ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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『X5』のラストで姿を消してしまったゼロ。不思議な経緯を経て、『X6』でのエックスとの再会に至ります。
(2021年1月13日~16日)



Rainbow Connection

ここは……どこだ?

 

見渡す限りの青空、足元には一面の花畑。

 

同じ幅の七色の花が、どこまでも続く、長い長い列を作っている。まるで、空に架かった虹の橋の上を歩いているようだ。

 

美しい、なんて美しい……

 

 

でも、妙だ。オレは、戦場に……地下の要塞で、シグマと戦っていたはずだ。

 

そうだ、オレはエックスを守ろうとして……エックスは無事なのか? 彼はどこに居る?

 

あの戦いは幻だったのか、それともこの世界が幻なのか……

 

ああ、そういうことか。つまり、オレは――

 

 

『ゼロ! ゼロ、ひさしぶりね!』

 

キミは……?

 

ア、アイリス……アイリスなのか……!

 

『ああ、ゼロ! 私、あなたも、きっといつかここに来るって信じてたの!』

 

 

 

そんな……キミが、なぜ……?

 

『うふふ……ゼロったら、変な顔してるのね! 私はこんなにうれしいのに! ずっと、ずっと会いたかったわ!』

 

そ、それは……オレだって同じさ! ああ、アイリス……

 

『ゼロ……!』

 

 

『どうしたの、ゼロ? 泣いてるの……?』

 

すまない……すまない、アイリス……あの時、オレは、キミを……

 

『……泣かないで。そのことは、もういいの。あの時は、誰もが戦という大きな流れに巻き込まれていたのよ。』

 

しかし、オレはカーネルも……キミの大切な人たちも、誰ひとり救えなかったんだ……!

 

 

『……そのことが、ずっと長い間あなたの心に重くのしかかっていたのを、私は知っているわ。つらかったでしょう、ゼロ……』

 

アイリス……!

 

『でも、もうその十字架を降ろしてもいいのよ。見て! ステキなところでしょう?』

 

あ、ああ。ここは、いったい……?

 

 

 

『"魂"……"心"……それとも、"意識"かしら。ボディを離れた今の私たちが住んでいるところよ。これからは、あなたも私たちと一緒に、ここで静かに暮らせるのよ!』

 

オレが……何もかも破壊してしまったこのオレが、キミたちと一緒に……?

 

『ははは。ゼロ、おまえも意識だけになっているくせに、まだ余計なことを考えているんだな。』

 

カーネル!

 

 

そうか……オレも意識だけということは、やはり……

 

そういえば、セイバーが無くなっている……確かに、ここでは使いようもないだろうな……

 

『ここでは、誰もおまえを拒んだりはしない。昔の恨みなども無いしな。おまえが望むなら、我々は歓迎するぞ。』

 

ここが……どこまでも美しい、この世界が……これからのオレの居場所なのか……

 

 

……そうだ、エックスは? エックスは、ここには来ていないのか?

 

ということは、彼はまだ生きているんだな!

 

『ああ、そうだ。』

 

教えてくれ。エックスは無事なのか? あれから、世界は平和を取り戻したのか?

 

 

 

『……今の私たちの役目は、ここから世界を見守ること。エックスは生きているけれど……また、新たな戦いに身を投じているわ。』

 

何だって!

 

『おまえを失ってからも、彼は懸命に自分を奮い立たせて戦いつづけている。今の彼の武器は、おまえのセイバーだ。それだけが、彼の心の支えだ。』

 

なぜだ……あの時、オレたちはシグマを倒せなかったのか……?

 

 

『シグマではない。今、エックスたちが戦っている相手は……信じられんかも知れんが……』

 

何者だ? 言ってくれ!

 

『おまえの"亡霊"……"ゼロナイトメア"と呼ばれる存在だ。』

 

……!

 

 

『ゼロ、どうするの?』

 

オレも行く! そんなわけのわからない事態に、エックスを独りにしておけるか!

 

『……それは、今のあなたが心から望むことなの?』

 

アイリス……!

 

 

 

『ゼロ、確かにおまえのボディは完全に壊れてはいない。そうやって、元の世界に戻ろうと考えることができるのはそのためだ。』

 

そ、そうか……! オレは戻れるのか?

