でも情報でめっためったに滅多打ちされてる。
僕らのシャンフロはいったい、どこへ行くんですか、
硬梨菜先生
翌日。一晩寝れば精神も回復──しなかった。
むしろ! 目が覚めるにつれ思い出して、思い返して! 大蛇から護ってくれた盾や! 愛着の沸いた+1の杖が!
も、は、や!
シャンフロの『スズキ・SG』のその手には無いのだと。
ペンシルゴン……っ
「はあ」
月曜日。時刻はそろそろ午前9時。家族はもう家を出た頃合い。休みだから起こさないでくれてるの有り難い、もとい、一声かけてくれても良くないかと考えんでもない。
まあいい。
「さてと」
冬休みの1日をまた、ゲームで満喫できる訳だ。
多少なりとも罪悪感はあるが。
少しばかり精算すべく掃除機を手に取り、家の手伝いとしてそれだけでも済ます。
スーイスイと掃除機をかけてる最中、視界の端で、テレビにあの顔が写って全身が強張った。
『天音永遠が送るクリスマスコーデ』
あっれなんか、……題材からしてキラキラしてる?
そうか。あのムカつく顔に見えた気がしたけど、そうだよな、いやまさかあれが本人なわけが無いか。
テレビ越しで華やかさが伝わるようなトップモデル。
そうだよ。
あの所業こそ思い出すだに、怖気と! 怒気が! 綯い交ぜになってこの胸を掻き毟らんばかりに迸る──っ!!
が、思えばホントによく出来ていたなあ。
「さーて昼までシャンフロしうぉうっ」
びびった。
朝飯兼昼飯にしようと少しヘッドセットを起動した矢先、デカデカと主張するように貼り付けられた、
by母の『お使いメモ』が、VRメニューを覆い隠さんばかりに映っていた。
ぐぅ、上手いっ。
冷蔵庫に貼られたメモなら、見落としてた〜、としらばっくれたけどっ。
これじゃあ誤魔化しようがないじゃないか!
俺が昨日一昨日と珍しく、シャンフロというVRゲームにどっぷりハマった事は、家族になんとなく話している。
ゲーム内外のネットワークを利用するのに、VRヘッドセットと携帯端末とをリンクさせる。するとゲーム内にいても外の人間と携帯端末を通じてやり取りできる、というのはここ数年で常識として認知された事柄。
だがまさかVRに疎い部類の我が家でそれが……!
…………■
一旦家を出ての買い物帰り。ラーメン屋で早目の昼食をすませ、12時前にはログインできた。
「……んー」
野良で人を集めてるゲーム内掲示板を覗く。
平日ではあるが冬休みシーズン、掲示板の数はやはり多く数え切れない。
ちょっと気になる沼荒野攻略募集はいくつもあったが、魔法使いは、もとい俺は、お呼びじゃないなあ。
となると壁タンク……になるにはこのステータスじゃ厳しい。
盾も今はねえし。今は、ねえし!
やはりやるべきはレベリングか。
まあそれらはいいんだ。今はいい。
「やはり炭鉱夫っ。いくか」
めざせ魔導書2冊合わせて2万マーニ!!
……
かんかんかんかんかん、スタミナ補強アイテム効果はとてもよい。
かんかんかんかんかん、体感3秒休憩挟めば5回ピッケルを振れる。
かんかんかんかんかん、おかげで作業効率はめちゃくちゃ上がった。
が。
「ぐぬぷ」
状態異常:嘔吐
胃液(のような黄色いポリゴン)が出る出る、数分起きに喉と体内をオロオロオロオロするこの不快感っ。むしろこれ以外でモンスターにこんな状態異常にされたら詰むっ。願うぞシャンフロ!!
お店の店員NPCもこりゃあ一度止めた上で悟った顔で送り出すわけだよっ。2度と買わねえっっ!
