神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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あと1話、あと1話で……!


セカンディル 12

 俺より早く気付いたユビフさんが2人に警戒を促す。

 

 

「にくきうさんっ、パスタさんっ。マッドディグ見えませんっ! 今ので潜ったようですっ!」

 

 

 離れていた俺達だからこそ、その巨体が消えたことにいち早く気づけたが、至近にいた二人はそうじゃないっ。

 だが流れから察するに今、最もヘイトを稼いだのは……! 

 

 泥沼から背ビレだけが突き出て、あの巨体では考えられない速度で動き出す。土塊(つちくれ)の足場はその背ビレが触れた途端に次々次々、にくきうさんに向かって粉砕されていくっ。

 やがてにくきうさんが泥沼へと大きく飛び退いた瞬間、その足場を粉砕しながらその巨体を顕にしたマッドディグが、着水間際のにくきうさんへと口を開けて襲いかかった! 

 

 不味いことに堅身の効果が切れている。ただでさえ防御は薄いにくきうさんが、しかもあの状態でマトモにあのアギトで噛まれでもしたら即死もあり得るっ……! 

 

 

「っしゃぁあっ!」

 

 

 パスタさん! 

 泥を掻き分け近寄っていた彼がその手に持つ盾を投げ放って。それはマッドディグの鼻先を……おっとー? 

 

 

「へみ゛ゃっ!?」

「え、そっちぃ?」

「ち『治癒』『快癒』っ、あはは……」

 

 

 放たれた盾はキレーに、にくきうさんの顔面を打ち据え叩き落とし、即死攻撃の直撃から遠ざけ、た。──いやおかげで彼女無事ですけどね? わあ強引……

 

 

連鎖詠唱(チェインスペル)

 

 

 すかさず飛んでいったユビフさんの回復魔法。それを追いかけるように俺も走る。

 再び足場を作って援護もしようとできるだけ急ぐ。くう、距離が離れると最悪2人にアースフィンガーを当てかねないツラさよっ。

 

 

「ありがとパスタのバーカバーッ、カッ! 

 ありがとうっ!」

「ふふん。っ、“お礼はイイぜぇええーっ! ”」

 

 

 ダメージと頭部への衝撃スタンを治療されてすぐさま、にくきうさんはステップ系統スキルでその場を離れつつ、パスタさんへと盾を投げ返して……礼? を言い。

 ヘイトを集めるスキルで大声を上げたパスタさんは、飛んできた盾を器用に受け取ると、手を止めることなく速やかにかつ甲高く剣の柄で盾を打ち鳴らす。さらにさらにと、ヘイトを稼いでいく。

 

 狙いを派手に外したマッドディグはといえば、大きく泥沼で弧を描き旋回していた。

 マッドディグのその背ビレが、パスタさんの連続ヘイト稼ぎスキル使用により、その背の刃先(はさき)をグルリと変える。

 

()()が必要になりそうなのはパスタさんの周りになるか。

 

 

「タイミング見て、足場いきますっ」

 

 

 足に絡みつく泥を蹴散らしながら進み、パスタさんがヘイトを稼いだのを確認し大声で伝える。

 ユビフさんから『閃導』が俺に、『堅身』が、にくきうさんとパスタさんに付与される。

 

 

「──」

 

 

 集中──にくきうさんとパスタさんの位置を確認。タイミングはまだ。ヘイトを取りかねない、アースフィンガーの数は抑える。パスタさんにマッドディグが仕掛けるまで待って、にくきうさんの立ち位置を再度確認してからその瞬間に動く。

 

 パスタさん目前に迫った背ビレが一瞬泥に沈んで、勢いをつけ、そこからマッドディグが跳び上がって現れた。

 爆発的な勢いで泥の水柱が立ち上らせたマッドディグが、打ち上げた泥の雨を伴って巨大なアギトをパスタさんへと向け襲いかかっていく! 

 

 

「うひょぉおこっええーっ……! 

『不動退転』っ!」

 

 

 ホントにそれ怖がってます? 

 スキルを叫んだパスタさんは引くどころか、灰色の円盾の上位互換だろうその盾を正面に構え、て、

 ってまさか受け止めんのぉおおーっ!? 

 

 

「ぐ……っ! っっだゃぁああーっ!!」

 

 

 あの巨体の体当たりを受け、でかい口でほぼ全身噛みつかれて、なお健在だった。

 1式装備効果と盾スキル、防御系統らしきスキルは発動すりゃ防御マシマシよ!とは聞いていたけど……まじかー。あれ受け止められるんだ、スゲえな前衛職ちょっと引くなあ。

 ともかく。

 真正面からその猛攻を凌いでくれたパスタさんのおかげか、にくきうさんがしっかりと回り込めている。

 これ以上ないタイミング。

 

 

「アースフィンガーッ!」

 

 

 数は6。パスタさん周りに足場として4つ、そしてマッドディグを打つのも兼ねた2つの配分で発動。

 飛沫を上げて泥を突き破った土塊が、パスタさんとマッドディグをたちまち囲むように屹立した。

 2つの土塊に腹部を激しくド突かれ、マッドディグの口が緩んだか。

 噛みつきから抜け出し、すぐ後ろの足場の土塊へと立ったパスタさんは、ユビフさんから飛んできた魔法で回復しつつ剣を振りかぶって。

 

 

「チャンスッ! その()()()がよぉっ、気になってたんだ寄ぉ越せえおらぁあーっっ!」

 

 

 物欲が詰まりに詰まった雄叫びと共に放たれた投剣のスキル攻撃。燐光伴ったそれは背ビレの半ばまで深々と突き立った。

 ボスの部位一撃でボロボロにするって、スゲえ威力なんだけどなにあれ。

 

 

「ちぃ惜しいっ! 今の3倍返しじゃ足りなかったかよっ! はっはーっ!」

 

 

 苦痛に震えるマッドディグがその高笑いに反応するかのように、パスタさんへと狙いを定めて上体をもたげた──()()をにくきうさんは見逃さなかった。

 マッドディグの死角へと回り込んでいたにくきうさんが腹下のアースフィンガーの“橋”を渡り、僅かに浮いたことで晒された腹下へと瞬時にその華奢なアバターを滑り込ませ、

 

 

「『インファイト』

『瞬連』

『パワーラッシュ』

 っ──いくよっ」

 

 

 一撃一撃一撃一撃っ……! 怒涛と繰り出されるその連撃はまるで1つ1つが大砲の威力だ。

 にくきうさんの鉤爪の拳で殴られる度、マッドディグのあの巨体が揺れ、次第に持ち上がっていく。

 ついには空を見上げさせた。そこで、ラッシュがピタリと収まる。

 

 自然と落ちてくマッドディグの鼻先に、にくきうさんは体勢を変え、貯めに貯めたアッパーカットのような一撃を仕上げとばかりに繰り出して、 

 今日イチの轟音と泥しぶきと共に、マッドディグを完全に跳ね上げた!

 

 

「っっあー! スタミナからっからーっ! 殴るのきもちーっ! シャンフロさいこーっ!!」

 

 

 …………()()になってるなあ。

 




あと1話で終わる──といいなあ
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