ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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いつもありがとうございます。日付は変わってしまいましたが、ハッピーハロウィン!(▲w▲)″


眠れる森の⋯⋯

電脳世界の深い森。

 

万聖節前夜の祝祭に湧くきらびやかな街をこっそり離れ、夜の闇に紛れてそこを目指す人影が、ひとつ。

 

森の奥で待つのは、妖しき紫のバラが咲き乱れる城。

 

この特別な夜に、この上もなく相応しい舞台。

 

 

黒いマントに身を包み、素顔を見せぬ来訪者。

 

城の入口を守る甲冑ロボが、その手の籠に無機質な視線を向ける。

 

『よくぞ参られた。しかし、今宵の合言葉は″Trick or treat″。

 

もしもそなたが、あるじに気に入られるような″Treat″を持たぬなら、それ相応の″Trick″を覚悟せねばなるまい。』

 

 

 

開かれた大きな扉を通り、来訪者は城の奥へと進む。

 

その心配は無用と、フードの下で微笑みながら。

 

今宵、この城のあるじ――誰よりも甘く美しい、その特別な人のために、″Treat″は充分に用意されている。

 

アップルパイにパンプキンケーキ、色とりどりのチョコレート。

 

 

――もちろん、それ以上に、あのひとが望むものもわかっている。

 

黒衣の下でもう一度微笑み、心なしか来訪者は歩みを速める。

 

青い炎の蝋燭が彩る、静かな暗い広間を抜けて、城主の部屋へ。

 

悪戯好きなバットンボーンたちのそこかしこでの羽ばたきも、その軽やかな足取りを止めることはない。

 

 

 

 

長い螺旋階段を上り終えた先。

 

ようやく、目指す部屋へと来訪者はたどり着いた。

 

背筋を伸ばして、ノックする。二度、三度。

 

――返ってくるのは、沈黙ばかり。

 

 

そっと押してみると、扉は何の抵抗も無く静かに開いた。

 

そこは、客人を待つ、薄暗くも美しく暖かな部屋。

 

赤々と燃える暖炉に、革張りの長椅子、テーブルの上の燭台が照らし出す紫のバラの花束。

 

そして――床に横たわる漆黒の棺。

 

 

 

 

来訪者は、驚きに足を止めた。

 

しかし、それも長くは続かない。

 

大切な贈り物の籠をそっとテーブルに置きながら、くすりと笑いがこみ上げる。

 

″Treat″を差し出すよりも前に、避けられぬ″Trick″が待ち構えていたのだ。

 

 

それから来訪者は床に膝をつき、両手でゆっくりと棺の蓋を持ち上げた。

 

その中に見たのは、城のあるじ、″ナイトデューク″。

 

高貴なる吸血鬼の装いで、目を閉じて横たわる、想い人ゼロの姿だった。

 

もはや誰に隠す必要も無いと、来訪者アイリスは黒い頭巾を外す。

 

 

 

 

さて⋯⋯おやすみ中の城主様を起こしてさしあげるには、どうすればいいのかしら?

 

おとぎ話では、こんな時にいちばん効くのは、愛する人のキスと決まっているけれど。

 

彼は、それを待っているのかしら。

 

アイリスの胸は、静かに高鳴りはじめた。

 

 

少し戸惑いながらも、やがてアイリスは、棺の中のゼロの上にかがみ込む。

 

熱い火照りを感じながら、そっと口づけする――彼の唇ではなく、頬に。

 

すると、ゼロは笑って目を開いた。

 

「これはこれは、ようこそ。」

 

 

 

 

そう言いながらゼロは身を起こし、優しくアイリスの手を握った。

 

ほっとしたのも束の間、彼女の胸のときめきはますます強くなっていく――妖しく端正な吸血公爵の装いをした彼と二人きりの、ハロウィンの夜がこれから始まるのだから。

 

「お招きいただき、光栄です。」

 

そう応えて、アイリスは片手で黒マントの裾をつまみ上げながら会釈をした。

 

 

「今夜のキミは、どんな仮装をしているのかな? 魔女か、ダークプリンセスか、それとも⋯⋯」

 

「それは⋯⋯ぜひ、ご自身の目でお確かめになってください。」

 

ゼロのまなざしが、熱を帯びる。

 

かくて、二人の夜は更けていく。甘く危険な、幾つもの″Trick″と″Treat″を味わいながら。

 

 

(完)

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