあんまりわからない。
アクセル:
そんなぁ……!
ゲイト:
あはは、そうそう。実に興味深いよね。
更に、ダグラスとゼロが入ってくる。二人とも、ひどく複雑な表情をしている。
エックス:
あ、ゼロ。
ゼロ:
(気まずそうに)エックス……
ゲイト:
前からボクは、逮捕されたイレギュラーが証拠隠滅のために自分の記憶を消すことを防ぐ装置の研究をしていたんだけど……その過程で、面白そうなものが偶然できあがってしまったんだ。それがあれば、親しいもの同士のテレパシーを、自由自在に使えるようになるかも知れない。
一同:
(驚く)え?
ダグラス:
(不信感たっぷりに)なぁゼロ、断るなら今のうちだぞ。体よく実験台にされるだけだ。偶然の産物なんざ、危ない予感しかしねーだろ? まして、コイツの発明品だぞ?
ゼロ:
いや、しかし……
アクセル:
(身を乗り出す)ねぇねぇ、ソレってさ! ひょっとして、『今日は頑張ったから、ご褒美はホットドッグがいいな~』とかってボクが考えたら、それがパレットに伝わるってこと?
ゲイト:
うん、まあそういうことになるね。他人から傍受されたりする心配もないし、完全に二人っきりの密談ができるよ。
パレット:
(慌てて)ウソ~! やだ、そんなのアクセルに使わせたら、アタシ、パシリみたいになっちゃうじゃん!
エイリア:
(首を傾げる)確かに、便利そうではあるわね。でも、本当にそううまくいくのかしら。
エックス:
それで……ゼロは、ソレを使って、こっそりアイリスに気持ちを伝えたいの?
ゼロ:
(うなずく)……我ながら情けないが、どうしても、彼女に直接話しかける勇気が出ない……正直、ゲイトの発明には不安の方が大きいが、それでも、今は藁にもすがる思いなんだ。
ゲイト:
(肩をすくめる)やれやれ、ダグラスもゼロも厳しいなぁ。まあ、当然だけどね。
ダグラス:
(呆れ顔で)つーか、ゼロは考えすぎだと思うぞ。アイリスだって軍関係者なんだし、仕事で会えなかったからって怒るような子か? いつもみたいに、言いたいことは正面からはっきり言ってやれよ。その方があんたらしいぞ。
エイリア:
そうね、考えすぎっていうのはあるかも……
パレット:
アタシもそう思います。アイリスは、きっと怒ってなんかないですよ。
ゼロ:
ああ、オレもそう信じてる。でも……正面から言葉を伝える前に、言葉によらずに気持ちを伝える方法があるなら、今はソレに頼りたいんだ。
エックス:
ゼロ……それはきっと、キミなりの彼女への思いやりなんだね。
ゼロ:
エックス……
エックス:
(笑って)いいんじゃないかな。もしかしたらアイリスの方も、キミと直接話す前に、何かワンクッションあった方がいいかも知れない。……まあ、ゲイトの発明ってのは確かにちょっと心配だけど。
ゲイト:
(苦笑しながら、リング状の機械を取り出す)エックスもか。まあ、こうしてゼロが協力してくれるんだから、この"テレパシー送受信装置"もだんだん改良していけると思うよ。
ゼロ:
テレパシー送受信装置……どうやって使うんだ?
ゲイト:
(装置をゼロに渡す)手首に着けるだけでいいよ。アイリスの分は、入管証リングに仕込んで渡すから。
アクセル:
(ふと)ねぇ、ソレ……例えばだけど、ゼロがうっかりカーネルの悪口とか考えちゃったら、それもアイリスにバレたりしない……?
ダグラス:
そ、そりゃマズいだろ、おい!
ゲイト:
(たった今気づいたように)あ……ああ、そうか。確かに、そういうこともあるかも。思考は止めようがないからね。
ゼロ:
(装置を着けようとしていたが、慌てて)何だって?
エックス:
そんな……思ったことが、全部伝わっちゃうのか?
エイリア:
ちょっと、ゲイトったら。そこのところ、考えてなかったの?
パレット:
な、なんか、想像してたよりヤバいかも……!
