落下し始めてるっ。
く、ぐぅダメだスタミナが。
まだ距離があるのに。
尽きる、もう尽きる!
あともう少し、もう少しなのに……!
くっっそお!!
「え──」
なんだ、いきなりスタミナが回復、体が少し光っ、──ありがとユビフさんナイスタイミングッ! 声も届かないくらい離れてるのにすげーよ!
「
こんな後押しされちまったからには、何としても成し遂げる!
連鎖的に作り上げろ、アースフィンガーからアースフィンガーを繋げろ!
瞬く間に出来上がっていく“道”を、出来た傍から走り抜ける。
にくきうさんの下へと伸ばしたこの“道”を、
走れっ、
行けっ、
急げっ!
走るだけじゃなく後ろ向きにバックステップLV6も使う。格好なんて気にしてられるか!
スキルによる
2つ被ったことでぐんぐん最大まで回復したゲージを視界の隅に捉えつつ、
「
にくきうさんの直下に滑り込んだ。
「……皆、さいこうっ」
「エア・クッションッ!」
MPをフルで消費っ、3重の“エアマット”もどきで受け止めるっ!
1つ目に衝突し一瞬の拮抗を見せ、突き破り、
2つ目で目に見えて確かに減速し、突き破り、
3つ目でその速度を一気に殺して、──にくきうさんはクルリと身をひねり、悠々と着地した。
「っっ、ぃや──たあー……っ!!」
間に合った……っ!
スタミナが尽きて突っ伏す。完全にスタミナが回復するまで強制される疲労状態。チラッとユビフさんの方を見やれば、やはり同じような状態だったが丁度回復できたらしい。
膝立ちで、バンザイして喜んでくれた。
「ありがとスズキさーんっ!」
「おぶぁだっ、そ、そのSTR、抱きつき、マズ」
「あ、ごめんついつい。なんてなんてドラマチック! なーんて考えたらもう感動しちゃってっ。
だってカチ上げられた時は、もうだめだー、またセカンディルからだー、爪も作り直しだし皆とも会えるかわかんないしもうやだ──てっ!!
まさかもう助かるなんて思ってなかったから、ホントにありがとっ!」
「た、はは……パスタさんもユビフさんも、皆が捨て身で頑張ったおかげですよ」
ボスを単身で引き受けるパスタさんと、そのパスタさんを信じてスタミナ値0による強制脱力状態を厭わず、MP消費ではなく“スタミナ全譲渡”が条件の付与魔法『総身専心』を放ったユビフさんのね。
「スズキさんも、よーく走って間に合ってくれた、みんなのおかげだね!」
「う、……はい」
まあ、そういうことに、なりますね。
「さーてさてっ、一気に仕留めようかっ!」
マッドディグへと猛然と駆け出したにくきうさんは、スキルを使ってあっという間に、尾ビレを伝い隙だらけの背中を駆け上がった。
そして背ビレへと急接近し、その両手の鉤爪で、背ビレの裏側を強襲した。
背ビレの前と比べれば後ろは柔らかいものだ。弱点をついたようなものか。
元々半ばまで断たれていた背ビレは突き刺さった剣ごと宙に大きく千切れ飛んだ。
部位破壊、あれはデカいダメージだろう。
暴れモーションをとるマッドディグから、にくきうさんが高々と飛び降りて、叫んだ。
「トドメッ! 任せたよパスタさんっ!」
離れていてもよく聞こえる。
高らかなそれは、にくきうさんの勝利の確信。
その感覚は、あまりにも俺と一致してて思わず笑った。きっと
そうして。
堅身を受けたパスタさんが正面で暴れるマッドディグへと、体当たりするようにぶつかっていき。
短剣が粉々になるような強力な一撃が、マッドディグを打ち倒した。
俺達パーティは四駆八駆の沼荒野を攻略したのだ。
……心残りはラストアタックの時、距離があったことかな。
2人共さっきから言ってるけど『超反発枕』ってなんですかパスタさん。
え? あの壊れた短剣の名前? あれがお手製で?
あの短剣だけにたまたまついた武器依存の特殊スキル?
しかも被ダメ5倍返し!?
うわつよ、え?
その代わりに武器が粉砕する……?
…………、…………?