 

『だが、その前にオレからも訊く。本当におまえは、ここに残ることよりも、エックスのもとへ戻ることを望むのか?』

 

『ゼロ、どちらでもあなたが選んでいいことよ。でも……もし、戦場に戻ることで自分を痛めつけようとしているのなら、私は、この手を離さない……もう、離したくない……!』

 

 

……すまない、アイリス。長い間、待たせちまったのにな。

 

『ゼロ……』

 

……正直、オレも安らぎが欲しいんだ。このまま、キミとずっとここに居られるなら、どんなにいいかと思う。

 

でも……元の世界でエックスがまだ生きているなら、平和のために戦いつづけているなら、そんな彼の助けに少しでもなれるなら……オレは、今は戻ることを望む!

 

 

『ふふ……やはりそうか。おまえらしい答えだな。』

 

自分を痛めつけるために戦うんじゃない。まだ、向こうに残してきたことがいろいろとあるってわかったからな。

 

『……そうね。ゼロ、やっぱり、まだ、あなたを引き留めることは無理みたいね。』

 

アイリス、オレは……

 

 

 

『いいの。あなたの、本当の心からの望みがわかったから。』

 

アイリス……オレたちは、いつかは、また、ここで会えるのか……?

 

『ええ。きっと、いつかまた会えるわ。今の私たちにとって、待つことは何の問題でもないの。自分の役割を果たし終えたあなたが、もう一度ここへ来る時を、ずっと待ってるわ!』

 

また、長いこと待たせることになるかも知れないが。

 

 

『うふふ、大丈夫よ。でも……』

 

どうした?

 

『……戻ったら、あなたはこの世界のことを忘れてしまうわ。だから、その前に、お願い……』

 

『あー、オレは何も見ていない! 接吻など、見ていないぞ……!』

 

 

『……ありがとう、ゼロ。』

 

オレの方こそ、いろいろとありがとう。アイリス、カーネル、会えて本当によかった。それじゃ、行ってくるぜ。

 

『気をつけてな、ゼロ。』

 

『行ってらっしゃい。あなたとエックスなら、きっと、人類とレプリロイドを結ぶ架け橋になれるわ。この、虹の橋みたいにね!』

 

 

 

息もつかせぬほどに吹き荒れる風の中、砂埃が渦を巻き、暗く空を覆う。

スペースコロニーの爆発によって傷ついた地球が、悲鳴をあげているかのようだ。

 

エックスは今、見覚えのある姿を前にしている。

激しい風にはためく長い髪、肩越しに見えるセイバー。

 

それは、シグマとの最後の死闘ののちに消えた友の姿そのものだ。

だが、エックスにはわかる――ソイツが、ただ形を似せたばかりの操り人形に過ぎないことが。

 

ソイツの発する言葉はほとんど意味を成していないが、牙を剥き出した獣のような敵意ははっきりと伝わってくる。

エックスの心は、怒りに燃えたぎる。

 

――生命を懸けて戦ったゼロを、貶めるな。

 

友が残したセイバーを握りしめ、その無念を晴らすように、偽者に斬りかかった。

その瞬間、相手の姿は忽然と消え失せた。

 

エックスはうろたえ、周囲を見回す。

"悪夢"という名を持つ敵に、翻弄されてしまいそうだ。

 

――ふと、彼は砂塵が舞い狂う空を見上げた。

信じがたいことだったが、青さのかけらも無い暗い空に、ほんの一瞬、七色に輝く虹が見えたのだ。

 

それが本物か、それとも単なる見間違いであったのか、確かめる余裕は無かった。

消えた敵は、不気味な笑い声とともに、エックスのすぐ後ろに再び現れていた。

 

だが。

この直後、エックスは目にすることになる。

 

砂嵐を切り裂いて、奇跡のように、あざやかな"赤"がその場に立ち現れるのを。

金色の髪をなびかせながら真新しい剣をふるい、まばゆい光の刃で、自らの偽者を造作も無く斬り捨てる姿を。

 

彼の、長い間待ちわびていた、懐かしい笑顔を。

そして、悪夢の終わりの始まりと、虹のように輝く、新たな希望を。

 

 

(完)

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