街の宿屋、セーブポイントで一旦解散。時間を決めて再集合。宿屋の近くの店へと皆で赴いた。
そこは古めかしい木造作り。立ち飲み用なのか椅子はない高目のテーブル。奥に続く通路にはチラッとボックス席なのだろう場所が見える。カウンター席で悪戯に店主に声をかけてるような様子もちらほら。
そこかしこで。やたらゲラゲラ笑う
「おお……」
無駄にゴテゴテとイカツイ鎧を着たアバター、やたらと露出の激しいアバター、大柄小柄で男女問わず半裸の鳥頭や馬頭やらも目立つ。
街中じゃ見ない、怪しさを隠しもしないネタ装備の数々だ。まさしくファンタジーな“酒場”だ。
フツーの装備も当然半分以上いるけど、いやネタには目を惹かれちゃうなあ。
「ほーん? ──じゃ、その辺のテーブル行こうぜ」
「おーっ、異議なーし! ま、今回はネ」
「そうですね。ワタシも同じく」
「あ、はい! 俺もそれで大丈夫です」
ボーッと周りに気を取られすぎた……あれ。
でも合流した時、防音だっていう個室が空いてるか、にくきうさんとユビフさんは気にしてたような?
テーブルに着くなり何かそっと見守るようなその眼差しはなんですかね。
え、なに皆さん? なんなの?
「? あの?」
「さ、お祝いお祝い。頼んだ頼んだってな。まずは──そこの姉ちゃんっ、ここに1杯ずつ、テキトーにまずは頼むっ」
「かしこまりましたーっ」
騒がしい空間でしっかりと声を張り上げてまずはと注文してくれたパスタさんに、にくきうさん達と1言礼を言う。
にしても、なんか仕草も台詞もそれっぽくって今のとても良かったなあパスタさん。
「せっかくだしなんか食べよっ。メニューメニュー! ……よし」
「セカンディルのよりメニューすごく多い。やっぱりサードレマは大きい街なんですね」
「俺は揚げ物なら何でもいいが、ええい揚げ物どこだこの店は……お、最後の方か」
皆メニューウィンドウから店のメニューを引っ張りだして眺めだしてるようだ。
空腹度は基本店売りの携帯食しか食べなかった俺とは違って手慣れてるな皆。ええと……
「メニュー……えーと、……これか。おお。
……うーわ。見たことないものばかり、ん?」
メニュー下から注文できる? 端末からってまるでファミレス形式。
へー便利。
奥にチラッと見える、防音らしきその個室は外から中が見える。
普通のボックス席は一見すると誰もいないようだ。けど、数秒見てると個室の上部に『入室中』と表示された。防音自体もオンオフできるんだったか。
「スズキよー、決めたかー。そろそろ飲み物来るだろうから、その時頼んじまおうぜ」
「あ、すみません……なんかハンバーガーっぽいこの『神代バンズ現代バンズに挟むフィレオスタイド』に、しようかな? 一人一人で食べれるサイズにできますかねこれ」
「そうだな。4人でつつきてえし、注文の時に聞いてみっか」
助かる。にしても名前が長い。そしてどんなバンズこれ? フィレオはともかくスタイドってなんだ。
なにそれ。
「んじゃスズキがそれで、ユビフが『せんばんエイカツくろがねミックスピザ』をクラッカーでと」
「はい。おツマミで……クラッカーピザみたいなのなら、ちょうどいいかもですし」
せん、かつ、くろがね? なんの文字り? ミックスピザのクラッカー生地ってことしか分からない。
なにそれ。
「あ、私はもう頼んだから」
「ん? そうか、別に何も急いで頼まなくたってよかったろうに」
「いやー、ここに来たかったから絶対見たくってぇ。
──エヘッ」
「……」
「……」
「……」
何か、嫌な予感がする。
俺は今日1日しか行動を共にしていないけど、なんとなくわかる。
跳梁跋扈からの縁で今回もパーティを組んだっていうパスタさんも、
沼荒野の野良パーティ探索で女性プレイヤーという点で繋がったユビフさんも、
皆にくきうさんとはまだ短い付き合いだ。
だけども、なんとなく同じ感覚だろう。
いきなりの俺の勧誘といい、唐突な崖登り、衝動的なスクショ要求。などなど直感的に行動してるとしか思えない人だ。
きっと何かをやらかす──
「お待たせしましたぁ」
「あ、ああどうも、そこによろしく。んで注文を」
店員NPCのお姉さんが飲み物を置きにきた。
手早く皆の前へ置かれたジョッキに並々注がれた、この黄色っぽい、泡の沸き立つこれ、──ビールでは?
あれこれ飲んでいいのか? いやVRだしアルコールなんてあってないような、ものかな? どうなんだ。
ビールらしきものに注目してる間にパスタさんは注文を終えていた。
「うし。さー乾杯の音頭頼むぜリーダー」
「おう。アタイに任せて貰おうか。さてさーて、おほんっ。
……みんな、今日はホントにありがとう。スズくんには言ったけど、正直あの時、私は今日ここに来れないと思った」
あの時ってマッドディグのかち上げから助けた時の事だな。確かに我ながらよく間に合ったし同じ事がまたできるかどうか……
はて、スズくん?
「みんな全力をかけて、助けてくれてありがとう。
全力で走って受け止めてくれたスズくんありがとう!
皆を信じて最高の援護をしてくれたユーちゃんありがとう!
ボスと一対一で張り合って皆を護ったパスタもさんきゅー!」
「俺だけ愛称なしかよ」
「盾でぶっ飛ばして助けてくれたこと感謝してる──この頬の辺りでね? ずーっと覚えてるからね……?」
「ふぎゅあっ、だっけ?覚えてねえな」
「パスタこのぉっ!」
「っぷ」
「ぷふっ」
ファインプレーではあったけど、あれはラフ過ぎたから多少恨まれるのも仕方なし。
フフンと鼻を鳴らすパスタさんを不満気に睨んで。
にくきうさんが居住まいを直した。
「もー。ま、でもでも、感謝感謝なのは本当だよ。──さあ、よろしくみんな!」
「おっとなるほどここでか。んじゃ俺もっと」
「ワタシはもうなってますよ? あ、どうもよろしくですパスタさん。ではそれに倣いましてワタシも」
「いやパーティに一斉送信が楽でついつい」
【肉?球?否!我にくきうナリ から
フレンド依頼が来ました】
【メッセージ】
『今日はありがとう! これからはフレとして、私の事は「きゅー」のままだとまるで鳴き声だから、さんとか、ちゃんとか、チャンとか、chanとかって後ろにつけて呼んでくれたまへ!』
【フレンド申請を認証 OK NG 】
【他2件 フレンド依頼 があります】
初めてのフレンド。
この人達相手なら、迷うわけない。
「フレンドとして改めてよろしく。
きゅーさん、パスタさん、ユーさん」
「うん! よろしくスズくん」
「おう。よろしくスズ」
「よろしくお願いします、スズさん」
立て続けにパスタさんとユーさんともフレンドに。
少しの間、フレンドリストが眩しく感じた。
原作みたいに面白いこと言わせたい……!
難しいですね、何見りゃいいのか。
とりあえず百竜周回します