グロ 注意 特に食事中なら、ハッキリ言う。
この話はやめておけ。
ぜんっぜん大事なシーンはありません。飛ばしていいです。問題ない。
でも彼らがキャッキャしてるシーンは浮かんだから書きたくなった。それだけですね!
「本当にありがとうみんな! さあさあ改めまして。
四駆八駆の沼荒野攻略! そして祝スズくん初フレンドおめでとうと致しまして」
「うえ」
「乾杯っ!!」
「乾杯っ」
「乾杯」
「か、かんぱい……」
くう。嬉しいやら恥ずかしいやら!
顔を隠すように初めてのビールを呷る……うん?
なんとなーく、苦い? かも。炭酸はよく感じるけど、味は薄い。アルコールは当然感じない。仄かに苦い炭酸飲料、どこ向けだこれ。全部飲まなくてもゲームだしって罪悪感一切ないからいいけどさ。
シャンフロだと、アルコール云々は未成年にセーフティが勝手にかかる、らしい(ユビフさん曰く)。なるほど。
乾杯後、話題はもちろん今日の各々の活躍。昼間の事なのに思い出になるくらい密度のある時間。それぞれの視点で語るのも聞くのもまるで違うことのように感じるのも面白く、不思議なことだった。
「お待たせしましたー、カリッとシャクシャクポテト、神代バンズ現代バンズに挟むフィレオスタイド、せんばんエイカツくろがねミックスピザですー」
「あれ私のは?」
「──少々お時間かかるので」
「そかー。まあ仕方ない」
きゅーさんのはまだかかるのか。……なんでNPCがドン引きした目で足早に去ったのかなー。
マジに何頼んだこの人……
えーとパスタさんのはハッシュドポテト、のような形をしている。わりと名前のまんまだったな。
俺のは、見た目は白と灰色のバンズに魚のフライらしきものが挟まれたハンバーガーだ。4つに分けられ串が突き刺さって食べやすそう。名前の割には突拍子もないものではなかった、よかった。
ユーさんのはスクエアカットされたクラッカー生地に、……………………おおう。
「…………苔っぽいのが点滅してやがる。こっちは炭か? 生地が真っ黒なんだが。灰色のソースのこりゃなんだ灰汁でも乗ってんのかよ……」
パスタさんが引き攣ったような声を出す。
焦げてる訳じゃないだろう、匂いは良い、気がする。ただ見た目、そりゃこんな3色(焦げ茶、黒、灰色)ピザ出されたら俺だって引くってね……
「1周回って点滅してるのが食べやすそうな……」
「そう安心させて
「下が普通にチーズとトマトソースなのがまた逆に不安を煽りますねこれ」
「……あーポテトはまさしくハッシュドポテトだわ。芋の味より塩気強くて塩を齧ってるようなもんだが」
「どれどれー。あんー、んー、たしかにたしかに」
ユーさん共々1つもらって食べて見るとパスタさんの言う通り。お菓子感覚だなこれ。もう一つ貰お。
「よしよーし! んじゃ次はユーちゃんのからいってみよ! 私も皆も今のポテトモドキみたいに後で絶対食べるけど、まずはね! いいよね二人共」
マジっすか。
「サラッと逃げ場を無くしやがる。まあいいけどよゲームだし」
「俺も食べるのか。ゲームとしてもどれも……」
「は、ハイ……、ワタシ、たべます、まず」
ユーさん……。
きゅーさんが目を見開いて、パスタさんが腕組みし見届ける姿勢でいる中、ユーさんの指が彷徨う。
点滅する苔っぽいのと、あからさまに炭のようなものを、避けた。
手に取ったのは灰色のソース生地。ユーさんの顔は隔て刃の覆面ではあるが目は見えるし口元も見える。
右往左往する目がギュッとつむられ、震える唇が少しづつ開かれ、生地の端っこが口元に近づいていき──
「えいっ」
「あ゛」
「鬼かっ!?」
瞬間、きゅーさんが素早く3種類を手に取りユーさんの口元にねじ込んだ。
そのまま口元を掴んで覆われ、驚いたユーさんが体を震わせて、逃げようとするもSTRには逆らえず数秒で観念した。
いやにしたってなんてことをっ。
「んやー、じれったくってついついー」
「リアルでやってねえだろな……」
「まっさかっ! ゲームじゃなきゃこんな酷いことしないよっ? もう……」
酷いことした自覚はあるんですね……
「んく……きゅーさん酷い。酷い……」
「ごめんごめん! なんかでお詫びはするから!