…………
マッドディグと戦った泥沼地帯を抜け、乾いた平坦な道がやがて坂道へと変わり、その終わりが見えた時。
タタタ……とにくきうさんが軽快に駆け上がった。
「みんなー! 街だー! 待ちが見えたぞー!」
「船乗りかよ」
「あっはは、なるほど……」
「元気ですよね……ワタシへとへとです」
この坂を登りきった先で、サードレマがついに見えたらしい。
にくきうさんは跳ねながら、早く早く、と急かしてくるが、跳ねるような元気はユビフさんの言う通りない。
でも気持ち、足取りが軽くなった。
サードレマ。ファステイアとセカンディルを合わせても足りない位に規模のある街。この大陸を治めるエインブルス王国、その大公様がおわす土地だからこその広大な造りなんだとか。
それが誇張ではなく事実だとハッキリした。
夕闇に染まりつつある坂道を上がりきる。
そこは地平線まで見渡せるような崖の上。ここからなら、サードレマのその全容を俯瞰できた。
「……」
感動に、言葉が出ない。
山々に囲まれた天然の要塞のようだ。
城自体もまるで連なる山脈にも迫るほどのその偉容は、まるで山のようでいてけれども豪奢さを感じる、まさしく宮殿だ。
高い、今いる崖よりもずっと高く聳えている。
その城の下は、正面の視界いっぱいに城下町といった光景が広がっている。
この街の探索だけで一体何日かかるのだろう。一体何があるのだろう。
ガシャリと。
パスタさんの鎧の音で振り返った。
「うしっ、あとはここ降りて街に入って、セーブポイントの更新だな。あーあ、疲れた疲れた。
急ごうぜ。もうじき夜だ。リュカオーンにゃ会いたくねえ」
言い終わるやいなやパスタさんは結構な高さを飛び降りた。下を覗いた感じ、足を滑らせても崖下まで真っ逆さま、とはならない程度に段々としてるけど。
だいたい同じ高さでも2階から落ちるより怖いのでは? でもそれに倣うか、ゲームだし痛みもないし。
「リュカオーン……」
【リュカオーン】か……。
夜に現れる。夜そのもの。暴虐の権化、とかとか。夜が更けると何処からともなく現れるっていう、ユニークボスモンスターだったけ。
その強さはエリアボスとは比べ物にならず。現状シャンフロにおけるトップクランで、えーと名前は確か……【黒狼】? そこがlv99を半数以上入れた15人のフルパーティで戦って、数分持たずに壊滅したとか。
現状絶対勝てないってことしかまだわかってない、謎でしかない強力なモンスター。
デスしたらセカンディルからだし、少なくとも今は会いたくないなあ。
「リュカオーンはともかく。ここから先もモンスターはやっぱり出ますかね。もうクタクタで戦闘とか考えたくないなあ。
と、よ、っ」
「や、とと……。
同感です。でも街が見えてるからもう安地、かもです」
「だといいねぇマジに。まあもし戦闘になってもウチの元気な元気なリーダー、なら、……?
おい、にくきうさんは?」
2、3度飛び降りた所でパスタさんが振り返った。
言われて隣のユビフさんと振り返れば、あれ?
にくきうさん?
「うぉおーい! 私が感動してる間に、皆して置いてくなんてひどいよぉおっ!?」
声は上から。にくきうさんそこにいるってことは、まだ1度も降りてなくないか?
「かーむばーくっ! ヘーイッ!」
「……ええ」
「なんでしょう……」
「たぶんここで聞いてもサッサと話さねえだろあれ。仕方ねえ戻るか……」
くっ。パスタさんが言うなら、それに、にくきうさんがああもゴネるなら、仕方ないかあ。結構本気にひと心地付きたかったのが本音だ。
降りるのが慣れると楽々だったから。急な傾斜を気を付けて踏み歩くのは、来た道を戻るという事実も相まって割としんどかった。
「皆で集まって、スクショッ! 撮ろっ!」
一同揃って「え」と言ったのも仕方ないことだ。
なんだなんだという雰囲気も各々隠さずに戻った矢先にコレである。ホントになに? どしたん?
「いきなりだな──ま、撮るか!」
「そうですね。せっかくですし!」
「俺も賛成です」
意外と2人がノリノリだった。まあ、否やはない。
今この面子で一致団結して戦った、その記念が俺も欲しかった。
夕焼けがまさに沈まんとしてる最中でも、にくきうさんがニコニコと笑ったのがよく見えた。
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ここからやらせたいことと、やりたいことと、ぶっこみたいことと、ぶっ込むの躊躇してることと、ゲロ欲しいことと
たーくさんありすぎるので確実に連日投稿は無理っすね。脳内入力してくれたのむ未来……