虫。
虫っ。
虫虫虫ーっっ!!
「あ、あぁ゛〜っ! ──そうだ」
何度目かの戦闘を経た、その時!
脳裏を過る電光っ! 我、天啓を得たナリ──!
昆虫モンスターに火属性は効果抜群に通る。だが不用意に放てば何を差し置いてもキルしにくる。この樹海で火を放つのは途轍もなくリスキーなのだ。
だけどそれを逆手に、集団で飛び回る蜂型モンスター、エンパイアビーワーカーやハンターなどの、素早いモンスターを纏めて攻撃できたのなら、狩は大変に効率的になるんじゃないか。
いや、なるっっ!!
ワーカーとの戦闘を経てしばらく。
少しして
「あたし達でフォローすれば、もーんだーいなーし、ってね」
との鶴の一声により実行に移す。
つまり、魔法使いの俺が、輝く時が来たって訳だ!
さあいくぞ蜂共が。というか──この樹海の虫共めぇっ! 結局はただのモンスターじゃねえか! ゲームのプログラムが!
もういい加減に、怯えるのは飽き飽きしてきたんだよここが雌雄の付け所だぁぁああーっっ!!
「ファイアボールッ!」
杖先からバスケットボールサイズの火球が放たれ、ハンターの集団に勢いよく飛んでいく。
でも距離もあれば蜂の素早さもあり、5体のその集団いずれにも当たらなかった。
「よ、よし。よーし」
そして、予定通りに。
それら全てが俺へと向かい始めた。
これも予定通り。あとは引き寄せて、火炎放散で……
ブブブ……
ま、まだ、まだだ。大丈夫皆近くに待機しているんだ、取り零しは処理し、処理してく、
ブブブガチブカカ……ッッ
「よひ」
よし、近寄ってくるぞ何も知らない蜂共めバカでかいその身体をきっちり焼き上げてや、や、や、
ととというか、そのののおおおぉお?
デカイ、
集団、
羽音、
顎、
あ。
ブガチガカカブブブンブガチガンンブガチ──ッッ!!
「ひんゅれいむしゅろろぅぃきぃぁ゜ーっ!!」
「やっぱやっぱムリムリだったーっ……!」
「落ち着けスズキさってああ走るなお前なんって速っ?!」
「ん゛ん〜っっ!!」(笑いを堪え1体1体射落としてる)
…………
数時間の虫との戦闘。それで蓄積したストレス(ジンさん診断)による発狂状態を淡々と
大いに現実離れしたサイズの蜂が、集団で飛んでいる。
ついさっきどうにかこうにか、主にエフィさんが、処理した集団といい、巣が近くにあるのかもしれない。
「よしっ。じゃ、やってみようか」
ジンさんの一声で、皆それぞれの配置へと動いた。
さっきは意気揚々と挑んで、あのデカイ黄色の群体の威圧感、群れて空気を震わす羽音っ、カチカチガチガチ鳴らされる顎!
それらの恐ろしさに逃げ回ってしまった。我ながら情けないけどあんなん怖いってのゲームだとしても!
ああ耳に残りそう夢に見そう。
ともかく。
俺じゃ囮はムリ。けど、作戦そのものはアリらしく。
よって、選手交代。
「ファイアボール」
ジンさんが掌から野球ボールサイズの火球をハンターの集団に向けて放つと、それは直撃せずせいぜい1体に火の粉が掠めた程度に終わった。
だがそれら全てがジンさんに向かって一斉に動き出す。
……同じ事をやって怖気づいた俺と違って、堂々と蜂達を睨み返すジンさん。
その後ろに伏せているだけの身としては、その度胸が羨ましいと思わざるを得ない。俺と蜂達を隔てる壁として、ジンさんがまるで動じずにいるおかげで“的”が狙いやすい動きをしている。
コレを外すとアレがまーた俺に来るかと思うとゾッとする。けど、ああも一塊であるなら一網打尽だ。
「火炎放散!」
ジンさんの正面、蜂たちがまさに飛び掛かろうと高度を下げた直後にその真上から火炎を落とす。
纏めて焼かれる蜂達、だけど後方側にいた2匹ほどが半ば燃えた程度で範囲から逃れている。連鎖詠唱で範囲を広げるべきだったか。
左右へと散ったそいつらはそれぞれ俺へと頭を向けるが、その羽根も足も炎で幾分崩れて機能していない。ノロノロと動き出す、その片割れの脳天に矢が突き立ち、もう片割れはきゅーさんが鉤爪で素早く切り裂いて。
両方とも、ポリゴンになり消えた。
お、ワーカーを倒して21になってたLVが22になった。……ポンポンLVが上がる。
沼荒野をほぼスキップするように攻略したから低かったとはいえ、エリア1つマトモに探索しなかったのってこんな影響するのか。
「いやはや楽々ー。うん、範囲魔法便利ー。矢の“点”の範囲攻撃じゃー、こーも纏めて仕留められないし」
「そうだな。まあやはり不慣れな場面は多いが」
「うぐ、すみません」
居た堪れねえ……
学生帽で顔を隠すように伏せていた。何度となく失敗しているのでそう言われても仕方ない。
──蜂達といい、カマキリ初戦でも俺のミスで時間をかけた事といい。何度となく、ハッキリ足を引っ張ってるもんなあ。
あかん。凹む……!