んで? お味はどうだったユーちゃん」
「ぜったいですよもう……。
えーでも、どれがどれかわかりませんが。ザラザラするのと見た目より分厚いのとやたらと辛い。たぶんどれも食べれなくはありません、よ?」
覆面から露出してる口元を手で抑え、少し気分が悪そうな目だ。ユーさん、災難だったな……
「ザラザラねぇ。この光る苔っぽいのか?」
「見た目より分厚い……?」
「辛っ。ひへぇ、こっれ、灰色のやつぅうーからー」
「へえ、ザラザラはこの……苔っぽいのだな。苔っぽいだけで……んん。
少し歯ごたえのあるがピザに乗っかったオリーブみたいな風味……あくまで、みたいな、だがよ」
「じゃあ、この」
飄々と食べ始めるきゅーさんとパスタさん。尻込みしてられない、ええい食ってしまえ。
2人が食べてない1つにパクつく。
パッと見だともはや炭のこれは、……クラッカー5枚分くらいかなこれ。
決して噛みやすいものではない。もはやクラッカーというよりフツーのパンのような歯応えにも近い。
味自体は少し、苦いか? 焦げた、というかコーヒーとかに近い香ばしさ?
仄かに香ばしく、微かに苦い。
なんとも食べれなくもない、かといって絶対おいしくない。
あービミョー……
「あー。この黒いのワタシ好きかも」
「ユーちゃんのそれ、わからなくもないなぁ。私としてはあとはこのビールモドキが、よりそれらしかったら文句ないまであるっ」
「へー」
人それぞれか。
串に刺さった、ひと口でいけなくもないサイズのバーガーをパクり。
「んー。俺の頼んだこれは、……うーん」
上の白バンズは柔い。小麦とバターの味がなんとなーくする以外、特徴はない。灰色は、しなびてる? パサパサ通り越してカサカサしてるけど、フライにかかってる酸味のあるソースの水気で本来の食感が“戻る”変な感じ。フライ自体はザクッとした食感がしっかりしてて噛みごたえが気持ちいい。
「あーフツーに美味えかもなこれ。薄味だが」
「ワタシはなんとも。下のバンズがカサカサして気になって……あ、さっきの辛いピザのダメージ回復してる」
「んぇ? あ、ほんとだ」
「ダメージあったのかよ」
「辛いからじゃない? 辛味は痛みっていうし?」
「んなったってゲームだぞこれ。あぁいや、シャンフロだから有り得るのかそれも?」
ダメージ自体は1だけ入っていたとか。毒一歩手前じゃないかなそれ。しかし回復するってなんだ、ソース? バンズ? フライ? どれが原因?
味はフツーでパッとしないけど不思議な食べ物だなこれ。
「うっわまじかあれ頼んだやつ誰だよ……」
「初見。実際に見るとあれはひでえな」
「リアルの夕飯これからですよもーいやー」
「どんまいっすわ」
…………ん? なんか周りが騒がしい?
「お、お待たせしまし、……ぅ」
「……、……ぇ」
目がたくさんある。大きな牙が見える。本来8足だろう足のうち2本が残されてる。煙を上げてて、こんがりと焼かれたのがよくわかる。俺の体の半分以上はある大きさだ、な?
それが、大皿に載せられて、テーブルごと持って来られた。
目が離せないそれを見詰めていると、メニュー名が見えてくる。なに?
『クラウンスパイダーの頭の蒸し焼き』……?
「ご注文は以上ですしつれいします!!」
ダッと店員NPCが逃げるように席を離れる。
周りのプレイヤー達も、このコレが載せられたテーブルがココに運ばれてくる時点でスペースを空けるついでに席ごと大きく離れて、しん……として遠巻きにしている。
……クラウンスパイダー? なんだそれ。というか、え?
