「TEC?」
「最近最後の街フィフティシアに到達するプレイヤーが増えて、雑談の機会もそうですけど検証勢も賑わってきたみたいなんです。
魔法職界隈の検証してる話題の1つに、もともとそういうものなのだろうと思われていた魔法の命中精度について、言及されてきてるんです。
レベル99の極魔振り賢者と、剣聖や神秘の剣といった魔法剣士系統に、同じ魔法を使わせた時、“命中精度”が大きく異なるという話があります。そしてその差は、剣のような武器攻撃を視野に入れたTECの数値により生じているのではないか、と」
「命中精度がTECで異なる。……それならDEXは?」
物理攻撃ならTECもそうだけど、ゲー厶によって“命中率”と表される事もある。
「アイテム精製に携わる錬金術士の方々はDEXが高いため、参考になると検証に参加して見た所、やはり今の所大きく差が生じるのはTECにも振ってる魔法剣士職と比べた時なので。結局の所プレイヤーによる点もあるそうですが。
ただ、ワタシが魔法職に今すぐなるには魔力を伸ばすのは難しい段階でしたので。少ない魔力で正確な援護もできるサポーターになろうと」
ユビフさんが何かしらスキルを発動したのか、差し出した彼女の掌が仄かに光りだした。
「『掌のおまじない』DEXとTECに一定時間+補正のつくこのスキルを魔法使いになるにあたり購入したんです。TECだけじゃなくDEXにも作用するから、話の流れからは少しズレてるんですけど。
元々狙いやすい回復、補助魔法を撃つ際はこれを使うと、より思う通りの軌道で魔法を飛ばせている感覚はあります」
「それっ、どうしたら手に入りますっ?!」
誤射も無くしたいのはもちろんだけど、大蛇と戦った時もファイアボールをよく外していた。あれはたまたまだと思って気にしてなかった、でも理由があるなら話は別。
なんとしてもそのスキルを回収しないとっ。
教えてほしいとジッとユビフさんのその覆面を見上げていた。
「す、す、スキル、ガーデナーにぇ、売っへふ」
「おお店売り!」
すぐ手に入るかも知れない。おいくらっ!?
「……3、じゃない……に、26500マーニで、ふ」
「──」
そうか26500マーニか、──26500か。
「金かぁっ……! くぅぅ高ぇっ……!!」
あー。しかしそんなするよねえ、ノーリスクでステータス2つにバフ入るなら高くもなるよねえ……
今すぐ時間貰って買いに行ける額じゃない。時間作って採掘でもしないと全然手が届かない。
「やっぱりすぐ買える額ではありませんか」
「ええ、はい……。けどいずれ必ず手に入れます。必ず。
それでその、ユビフさん」
「はい。ワタシに任せてくれたら、嬉しいです」
男アバターだけど、顔も見えないけど、まさしく俺の救いの天使だよユビフさん。
…………
「っしゃー! ふふーん。コイツで完了完了っ」
「へいへいー、お疲れお疲、! ユビフさん上っ!」
切迫したパスタさんの声に振り返って見上げれば、
そのお方を狙うんじゃあねえっ!
「
放った2条の稲妻のうち1つがユビフさんを襲おうとしたハゲタカを中空で捉え、ポリゴンへと還した。
これで確かに戦闘終了、だな。
「む、無警戒でした。ありがとうございますスズキさん、パスタさん」
「お礼なんていいですよ! ユビフさんに何かあったらと思うとっ。ほんっっとに無事でよかった」
「お、おおそんな、いいのにぃ」
「何回目だよ大仰な」
「スズキさーん。言っちゃなんだけどそろそろうっとおしいぞー」
「あ、はい。つい。すみません」
閃導あざっす! めちゃくちゃ助かってます! ってくらい、ボルトもそうだけどファイアボールも当てやすく、連携がスムーズでもう気分がいい、気持ちがいい!
この気持ちを表現するには、どうしても、なんだか、とっても大袈裟になってしまう。困らせてしまうのは本意じゃないしどうにか抑えよう……
そろそろ、という頃合い。地図を見ればサードレマまで、つまりエリアボスのマッドディグまで、いよいよという地点に差し掛かっていた。
あとちょいでLvが上がりそうと、にくきうさんの要望で戦闘を1つ終えた所。
ちょうど上がったにくきうさんはステ振り、パスタさんは武器の修繕に。
「……けどほんと、一時はパーティプレイは俺には無理かなと諦めかけたから、ユビフさんには助かってます」
MPの回復をした俺とユビフさんは手持ち無沙汰だった。せっかくだからきちんとお礼を言っておく。ユビフさんには閃導で俺のために負担をかけるからとMP回復ポーションを渡しているが、そんなのお礼にならない。
TECのことを教えてくれたのもだが、おかげでほんとに魔法はよく当たるし協力できている感じで、パーティプレイはたまらなく楽しくて仕方ない。しかも、閃導じゃなくてもスキルで補えると教えて貰えた。
このパーティで初の戦闘といいそれからずっと、立ち回りの補助と今後への助言と。あーあ、もう足向けて寝られない大恩人だよ俺の中で!
「マッドディグ攻略の時も、よろしくお願いしますね!」
「……ワタシだって感謝してるんですよ。ありがとうスズキさん」
「へ」
感謝? 俺に?
「スズキさーんユビフさーんっ。マッドディグはあっちっだってー」
「え、あっち、っていつの間に」
にくきうさんは俺じゃ絶対登れそうにないくらい高い岩の上で、手を振りながらマッドディグがいそうと指差している。さっきまでその岩の下でパスタさんとやり取りしてませんでしたかねあの人。
「いつの間にか偵察をしてたんでしょうか。今日で2度ご一緒しただけですけど、にくきうさん行動早くてビックリしてます」
「そうですね、ほんと。考える前に動いてそう。そんなに話し込んだ覚えないんだけどなあ」
ユビフさんがにくきうさん達の方へ歩き出すからついていく。しかし感謝してる、って何についてか聞きそびれたな……
「よーしよし、この先だって」
「エリアボスが近い気はしたけど、あんなとこからホントに見えたんか?」
「んんにゃ? 見えてないよ。聞いただけ」
「……聞いた?」
お互い顔を見合わせた。
“え? 誰に? ”
岩の上から降りてきた、にくきうさんを3人して見詰めると彼女は上を指差して、……んん?
「どーも。クラン【フォッシル・マイナーズ】、
【Tool TGN】で『タガネ』と仲間達からは呼ばれてますー。化石掘りに興味がありませんかー? もしあったらー、是非サードレマにいるウチのリーダーを尋ねてくださーい」
大きい声でそう叫ぶ、岩の上からこっちを覗きこむタガネさんとやら。ライト付きのヘルメットとサファリジャケットが見える、なんか如何にも探険家といった服装だ。
ってか化石掘り?? そんなことまで出来るのかシャンフロ? いやさすがにそんな、……うーんやれそう。
何気に勧誘されてるけど、サードレマに、って着く前提で声かけてくれてるあたり、応援してくれているんだろうか。
「タガネさーん! 教えてくれてありがとうございますー! また今度ー機会があったら顔だしてみまーすっ!」
そうしてお辞儀するにくきうさん。事態が飲み込めないがともかく、続けて3人して頭を下げて礼も1言伝えて、移動し始めた。
まあボスの場所を教えてくれた訳だし、応援もされてるみたいだし、悪い気はしないから全然いいんだけど。
きっとパスタさんもユビフさんも俺と同意見のはず、
“この短時間で何してたんだこの人”……。
……
俺はなあ、サードレマに早よ行きてえんだよぉおっ!!