神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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(力尽きている 屍のようだ)


《千紫万紅 5》

 

 

 

 

 

「あちゃー。やっぱりまだいるし……またやられてる」

 

 

 やはりというか、あの場所を狩場としたらしい。

 やっぱり帰ろう、とした時のこと。悪態混じりの悲鳴でそれに運良く気付いて。距離を置いて。

 探索しながら、タイミングを変えて、念の為準備を進めて、観察がてら覗き続けて。

 

 

「粘着なPKよりタチ悪ぅ……あれ絶対リアルでもメンドクサイやつだ」

 

 

 既に1時間。

 

 今回でおそらくは3組目、今度は5人のPK達がアレの餌食になっていた。

 為す術なく、逃げることすら許さないとばかりに次々とポリゴンへと返されていく5人組。

 またしても。

 その5人は全員ほんの数分で仕留められ、そして、仕留めた側に如何程の消耗も垣間見えなかった。

 

 

「うーん……。はあぁ」

 

 

 これで3度目。何度見ても、遠目だというのに冷や汗が浮かぶしため息が出る。

 

 アーサー・ペンシルゴンは、そのPKK【鯛鮫X】をじっと観察して、ありゃ今のままじゃ勝てないなあ、と嘆息した。

 

 槍さばき1つ、距離の詰め方1つ、と。

 どれをとっても、まさしくLVの差が如実に見て取れた。十中八九、もっと先の街から来ている。レベルで言えば30か40か、最悪それ以上の差はあるのではないか。

 

 

「やっぱり、暴力をさらなる暴力で潰しに来た手合いかなあ、アレ」

 

 

 嫌いではない。だがそれはする側の話であって、やられる側になるのは……時と場合により、基本大嫌いだ。

 

 

「──いや、()()()()じゃないかも?」

 

 

 3度目の戦闘後の様子を見てて、というか、たぶんまだ何回か戦っていたのだろう。

 その辺の木の隅に雑に放られていたらしき、インベントリに仕舞われていないそれらは、おそらくは戦利品。

 それらのいくつかがポリゴン化して消えていく様が見えて。

 果たしてそれは単にインベントリに仕舞いきれなかったからか、高レベル帯からすると“荷物”でしかないからか。

 それとも、……十中八九これだろう見当がつく。マーニの詰まった袋さえ放置するほど“潔癖”なのか、と。

 

 

「ふーん? ふんふん。とするとすると……?」

 

 

 1手浮かんだ妙案はあるが、不確定要素が多い、一旦保留。

 鯛鮫Xがここ、千紫万紅の樹海窟の出入り口付近に陣取っているとなると。

 

 ログアウトするには、

 ・単身で樹海窟のエリアボスを倒して次の街フォスフォシエに進むか、

 ・全力疾走でサードレマまで逃げ延びてセーブポイントに駆け込むか、

 ・有り得ないけど最悪はいっそのこと大人しくキルされるか。

 といったところか。

 

 1つ目はちょっとしたノリで試してきたところ。結論としてはLV32のペンシルゴンではムリだった。どこぞの悪食ゲーマーや受け鰹プロゲーマーならやれそう、とはふと思ったが、一介の、麗しき女性プレイヤーでしかないペンシルゴンにはあんなのムリ。素材回収だけ済ませた。

 

 2つ目は何かしらで足止めすればいけるか? でも追い付かれる未来が容易に浮かぶし、そうなった時の備えを思いつかないか思案中。

 

 3つ目は、まあうん。リアル側から人としての尊厳的緊急事態(アラート)があるまで保留の最終手段だ。

 現状は切実、ただ時間を浪費して待つのみ。しかしそろそろ待つのもつまらない、いっそやれるだけやってみようかと思うのも事実。

 

 さて、と。──仕掛けの確認を済ませて、再び待機する。

 あと必要なのは、というかできたら、

 

 

「都合よく、誰かあそこに行ってくれないかなあ」

 

 

 鯛鮫Xの緊張を緩めるような何かを、アレの顔見知りとか来ないかなと誰かを、じっと待つ。……鯛鮫X自身が、いっそトイレ落ちでもしないかと願って。

 

 

 …………

 

 

「おやおやおや、これは好機か、な? 

 ……あれ?」

 

 

 タイサメなるPKKに話し掛ける4人パーティの中、1人だけ何故だが気になる名前。

 スズキ・SG、とは見覚えが。はて、たしか極々最近。

 

 

「……スズキくんじゃん」

 

 

 ペンシルゴンはキルした相手なぞろくに記憶に留めはしないが、スズキをキルしたのはつい一昨日の事だ。キルしたにしてもPKらしからぬ手法で自決“させた”形を取ったのも印象的ではあった。

 そうしてキルしておいてなんだが、まさかもう千紫万紅の樹海窟を探索するまで育っているとは思いもしなかったが。

 

 まさかここで、こんなタイミングで会うと──

 

 

「よーしっ」

 

 

 プラン急速変更! 

