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話していくうちに浮かんだ感情は、最初のうちは途方もなく認めたくないもの。
それは表面上ですら隠せないほど会話の中で大きくなり、別れ際に放った苦し紛れの嘲笑と心にもない罵倒として表れてしまって。
思い返すに、顔から火が出そうなほど間違いようもない無様なそれ。
“嫉妬”だ。
世の若き華達を魅了する、この天音永遠が!
たかがゲームのいちNPCでしかない、
セツナとやらに、嫉妬した。
『あの人を解放してくれる誰かを、待ち続けているの。もうながい、永い間、ずっと──』
満月の光の中。
彼岸花に囲まれて。
誰の目からも隠れた地で、何にも触れられぬその体で。
ただ、1人きり。
寒さも暖かさも、そよぐ風も地を踏む実感も、彼女にはない。
それでも。
枯れた桜を見上げるその顔は、目は、呟く言葉は、何もかもが、
“作り物”と、そんな一言で片付けるには、
あまりにも悲しげで。
でも、愛おしげで。
そして寂しそうで、なんて美しいのかと思ってしまった。
羨ましい──羨ましい?
……だけど。
だけど。だけど、これは、“ゲーム”だ。
コイツはただの“NPC”だ。
ゲームキャラに? この私が?
羨ましい? ……バカバカしいっ!
『ずっとずっとただ待ってるぅ? ふーん? へー?
あっそ。
……あのさあ。セツナちゃんって、なんて、なんて──』
──天音永遠は爆弾が好きだ。炸裂するその一瞬で放たれる熱と閃光に呑まれたモノが破壊される様が、崩れる瓦礫が、それに内包された物に憤慨する何もかもに、どうしようもない喜びを、生きている実感を覚える。
ああ、その無残な様が見たかったのだ! と……それは、間違いようもなくヒトデナシの一面だ。
日本のトップとして活躍する花形モデルではあるが、そういった刹那主義も含めたのが天音永遠だ。
人が大事にしているモノや、大きく育て上げたモノをブチ壊したい衝動があり、それをリアルでは満たしてはいけないと理解しているからこそVRに身を浸しているのはある。
そんな
だからこそなのか、
死の安らぎを捨ててまで
「──そっか」
……こうして、日を跨いで。
千紫万紅の樹海窟を気付いたら訪れていて、なんとなくモンスターやらソロやらを狩って。
ぼんやりしてるうち、足が向いただけだ。
せっかく来てしまったのだから、昨夜のペンシルゴンの嘲りを、どんな機械的な顔で怒ってくるのかと。
「満月の夜だけ、話せるんだっけ……」
夕暮れに照らされ、昨夜とはまるで違う様相の彼岸花畑。
これはこれで見栄えはいい。が、不思議と、あの夜の方が綺麗だったと思えた。
「遠いなあ。……っ」
セツナに会えるのは来月の事、それも満月の夜の時だけと語っていた事を思い出し。
ペンシルゴン自身、信じられないほど落胆してることに気が付き困惑した。
たかがNPCだ。そう思いたくて、改めて来ただけなのだ。
きっとお決まりの怒りセリフを吐いて、人間味の薄い塩対応をしてきてくれて。それでようやっと、このモヤモヤする気持ちにケリをつけられると……
「……はああ」
らしくない。
深くため息をつく。本当に、こんなの天音永遠らしくない。
こんなにも会いたいと思える相手に会えない事が──まずは、来月だ。
「絶対、また会いに来るからっ!」
怒気すら篭っていた。何に対する怒りなのか、ペンシルゴン自身、
おそらくは、ある種の決意表明だった。
ペンシルゴンは踵を返し、足取りは真っ直ぐに樹海窟へと戻っていく。
“ 。 ”。
無人になった“庭”で、そよ風が吹く。
枯れた桜の木の下で、彼岸花が柔らかく揺れた。
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※以下、ただの考察と妄想
なんで前話でペンシルゴンいるの?に対する解答短編でした。短いねごめんなさいね繋ぎだから許して欲しい。
秘密の花園発見って時期的にたぶんかなり早い段階でもないと変では?と思っている。あの樹海窟へわざわざフィフティシア辺りから引き返してまで求めるものがあるのかなと。
サードレマにいる間か、フォスフォシエから取りに戻る。
この2択じゃないかと思いまして、拙作では前者を想定しました。
そして、ペンシルゴンがセツナに対してああも深い友愛を向ける理由に、1度感情の衝突を経ていることを主張します(しました)。
あの外道がいかに精巧なNPCで名前が名前だからなんて理由だけで、ああも感情移入するなんて考え難い!
永遠という名前だけど刹那の衝動にこそ、いや、そこにしか生き甲斐を感じることができない天音永遠だからこそ、
刹那という名前なのに永遠に大切に想える、それこそその感情を死んでまで持ち続けられる天津気 刹那もとい遠き日のセツナに、その存在と在り方を羨望して。
でも結局相手はただのゲーム内NPCであることが頭にチラついて、それを認めるにはすぐには至らず嫉妬した、としました。
※蛇足
なんか、書いてて百合っぽいなとは。
この場合なんだ、
永遠×セツ? 永遠→セツ?