あ──ぐ──んえ゜けゲッけ──
………………
や、宿屋、つい、く゜ぷ、ぅう。や、しんど、あ、あれかな。ぐ。
「あ! こんにちは!」
お、おお、時間には少し早、お待た、せしたかなこりぅぐぷ。
「っ、……こ゛ん゛に゛ち゛は゛」
「わー! それあれですよね! 激マッッッズの『ゴリゴリドンリンク』! 私も仕方無しに飲みますけど、ほんと嘔吐の状態異常あれ二日酔いなんて目じゃないくらい吐くからもう泣く通り越して笑えますよねー! 頭痛がないだけマシなんですけど、って、あ、とりあえずお水いります?」
「と゛も゛て゛す゛……」
……う、あ、染みる──。
い き か え る 。
ポーションの瓶に詰められただけのただの『水』なんて、空腹度の足しになるかなんないかわからんアイテム、どこに需要あんのかと思ってたけど。あのドリンクの傍に目立つよう置いてあったのはこのためね。
今度からゴリゴリする時はこれ買おう。金が、いる、まだ、いる。炭鉱夫はモンスター狩るより現状最効率だし。
「ぷはっ。あー! たすかりました。ありがとうございます、え──と……」
「いいえいいえ! 嘔吐は治ってからもメンタルに引きずりますからね! お水くらいなんてことないけどそれの100マーニだけ一応下さいね!」
「あ、はい、もちろんです。助かりましたし」
【肉? 球? 否! 我にくきうナリ】……
素材交換掲示板で見た時から疑問だったけど、どこが名前? にくきうなの? しかし高い声でよくしゃべるなこの女の人。テンション高めのパリピって感じだけどなに、名前の一人称『我』って何を考えてた? その時なにがあったの……
すっっごく気になるが。
素材交換するだけならひとまず、気にしなくていいか。
そもそも待たせたし、で、えーと。えー、と?
「あのすみません、素材交換ってどうすれば」
「初めてでしたか。いいですよー。お教えします。まずメニュー開いて、素材タップしましょう。ちゃんと私の欲しい『貪食の蛇皮』をですよ。お願いします! で、その際指をすぐ離さず長押しですっ。すると、ね?」
「ああ、はい、でましたでました、これで、こう」
パッと出てきたのは『交換募集バナー表示』『近くのフレンドと交換』『近くの誰かと交換』ん? ああ『ギルド内のストレージ表示』は暗く点灯してる、ギルド内ならここでできるのかなるほど便利。あとは『オブジェクト可』『破棄』か。
タップするだけだとオブジェクト可か破棄しか出ないんだよな店以外だと。交換とかはこうやるのか。これあげる、ってなったらオブジェクト可だけでいいんだろう。
んで、えー、近くの誰かと交換、で。名前入力か。
肉? 球? 否……ああ「!」もか。我にくきゅ、じゃない、にくきう、と。……めんど、いや失礼か。
申請、あ、添付でマーニつけられる。
「あ、申請来ました。確かに致命兎の毛、ですね。申請OKと。100マーニも渡しときます」
「私もです! はい、よろしくからの、……はいきました! よーし、やったー! ありがとうございましたっ」
「いいえこちらこそ。教えてもらえて助かりました」
「もーこっちこそですよっ……まーたあんの蛇狩るの面倒くさくってもうほんっっとうにっ。
あーあ、オメブレあいつ早くいなくなんないかなーって……」
「おめぶれ……?」
「あれ? スズキさんは会ってません? ヴォーパルバニーに遭遇してない以上にラッキーですよそれ! ΩブレイカーΩ、略してオメブレっていう、貪食の大蛇前でこの頃ずっっとウロウロしてる、うっっざい大剣プレイヤーなんですよ! もう何回か絡まれてもうウザくて周回だって行きたくなくてぇ、なのに皮だけでないからもう辛かった! 今回の連絡すんっっごく嬉しかったんです! ありがとうございますスズキさん!」
おおう、怒涛の文句が。んー、オメガ、ブレイカー、オメガ。それでオメブレって略か。うざい大剣プレイヤー。
『邪魔すんなヘタクソッッ!!』
あいつかー!
「こっちこそ。アルミラージ素材はともかくまさかのヴォーパルバニー素材要求されて、まーたアイツのいるかもしれない森に戻るのホントに嫌だったんですよね、助かりました。
しかしそうか、アイツずっといたんですかあの辺に。俺はソロだったんで断りきれず……半ば強引にパーティ組まされました」
「うわぁ」
重々しい声だった。奇妙な仲間意識が生まれた瞬間だった。
「なんてなんて災難な! どうなったかはお察しします──で!」
「は、はい」
ズィっと近寄られた。なんなんだ。
「ああ、すみません近寄りすぎた。もーソロの魔法職のって聞いたら伺いたくて。ねえスズキさん、私ともう一人ともしかしたらもう一人の3人なんですけど、よかったらパーティ組みませんか!?」
「是非っ!」
しまった。一も二もなく飛びついて。パーティ組みたいからってガッつきすぎた。
あ。でもなあ。
「ほんとに! よかったいいんですね! ありが」
「ごめんなさい俺、いま……装備がないの忘れてました」
「え」
おのれ──
インベントリの中身と防具は無事だったが、結局足を引っ張られたことに変わりはない。
やはりっ。
おのれ、おのれっ、おのれぇええ、ペンシルゴン──ッッ!
おのペン
この更新は3月17日のもの。
この場にて、サイナ、おめでとう。
早く劇場版になってくれやってくれ。
摩天楼が響く中、サンラクサンの斬風が閃く。
劇場で迷惑ファンとしてそのシーンで泣きたいんだ……