 “なりゆきでPKになっただけなの土下座するから許してと油断を誘う”作戦は苦肉も苦肉だったから放棄! 

 

 だが大部分を流用して、保留していた妙案を実行に移す。

 スズキ達はなにやら件のPKKと話し始めているが、うん、仲が良いというわけではなさそうだ。

 なら時間はない。思考しながら動き出す。

 

 使っていくアイテムの確認と順序を精査。

 必要最低限なものインベントリに仕舞い可能な限り身軽に。

 装備とジョブを逃走用のものと新たな仕掛け用に。

 アイテムと魔法のバフ関係もさらに掛け直して……

 

 

「ふふふ……ねぇねぇPKKのタイサメXとかいう変な名前のアナタは」

 

 

 こんなことされたら、どう動くのカナ? 

 

 

「縄傀儡【蛇】」

 

 

 樹上より見下ろした先へと振るわれた職業【考古学者】の縄魔法は、なぜだか学生服姿のスズキを確かに捕縛した。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 悪戯成功みたいなそんな顔も憎めないのなんかズルくね? 

 じゃない、ペンシルゴン!? どこから、ってか人質!? 

 こ、こいついきなり現れて人をこんな魚みたいに釣り上げておいてなにぃぃいひいぃぃーっ!? 

 

 眼下で一斉に怯ませ爆竹の音が鳴ったと同時に、景色が一気に線のようになって流れ出す。

 ペンシルゴンが俺を足首から目元まで簀巻きにしたまま引っ張って、木から木へと、もう1つの縄を使って高速でどんどん移動してやがるっ。

 

 

「ん゛ごぐんんん゛んんー! (どこ行く気だこらー!)」

「?」

 

 

 気のせいか、みたいな顔でチラッと見ただけで済ますなおい。

 こんのっ……ダメだやっぱり俺のSTRじゃこの縄は解けないし、いくら暴れてもペンシルゴンはなぜかバランスを崩さない。運動神経のよろしいことで……! 

 あーあ。このまま連れ去られてどうなるやら。

 

 

「待てっ!」

 

 

 へ? 誰、って鯛鮫Xさん!? もう追いついて……お? 

 ニッ、と確かに一瞬笑みを浮かべたペンシルゴンは、木から飛び降りた。うぐええ浮遊感がぁ。

 うう。な、なんだどこだここ……?

 樹海の真っ只中ではあるが、少し開けたような場所だ。こんなとこになにがあって着地して、って! 

 ぐ。うぐ、雑に転がしやがって。しかしこいつヤケに素直に言う事をうおう!? や、槍が首にぃ! 

 

 

「うんうん。そうやって、ちゃーんとジッとしとくんだぞぅ?」

 

 

 あ、うん。──じゃない! 言う通りデスしたくないから動かないけど! 

 す、透き通るような碧眼で覗き込みやがって、俺に何をそっと囁くんだこいつっ!!

 大人しく素直になる所だった。危ないところだった! 

 ……いや、何のつもりだ? ペンシルゴンのやつ。 

 リアルなら確かに、刃物を首に突きつけるのは脅しになるだろうが、ゲームでお前こんなことした所で、そんな、何になるんだ? 

 

 

「や。はっやいねぇ。ずいぶんLV高そう。

 ねえ、とりあえず、その読み方を教えてくれる? それとも、たいさめえっくすくんって呼べばいいの? たいさめえっくすくん」

 

 

 縄で口を封されてて良かった。思いっきり気になってたとこを遠慮容赦なくつくものだからたぶん今笑ってしまうところだった……! 

 

 

「……鯛鮫X(たいしゃくてん)だ。

 待てと言われて待つ辺り、爆竹で足止めをしたにも関わらずあっさり追い付かれて、大方レベルの差を理解したんだろう? ならほら、彼をさっさと解放したらどうだ。そんな人質なんて無意味なことは辞めろ」

 

 

 そうだ。人質なんて無意味だ。

 だってゲームである以上ほんとに死ぬ訳でもなし。

 さっき会ったばかりの鯛鮫Xさんが俺をキルさせまいと必死になる大層な理由もない。

 だったら、

 

 

「だったら。

 だったらとっとと、私ごと刺しちゃったり斬っちゃったり、好きにすればいいんじゃない? 鯛鮫Xくん。まあ──できそうにないから彼を解放しない訳だけど、ネ」

「……っ! キサマッ」

 

 

 え……えぇ?

 これ、まさかの有効なんです? 

 

 

 

 

 

 

 








つづき かきたい



あ、コナン映画アクション豊富でテンプレキレイに踏んでて笑えたし見応えありました(無関係)
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