神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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書きたい、書きたい……!(脳内から直に出力したい)


《千紫万紅 2》

 

 

「エフィちゃん牽制よろしくっ」

「おまかせーっ」

 

 

 花を離れて高く飛び去っていこうとする、残り一体のストパピことストレージパピヨンを仕留めるべく。きゅーさんはエフィさんにひと声かけると、近くの巨木に向かって跳んだ。

 高い。たぶん今朝にまたレベルが上がって喜んでいた【3艘跳び】だったかのスキルを使用したんだろう。

 木の幹に足をつけたきゅーさんが、エフィさんの放った矢に体勢を崩されたストパピ目掛けて飛び掛かり、すれ違い様その毒の爪を一閃した。

 羽根を散らされ、毒を付加されたストパピがたっっぷりの蜜を抱えたまま落ちていく。

 その位置はジンさんよりも俺寄りなのでさてさて。

 

 

「ここっ、エア・クッション」

 

 

 よしっ。走り込み、ギリギリセーフで間に合った。

 

 

「Oh……」

 

 

 地面スレスレに設置した空気の膜に、ポフンッと落ちたストパピがウゾウゾと身をくねらせる様に慄く。

 

 いやむりぃ。

 ゲームだとしてもキツぃ。

 デカイ虫むりぃ。

 

 矢と毒でそもそもの体力もないコイツはもうこれでアッサリとポリゴン化するので、蜜は遠慮なく頂く用意だけはしてあまり見ないでおく。

 

 

「お、っと」

 

 

 エア・クッションと共に消えていった本体。

 落ちる蜜は、はい! 自作したこの“棒”でキャーッチ。

 いやーちょっと苦労して作ったかいがある。魔法使いのDEX初期値が高目でよかったっ!! 

『ストレージパピヨンの蜜袋』は、本体が消え、ただ地面に落ちたら散ってしまう採取が大変面倒な素材アイテムだ。

 

 で も !! 

 

『正絹の手織り包』をっ、わざわざ買い直した『魔法使いの杖』にっ! 

 工夫して括り付けた、虫取り網ならぬこの“蜜取り棒”でならばぁっ! 

 ストパピに近寄らずとも、近寄らずともっ!! 

 回収できるっ! 集められるの、だっ!! 

 これはエア・クッションが使えてこそ可能なコンボだ。いやー魔法使いやっててよかったと心底思うね!! 

 

 

「……言いづらかったんだが。スズキさん、これゲームだぞ。相手蝶々だぞ。正面以外からなら口のストローで刺されやしないし、あの状態なら触られてもダメージ的に微塵も痛くもないし、手で蜜を抱えた足の付け根をグイッとやるだけで取れるんだが」

「そんなことないです」

「そんなって。そうビビ……、まあいや、その、……そんな棒まで作って来てるとこ、なんだがその、ううん。

 気にし過ぎ、だって」

「そんなことないです」

「……せっかくだしこれを期に克ふ」

「そんなことないです」

「まだ言い終わってないぞー」

 

 

 い、く、ら! 言われようと聞こえません。ってか何? グイッて足の付け根から引っ張れって? 

 

 ハハハッ、──んんんなことできるかぁっっ?! 

 

 やり取りの合間に蜜をくるんでインベントリにしまい終える。

 くるんだ布も棒につけた布も、半ばここで蜜を収納するめちゃくちゃ手触りのいい専用アイテム『正絹の手織り包』だ。

 蜜を抱えて飛んでも襲われないストパピの、その幼体『ビッグバイトワーム』が蛹になってる時に取れる糸で作られている。蚕みたいだ。

 これなしでインベントリに蜜をしまうと、匂いでモンスターが集まってくるというのだから。うん。

 

 ゾッッッッとするってのっっ!! 

 

 でもこれを使って作れる『華やぎの香杖』がMP、DEX、TECどれにも補正入る序盤の強ツエ、ツヨッッ杖なんだからっっ!! 

 ヤケクソで取りに来たんだってんだユーさんのも集めないと同じく苦手なあの人とまた来るのやだし一緒に行こうと誘われた時断りたくないからワンチャンこれを口実に行くの回避できねえかなって思ったらその可能性にかけてもう今ここで集めきるしかねえだろくっっそがあーっっ!! 

 

 しかも、なに?! 

 

 騎士ジョブ維持のためにも任務クエストで! 

『千紫万紅の樹海窟』で『最低2つ蜜集め』しろ? 

『栄古斉衰の死火口湖』の山頂から『燼の石塊』持って来い? 

『神代の鐡遺跡』で『敵対したドローンユニットコア』回収? 

