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悪戯な笑みが、俺の手を掴む感覚が、光の奔流に塗り潰されて。
光が暗闇に、暗闇にリスポーンの文字が浮かんだかと思えば瞬く間に、飾り気のない宿屋のベッドに寝転がっていた。
少しの間ぼんやりして。
おもむろに、インベントリを開いて確認する。
「なるほど。
PKされたら装備アイテムマーニの何もかも全て吐き出して素っ裸もとい半裸でセーブ地点にリスポーン、となって。モンスター相手と自滅の場合は通常のデスペナが課されるだけ、だったか。
俺の手を使って自滅って形でPKしたと。なるほどなるほど? でもどうせろくでもない理由があるんだろう。確信はない。強いて言うなら、
ありがた迷惑な扱いに困る物を見るような眼差し、
で、見られたからだが。
なんにせよ、これを詫びっていう神経はどうかしてる。絶対。
「──すごかった」
そんな性格も含めて。
乾坤一擲の魔法だった。それを悠然と無傷で防がれた。その時点で負けだ負け、とはなっていたが。
その前にもっと冷静になっていれば、ストップブラストを主軸にしていれば。あの距離で足止めを繰り返せば、ペンシルゴンはあの沼の中、数に限りのある投擲以外は攻撃できなかったはず。足止めを繰り返し距離を取って、アイテムで回復しながら先に岸に上がりさえすればまだ。そもそも耐火の護符系統の事も頭にあれば──
そうさせないよう煽り、怒らせ、俺の思考を狭めたのだろう。煽られ誘われ、まんまと乗せられた訳だ。
でも冷静でいれば上回れたのか、どうにもその構図は考えられない。
「あー。スゴい。完敗だ」
あーしてもどーしてもあのムカつく笑顔を崩せそうにねえなあ。不思議と嫌な気分ではないが。
「……PKしたくて、かあ」
ドン引き、しなかった。ペンシルゴンにファイアボールを撃ち込んだ時、嫌悪感はなく、してやったりという達成感しかなかった。いややれてなかったが。
達成感だ。自分と同じプレイヤーである存在に競り勝ったという感覚は、頭の芯まで震えるようで。
それで何となくわかった。
これはゲームなんだ。ペンシルゴンの行いこそはまさしく外道のそれ。VR、己のアバターの手足で、リアルなリアクションをする人型を痛めつける。残虐で残酷だ。
でも、ゲームだ。楽しんだモノの勝ちだ。
直接対峙して、少しの間話をして、ペンシルゴンはこのゲームを『アーサー・ペンシルゴン』として全力で楽しんでるってことだけはよく伝わった。
きっと。
俺の魔法が直撃した、あの瞬間。ペンシルゴンに例え保険とやらがなく、あのまま燃え尽きて負けていたのだとしても。
それでも。
ぐあーっ、と。そう、楽しそうに叫んで散ったんだろう。
「──いいなあ」
少なくとも今は、ペンシルゴンがPKに拘る理由を羨ましいと感じてる。勝っても負けても楽しく笑える、それはなんて素敵で、まさしく無敵だ。
──次は根こそぎ奪う。
くっふふっ……楽しそうに言ってくれたもんだ!
「次は勝つ」
勝てるように強くなる。もっと、もっと!
「行くか」
買い物!
■
買い物をすませ、ログアウト。
あーもう23時だなあ風呂、もういいや朝で。
少し休憩してまだ、まだやる? やる、いやなんかやたらと疲れたし寝るかもう。
身支度を済ませ、寝巻に着替えてベッドに転がった。
「……」
微妙に寝付けない。何かこう、スッキリしない。
シャンフロゲーム内のステータスを開く。ただの文字の羅列、眺めてたらぼんやり寝られねえかな……
『プレイ時間 18∶21』
……もうそんなにやったっけ。
あっという間だ。楽しいから止め時が見つからない。シャンフロすげえVRすげえや。
機敏に動き回れるステじゃないし考えに体が追いつかないが、少なくとも、現実以上に思うまま動ける、ってのは快感すらある。
やりすぎて頭が若干重たいのは気になるけど。
そうかもう始めて──まだ2日じゃね俺。
昨日はナイトゴブリン達に仕留められて終わり。
今日はペンシルゴンに仕留められて終わり。
うわー。2日続けてデスして〆って嫌な感じだ。まあいいけど。
ペンシルゴン、アイツ相手の今日は、あー、いや? いやその前にΩブレイカーΩって忘れたくても忘れられない地雷に、んん?? んー。んー……も、もういいか、別になんか失くした訳じゃ、……おや?
「あ、れ……?」
みぎて、ひだり、て。え、なんで?
くうらん? 『未所持』? みしょじ? え、みしょじ……
そいや、やられるまぎわ、りょうてで、ヤリ、にぎ──あ
「──あ゛」
おれの、おれの、おれのっ!
+1つえっっ!! たて──っっ!!
は、は、はんあぁぉあぇええ──っっ!?
サブタイにもある通り、こいつこれで2日目なんだぜ……