ふと、学生帽のつばを持たれて顔を上げると、帽子を放された。苦笑してるジンさんと目が合う。
「待て待て。別に責めてないよ。慣れてきたらもっと早いペースで回れそうだと言いたかったんだ。今の魔法もタイミングがバッチリだったしな」
「そう、ですかね」
「そうだよ。今のは蜂共が高度を下げた直後を狙えてたろ? それにカマキリ相手もだ。2匹目を仕留めた雷魔法のタイミングも良かったし、3匹目と相対した時だってちゃんとカマをその盾で防御して自衛できて、その上でしっかり仕留めてる。
ちゃんと立ち回れてる、狙い所を狙えてる証拠だろ」
「そりゃ、皆さんから丁寧に教わってるからで」
「おいおいおいっ、まったく何へこたれてんだ。いいか、聞けスズキさん」
「は、はい」
おおう。え、そんな真剣な眼差しでなんですか。
こっちも自然に強張るんですが……。
「確かにしくじっていた、それをしないためのアドバイスはした。そうやってやり方を教えたさ。
だがな。教わったところで誰だってその通りにできる訳じゃない。
でも、
だから、そう卑下しなくていいんだよ。スズキさんが思う以上に、ちゃんと
「あ、ありがとう、ございます」
ニッと見るからに楽しそうに笑ってジンさんは踵を返して、エフィさんに近寄って話し掛け、インベントリの確認をし始めた。
……パワーレベリングされてる感は否めない。でも、俺でもちゃんと役に立ててるんだな。良かった。
「さっきのスズくん見た時はどうなる事かと思ったけど、ジンさんのおかげでだいぶ落ち着いたね。良かった良かった」
「きゅーさん」
ニコニコと話しかけられる。うん。さっきはご迷惑を。いやほんと。
それにしても、きゅーさんと合流した時に言われた通り、本当に良い人達だ。
俺みたいな初心者でも、しっかりカバーしてくれて、フォローしてくれて。ありがたい事にすっかり面倒を見られている。
もう頭が上がらない。
「ありがとうきゅーさん。誘ってくれて。おかげであの人達に会えて、こうやってレベリングも素材集めもできてるし。なにより」
「うんうん! 顔に書いてあるよスズくん。“楽しい”ならよかったよかった!」
敵わない。
あの時、この人に誘われて、こうして楽しんで笑い合えるようなフレンドになれて良かった。
……フレンドか。
「きゅーさん、その、ジンさん達ともフレンドになってたりします?」
「ん? あータイミングなくてジンさんともう1人とはまだ。でもでも、エフィちゃんとはなったよ! いえいえーい」
「おお、やっぱり」
エフィさんはだいたいジンさん達の誰かとシャンフロやるらしいし。予定組めそうならエフィさんに連絡すればいいもんな。
「いつも一緒のメンバーならその内の誰かとだけフレンドになればいっかなーって。連絡はそれでとれるし!
なんとなくだけど、あの人達リアフレっぽいしさ」
「へー」
きゅーさんの言う通りだ。でも、せっかくだし。2人ともフレンドになって欲しい気持ちも少しある。
きゅーさんの事も含めて後で聞いてお願いしてみようか──
「あ──まっずっ……!
悪い。俺急いで落ちないとマズくなった。予定がある」
「あ、はい。わかりました」
「おっともうこんな時間だ。私も落ちよっかな」
「んじゃ急ごっか」
時刻は6時36分。そういえばジンさん6時までとか言ってたっけ忘れてたけど。
きゅーさんと合流してからだいたい4時間以上。休憩挟みつつだったけど、もうそんなに経ってたかあ。
ぶつ切りですまない。そして次のお話は地の文皆無です。本編に関係……一部はナイヨ?