 どれもこれもやれってそんなめんっっっ──セカンディルではなんもやらなかった俺がいけなかったんです、はい。

 セカンディルでクエスト受けろって騎士ギルドからの伝書鳥(メールバード)に、いまサードレマにいるからムリって返信してNPCからも驚きと呆れを貰うとかなかなか稀有では? だからってその分クエスト増やされてちゃ溜まったもんじゃないっての……

 

 

「……落ち着いたか?」

「──あ、はい、すみません。でも苦手は苦手なんです」

「お、おう」

 

 

 気分はゴキブリとの対峙を終えた直後に近い。テンションが跳ね上がってる。そして一気に落ち着いてくる。

 ここはそれが連続する感じで、なんかもう疲れる。

 

 

「お! うんうん。ちゃんと回収できてたね、偉い偉いスズくん。頑張ったねぇ……」

「ってことはー、蜜集めはこれでよしっと」

 

 

 きゅーさん達とも合流する。俺の虫嫌いを弄るのにも飽きたらしいきゅーさんとエフィさん。エフィさんの言う通り、蜜集めはお終いだ。みんな欲しいだけは今のストパピ3体分で集まったし。

 

 

「それじゃー、あの辺の()()からまたやろー」

 

 

 エフィさんがチラッと視線を動かした。その先を皆でそっと見てみれば、この花畑の中においても、異様に花が密集していてもはや花束のようになっている場所がある。

 そこにはそれとなく、周りより一回りほど大きい花。

 

()()か。

 

 ハナカマキリモチーフのモンスター、ミミクリーマンティスの擬態状態。これで見るのは3度目だ。

 ちゃんと向いて見詰めてしまうと気付かれて(1回目の発見時)、不意打ちができないらしい。視線を向けるのもそこそこにしないといけない。気付かれると動いてしまうので。

 

 

「数は?」

「1。上にも周りにも近づいてくるのは今のとこいない。きゅーちゃんと登ってあたしはサポートに徹するよ」

「ならすぐ取りかかろう。2人とも、さっきみたいに奇襲からだ。任せるぞ」

「はいはい、奇襲、任された。いこっ」

「はーいよっ、と」

 

 

 機敏に巨木を登って蹴って、駆け上がっていくAGIの高い傭兵とレンジャーの2人は、見る見る間に“花”を見下ろせる位置に枝を伝って近づいていく。

 あんなに足場が不安定な所で、あんなに素早く。

 あーあ──カッコいいなあ。

 

 

「いいよなあ。俺もやってみたかっ」

 

 

 しまった。ジンさんが近くにいるのについ零してしまった……! 

 当然ジンさんにも聞こえて、いるっ。ああっ、不思議そうな顔でこっちを見て口を開いてるぅうう。

 

 

「? ステータスをアイテムとかでイジったりすれば、そのものじゃなくても真似はできるだろ?」

「ぐっっふ……!」

 

 

 やはり、というか。

 何気なく返されたその言葉は、俺の心をふかーく抉った。

 痛い。VRじゃ痛みなんてないはずなのに、痛いな……。涙も出そうだ、あ、学生帽で顔隠せるかなー、隠せたー。……ふふふ。

 

 

「な、なんだいきなり膝から崩れ落ちて。ボディ叩いた覚えはないぞ」

 

 

 ボディを叩くって言い回しは何でしょうか。それはそれで気になるが。

 さーて。

 何て伝えれば「俺じゃムリ」って、解ってくれるカナー。

 ふふふ──。

 

 

「……ジンさんVRチュートリアルの、“公園”とか“無重力”、やりました? どのくらいできます?」

「ん? ああ、“公園”はやってない、“無重力”の方なら。ベストはたしか、47? とかで、だいたい平均は40いくかいかないかだが」

 

 

 へー。たっっか。平均以上じゃーん。

 

 

「うっわすっごー。俺なんか20ギリ超える位ッスよあれー」

「──」

 

 

 無言、だった。

 少しして、ポンッと。無性に、優しげに、俺の背に手を当てられた。

 VRチュートリアルアスレチック。様々な遊具で遊ぶだけの“公園”の他に、無重力空間で迷宮の中光る球をただタッチして回るだけの“無重力”と様々なミニゲームができる、VRヘッドギアに予めダウンロードされてる単純なゲーム。

 

 それはVR内における適正を測る目的で遊ばれる。

 

 “無重力”の平均は30半ばとかくらいらしいっすねぇ。

 40超えたら才能があるとか言われ、50の後半ともなればもはやプロゲーマークラスとか。60の半ばを超えるなら日本トップクラスとか。70超えたらあの世界(シルヴィア)クラス。

 なんて、あくまで“適正”ってだけのお話ではある。

 でも“適正”は“適正”だ

 20なんて数字を数時間かけてどうにか超えるような俺なんかじゃ、まあ……

 

