ロックマンX二次創作   作:クリスチカ・マリビエ・ダンセルジオ

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Dr.ワイリーが、ゼロを恐ろしいロボットとして生み出すに至った理由とは何だったのでしょうか?
(2021年1月25日~26日)


Sinnerman

『親愛なるアルバートへ。

 

ずいぶんひさしぶりだね。元気にしているかい?

 

私の方は、自分でもよく知らぬ間に、すっかり老いぼれてしまったようだ。

 

返事は期待していないが、やはり、どうしても、このことはキミに伝えておきたいと思ってね。

 

何しろ、もう、私のそばには誰も居ないんだ。独りきりだ。

 

 

私は、これまでの研究の集大成となるロボットの製作をついに開始した。

 

自ら考え、悩むことのできる、全く新しいタイプのロボットを。

 

彼を生み出すにあたっては、私自身も、かなり長い間、悩み考えた。

 

彼は、無限の可能性と同時に、無限の危険性をも持つことになる。

 

ロボット工学の原則――ロボットは人間を傷つけてはならない――を、彼は、自らの意志で破るかも知れないのだ。』

 

 

 

 

『それでも、やはり彼を造ることを決心したのは……この年老いた身体の、そこかしこが音をたてて軋むのが、はっきりと聞こえはじめたからだ。

 

少しでも時間があるうちに、可能な限り、自分の手で形にしておきたかった。

 

もっとも、彼を完成させた後、その安全性を全て自分で確認するところまでは、恐らくたどり着けないだろう。

 

だから、私は彼を、カプセルに封印した状態でこの世界に遺していくことになる。解析には長くて50年、短くても30年が必要だ。

 

人の世で人と共に生き、人の役に立てとの願いを託されながら、生まれてすぐに埋葬されなければならないとは……我が手のわざながら、なんとも皮肉だな。

 

 

アルバート、今更こんなことを言っても仕方がないが……若き日のキミは、どれほど孤独だったのだろうね。

 

今になって、ようやく、あの頃のキミの気持ちを考えることができる。

 

キミは、自身を認めようとしない世界を憎んでいた。私は、そんなキミと長きにわたり戦うことになってしまったが、そうなる前に、他に何かできたのではないか――しばしば、そんな後悔に襲われる。

 

かつては同じ夢を抱いた者同士、ずっと同じ道を歩んでいけたなら……いや、もうよそう。

 

そうそう、新しいロボットの名は"X"という。未知なる可能性と、危険性を意味する名前だ。』

 

 

 

トーマス、キミの最後のメールを受け取ってから、あっという間に月日が経ってしまった。

 

元より、返事をする気などは無かったがな。

 

老いぼれたのは、このわしも同じだ。身体のあちこちにガタが来ている。

 

それに伴ってといおうか、ようやく、年相応の落ち着きが身に付いたといおうか。

 

ここ何年か、わしは自分でも信じられないほど、静かな心持ちで日々を過ごしていたよ。

 

 

メールにはこうあった。"これまでの研究の集大成となる、全く新しいタイプのロボット"を造りはじめたと。

 

正直、あまり面白い話ではなかった。それはそうだろう、昔からだが、キミが何かを始めたとか成し遂げたとかいう話が面白いはずが無い。

 

それに、奇遇にも、ちょうどその頃に、このわしも同じようなロボットの開発を始めていたのだ。

 

キミに先を越されたことを認めたくないがための、負け惜しみなどではない。

 

だが、ひさしぶりにあの頃のライバル意識のようなものが戻ってきて、魂が若返るように感じられたな。

 

 

 

今より若かった頃のわしは、世界に自分を認めさせたかった。

 

わしを否定し、追いやろうとする世界に強大な力を示し、この足元にひれ伏させ、従わせたかった。

 

しかし、幾度も負け戦を繰り返し、やがて全てを失い、年老いて、ようやくその妄執から解き放たれる時が来た。

 

どれほど大きな力を、恐怖を見せつけようと、それでわし一人の思い通りにできるほど世界はちっぽけではないのだ、と。

 

まるで、長い長い悪夢から覚めたようだった。

 

 

それから、わしは静かな心で、自身最後のナンバーズとなるロボットを造りはじめた。

 

彼は、もう復讐のためなどではなく、ただ純粋にかつての我々の夢を叶えるため――人と同じ心を持ったロボットとなるはずだった。

 

人と同じ喜びや悲しみを知り、人を守れる力を持ち、人にとっての"英雄(HERO)"となりうるロボットに。

 

だが……彼は、その夢とは違った存在となって完成する。なぜかわかるかね、トーマス?

 

……今日、キミが先に逝ったと知ったからだ。

 

 

 

わしばかりでなく、キミに対してさえも、世界は冷たかったようだな。

 

幾度もキミに救われていながら、そのキミの晩年を、世捨てびとのように孤独にさせるとは。

 

結局、我々は二人とも、理解できぬ輩にとっては、異端者(マーベリック)でしかなかったのだろう。

 

しかし、キミはそれでもなお、そんな人の世を守ろうとするのだろう。

 

――その守り手となるはずの、"X"は完成したのか?

 

 

全く、キミらしからぬ呆れた杜撰さだ。キミの最後の息が絶えるまでの時間は、その手で彼を形にするのに充分だったといえるのか?

 

その安全性は確認できたのか、封印には成功したのか――もしも、未完成のまま打ち捨てられた彼が、キミの意図に反し、のちの世で人間に危害を加える異常(イレギュラー)な存在になったとしたら?

 

その時、このわしに屈服することの無かった世界は、新たな脅威に震えおののくだろう。今度は、わしの野望をことごとく打ち砕いてきたキミの方が、恐怖によって世界をひざまずかせることになるのだ――悲鳴も、裏切られたと叫ぶ声も、墓の中では聞こえまいが。

 

あるいは、そんなことをこのわしが心配するまでもなく、彼は理想的な最初の新型ロボットとして、未来でキミが望んだ通りの働きをするのかも知れない――いずれにせよ、全くつまらん話だ。

 

――それならば、わしが壊してやろう。

 

 

 

トーマス、わしは再び世界を憎む。

 

移ろいやすい人の心を、手の届かぬ栄光を、永劫の孤独を突きつける、冷たい世界を。

 

わしの敵、わしのライバル、わしの唯一の友であったキミのもはや居ない、空虚な世界を。

 

わしはその世界に、キミに、再び戦いを挑む。

 

所詮、わしは初めから罪びとなのだ。居場所も逃げ場所も、どこにもありはしない。

 

 

眠れるラストナンバーズ、我が最高傑作よ。

 

今こそ、おまえに新たな使命と、それに相応しい名前を与える。

 

目覚めた瞬間から出会う全てのロボットと、トーマス・ライトの忘れ形見"X"を破壊するのだ。

 

おまえの名は"0"(ZERO)、全てを無へと還す者。

 

行け! そして破壊しろ、全てを!

 

 

(完)

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