アクセル:
う、うん……ゼロが使い終わったら、ボクが借りようと思ってたけど、やっぱりやめとこうかな……
ゲイト:
(一同をなだめるように両手を広げて)いや、大丈夫だ。大丈夫。考えたことが、全てそのまま流れていくわけじゃないよ。(ジリジリと後ずさりしながら)……でも、なるべく、相手に伝えたいことだけに集中しててくれ。ちょっと、大急ぎで調整してくるから。(自動ドアにたどり着き、通路へ飛び出していく)
ダグラス:
あっ、おい、このヤロー!
ゼロ:
(思わず、エックスと顔を見合わせる)……ほ、本当に大丈夫か……?
アナウンス(レイヤーの声):
間もなく、合同新人研修が始まります。参加者は、ロビーに集合してください。
ダグラス:
(呆れ果てて頭を押さえる)はー……どうなっても知らんぞ、オレは!
エックス:
もう時間か。ゼロ、行けるかい……?
ゼロ:
(覚悟を決める)……ああ。もう、コイツを信じるしかないからな。どんな結果になっても、自分の責任として受け入れる。
エイリア:
しっかりね、ゼロ。
パレット:
幸運をお祈りしてます!
エックス:
よし、行こう。(ゼロの肩に手を置く)大丈夫、キミの気持ちはきっとアイリスに伝わるよ。
ダグラス:
うまくいかなかったら、ゲイトにガツンと言ってやれ!
アクセル:
(出ていったエックスとゼロを見送って)あー、大丈夫かなぁ。気になるなぁ! どうしよう、ボクも研修に参加してるふりして、こっそり見てようかな……?
エイリア:
ダメよ。アクセルは、パトロールでしょ!
パレット:
そうよ! 昨日の、行方不明になった配送用ドローン、まだ見つかってないんだから!
アクセル:
あ、いけね、そうだった……!
パレット:
早く見つけないと、ハッキングとかされてて犯罪に使われたりしたら大変なんだからね!
アクセル:
は、はーい! 行ってきまーす……!(慌てて出ていく)
一方、こちらは正門。カーネルとアイリスを乗せたレプリフォース公用車が入ってくる。
カーネル:
……アイリス。
アイリス:
(上の空だったが、我に帰る)は、えっ、何?
カーネル:
どうかしたのか? 朝から浮かない顔をしていると思っていたが、ますます妙だぞ。
アイリス:
そ、そんなこと……
カーネル:
研修とはいえ、気を引き締めてもらわねばならん。……ゼロと、何かあったか?
アイリス:
(頬を赤らめてうつむく)……
カーネル:
図星か。しかし、プレゼントは用意してきたのだろう。
アイリス:
(膝の上に紙の手提げ袋を置いている)ええ。でも、私……どんな顔してゼロに会えばいいのかしら。
カーネル:
どういうことだ?
アイリス:
……私たち、このひと月の間、ずっと会えなかったの。お互いに連絡も取れなくて、すれ違ったままだったわ。だから、なんだか、実際に過ごした時間より、もっと長く離れていたような感じで……会っても、ぎこちなくなっちゃうような気がするの……
カーネル:
ふむ。
アイリス:
それに……それにね。ゼロは、大変な任務がようやく終わったところで、きっと疲れていると思うの。今日はバレンタインだけど、彼の気持ちは、それどころじゃないかも知れないわ。……私だけが浮かれていたら、ゼロに冷たくされちゃうかも……
カーネル:
(ため息をついて)はー……気持ちはわかるが、それは考えすぎだろう。
アイリス:
そ、そうかしら。
カーネル:
アイツのことだ。研修中には、新人たちに厳しい顔を見せても、それが終わっておまえと二人きりになるのを心待ちにしているかも知れんぞ。
アイリス:
(ますます赤くなる)……!
カーネル:
ともかくおまえは、余計な心配をせず、いつも通りに笑顔でいろ。それで充分だ。
アイリス:
(慌てて両手で顔を覆う)そ、そうね……で、でも、ダメだわ……! どうしよう、全然勇気が出ない……こんな時、テレパシーが使えたらいいのに……!
カーネル:
(呆れる)やれやれ……
この時、訓練棟内の講堂には、大勢の新人ハンターと新人兵が集合している。
新人ハンター・マット:
(しきりに周囲を見回して)うう~……ど、どうしよう……やっぱり、ハンターなんて志願するんじゃなかった……
新人ハンター・クーガー:
何言ってんだよ、落ち着けって!
マット:
(震えながら)だ、だって……みんなすごく気合い入ってるし、オレより強そうなんだもん……! もう、今から怖くてしょうがないよ……!