は? はあ──っっ!?
「……なあ、きゅーさんよ。
まじ? ホントに? 正気? 食うの? 食えんのこれ?」
「──にへへー、声が震えちゃってんねぇ。
やれやれ。いいかい? ここはシャンフロ、ゲームだぜぃパスタちゃんよぅ。そして私達は開拓者。
なら、開・拓しようゼ☆」
……“ソウイウノ=イイデス”
「ゲーム内にしても限度があるだるぉおおっ!?」
「マッッジですかぁ……っっ!」
「ワタシもう怖いんですけど……」
「にへへ……」
パスタさんは開いた口が塞がらないでいる。
ユーさんは目を逸らしてちょっと震えている。
きゅーさんに目を向けるも、彼女はただ笑うだけ。
「じゃあじゃあさっそく!! ──とぅえい!!」
「うっう!?」
「頭っから切りっ!?」
「ヒきゅィいっ……」
あ、それカトラリーだったんですね……。
大皿の脇に置かれた幅広のサバイバルナイフを2本持ったきゅーさんが、蜘蛛の頭にグッサリ入刀するっ!
あぁぁああっ!
切るたびにカシャカリカリガリガリグチュグッチュパキパキ……っていうってあんぁああ聞きたくねえっ!!
立て続けに4等分になるよう切りやがるっ! それ皆に食わせるためだなご丁寧に切り分けたってかぁっ?!
わかりたくねぇぇええっっ!
長い2本の足も小気味良くパッキパキとへし折ったぁ!?
そ、そしてぇええ!?
こ、小皿に盛り分けてるぅうううう──っ!?
「ではでは僭越ながら私めからっ!! いざいざっ!
いったっだきっまーすっっ!! ──あんむっっ」
の、のーたいむ、だと……?
「あ、ああ、頭を、躊躇なくいったっ。
ここ、こいつ頭からいきやがった……!」
パスタさんが腰を抜かして慄いている。俺もテーブルが支えにならなきゃ前のめりに倒れそうだっ。
「あ、ぴざ、おいしぃ」
ユーさん……それポテトモドキだよ。
「んんんっ。っはー! うっっわあーっ、やたらとクリーミーで気っ持ちわるぅう──!! 味なんてわからないや。
──さて」
「……!」
ダメだ──顔を上げたらダメだ。
「んー? んー? みんなみんな、どうして私から目を逸らすのかなあ?」
愉しそうな声がする──反応するな。
「私言ったし、さっきまでみんなやってたからこれもそうするよー? 注文した人が食べたら、“後でみんな絶対食べるんだよ”ー?」
反論するな。目を合わせたら、“食わされる”……!
「ゲームだよ? 蜘蛛の蒸し焼きなんて言ったって、本物じゃないんだよぉ? ねぇだから」
シャンフロのこのリアルな再現力の前じゃ食感は本物のそれなのはさっきまでで確認してるんだよなぁっ!
「スズくぅん……」
「……っ」
甘い声だ。女性の、そんな甘い声色で囁かれるなんて、こんなシチュエーションじゃなけりゃあっ……!
「パスタ、さん」
テーブルの下で俯いていたパスタさんが大きく震えた。
「ユーちゃん?」
「ぴ」
ひたすら食べ物を頬張っていたユーさんの動きが止まった。
「この店で一番高いコレで、お祝いしよう。
みんな、私とフレンドになってくれて、ありがとうね」
「……………………くっ」
それを──誰も、断る事はできなかったのだった。
なお。
蜘蛛は一番味わい深くて、食感も味付けもハッキリしてて見た目はともかく、
見 た 目 は と も か く !
美味しかった……。
そのことが、いっちばん納得いかなかった夜になった。
初めてのフレンドと、初めての街で、初めての体験をした。
良い意味でも悪い意味でも、忘れられない1日だった。
えりあぼすの、むしかしらやき
こうきゅうしょくざいだよ?