 

「──ふふふ……おっと嗤いが。ふ……ふふ、ふ」

「ホント、その、悪かった……。

 っと、2人が配置についたし、いこう」

 

 

 謝られると余計にですね、……はあ。切り替えろ俺。

 ジンさんの言う通り2人が位置についたので移動する。

 花へと余所見をしながら近寄りつつ、装備を蜜取り棒から、魔兎の短杖と灰色の円盾に変更しまして。……仕方ないけど学生帽を被ってと。

 よーし用意完了。杖で盾を小さく叩いてジンさんに伝えた。

 

 

「拳気・青、赤」

 

 

 ジンさんのその魔法が合図。

 

 

「せぇえいやあっ!」

「キキィッ」

 

 

 きゅーさんが飛び下りて頭上急襲(クリティカル)を、花に擬態していたハナカマキリモチーフだろうモンスター、ミミクリーマンティスへと成功させた。

 高所からの完全な不意打ちをクリティカルヒットさせれば、本来一撃必殺も有り得るのだけど。

 

 

「キッギビィィイイーッ」

「わったた」

 

 

 花そのものに見えるほど身体を丸めるようにしていたことで、さほどのダメージではないらしい。

 擬態中は硬度が増す……これもモンスターあるあるかな。

 暴れモーションで、頭の後ろ辺りに鉤爪で張り付くきゅーさんを、カマキリが振りほどこうとしている。

 

 よしっ。さすがきゅーさん。

 

 背面に張り付いた事で、予定通りに飛行を封じていた。

 頭と、目的の背中の位置を確認した俺とジンさんがそこで動く。青と赤の拳気魔法を揺らめかせるジンさんと同時に、けど別々の方へと駆け出す! 

 

 

 

「おおっ!」

 

 

 すぐ後ろのきゅーさんに気を取られるカマキリは隙だらけで。側面に回り込んだジンさんが、カマの付け根辺りを殴った。

 

 

「ビッ、ギキイッ」

「っく」

 

 

 俊敏なカマでの反撃を黒基調の手甲でジンさんはガードした。

 細身ながらも甲殻種。打撃が効く部位はとことん効くが限定されてるらしい。カマの辺りは全然効かない部位だ、しかしヘイトを買うには丁度いい。

 

 カマキリはきゅーさんを振りほどこうと暴れながら、即座にジンさんへとカマを振るう。

 素早いカマの動きとリーチ、あれで頭上と背後から射掛けられても防いで弾いて動き回るもんだから、背中破壊報酬の『擬花翅』が集まりづらいんだってね。

 

 

「連鎖詠唱」

「ビッ」

 

 

 反応ホント早いな。背後で声を発した瞬間には目でコッチを捉えている。

 けど、コレには関係ない! 

 

 

「ボルトッ」

 

 

 二条の雷光が杖先から迸る。すでにカマをコッチへ振ろうとしていたカマキリの、大輪の花冠ごと背中をつんざいた。

 

 今度は1発成功だ。……1回目はダラダラとまごついて破壊できなくて、2回目はそもそも背中を外したけど! 

 

 急所に叩き込まれた俺の魔法と、既にきゅーさんの毒でも削られていたカマキリがそれでポリゴンと化していく。

 おお、レベルがまた上がって20になった。よし。さてリザルトは、と。

 

 

「ナイスナイス! スズくん上手かったよ!」

「またやらかしたら全力で弄りにいったのにー。つまんないぜ男子さー」

「俺もお前も男子だろうが……お?」

「反省はしましたんでそろそろ許してほしいなあ!? はあ。

 それより1つ出ましたよ」

「こっちにもな。これで2つか。とりあえず良かった。

 そんであとは、……エフィ、必要数はいくつだ?」

「えーっとね? あたしときゅーさんとユリとあと──」

 

 

 まず2つ。翅集めはまだ終わらない。

 

 ヘイトはSTRの他に耐久に振ってるジンさんが火属性魔法(効果は抜群だが尋常ならざるヘイトを買う)とかで咄嗟に集めて全体のフォローをし、自らも拳気魔法でAGIとSTR上げてガンガン戦いを押していく。

 矢で牽制もできる、スキルで索敵と警戒をエフィさんが、

 遊撃手のように四方八方を跳び回るきゅーさんが。

 そうやって皆が作ってくれた隙を俺の魔法が撃つ。

 

 まだ午後4時になろうとするあたり。夕方になるくらいだ。

 この安定したペースで素材とマーニと経験値稼ぎだ! 

 

 

「……6時までには集めきりたいが」

 

 

 ん? ジンさん? 

 

 

 

 

 







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