クーガー:
(呆れて)エックスさんとゼロさんに会いたいって言ったのは、おまえだぞ!
マット:
そ、そうだけど……! 特A級ハンターの指導なんて、ついていける気しないよ……! あー、特に、ゼロさんって厳しいんだろうな……こ、心折られそう……
クーガー:
(マットの背中を叩く)しっかりしろよ! おまえにだって、ちゃんと高い志があるんだからよ! 今から気持ちで負けてんじゃねー!
マット:
う、うん……
新人兵・リチャード:
(周囲を見回して)……どいつもこいつも、ザコばかりだな。
新人兵・リュウセイ:
(笑って)おいおい、過剰な自信は命取りだぜ。
リチャード:
だいたい、わざわざこんなところまで来て、ハンターの連中と一緒に研修とか、意味あるのか? それだけの時間があったら、独りでもう一段階高いレベルのシミュレーションを試したいところだ。
リュウセイ:
そんなふうに自分勝手だと、痛い目を見るぞ。
リチャード:
とにかくオレは、一刻でも早く実戦に出たいんだ。オレの能力はすぐに役に立つってことを、ここに居る全員に知らしめてやる!
リュウセイ:
だったら、なおさらおとなしくすることだな。今日ここで問題を起こせば、カーネル殿がブチギレるぞ。
リチャード:
は、それがどうした。アイツがオレの顔を忘れられなくなるなら、願ったり叶ったりだ。
その頃、ゲイトは自分の研究室に戻り、テレパシー送受信装置の調整を始めている。
ゲイト:
ふー、危ない危ない。『相手の居ない、頭の中のひとりごと』を遮断できるようにしておかないと。……その上で、装置が互いに引き合う力ももう少し強くすれば、スムーズに意思疎通ができるはず。
指令棟ロビーには、エックス・ゼロ・シグナス・レイヤー・カーネル・アイリスと、新人たちの指導に当たるA級ハンターらと上級士官らが集まっている。レプリフォース関係者たちは、みな腕に入管証リングを着けているが、アイリスのそれにはゼロのものと同じ、テレパシー送受信装置が仕込まれている。
一同が互いに挨拶を交わし、軽い打ち合わせを行う中、ゼロとアイリスは何度かぎこちなく視線を交わすが、当然近づける状況ではない。彼らを見守るエックスとカーネルは、内心ヒヤヒヤしている。
レイヤー:
よろしいでしょうか。それでは、講堂の方へお願いします。
一同は移動を始める。ここぞとばかり、ゼロは自分よりも先を歩くアイリスへのテレパシーを試みはじめる。
ゼロ(テレパシー):
アイリス……アイリス……!
アイリス:
(驚いて)えっ?
カーネル:
どうした?
ゼロ(テレパシー):
き……聞こえるのか、アイリス。オレだ、ゼロだ。今、テレパシーでキミに話しかけてる。声は出さなくていい。心の中で返事をしてくれ。
アイリス:
テレパシーですって……、ほ、本当なの?
カーネル:
(いぶかる)何だ、何を言ってる?
エックス:
(すかさず割って入る)あー、ちょっとごめん、カーネル。後で使う資料のことなんだけど……
カーネル:
ん?
アイリス:
(カーネルが離れていき、おそるおそる、心の中でゼロに呼びかける)ゼロ……? き、聞こえる……?
ゼロ(テレパシー):
アイリス! ああ、聞こえる、聞こえるぞ!
アイリス(テレパシー):
(高鳴る胸を押さえ、懸命に何食わぬ顔で歩きつづけながら)ゼロ……! すごいわ、信じられない……! あなたの言葉が、直接伝わってくるわ! ステキ……!
ゼロ(テレパシー):
(同じく、平静を装って歩きながら)オレもだ、まだ信じられん。ゲイトのヤツも、たまには気の利いた発明をするもんだな。
アイリス(テレパシー):
それじゃ、コレはゲイトが?
ゼロ(テレパシー):
そうだ。……アイリス、実は、今オレがこんなふうにしているのは、その――
不意に、頭の中で何かが弾けたような感覚が同時にゼロとアイリスを襲う。二人は意識を失い、声もなくその場に倒れる。彼らの周囲でざわめきが起こり、エックスとカーネルもこの事態に気づく。
エックス:
ゼロ!
カーネル:
アイリス!
(続く)