神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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もうこんな時間ですよ(午前1時近く)(明日仕事)


セカンディル 11

 …………

 

 

 

 

「あーこれだろな。如何にもって感じだ」

 

 

 そこは、ただただ一直線に抜けていけるかのような道。

 翼のないプレイヤーが登るには高い崖が、その道を挟むようにして続いている。

 動き回るに到底不自由しない幅はあるが、けれども、グチャリと、泥沼が端から端まで、奥の奥まで。素早い動きを封じ、自由を妨げ、ここの()がそう逃しはしないと言うかのように広がっていた。

 

 ここにいるんだ。

 セカンディルからサードレマまで行こうとする探索者を阻む、エリアボス、マッドディグが。

 

 

「さ! 情報通りならそこらに広がってる泥沼に入ったら戦闘だよっ! 各々準備はできてるね? 打ち合わせといこうか」

 

 

 心なしか緊張感を孕んだ、それでも元気よく弾むような、にくきうさんの言葉。

 皆それぞれ、応と返す。

 主戦力は二人。

 素早さを活かして毒を交えて力技のスキル攻撃でとことんダメージを稼げるLv24のにくきうさん。

 ヘイトを集めることで発動する1式装備の特性と防御スキルの硬い守りでパーティを守り、被ダメをカウンタースキルの威力に乗せて火力を出せるLv23のパスタさん。

 

 回復と補助魔法で終始全体を援護するのはLv18のユビフさん。

 俺がLv16(ここまででついでに上がった)と低く魔法も“火力”と呼べる程の威力を出すのは難しい。だから俺がするのは、チマチマ削ったりもして、基本的には主戦力2人の“援護”である。

 

 

「よーしよしっ。そいじゃ行こうかみんな。今は日暮れ、もういい時間だ。だから。

 パパパのパッとマッドディグを片付けてぇっ、サードレマで祝杯を上げよーゼッ、イエ──ッ!!」

「オッシャアにくきうさんの奢りだぜっ!」

「待ちなさいよパスタァッ!!」

「ゴチになりまーすっ!!」

「スズキさん染まらないでっ!?」

「な、なりまーす?」

「んな──ゆーさ、ん……っ、そこはお互い出そうようっ」

 

 

 笑う。笑う。笑う。もはやお互い言わなくてもわかる。伝わってくる。

 さあ、後は勝って笑うだけっ! 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

連鎖詠唱(チェインスペル)

 

 

 バシャリと、いの一番に俺が泥へと踏み込んだ。

 すると地響きが1つ。周囲一帯の泥が波打った。

 振動が重なる、小さく小さく、やがて足元が少しづつ覚束なくなるほど大きく大きく。

 

 

「スズキさん!」

「まずは頼むぞっ」

「はいっ!」

「『堅身』」

 

 

 呼び掛けに応え、堅身に包まれた矢先。

 突然泥沼の大地を突き破って現れたのは巨大な影。

 ナマズのようなヒゲがあり、巨体を支える四肢には水かきがありカエルのようでもあるが、泥中を掘り進むモグラともとれるか。だがその鼻先や背ビレの特徴、そして何より、唸り声を上げるその口腔にゾロリと生え揃った牙牙牙ーーっ! 

 泥色のサメのような姿だった。

 

 

『エリアボス マッドディグ エンカウント』

 

 

 そう表記されたウィンドウなんか気にしちゃいられない。

 ヤツが出現したこのタイミングが、俺が役割をこなすタイミングでもあるっ。

 食らえや大盤振る舞い! 

 

 

「アースフィンガーッ!!」

 

 

 大地を隆起させその場にいる敵を跳ね上げる土属性初級魔法『アースフィンガー』。

 泥沼が噴火したかの如く盛大にぶちまけられ、都合10発の“土塊(つちくれ)の指先”による殴打がマッドディグを打ちのめすっ! 

 

 

「ナイスナイスナイスッ! いっくよーっ!」

「完璧だぜっ! さあ下がってろっ」

「任せまーすっ!」

 

 

 アースフィンガーの連打でマッドディグが怯んだ直後、すぐさま“バックステップ”も使いつつユビフさんの所まで後退。ステップ系統のスキルなら泥沼の中だろうと“歩行強制”は受けずにすむのだ。

 

 ユビフさんのバフを受けた二人とすれ違う。

 にくきうさんは泥の中をスキルで突き進み。パスタさんは俺が隆起させた土塊を足場にして、ヘイトを稼ぐスキルを発動している。

 マッドディグの鼻先がパスタさんに向いた直後、

 

 

「腹下の急所ぉっ、頂きぃっ!」

 

 

 待ってましたと腹下へ一瞬で潜り込んだ、にくきうさんの痛打が炸裂っ! 

 にくきうさんとマッドディグを中心に爆発的な泥しぶきが舞うっ! 

 ギギギギとは苦悶の声か。あの威力もそうだが、弱点の腹下はよほど効くらしい。

 

 

(まだ)──(まだ)っ!!」

 

 

 重々しい打撃音がたちまち連続し、泥を波立たせ荒らしに荒らす。

 弱点へのクリティカルで怯みが続いた好機に、にくきうさんは何かしらスキルを発動して畳み掛けた。あれに毒付随してんだよね、エグいなあ。さてMPポーションぐーいぐいとな。

 

 ……マッドディグは本来、開幕すぐに潜行して、弱点の腹部を泥沼で隠す。そこを魔法で無理やり引き留めたのがこの“ハメ”のような状況だ。だって攻略サイトに私怨タップリにそうやってボコれって書いてあったからね。仕方ないね。だから魔導書買ったわけだからね。

 

 

「うおう──りゃ、ぁ、おっとと!」

 

 

 だがやはりエリアボス。そう簡単には倒しきれない。

 その巨体で押し潰そうと、殴られながらも無理やり倒れ込み泥の噴水を撒き散らした。

 にくきうさんはと言えば、直前であっさり身を引いて周りの土塊を使いに使い、泥の飛沫も受けないほど華麗なステップで跳び回っている。

 

 

「ぐばべ……ええい気持ち悪いっ」

 

 

 そのにくきうさんの近くにいたパスタさんは……。

 にくきうさんはホントに俊敏に動けると感心する。リアルでも何かやってるのか? にしても近接特化ってあれだけ動けないとできないのかね。ならやっぱ俺には無理だなあ。

 

 って。

 

 

「! マッドディグは!?」

 

 

 いない──しまった。潜行されたっ。




続きは決着がつくとこまでもう少しで書き上がるのでその時に……
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